ひとりごと

自分で書いた(創り出した)小説の主人公が好きだ。


彼らが夢に出てきて、会話することがある。
「オレたち、この先どうなるの?」
まるで、恋人同士の会話だけど。
夢の中で私は冷や汗をかく。
「いやあ、それが。まだ決まってなくて」
しどろもどろ。
「俺たちの性格上、ああいう展開はないんじゃないか」
「ていうか、つまんねえ」
「あああ〜!スミマセン!」
平謝り。


現実世界で、私は人に頭を下げる機会を失っている。
周囲に対して虚勢を張り、常に威張る。
「アクアビットは、そういうひと」
長年かけて培った人物像はすっかり固定され、
素直に謝ると逆に怖がられる始末。
「何、気持ち悪い」
「なんか企んでるんでしょ」
「ごめんね、何か知らないけど先に謝っとくね」
えええ〜!?


その反動なのか、反省なのか。
夢の中の私は、いつも泣き虫で弱気だ。
「あのう、これからの展開なんですけど」
及び腰で、両手をすり合わせ、ハエの気分で。
「知らねえよ、枝葉広げすぎ」
「余分なところは、切ってもいいんじゃね」
「ああ、作者とか?」
「うわああ!ホントごめんなさい」


そうだ、このおっかない人たちを紹介しておこうかな。


まずは、アナザー・ワールドの主人公スコーピオ。
月の警備隊副隊長。
月といっても架空の世界なんですけどね。
鬼神と呼ばれた心優しい英雄を父に持ち、
自身は死神と畏敬される存在。
この人の何が怖いって、触れた相手の心を読んじゃうんで。
月への侵略に対しては、容赦ないです。
叩き潰します。
ついでに、作者の弱筆・遅筆に無言の圧力をかけてきます。
遠くに立ってるんです、彼が。
トレードマークの、革コート。
月の砂除けの重たいやつね。
あれがシルエットになっていて、表情とかは見えないのに、
おっかないんです。
「で?どうすんの」
って、言ってるんです、きっと。

ああ、いつの間にか丁寧語になっている。

次は、バトル・エンジェルズの神崎勇かな。
カイオウ高校の一年生(ダブり)。
私が高校生の時書いてたものを、直してる最中で。
ぱろしょに投稿するか思案中の学園物。
正式名称は「いさむ」だけど、「ユウ」って呼ばれてる。
こいつもおっかない、けど、作者より年下だしね。
すでに、子どもみたいなもんだしね。
キレやすく強情で、呼吸するみたいに簡単に喧嘩する。
守るもんなんか何もねえ、って気持ちだから、
見ているこっちがハラハラするような無茶をする。

って、そのハラハラ・シーンを私が書かなきゃならんのよ。
ユウ君、少しは自重してくれないかな。
「俺から喧嘩取ったら、何が残るのさ?」
「あんたは取り柄がいっぱいあるでしょ、ドラムとかバイクとか」
「でもさ、ひどいよな」
「え、何が」
「ドラム叩けないように腕折られるし、バイク炎上するし」
「あ、ちょ。ユウ君、それ以上はちょっと、ネタばれ……」
「はあ?何言ってんの、俺の紹介してるんだよね、今」
「まあ、そうですが」
「俺が世の中に出たら、どのくらいモテるかな」
何か、えらくワクワクして見えますが。
「ええ、作者の腕次第だと思います」
「おい、頑張れよ作者。サボってんじゃねえぞ」
うわ、急に、怖……。
目つき悪!

そういえば、神崎勇の前に岡崎竜也がいたな。
この「竜也」は、私が中学生の時に生み出したキャラクターで、
名字を変えていろんな短編に使われてる。
「造られた超能力者」という、今となっては使い古された設定。
その造られるシーンを(寝てる時の)夢に見て、書き始めたんだけど。
気持ち悪かったのは、彼が夢の中で受けた傷が、起きた私の身体についていたこと。
これは、実話。
右か左か、どっちか忘れた。
確か、左。
肩口に切り込みをいれられて、埋め込まれたカプセルで覚醒するって話だったんだけどね。
朝起きたら、肩が痛くて、指で確かめた先にミミズ腫れ。
いや、ぞっとしました。
怖すぎて、しばらく肉眼で確かめられなかったもんね。

竜也の話は完結していて、続編も書いてるんだけど。
大人になってからの話が巧く進まない。
「俺さ、思うんだけど」
「はい」
「作者、嫉妬してない」
「え、と。どなたに?」
嫌な汗が。
「真澄だよ、あんた俺と彼女がうまくいくと嫌なんだろ」
「そそそんな、ことないですよ」
しまった、確かこいつも超能力者、しかもエリート。
そうか、私はコレ系が好きだったのか。
「物語が止まる時ってさ」
竜也君、その微笑み可愛くて怖いです。
「はい」
「たいてい、俺と真澄の間に障害が入った後じゃねえ?」
「ううっ!」
心臓掴まれました、氷のような感覚です。


物語を書きたいと思う前、小学生の時。
私は「らお」という存在に出会っている。
低学年の時、私は少しの間、札幌に住んでいた。
家の近くに森林公園があって、私はよくそこへ遊びに出かけた。
学年途中で二度の転校。
友達が出来る暇はなく、私は独りで遊ぶことに慣れていた。

はっきりと「らお」だと名乗ったわけではない。
彼?彼女?は森で迷った私を助けてくれた。
小学二年生、小さな子供だった私。
大人には普通だったのかもしれない木々。
抱えきれない幹の太さ、見上げるとひっくり返りそうな高さ。
深い森だと感じるその中で、聞いたことのない鳴き声がした。

鳥の鳴き声。
スズメとか鶏とか、身近な鳥ではなく。
たぶん、梟か山鳩だったんじゃないかな。

幼い私は、姿の見えない鳥を追いかけた。
友達になりたかった。
「どこから来たの」
「内地の人だって」
「何で転校してきたの」
そんな事を聞かない、動物たちが好きだった。

「待って」
「どこ?」
梢を見上げて歩きながら、そう言った気がする。
気が付くと、舗装された公園の道がなくなっていた。
獣道みたいな、遊歩道からも逸れていた。
道の脇に張られた、目印のロープがない。
日が傾いて、森の中は次第に暗くなってくる。
すごく怖かった。
遊び慣れていたはずの森に、裏切られたような気がした。

鳥は、相変わらず姿を見せないで鳴き続ける。
枝から枝へ、ぴょんぴょん渡り歩いているようで、
飛び立つ羽根の音はしない。

帰ろう、と思った時はもう迷っていた。

泣いても仕方がないから、
私は黙って、来たであろう道を引き返してみた。
緑の木々が、黒っぽく色を変え始める。
小さなこぶしを握り締めて、前だけを見て、歩いた。

私はいったいどのくらいの敷地で迷ったんだろう。
同じところをぐるぐる回る、お間抜けさんだったのだろうか。
大人だったら、背伸びをすれば向こうが見えたのだろうか。

足が疲れ切って、心が折れそうだった。
子ども心に、涙を流すのだけは嫌だった。

「コッチダヨ」

そう聞こえたと、今でも信じている。
枯葉?緑の葉っぱ?
とにかく、木の葉を重ねた蓑虫みたいな服。
ぼさぼさの髪の毛。
足元ははだしで。

私と同じくらいか、少し大きいその人?は、
急に現れて、現れ方が中途半端で、半分向こうが透けていた。
性別も良く分からない。
だけど目が、優しかった。
牧場で見た、道産子の目みたいな。
泣いたように少し濡れた、長いまつげの。

何て名前なんだろう、誰なんだろう。
ついて行きながら、尋ねた気がする。
「らお」
私にはそう聞こえた。

間近で鳥の鳴き声がして、私はやっとその姿を見ることができた。
ちょっと太めの山鳩が、木の枝に止まって私を見下ろしていた。
背後で人の足音がして、私と山鳩は同時に驚く。
ジョギング中のおじさんが、肩からタオルを下げて走り過ぎていく。
舗装された道が、ロープの向こうに見えていた。
私はロープをまたぎ、お礼を言おうとして森を見た。
「らお」はいなかった。


関東に戻った私は、高学年の社会科で地理を学び、
北海道地図に、羅臼という地名を見つける。

中学生に上がって、私は山口県に転校した。
そこで「らお」との奇跡の再会があったけど。
それは、またいつか。

中学生になって、初めて書いた小説。
「羅宇‐ラオ‐物語」
羅宇は時の旅人。
人から生み出される黒いもの、憎悪とか嫉妬とかを
光の力で浄化する、といったお話だったかな。

不思議なことに、その原稿だけ、紛失しました。
これも実話ね。
友人Yに貸したところまでは覚えてるんだ。
その後、私はまた急に関東に戻ることになってね。
引っ越してから、原稿がないって気付いたんだ。
手紙を書いて、探してもらってね。
返事は「無い、返したはず」だった。

一番大切なお話を失くすわけがないでしょう。
その他の学園物とかは荷物に入ってたし。
そんなわけで、一番不思議な存在「羅宇」。
これも何度か書き直しては、没になってるなあ。
いつか、世に出したいですね。

後書き

お付き合いいただき、ありがとうございます。
感想いただけると、嬉しいです。

この小説について

タイトル ひとりごと
初版 2010年10月3日
改訂 2010年10月3日
小説ID 4068
閲覧数 1022
合計★ 6
アクアビットの写真
ぬし
作家名 ★アクアビット
作家ID 666
投稿数 29
★の数 67
活動度 7901
継続の大切さと恐ろしさを実感する今日この頃

コメント (8)

そら てんご 2010年10月3日 16時02分57秒
お邪魔しました。
フーン、アクアビットさんも転向の多い幼少だったんですね。
私も中学生位まで、高知県内ですが十回ほど転校しました。おまけに生まれは新潟で、大阪を経由して高知で育った訳、今は完全に京都人です(笑)。
自論ですが、人生の経験値という部分でも感受性という意味合いでも、いろんな多くの人とのめぐり逢いは、人生の宝だと思っています。お互いに自信をもって頑張りましょう。
★アクアビット コメントのみ 2010年10月5日 22時24分25秒
世界は意外に広くて、案外狭いですよね。
最近は、国籍を飛び越えた友達作りに精出してます。
★井坂空 2010年10月9日 13時20分03秒
どうも。
私は転校の経験は無いのですが、友人が京都から東京や北海道に転校していくことが多かったです。その所為か、なかなか友達が増えないなんて事もありましたが。
今は地元じゃない学校に行っているので転校なんて事は本当に稀ですし、むしろ外国の友人も出来て学ぶことが多いです。海を越えたところに居るはずなのに、結構出会いなんて些細なことからなんのだと感じました。
余談ですが、私の小説にでてくるモデルになった方も、とても些細なことから出逢った人です。
そんな訳で、私も頑張って小説を書いていこうと思います。
★アクアビット コメントのみ 2010年10月12日 21時41分55秒
井坂空さんへ>>
コメントありがとうございます。
励まされます!
人には、スピリチュアル・ファミリーとかいう
つながりがあるそうです。
時間すらも超越したその「縁」で、
私たちは必然的に出会い、惹かれ合うそうです。
なんか、嬉しいですよねえ〜。
井坂さんのお話も読ませていただきますね♪
★亞華羽 コメントのみ 2010年10月13日 19時00分43秒
おはようorこんにちはorこんばんわ(^ω^)←

私も自分の話の中の登場人物は好きですよ。
特に気に入っているのはジャクソン君・・・!!笑
私の話を読んでくれれば分かりますが一応説明をですね。(なんか宣伝みたいになってしまった・・・・)
私の話、擬人化がテーマでそれのギターがジャクソン君。
その子、私が書いた小説の中で1番気に入っている登場人物。

ていうか、擬人化を思いついたきっかけを作ってくれた子なんですけどね。
私個人的にギター弾いてまして…そのギターの名前が『ジャクソン』なんです。
それでふと‘ジャクソンが人だったら何を思うだろう’そんなことから始まったんですよね。


なんか親ばかみたい。今も隣でジャクソンが笑った気がした。←


人はどこまで行っても、どこか孤独感を感じてるんですよね。
((なんか変な終わり方\(^0^)/))
★アクアビット コメントのみ 2010年10月14日 13時15分15秒
亞華羽さんへ>>
コメントありがとうございます。
擬人化ですか、分かります。
小さい頃、拾った柿の実(まだ青い)が
突然親友宣言をしてきて、捨てられなくなり。
机の中で腐って母に激怒されたことがあります。
今度、ジャクソン君を拝見しに伺います。
★ コメントのみ 2010年10月23日 21時02分17秒

初めましてこんばんは。私は蒼って存在です。

私は自分が作った主人公が大好きだ。はい。とっても分かります。私も自分のキャラクターがお気に入りです。

というか、自分が創作するのに、自分が嫌うような主人公やキャラクターを作り出す方が難しいと思うのですよ。

逆にそこが私にとって困りどころです。
所謂「嫌なキャラ」が必要なときに、そのキャラクターをどう動かしても、何をやらせても、なんか違うって思うんですよね。

違和感が常に付きまとって、
本当にこれでいいのか?
三流悪役っぽくない?
なにこれどこの典型的な町の不良?
と自問自答してます。ヘタするとお蔵入りになったりします。

誰かを感動させたり笑わせるのも難しいけど、
誰かを苛立たせるのもなかなか……。
しかもそれを狙って物語上都合がいいようにやるとなると……。

まぁ、うん。そんな話はどうでもいいですよね。(ぉ)

いつかアクアビットさんの主人公たちが世に出て暴れまわることを願って。
★アクアビット コメントのみ 2010年10月26日 9時35分28秒
蒼さんへ>>
何故か伝わる、蒼さんのあたたかい想い。
ありがとうございます、しっかり吸収させていただきました。

「嫌なキャラ」は確かに難しいですね。
悪役の表現には、政治家を見ることをお勧めします。
(こんなこと書いたら消されるかもしれないけど)
腹の立つ話し方、ムカつく態度の取り方、攻撃の躱し方。
彼らの討論会は勉強になりますよ〜。
目線の運び、口の動き、腕の動かし方。
それらを文章で表現すると、あら不思議。
とっても嫌な人の出来上がり〜〜〜。
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