にゃめんなよ! - <第一部>第五章「弱点と欠点」・前編


 第五章「弱点と欠点」
 私はその晩、構想を練ってみた。ライバル心や対抗心を燃やす訳ではないが、自分の中にある血がたぎる感覚を何故かアイツには感じるのだ。これも私が虎と称される所以だろうか。

 そんな事を考えて、いつも通り気持ちよく睡眠。それから朝を迎え、うるさい野郎に構われる前にさっさと学校に行く事にした。
 世間様は「バカと煙は高い所に昇る」私のとこのヤクザは、「暗がりと廃屋」に集まる。大抵悪知恵の働く連中は一定の所に集まるんだ。それが私の持論。
 商店街の路地裏や学校の階段裏など、めぼしい場所には目を付けてある。私は口元をニヤリと歪め、不敵な笑みを浮かべながら学校に入っていった。
 そして、私は学校の屋上の物陰で待機する事にした。
 「おい、村井、お前、例の物持って来たか?」
 「……え、えっと、うん。」
 「早く早く!お前の親父なら幾らでも出せるだろ。」
 何?アイツらカツアゲなんかしてるの?みっともない。男って弱い奴を何で寄ってたかっていじめるかなー。面倒臭い。
 私は呆れつつ、溜め息。それから手元に転がってた得物になりそうなデッキブラシを掴むと様子を窺う事にした。
 
 「おい、誰か来たみたいだぞ。」
 「あ、あれって龍崎さんじゃ……。」
 「…………!」
 男連中がアイツ(龍崎)に気を取られている隙に雑魚は逃げ出した。そして、呼び止めようとするがアイツに怯えたのか、動きが硬直する男連中。
 「お前ら、そんなに震えてどうしたんだ?」
 「す、スミマセン!!今すぐどきますね。」
 「何なら、ジュースとか買って来ましょうか?」
 「いや、いい。」
 先程の威圧的な態度と打って変わって媚びているようにも見える男連中。その態度の変化に腹立たしい感情を抱く私だった。
 「ささ、どうぞお座り下さい。」
 「俺らは行くんで。」
 逃げるようにして男連中は去ろうとするが、アイツは何故か呼び止める。
 「おい!」
 「は、はい、何でしょう?」
 「そんな態度じゃ駄目だ。もう少し柔らかく行こうぜ?同級生なんだし。」
 「柔らかく……?」
 「俺らの身体でもぶちのめす気じゃ……。(原型が無い的な意味で)」
 「いやぁ!!勘弁して下さい!!」
 「少ないですけどこれで!」
 そして、男連中は財布をその場に置き(献上し)逃げるようにして走り去っていった。

 そして、アイツは何をするかなーと思いきや、頭を抱えて柄にも無い事を言いだした。
 「またやっちまった……。」
は?私は耳を疑った。
 「お袋みたいな凶悪粗暴な生き方はしたくないって決めて来たのに、どうして周りがこうするかなー。これじゃあ俺もヤンキーじゃねーか!!」
 アイツは錆びたフェンスを殴りながら悶え苦しむ。私は若干重みを含んだ空気とアイツの意外な一面を知ってしまい、声を掛けづらくなってしまった。しかし、私も根が真面目な人間。「何とかして授業に出なければ。」とそっと気配を消して屋上から逃げようとした。
 ドア付近まで近付いたが、いい所でアイツが振りかえってこちらを見て来た。
 「誰かいるのか?」
 私は、背筋が凍る思いでゆっくりとアイツの方へ振り返った。
 アイツは怒りもせず、かと言って笑いもしないでこちらの様子を窺うようにじっと見ていた。
 「お前、聞いてたのか?」
 「いや、たまたまだよ。何にも聞いてないよ。屋上は私も好きだしね。景色も良いし。」
適当な事を言って私はさっさと屋上を後にした。長居するとボロが出てしまいそうだったからだ。
 アイツはフッと笑うと、屋上に戻っていった。

 ま、今回の事は忘れよう。そして、またアイツを追尾してみよう。今回はフェアーじゃなかっただけだ。

******
 私は授業中、ボーっと考え事をしていた。アイツの言っていた、「またやっちまった……。」その言葉の意味が理解出来ない。

 「おい、浅葱、俺の話、聞いてるか?」
 ぽすぽすぽすと軽い音を立てながら私の頭を何かで叩かれるような感覚。横を向くと数学の先公が嫌そーな顔を浮かべてこちらを睨んでいた。私は挑発の意味も込めて、丁寧に先公を睨み返してあげた。先公はどうやら挑発に乗って来たようで。
 「おーお。相変わらず傲慢な態度だ。俺の授業が退屈なら出てってくれても構わないんだがなぁ。」
 「…………。」
 無言の威圧。しかし、私は先公から目を逸らす事無く、ただひたすら睨んだ。両者拮抗し、火花が散っているようにも見えて来た。
 しばらくの沈黙が続き、教室の空気が弛緩し始めた。周りの人が無法地帯になったのか、緊張感が無くなり、ざわめきさえ起こり始める。
 「おいおい、アイツまたやってるぞ。」
 「相変わらず浅葱は血の気が多いよなー。」
 「数学の先公とかめんどくさいのに、よく敵に回す気になるよねー。」

 私に集まる視線。滞る授業。私自身がこの時間を止めている行為に、非常にむず痒くなり、イライラが募り始める。そして、私は机を叩いて、立ち上がった。
 「視線がうるさい!!」
 大声で言ってやった。すっきりした。しかし周りの反応は予想以上に冷たいものだった。

 「……はぁ?」
 その時間、私は恥ずかしくて死にたかった。

続きます。

この小説について

タイトル <第一部>第五章「弱点と欠点」・前編
初版 2010年4月29日
改訂 2010年4月29日
小説ID 3910
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