ソラモノ - 空撮り

春燕

 空から写真を撮る人間と、地上から撮る人間と。
 似て非なるものであるこの二つに壁は無い。誰しもがカメラがあればこの世界の人間になれる。もちろん老若男女問わず、撮りたいという気持ちがあれば。

 レッドアラート―――レーダーが敵機を捉えた。

「ドットアイから管制官、方位200から250、散開して接近。機首は不明……」
 操縦席に座る部隊長から基地にある管制塔へ通信が送られる。管制官にいる人間はたいてい頭が固いが、基地内で一番目立つ白くてノッポの建物にいればそうなるのだろうか?。
「管制塔からドットアイ、今緊急発進(スクランブル)をかけた。三分もたせろ」
 ちなみに今部隊長と俺の乗っている機体には、武器は積まれていない。ミサイルを避けるための銀紙を出す装置くらいなら積まれてはいるが、もとからあったはずのバルカン砲までも外されている。これでは不安で仕方が無い。
 反撃することのできない状態で三分ももたせること自体不可能に思えるが、ここの部隊長はそのへんのパイロットとはかなり違い信頼感バツグンの隊長だ。
「こちらドットアイ、了解した。作戦行動に移る」
 静かで渋い隊長の声はいつ聞いても気持ちがいい。歳にしては酒も飲まないし煙草も吸わないという珍しい人だからこそ、ジャズのような不思議で聞く人を落ち着かせる声になるのか。
「隊長、死ぬ気で写真撮りますから、隊長も死ぬ気で避けてくださいね」
「舌噛むぞ。口閉じてろ」
 と、その一言の後一瞬小さな間をおいてから座席の背もたれにもの凄い力で押さえつけられる。読み方のあまりわからない計器が右端へ振られているので、速度やエンジンのパワーなんかも最大近くらしい。まるでドラム缶の中で外から殴られたような衝撃が響く。
「くっ……」
 酸素マスクの中に吐きそうになるのを何とかこらえる。掃除するのも面倒だが、部隊長は吐いたりしてもおかまいなしに機体を振り回すので、掃除できずにけっきょく胃の中に戻すしかなく、そんな状況下で良い画が撮れたためしがない。
 しかし轟音と吐気に襲われてから一分もたたないうちに、急にそれが止んだ。気づけばすでに部隊長は敵機と正面から交差していた。
「ドットアイ、交戦」
「スナップ、スタンバイ」
 部隊長は交戦宣言を行ってから、僕は撮影をし始めることを宣言する。これらの宣言はうちの部隊のみでなく他でも使われているが、する意味を誰も教えてくれない。
 連射と手振れ補正のためにカメラを固定する。ガンカメラ、この機体の先端についた目標を狙うためのカメラを撮影機に変えればもう少し楽になるが、それでは機体の向いた方向へ少しの範囲しか撮ることができない。
「所属不明機、数は五。一番良い画、帰ったら見せろよ」
 ボソッと部隊長が最後にそう呟いたのを聞きそれに了解と答えようとした瞬間、エアブレーキをかけてエンジンパワーを最小まで落していた。そのために急激に減速して前のめりに力がはたらき内臓あたりが潰れていく感覚に襲われる。
 そこから機体の頭がいっきに上へと跳ね上げられ半宙返りを起こし、姿勢を戻して再度エンジンパワーを最大へ。この間たった四秒。
 吐かないほうがおかしいとよく同僚から言われるが、半ば馴れといっても過言ではない。初めて乗ったころは何度も急旋回するたびに吐いたが、今ではかなり強くなったと思う。
 基地へ直行する方とこちらへ来るほうで分けたらしく、二機がこちらへ向かってくる。偵察機に三機もいらないと判断したのだろう。
「EMP生成、ミサイル撹乱とレーダー妨害を同時にやる……シャッターチャンスだぞ」
 電子機器の全般を狂わせる装置のEMPだが、特定の物を相手にした方が効果が高い。究極は戦闘機自体のシステムをシャットダウンさせて墜落させることだが、偵察機に標準で積まれている物には限界がある。
 そしてこのEMP生成がなぜシャッターチャンスかと言うと、発生したときに起こる電磁波がうまくフィルムの成分に反応したときにのみ、人の目に見えない空には存在しない色の空間が写り込む。出来栄えは現像してみないとわからないのだが、それがまた良い。目が良い人はEMPによって微妙に空が歪むのがわかり、僕も他の人より目が良い方なので確認できる。あれはかなり不思議な光景に見える。
「右下か。左回りで行くからな」
 細かく説明してくれるのは、たぶん部隊長も上手く撮れた写真を見たいからだと思う。機を左へ傾けてから一瞬レーダーがフラッシュする。その反応を確認してシャッターを切る。
 パパパパと連射する音が鳴り連続撮影をする。しかし撮れたなと思ったときにはすでに機体は逆さを向いて急降下していた。僕らの頭の上にある、機体の背中に付けられた黒い円盤がもげるのではとたまに心配になる。
 正面に敵機を捉えると、すぐさまロックオン可能を知らせる音が鳴る。しかしさっき言ったとおり武器を積んでいないため、ある程度の距離を知らせるためだけに鳴っているのと同じだ。
 その音に紛れて逆にロックオンされた時に鳴る警告音が鳴り響く。EMPを生成している分ミサイルの命中率は落ちるが、機体の性能は敵が上だろう。
「撃ってみやがれ、お前の味方が墜ちるぞ」
 EMPの惑わせる事のできるミサイルは一種類、レーダーを使って敵機を追うものだけで、エンジン熱を追ってくるものは騙せない。しかしそれを逆に利用すれば味方と敵を関係無く追わせることも可能だ。
 予想通り敵二機が同時にミサイルを発射し二つの白点が襲って来る。それを回転しながら銀紙をばら撒きつつ敵機の後へと回り込む形へ。ミサイルは熱を放ちながら舞う銀紙に釣られ逸れていく。
 二機いるうちの前にいる一機の後ろにつき、敵機に挟まれる形になる。本当であればこうなるとまずいが、熱をごまかすには危険だがこうするのが一番良い。
 そろそろかなというタイミングで警告音が大きくなる。ミサイルを発射されたのがわかり、距離によってそれの鳴る間隔が短くなる。焦る僕に対して、部隊長は全く焦った様子が無い。
 そろそろ危なくなる距離で、エンジンを最大へ。前にいる敵機と時間を空けずに距離を詰めてから急旋回へもっていく。するとミサイルの警告音がはたと止み、上のほうで爆音が響きレーダーから赤い敵機のマークが消える。
 敵機にミサイルが着弾する瞬間を連写してから後方にいる敵機へカメラを回す。自機を急減速させていたために敵機の腹の部分が横切るのを見計らい、シャッターを切る。
 そして後は、延々その敵機の尻を追い掛け回して作戦終了。広域レーダーですでに味方機を捉え、敵機三に対して味方は四機、一個小隊で応戦。数で勝ればそれで十分楽になる。
 敵機との遭遇から二分、けりがついた。こちらの損害は無かった。

「着陸を許可します。ガイドラインに従って、第二格納庫へお願いします」
 着陸態勢に入った戦闘機四機に続いて最後に着陸する。このときも前のめりの力のせいで内臓が大変なことになるが、やはり馴れというのは凄いと思う。
 滑走路をしばらく進み、ある程度まで減速したあたりの分離路で滑走路へと向かう。けっきょく今回取れた数はそれほど無いが、EMPを撮れただけでも良いと思う。
 格納庫で降りてから、部隊長と一緒に司令室へとむかう。他の戦闘機乗りたちは先に行って済ませているだろうから気にしなくてもいい。
「部隊長」
 ふと、司令室への廊下で聞きたいこと、というよりも愚痴のようなものが浮かんだ。呼ぶと優しい笑顔がこちらを向いて、何でも聞いてくれと無言の表情で表してくれる。この人、若いころはなかなかのプレイボーイだったのではと時々思う。
「この戦争、いったい後何年続くのでしょうか? 今月あと一週間もすれば丸一年になります……自分は、親がすでに先立っているので身寄りが無く心配で」
 僕がそう言うと、優しい笑顔の持ち主は表情をそのままに前を向いた。
「行くところが無けりゃあ、俺のところにでも来るか?」
「え?」
 聞こえにくかったわけではないし意味もたぶん理解していたが、突然の事で驚いてしまった。話を続けようと思ったときにはすでに司令室に入ってしまい、私語は基本的厳禁のこの空間ではどうしようもない。
「深井中尉、大下二等兵、入ります」
 部隊長が先に入り敬礼し、それに続き僕も敬礼する。指令長官でありこの基地の総指揮権を持つ基地長は、見るかぎり心地良さそうには思えない椅子に座ってふんぞり返っている。
「ご苦労だった。諸君の働きには感謝する。報告書は明日の朝までに出しておいてくれ。じゃ、もう下がっていい」
「失礼します」
 深井部隊長が下がろうとした時、指令長が何かを思い出したような表情になった。しかもこちらの方を、僕と目を合わせた途端そういった顔になったので、おそらく僕に用なのだろう。
「大下二等兵、ちょっと残りたまえ」
「はい」
 予想したとおり指令長に呼ばれ、先に下がる部隊長にはついていかずに残る。
 バタンと扉が閉まる音がした後、指令長はギイと苦しそうな音をたてる椅子から立ち上がり窓際へ行った。ブラインドに隙間を作り外を眺めている。
「君に移動の話が出ている……軍本部のお偉いさん方が、君の写真の腕を見込んで本部直轄エリート部隊専属のカメラマンをやらないかと言ってきているんだが……」
 本部直轄のエリート部隊と遠回しに言っているが、そのエリート部隊とはようするに曲芸飛行のお遊び連中だ。戦場が怖くなって逃げた連中の吹き溜まりがエリート連中だと、昔取材した時に感じて以来、彼らには嫌悪感だけしか抱けない。
 裏は女好きのゲス野郎で誇りも無い。表では襟を正してどでかい面構えで憧れの中心を演じるだけの連中と知ってしまえば、後は何も思えない。あの時は取材を早めに切り上げてさっさと帰った記憶がある。しかし―――
「間違えるなよ、スナップ・シューターからだ。曲芸連中ではない」
 嬉しい誤算とはこれをいうのだろう。スナップ・シューターはカメラマンになる前、興味を持ち始めるきっかけになった写真の最高峰をいく人間の集まりだ。そんな場所から推薦が来ているなど夢にも思わなかったために目を丸くした。
「返事は一週間後にまた聞く。それまで、今の部隊長の専属としての自分と話し合って決めておいてくれよ。しかし、なぁ、君が今の状況が良いというのであれば、押し付けはしないよ」
「……わかりました。失礼します」
 移動ということは、当たり前だが部隊長と飛ぶのはここにいれるからこそで他へ行けば他でまたパートナーを探さなければならない。それをふまえて、指令長は部隊長の専属としての自分と話し合えと言ったのだ。態度が妙に大きいのはいつもの事だが、指令長はやはり指令長なのだなと思えた。
「おめでとう。憧れの部隊だったんだろう?」
 司令室を出た場所の隣で声が聞こえ、声の方へ振り向くと部隊長が扉の横で立っていた。まるで自分の事のように嬉しそうな笑みを浮かべて。
「聞いてたんですか。とりあえずは、じっくり考えてみます」
 移動するとなると、もうこの人とはもう一緒に飛ぶことが無くなるのかもしれない。しかしこの人のおかげで僕はここまでくることができた気がする。
「お前が一番良いと思う方へ決めれば良いさ。寂しくはなるが、今回の移動は悪い話どころか後の人生に関わるような良い話だしな」
 部隊長に寂しくはなるなどと言われては、頭の中のもやもやがさらに渦を巻き始めて大変なことになりそうだ。
 パートナーと信頼関係を築くのは並大抵ではないと前に誰かから教わった事があるが、向こうでそれをまたできるかわからない。どこか新しい場所へ行く時はいつも不安がつき物というが、今は不安が大きすぎる。
 しばらく二人の間で無言の時間が続き、ついには自分の部屋の前まで来てしまった。
「今日はゆっくり休んで、明日からまた考えればいい。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
 バタンと閉じられた扉に一つ大きくため息をつき、ふらりと振り向けばあとはベッドへと突っ伏すだけだった。
 時計はまだ十八時をさしており、眠るにはまだ早い。しかし部隊長が祝ってくれたこと、今まで憧れとしてだったものが現実へとなったこと、さらにそれ以上に自分の意志が大きく揺れていることが頭の中をぐちゃぐちゃに掻き回している。
 もういいや―――そう思ったときには、意識は消えていた。

 だいたいこういった頭の中の状態で眠ると、ろくな夢を見ない。うなされながら飛び起きた時には汗だくで、何か凄く嫌な夢を見たというだけで記憶が残っていない。
「はぁ……はぁ、ふぅ。気持ち悪い」
 外はとっくに日が暮れて真ん丸い月が空を照らしている。また寝ようにも汗が気持ち悪いので、汗でジメジメした服に風を通すためと気分転換に外へ出ることにした。
 とりあず一番近い非常口から出ようかと考えたが、建物の裏手にある宿舎の方へ出ても風通しは悪い。そのため滑走路まで向かい滑走路整備員のために作られた出入り口から外へと出ると、扉を開けた瞬間ふいた風が心地良い。
 前にも何回か夜中にここへ来たことがある。前は他の基地へ飛ばされるかもしれないとかで、その前は大スランプにおちいった時だったか。そして前も大きく明るい月が出ていたような記憶がある。
 煙草をくわえジッポーで火をつけ、肺にあまり入れずに吐き出す。こういうときにしかめったに吸わないが、煙草はふかしているだけで落ち着ける。
 しばらく月と煙草を楽しんでいたが、ふいに煙草が口元から消えた。落したのかと下を見たが下に落してはおらず、トンと肩に置かれた手で消えた理由がわかった。手が置かれた方向を見ると部隊長が僕から取った煙草を持っていた。
「煙草、あまり吸わない方が健康に良いぞ」
「……知ってたんですか? 僕が落ち込んだときにここへ来るって」
 僕がそう言うと、困ったような表情で僕から取った煙草をふかした。思わずその横顔に心臓が高鳴り顔が赤くなるのを感じて俯く。角刈り頭で顔の彫りが深く、月の逆光で薄く見えるその表情をまたおずおずと覗いた時、ふいに目が合った。
 一人の女として、僕は、いや私はこの人にずいぶん前から惚れてしまっていた……のかもしれない。
「どうした? 俺の顔に何かついてるか?」
 深井中尉は煙草を口から離して、私との顔の距離をいっきに縮めた。ずいぶんその距離は近く、息がかかるほど近い位置で止まっている。さらに耳まで顔が赤くなるのが自分でもわかり身をすくめた。
「俺が気づかないとでも思ったのか? まな板で声のトーンを抑えてるからばれないと思ってたんだろう? だが会った時に直感でわかったよ、大下三咲(サンサキ)二等兵、いや、ミサキ二等兵」
 体中が熱くて火照り、どうすればいいか自分でも分からない状況が続きすぎて頭が変になりそうになりはじめたときに、ようやく深井中尉は顔を離してくれた。
「どうするか、迷ってるんだろう? お前は……どうしたいんだ?」
 手で持っていた煙草をくわえてまた吸っている。
「正直、わかりません。でも、昔からずっと憧れてきた撮影チームなんです。でも……」
 ため息をつきながら、背を壁に預けてするすると体育座りで丸くなる。少し肌寒さの残る季節だけあって外は冷え込む。
「私には、私のパートナーには、やっぱり深井中尉しかいないって、そう思うんです。向こうのチームに行っても、たぶんそれ以上のパートナーを見つけられない気がして……だから、今みたいな良い写真を撮れなくなるんじゃないかって。……すごく、怖いんです」
 異性としての深井中尉を見る前に、部隊長としての深井中尉を私は考えていた。新しい場所への期待と不安、もちろん憧れていたチームに行きたくないわけでないのに、いざとなると不安でしかたなく怖くなる。そうすると、今のまま、パートナーである深井中尉のままでここに留まった方がいいのではと思ってしまう。
「新しい場所に行くっていうのは、だいたいそんなもんだ。期待と不安を胸にみんな新しい場所へ行ったもんだ……。そうだな、実を言うと、俺もここへ配属されてから何回も移動の話をもらった。もちろん良い話や悪い話もあったが、全部断ってきたんだ。なんでだと思う?」
 吸っていた煙草を捨てて足で揉み消し、するすると私の隣であぐらをかいて座ってから顔を見る。その顔は冗談で聞いているようには思えない表情だった。
「怖かったから、ですか?」
「自分のおかれている状況から考えたらわかるな?。そう、俺は今のままでいいんだって自分に言い聞かせて、不安や怖さを和らげる。どうしようって悩む前に、それを先にしちまったからまだここにいるんだ」
 実力はエースパイロットに限りなく近いのに、なぜ偵察機乗りでいるのか。基地の全員が疑問に思っていることが、ようやく今なんとなくわかった気がする。
「でも……! 私は深井さんのことが」
「止めとけ。歳の差十は普通でもしんどいが、戦場じゃなおさらだ。それに戦争に愛を持ち込むなよ……周りの人間を殺すことになる」
 そこから、長い長い沈黙の後、ふっと空を見上げた深井さんが白い息を吐きながら呟くように言った。
「空を飛び始めて十年ほどたつが、同じ空を飛ぶ人間をこれほどに思ったことは無い。だからこそお前には、俺の後にはついてきてほしくないんだ」
 その言葉を言い残して、この場から去ろうと腰を上げた深井さんの服のすそを私は無意識に引っ張っていた。行動を起こせる時はおそらく今しかないと、心の奥で誰かが叫んだ気がした。
「もうちょっとだけ、話しませんか?」

 昨日の夜からフワフワしていた意識がようやく地に足を着けたとき、もう一人の自分である僕がどこからか帰ってきた。
 女でありどちらかというと男っ気のある性格の自分にとって、深井中尉は部隊長としての、パートナーとしての深井中尉であって、異性としての彼を見ているのはもう一人の純粋な女としての自分だ。
「頭痛い……」
 自分の意思がぶれている時はいつも頭が痛くなってしまう。頭を抱えつつとりあえず服を着てから部屋を出てると、開けた扉で何かをぶつけた感覚があった。
「あ、すいません!」
 慌てて扉を自分は外に出ながら閉めて確認すると、痛そうに鼻を押さえている見覚えの無い人がうずくまっていた。見るかぎり女性で、日ごろ僕達の着ている隊員服とは少し違った服を着ている。
「ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
 近くに駆け寄って顔を覗き込むと、鼻を赤くし笑いながら、
「大丈夫大丈夫。大下二等兵っていう人を探してるんだけど、あなた知らない?」
と言って立ち上がった。あなたの目の前にその探している人がいるのだが、全く気づく様子は無い。
「その人、カメラマンですよね?」
 この人にわざと教えないことにして、すこし遊んでみることにした。
「ええ。私、スナップの人間なんだけど……今度来るかもしれない新人さんを見に来たのよ」
 どうりで隊員服が少し違うわけだと、ばれないようにするためリアクションをせずに流して、にっこり笑って応対を続ける。
「それはそれは、ご苦労様です。今なら、おそらく近くにいると思いますよ」
「え? 本当? じゃああなた、大下二等兵のところへ案内してくれないかしら?」
 そう言いつつ、お願いと言わんばかりに拝むように手を合わせて頭を下げられた。なにかここまでされると逆に申し訳なくなってきた。
「……わかりました。大下二等兵は凄く近いですよ、すぐ会えます。ここにいますから」
 僕が言った意味を少し理解できなかったのか、首をかしげて目をまじまじと合わせてくる。その反応が妙に恐かったのだが、やってしまったものは仕方が無い。
「まさか、あなたがその大下二等兵?」
「はい。はじめまして、僕があなたの探していた大下二等兵です」
 またにっこりと笑みを浮かべて答えると、その女の人は涙を流しながらお腹を抱えて笑い始めた。先ほどまでの表情からは想像できなかった光景に目を丸くしてしまう。しかし結果的にとっつかまれるようなことにはならなかったので、まだましと言えるだろう。
「アハハハッ! 大下君面白いね。はじめまして、水口奈々といいます。ちなみに階級は軍曹で、あなたよりも四段階上になるけれど……気にせずにどんどん話しかけてちょうだいね」
 身長が昔から小さいのが原因でよく頭を撫でられたが、水口軍曹は撫でたうえにぐしゃぐしゃと髪を掻き乱された。その後に手を差し出されて、
「よろしく」
握手を求められ、断るというのは社会の上下関係上よくないので握手に応じる。手は身長のイメージよりもけっこう小さかった。小さく見積もっても百八十センチ前後はありそうな身長だったのだが。
「じゃあ、あなたの撮った写真見せてくれる?」
 昔撮った写真は没から完璧なものまで部屋においてあるので、先ほど出たばかりの自分の部屋へと案内する。別に小ジャレたわけでも無い部屋だが、僕と私という顔をもつ僕にとっては色気に目覚める事も無い。
「このアルバムにだいたい収まってます。あ、開くのが重かったらベットにでも座ってくれてかまいませんから。コーヒーいりますか?」
 サイフォンからコーヒーを用意してから、作業用の机にある本棚から一冊ぶ厚いアルバムを取り水口軍曹に渡す。
「ありがと。ミルクももらえる?」
 アルバムをもらうとすぐに開き、その後少し重いと感じたのかベットへ座る。足を組んでその上にアルバムを置いて見ている姿は、スレンダーでどこかモデルのような雰囲気を感じさせた。ロングヘアの茶髪に黒く透き通るような目はかなり綺麗だ。
 コーヒーを二つ淹れて一方を渡し、もう片方は自分で飲む。
「へぇー、良い画撮るのね。どおりで部隊長も欲しいわけだ……大下君?」
「はい?」
 コーヒーを飲もうと口をカップにつけたとき、ふいに呼ばれたので振り返ると、コーヒーカップを差し出している状態で笑う水口軍曹が間近に見えた。
「ミルク」

 しばらくの間僕はコーヒーだけを堪能し、軍曹はというと堪能してくれたかは定かではないもののアルバムとコーヒーで時間を潰してくれた。そろそろアルバムも最後へと近づいたころ、静かな空間に扉をノックする音が響いた。
「誰かしら?」
「あ、僕が出ます」
 扉を開けると、深井中尉がヘルメットをかぶって立っていた。一日ずつ朝と夕方でずれている偵察任務の時間だが、どうやら昨日が夕方からだったので今日は朝から出るらしい。
 深井中尉を見つけた水口軍曹はすぐに敬礼した。
「第01(ゼロイチ)特殊撮影部隊所属、水口奈々軍曹であります。第八航空師団偵察部隊所属の深井翼中尉ですよね? 噂はかねがねお聞きしています」
 きっちりとは止めていなかったパイロットヘルメットを脱いで、中尉も敬礼する。僕だけしないというのも妙で、一番この場で階級の低い僕が最初にしなければならなかったことに気づいて慌てて敬礼する。
「スナップの人か。大下二等兵の下見……といったところかな?」
「そういったところです。しかし先ほどは彼に一本やられましたよ」
 軍曹はそう言いつつ苦笑い、その中で彼という言葉に反応しかけた中尉を目で合図を送り止める。別に意味があるわけでもないが、どうせだからそのままでもかまわないかという気がしたのだ。
「サンサキ二等兵は優秀だよ。まあ、たまに不器用だがな」
「不器用って、そんなことは―――」
 僕の言葉を掻き消すように、緊急発進のスクランブルが鳴り響いた。
 ヘルメットをかぶりなおして出て行く中尉の後に着いて行こうと走り出すと、
「お前は来るな! ……良いタイミングだな」
予想外に怒鳴られた。理由がわからず呆然としばらくの間立ち尽くしていると、後から軍曹の声が聞こえた。
「司令室に行く。つれていって」
「わかりました」
 先導して司令室まで案内し、そのまま二人で管制塔にある司令室の端で状況を見守る。昨日襲撃があった時と同じ方位で数は八と三機増えて、しかも発見が遅れたのかけっこう近い。こちらから飛び立ったのはそれに対して六機で、僕はその中から深井中尉の乗る機を探していた。 
「あれ? 中尉が偵察機に乗ってない」
 レーダーに表示されているのは六つの味方機で、その中に一機も偵察機を示すアイコンが無い。全て通常の戦闘機でその一つに深井と名前が表示された機体があった。舞う乙女という愛称をもつ舞女(まいめ)が主力の戦闘機で、飛び立った全ての機体が女性のような細身なフォルムをしている。
「珍しい……何かあるのかしら?」
 管制室の中では若い方のオペレータの一人が呟き、彼女の横にいた先輩オペレータに目で制されている。
「外に行こう。カメラもって、望遠なら届くはず」
 いきなり踵を返して軍曹が司令室から出て行くのを追いかけた。自分の部屋へ一度行って自分のカメラをひったくって、そのとき望遠レンズを付けた状態で直しそこねていたのが逆に時間の短縮になった。
「構図を広めに撮れたら良い。地上から撮る人間もいるってこと、知っといた方が良いよ」
 
 おそらく生まれて初めて地上から戦闘機を撮るためまるで上手く撮れず、うんうん首を傾げうなりながらシャッターを切る中で、水口軍曹はというと一人黙々と撮り続けていた。もちろん首を傾げることも無く自信に満ちた表情で、カメラを白い飛行機雲がいくつも重なり合っている空へと向けている。
「そろそろ、帰ってくるわね」
 言われてみるとたしかに最初とは違って何機か少ない気がした。ここからではどちらが敵で味方かわからないけれど。
 軍曹の言ったとおりそれほど時間をかけずに帰ってきた味方機が着陸態勢に入り始めた。これも撮ろうとするも上手く撮れない。しかしそれよりも、軍曹も僕もなにか不自然なことに気がついた。
「一機たりない……」
 僕のそばで心配そう呟き、管制塔と隣接している建物へと戻っていく。もともと六機いたはずの味方機が五機しか確認できなかったのだ。気持ち早歩きの状態で管制室へと足を運ぶ。もしかすると深井中尉かもしれないという不安があった。
 管制室の扉を開けると、場が神妙な空気に包まれていた。着陸の指示を出す管制官以外天を仰いだり煙草を吸ったりと、いつもならめったに見ない光景と重苦しい雰囲気がただよっている。
「一機、失ったのですか?」
「ああ。戦闘中行方不明(MIA)だ。パイロットは深井中尉、エンジントラブルという無線のあとレーダーから消えた」
 スーっと静かに背筋を冷たい何かが流れ、血の気が引いていく。静けさの増すこの管制室の中で、人が倒れる音がするまでそう時間はかからなかっただろうに思う。自分はそれを確認できなかったのだが。

 私がやっと、あの人が手に届きそうな場所までこれたというのに、あの人はどこかへと消え去ってしまった。もう二度と会えないと思ってしまうと胸がもの凄く痛み、目じりが熱くなる。私自身異性として憧れを抱き、私を写真家として育て上げてくれたあの人―――

「起きた?」
 視界が真っ白になり、眩しい光が自分を照らしていることに気づいた。目の前に水口さんの顔があって、心配そうな表情で覗き込んでいる。
「寝ながら泣いてたし、やっぱり深井中尉と関係あったんでしょ? 同性愛っていうのは私わからないけれど、憧れの対象としてあの人ほど完璧なものは無いと思うよ」
 私が私の中に二人いるというのはこの人は知らない。だからもう一人の私の印象が強いからいわいるゲイと認識されているみたいで、女である私からすれば少しいただけないことではあるが、どうやら私の中の私は隠したいらしいので黙っておく。
「いきなり倒れちゃって、心配した……」
 そう言いつつ、私のおでこに乗せられた濡れタオルを取って水で絞りなおしにいく。昔からよく貧血や殴られたりで意識が飛ぶことがあったが、自分が精神的なショックで倒れるとは思わなかった。
「最後の通信があった地点はここから十キロの海上、近いから何度か救助隊が行ったんだけど、それが、不思議な事に人どころか機体の破片も墜ちた形跡も見つからないの。脱出(ベイルアウト)した時のパラシュートも無い」
 機体の信号がレーダーから消えた(ロスト)しただけで、墜ちたというわけではないことが水口さんからの話からわかる。脱出しなければパラシュートが無いのは当たり前だが、機体の破片や重油の跡など何かしら墜ちた跡は残るはずだが。
 海が荒れているとは聞いてはいないものの、引っかかる点が多い。
「とりあえず、私はそんなに長居できない。で―――」
 上半身を起こしてベットであぐらをかいた私に詰め寄ってきて、胸にポンと手をそえられた。それだけならよかったものの、その手にはMK−23西側諸国御用達の拳銃が握られ、銃口は私の顎を向いている。
「スナップ・シューターの方針は、空であれ陸であれ腕の立つ者をスカウトする事。目的は、早い話が武器商人も含めた傭兵部隊を統括する組織……特殊写真部隊は表の顔で、裏ではこの戦争の中で暗躍する組織。あなたみたいにカメラマンや、偵察を一度でもしたことがある人間で能力が達すればそれを理由にスカウトする。なければ捏造するだけ。で、調べさせてもらったわ、あなたの過去。驚いたわよ、妙に目が良いと思ったら、少女時代に山岳兵のスナイパーとして一分隊全員殺ってるってね。尊敬するわー……まあ、私は学生時代に反政府ゲリラにいて警察守備隊の頭をぶち抜いてるけど」
 にまっと笑いながら話す彼女に人の気配は無い。まるで人の皮をかぶった狼と話しているような気持ちになる。しかし彼女に言われたことは正しい。山岳兵にいたし、目も他の人よりもかなり良いと思う。
 小学生の時に故郷丸ごと焼け野原にされて以来文字やテレビなど目を悪くするものに触れず、山岳兵に拾われてからは双眼鏡を使って見張りをしていたのが原因でか視力はずば抜けた。もともとの特性もあったかもしれない。
 なぜこうも混沌とした会話になるのかは、この国は何十年もの間戦争をやめず、紛争を繰り返すことに原因がある。
 国の長が定まらずに混沌とした状況が延々と続き、政府は何もできない状態の中で小競り合いが続いている。今から何世紀も前に同じような国家状況だったらしいが、知識は小学校卒業までしか応用的なものは習っていない頭なのでよくは知らない。
 山岳兵にいたころは教師だった人もいていろいろと教わったが、今は刀や鎧も着ないだけであのころとなんら変わらないとよく言っていた。ただ銃や防弾と使うものが変わっただけだと。
「それで、話はもう聞いていると思うけど。スナップ・シューターはあなたをスカウトする、異論は認めないわ……今日の夜にここをたつから、用意をしてちょうだい」
 もとは一週間と言われていた期限があと数時間ということになると焦るが、気持ち的なものはずいぶん簡単に決まる。もう深井中尉はここにいないのだ。ならばなんの理由でここにいる必要があるのか。
 山岳兵の皆も深井中尉も、どうして私の前から消えていってしまうのか。皆大好きだったのに、もっと一緒にいたかったのに。
 思えば思うほど涙があふれ、止まらなくなる。気づけば銃はどこかへと消え、水口さんが私を抱いていた。

 数ヵ月後―――

 しばらくのあいだ新しい場所に慣れるのに苦労したが、今ではそれほど苦労はしない。それどころか想像以上に先輩方がラフな性格だったため思ったよりも馴染めたのが早かった。
 あの人のことを今でもたまに思い出すが、それは偵察機なんかを見ると自然と思い出すぐらいでそれほど追いかけているわけでもない。しかしもちろん忘れて振り切ったと言えば嘘になるが。
 ここへ来てすぐくらいにもらったスナイパーライフルSV-98を伏せた状態で構え、狙いを正確にしていく。ここでの数ミリのズレは到達した時に大きくなってしまう。今思えば小さいころによく跳ね上がるような発砲の衝撃に耐えたなと自分ながら感心する。
 射撃場にバーンと乾いた銃声が響き、ここからでは点にしか見えないターゲットに穴が開く。ざっと九百メートルほど先に置かれた標的はスコープを使っても小さい。
「明日、また私たちの部隊でいろいろと仕事してもらうから。あとカメラの腕も磨いておかないと大変よー、あくまでもあなたは新入りカメラマンく……なんだから」
 言いかけてクスクス笑う軍曹を尻目に二発目を装填する。こういう作業は集中しないと上手くできないのが普通なのだが、ここの先輩方はその普通を覆す人が多い。例えばラジオを聴きながら練習するような人もいたりする。本人いわくどんな状況下でも撃てる練習、だそうだが。
「近距離なら、私もヘッドショットくらいかませるんだけど」
 軍曹が愛用するUZI小型軽機関銃は片手で撃とうと思えば撃てなくもないサブマシンガンで、もちろん彼女は片手で撃てる。そしてさらに近距離戦において拳銃とナイフにすら生半可な人間相手だと圧勝できる能力を持つ。
「あ、そうそう、今日からまた新人さんが増えるから。滑走路までお迎えに行くといいよ。あなたのよく知る人だと思う」
 よく知る人と言われ、不思議に思って顔を上げる。しかし目が合ったのは軍曹でなくその愛用するサブマシンガンだった。
「装填したら、撃たなきゃ。ね?」
 この人はよく人に銃口を向けるが、味方なのだから勘弁してほしい。言うだけ無駄な事は初めて会ったときからだいたいわかってはいたけれど。
 入れた弾を撃ち、とりあえずすぐに撤収する。
 延々真夏のような島に本部がなぜあるのかと聞きたくなることが多々ある。どうにも暑いのには慣れない。ギラギラ太陽が地上を焼く中、練習後によく浴びるシャワーを我慢して滑走路へと行く。
 その途中、いろいろと考えた。知り合いの中でここへ呼ばれる話の上がっていた人がいたのか。掲示板に有望な新入り予備軍を張り出すという風習がここにはあるが、それの中に私の知る人間はいなかった気がする。昔の仲間は今はもうこの世にはいないし、顔を合わせただけの軍人なら軍曹はああは言わないだろう。実際今までに何度か戦闘は経験したが、会った軍人でここへスカウトされた人間はほとんどいない。
 射撃場の裏手にある滑走路に着くと、すでに一機着陸態勢に入っていた。一度ぐるりと島の周りを旋回しながら着陸軸を合わせているのがわかる。大きな滑走路が一本しかないここの滑走路は一方通行のため回り込む必要がある。
「舞女だ……誰だろう?」
 脚を出して滑走路に着陸し疾走していく機体を追いかけ、おそらく機体を入れにくるであろう場所の格納庫で待っておく。舞女のカラーリングは通常の機体となんら変わらず、部隊エンブレムも付いていない機体で、個人を特定できるようなものは無かった。
 私が待つ格納庫の手前で機体を止め、コックピットのキャノピーがスライドして開く。パイロットヘルメットはバインダーを下ろしていて顔がわからない。
 そのままこちらへとすたすた歩いてくるパイロット。普通なら降りた時に脱いでおくヘルメットなのに、なぜか私の目の前まで付けたままで来た。
 最初はわからないと思っていたのが、だんたんと見ているうちにわかってきた気がした。大きな体格、身長差がちょうど良く、少し生えた無精ひげ、どこかでこの人と、出会ったことがある。
 まさかと自分の判断を否定する気持ちがあったのを、それを覆し確信へと変えた。私の目の前には今、憧れだった、異性を初めて好きになった、ものすごく大切なあの人がいた。
「久しぶりだな。少しは背ぇ伸びたか?」
 ヘルメットを脱ぎ、申し訳ないのと嬉しさを混ぜたように彼は笑う。

 私は何も考えずに、ただ彼の胸へと飛び込んだ―――
 

   
  
 
   

   

後書き

 ひょんな友人との会話から生まれた主人公、大下君です。サンサキでありミサキであり、身長は160ほど、ざっと二十歳くらいです。
 相変わらず「可愛い子には武器を持たせよ」な自分なので・・・・・・いや、面目ない。
 なにやら続編の書けそうな空気で終わりましたが、書くつもりはございません。「猫」でしくじったので。

 では、失礼いたしました。

この小説について

タイトル 空撮り
初版 2010年6月3日
改訂 2010年6月14日
小説ID 3936
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コメント (2)

★エーテル コメントのみ 2011年1月22日 6時34分11秒
ずしりと重たく
何か軍事小説としては存在感があっても
SFとしての要素はあまり感じませんでした

力の入った作風でいいと思いますが

やや ついて行きにくさも感じました
春燕 コメントのみ 2011年1月22日 19時11分36秒
まさかこれにコメントが付いていたとは思わず、返信遅れてすいません。
エーテルさん、はじめまして。春燕と申します。

”ずしりと重たい”とのことで、もしかするとかなり重すぎた風があったかもしれません。重たいながらも、それなりに息抜きも必要ですよね……思案するとき気をつけます。

”SFとしての要素があまり感じられない”と言われて、すいません、反論不能です(汗
気持ちSFっぽく、舞女の形状は近未来的だったりしたのですが、SFというには無理がありました。

ついていきにくいとは、かなり文体を見直す必要がありそうです。ご指摘くださってありがとうございます。

コメント、ありがとうございました。

では。
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