なっちゃんとシーホー

≪なっちゃんとシーホー≫

なっちゃんは
いつものように
うみべを おさんぽしていました

なっちゃんは
きれいな かいがらを あつめているのです

きょうも
かわいい ピンクのかいがらを 
ポケットにいれて あるいていました


すると……


なみのあいだから
うまが いっとう あらわれたのです

そのうまは みずいろで
はねが はえていて
しっぽと たてがみが
あわ で できていました

「こんにちは あなたはだあれ」

なっちゃんが こえをかけると
うまは おどろいて いいました

「きみには ぼくがみえるの」
「みえるわよ みずいろの おうまさんでしょう」
「ぼく シーホー きみは」
「わたしは なっちゃん」

シーホーは ゆっくり なみのうえを
あるいてきました

「シーホーは なにをしているの」

なっちゃんがきくと
シーホーは こまったかおで いいました

「ぼく おとしものを しちゃったんだ」
「なにを おとしたの」
「こころのかがみ さ」

シーホーは 
みずいろのひづめで なみを けとばしながら
なっちゃんを みつめました

「こころのかがみって なあに」
「みるものの こころを うつくしくする まほうのかがみだよ」

こまったかおの シーホーをみて
なっちゃんは かわいそうに おもいました

「わたしも いっしょに さがしてあげる」
「ほんとう でも うみべは もう さがしおわったから」

シーホーは いいました

「ねえ なっちゃん ぼくの せなかにのって」 

なっちゃんは 
みずいろの シーホーの せなかに のりました

すこし つめたいけれど
ふわふわして とても やさしい においがしました

「しっかり つかまってね」

なっちゃんは うなずきながら
シーホーの あわ で できた たてがみを
しっかり つかみました


シーホーは
はねを おおきく ひろげると
げんきよく うみのなかへ とびこんで いきました

なっちゃんは どきどきして 
すこし こわかったので
ぎゅっと めを つぶっていました

みみの すぐそばで あわが ぶくぶく いいました

そうっと めを あけると
そこは もう うみのなかでした

なんだか あおいそらを
シーホーにのって とんでいるみたいです

「わあ きれい」

うえをみると 
うみの うえのほうから
おひさまの ひかりが あめ みたいに
ふってきていました

きらきら きらきら
まぶしくて
なっちゃんは うれしくなりました

でも すぐに シーホーの 
おとしものを おもいだして

なっちゃんは こんどは
うみの したのほうを みおろしました

「かがみは どこかしら」
「どこだろうねえ」

なっちゃんと シーホーは
うみのなかを どんどん とんでいきます

すこし いくと
いわのうえに たこさんが いました

「たこさん なにしてるの」

なっちゃんが きくと
たこさんは いいました

「あしに かいそうが からまって うごけないんだ」
「たすけてあげる」

なっちゃんは シーホーから とびおりると
たこさんの あしに からまった かいそうを
きってあげました

「ありがとう おれいに このかいがらを あげるよ」
「わあ ありがとう」
「うみの ふかいところにしか ない かいがらなんだよ」

たこさんが くれた かいがらは
なっちゃんが いままで みたこともないくらい
とても きれいな かいがらでした

それを ポケットに いれて
なっちゃんと シーホーは また
こころのかがみ を さがしました

「ないわねえ かがみ」
「ないねえ かがみ」



なっちゃんが うみの むこうをみると

なんだか 
おおきな まっくろいものが 
こっちに くるのが みえました

なっちゃんは どきどき しました

なんだろう おばけかな
なっちゃんは シーホーの たてがみを
ぎゅっと にぎりました

「どうしたの なっちゃん」
「シーホー あれは なあに」

くろい おおきなものは 
すぐ ちかくまで きていました

「くじらさんだよ」

シーホーは いいました

おおきな まっくろいものは
ゆっくり なっちゃんの そばまできました

ちいさな かわいい め が ついていました

「ほんとう くじらさんだわ」
「おや まあ うみのなかで おんなのこに あうなんて」

くじらさんは おどろいて いいました

「いったい なにを しているんだい」

なっちゃんと シーホーは いっしょに いいました

「こころのかがみ を さがしているの」
「そうなのかい じゃあ わたしも いっしょに さがしてあげるよ」
「ありがとう くじらさん」
「でも そのまえに わたしは はみがきを したいんだ」

くじらさんは いいました

「さっき たべた こえびが はのあいだに はさまってねえ」
「わたしも てつだって いい」

なっちゃんは
さんごの えだで できた はぶらしで
くじらさんの はみがきを てつだってあげました

くじらさんは すっかり いいきもちになって いいました

「おかげで すっきりしたよ おれいに この かいがらを あげようね」
「わあ ありがとう」
「とおい うみにしか ない かいがらなんだよ」

くじらさんが くれた かいがらは おおきくて
きらきら ひかっていました
ポケットに はいらないので
なっちゃんは
くじらさんの ひげを いっぽん もらって
かいがらの あなに とおすと くびに かけておきました

くじらさんが うみの なかまを たくさん よんでくれたので
みんなで こころのかがみ を さがすことに しました

なっちゃんも シーホーと いっしょに
いわの あいだに かおを つっこんだり
ちかくを とおった かにさんや うみうしさん に 
きいてみたり しました



いつのまにか
あおかった うみが だいだいいろ に かわっていました

きっと うみの うえでは
もうすぐ よるに なるのでしょう

なっちゃんは おうちで まっている
おかあさんを おもいだしました

あんまり おそくなると 
おかあさんは なっちゃんに いいます

「おひさまといっしょに うみのむこうへ いってしまったのか と おもって しんぱいしたのよ」


シーホーの たいせつな こころのかがみ は 
まだ みつかりません

なっちゃんが
だいだいいろ の うみのうえを みあげていると
シーホーが ちかよってきて
すこし さみしそうに いいました

「もう かえる じかんだね」
「そうなの」

なっちゃんも ちいさなこえで いいました

「いいよ うみの うえまで おくるよ」
「ごめんね シーホー」
「ううん きょうは ありがとう」

なっちゃんは きたときと おなじように
シーホーの せなかに のりました

シーホーは はねを おおきく ひろげて 
ゆっくり とびたちました

うみの なかまたちや かいそうや いわが 
どんどん ちいさく なっていきます

なっちゃんの め から 
なみだが ひとつぶ こぼれて おちました

なみだの つぶは なっちゃんの ほほをつたって
むねに コロンと おちて
くじらさんから もらった 
かいがらの うえで きえました


みみの すぐそばで あわの おとがしました

うみの うえに ついたのです
ゆうやけの なかで
みずいろの シーホーが だいだいいろ に みえました

なっちゃんが
シーホーに おわかれを いおうとしたとき
シーホーは きゅうに うれしそうに わらって
げんきに いいました

「なっちゃん あったよ こころのかがみ」
「えっ どこ」

びっくりした なっちゃんが 
め を まんまるに していると

シーホーの すこし つめたい 
でも とても やさしい かおが ちかづいて
なっちゃんの むねを そっと おしました

「ほら ここに」

くじらさんから もらった 
おおきな かいがらの ペンダントが
なっちゃんの なみだの まほうで
きらきら ひかる かがみに なっていました

「ほんとうだわ」

なっちゃんは ペンダントを はずして
シーホーに わたそうと しました

シーホーは くびを ふると いいました

「こころのかがみ は なっちゃんみたいな やさしい こどもが もつものなんだ」

シーホーは 
なっちゃんの ほほ に おわかれの キスをして

「あげるよ」

と いいました




「なっちゃん ここに いたの」

おかあさんの こえが しました

なっちゃんは はまなすの  
おはなの なかで ねむって いたのです

「こんなところで ねていたら かぜを ひくわよ」
「ゆめ だったのかしら」

なっちゃんは すこし かなしく おもいました

「あら すてきな かいがらね」

おかあさんが いいました

「なっちゃんが みつけてきたの」
「これはね くじらさんに もらったの」

ゆめ じゃ なかったんだ


なっちゃんは
おかあさんと てをつないで おうちに かえりました


≪おしまい≫




後書き

初投稿作品です。

大人の方には読みにくいかな、すみません。
昔、我が子に書いたものです。
指で辿りながら、言葉の意味は、親がその都度教えて、
それはそれは幸せな時間でした。
……現在その子は、高校生になりました。

この小説について

タイトル なっちゃんとシーホー
初版 2010年7月18日
改訂 2010年7月18日
小説ID 3976
閲覧数 1255
合計★ 18
アクアビットの写真
ぬし
作家名 ★アクアビット
作家ID 666
投稿数 29
★の数 67
活動度 7901
継続の大切さと恐ろしさを実感する今日この頃

コメント (10)

★GOLDY 2010年7月18日 13時49分43秒
すべてひらがなで書かれていて、スペースも程良くあったので、とっても読みやすかったです。

一度、親戚の子供に童話を書こうと決心しましたが、結局アイディアが浮かばず、未だ未完成です(涙)

また投稿してください。

アクアビットさん。
素敵なお名前だと思います★
★丘 圭介 2010年7月18日 20時04分18秒
はじめまして、丘です。
宮沢賢治を彷彿とさせる小説ですね。僕はこのような文体は好きです。

読み終えたあと、心がさわやかになりました。僕は高校生で、このやさしい物語は大人になりかけている僕に子供の気持ちを思い出させてくれたのでしょうか。

もっとこのような小説を書いてくださると嬉しいですね。
では。
★佐藤みつる 2010年7月18日 20時48分27秒
素晴らしい暖かさですね。
優しさがまるで海と同じくらい深く広いものとして伝わってきました。
可愛らしくって読みやすいだけでなく、話の流れも綺麗でお上手だなぁと思いました。
とっても良かったです!
★アクアビット コメントのみ 2010年7月18日 23時49分22秒
早速のコメントみなさま本当にありがとうございました!

GOLDYさん>>
童話のコツはストレートな表現かな、と考えています。
意識して、まっすぐ、まっすぐ。
その子をじっと観察して、何が好きなのか発見すると
ネタになるかも。
……生意気言いました、ごめんなさい。

丘 圭介さん>>
高校生は、人生で一番素敵な時間だと、記憶しています。
辛かったり悲しかったり、腹が立ったり……
感性が研ぎ澄まされる時期です。
すべてを正面から受け止めて、人生の糧にしてください。
……説教くさいかな。

佐藤みつるさん>>
優しいお言葉に心から安堵しています。
初投稿で、辛口の批評がのっけから来ていたら
確実に凹んでいました。
マジで、ドッキドキだったので……
基本後ろ向きで、小心者なんですよ。
★青嵐 2010年7月19日 21時49分12秒

はじめまして。
とても素敵なお話だと思いました。
お話だけでもすごく暖かい感じがして好きなのですが、後書きをみて、アクアビットさんのお子さんへの愛情を感じてもっと好きになりました。
なんだか大切なものをみつけたような、そんな感じです。
もっと広い世界のいろいろな人たちに読んでもらいたい物語だなと思いました。
まとまらない感想ですみません
私も今高校生なのですが、私の親も、話を作らなかったとしても、そういう想いで育ててくれたのかなと思うと
心がぎゅっとして感謝の気持ちを感じました。
ありがとうございました。
★アクアビット コメントのみ 2010年7月19日 23時01分43秒
青嵐さん>>
嬉しいですね〜、私のほうこそ、ありがとう!です。
私の好きな言葉を、優しい青嵐さんに贈りたくなりました。
「私にできることは、小さなこと。でも、それを感謝してできたら、きっと大きなことだ」
ホシノ・トミヒロさんという方が書いたものです。

あなたの将来が、本当に楽しみです。
……親かっ!?
★せんべい コメントのみ 2010年7月20日 18時21分29秒


童話は、たいがい絵本として出版されていると思いますが、小説をわざわざひらがなで書き上げる理由としてはちょっと薄いかなと思いました。
親が子供に読んであげる。その光景は想像するだけで美しいものですが、投稿したとなると話は別になると思います。
それをそのまま投稿するよりも、子供に読んであげたという話を文章に起こした方が個人的に読みやすかったと思います。
子供の話を知っているならば読めると思いますけども、あとがきに書かれているので物語を読み終えた後にその話を聞かされるとなると、初めて目を通したときには「なんで平仮名なんだろう?」という疑問が残ると思います。というか、僕自身の中に残りました。


なんだか回りくどくなりましたが、端的に僕が言いたいのは、物語の裏にあるリアルの話を売りにするのではなく、本体で勝負してほしかったなぁ、と。


あれですね。
こういう心の濁った僕のような人間には響かなかっただけなのかもしれません。
他のコメントをされている高校生たちのように、素直な高校生でなくてすみません←
こういう人間が将来社会のゴミに(ry

………次回、また読ませていただきますw
★アクアビット コメントのみ 2010年7月20日 20時51分10秒
せんべいさん>>
文字の視覚的効果、を私は重要視しています。
例えば……男性の一人称。
「俺に任せろ!」
この人は、本当に頼れそうな年上の感じ。
「おれに任せろ!」
ちょっと頼りなく年下的な。
「オレに任せろ!」
年齢や性格が違って見えませんか?
三番目に至っては、ちょっとやんちゃで、
ホントに任せて大丈夫かな?とか思ったり。

……そんな風に考えるの、私だけかな。
違う話も用意していますので、また来てくださいね。

弓射り 2010年7月24日 20時25分35秒
好評な小説なので、あえてコメントするまい、と思っていたのですが
我慢できずに読んだら、読めて良かったと素直に思いました。

あえてひらがなにするやり方は、自分も昔やったことがあります。表現手段としてはアリだと思います、個人的には。

過多に子供向けでなく、ベタベタしすぎない爽やかな作品でした。
なっちゃんの細かい仕草、子供向けにも関わらず「あわでできたたてがみ」等の世界観の作り込みも上手いなぁと。

僕の思い出の絵本といえば、「ごちゃまぜカメレオン」ですね(笑)
意外と面白かった絵本は記憶に残っているものですから、娘さんも覚えてらっしゃるかもしれません。
★アクアビット コメントのみ 2010年7月25日 7時56分13秒
弓射りさん>>
貴方からの星4つは特別感がありますね〜。
ありがとうございました。
「ごちゃまぜカメレオン」
娘に聞いたら、知っているとのことで。
私の、今夏の課題図書に決定です。
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