エメラルド -  2.−嫌な予感ー

  

 海南駅を降りて、向かうは海南高等学校。ちらほら見え始めたブレザーは、目に優しく映る濃紺。ズボンはグレーが下地で、青のチェックが重なっている。

 名前から見て、青っぽいというか、名前にピッタリのイメージと言って、まず間違いないだろう。すると、前方から朝に似つかないハイテンションな声が聞こえてきた。

 「奏ぁーーーーー!!」

 声でけぇよ。俺、自分の名前嫌いなんだよ。奏(かなた)なんて、当て字みたいな名前。ていうか、当て字だよ。

 「何だよ。朝からうるっせぇ・・・・・。」
 「またまたー、自分の名前嫌いなんだから、そんなでっかい声で呼ぶなってか?大丈夫だ!お前にはその名前がピッタリだ!」

 どこからそんな根拠が出てくるのか・・・・・。不思議だ。それよりも、俺の考えていることを、ちゃっかり当てているこいつに腹が立つ。そういえば・・・と、あることに気が付く。

 「なぁ、葵(あおい)。今日は、隣に女が見えないけど?熱でもあるのか?うつさないでくれよな。」
 「ちょいちょい、奏君?なんだか知らないけど、僕は熱が出ていること前提になっているのかな?勘違いして欲しくないんだけど?」

 あれ、そうなの?と、わざとらしく首をかしげる俺に、さらに続ける。

 「まったく、お前ってヤツは・・・・・昨日、担任の話聞いてたか?転校生だよ、て・ん・こ・う・せ・い!分かる?」
 「・・・・・そういうこと。」
 「そういうこと!ほら、行くぞ!!」

 妙な含み笑いを残し、葵はスタスタと校舎の中に小走りで向かっていった。そのうしろ姿には、期待と言葉に表せない喜びの表情が見てとれた。


 キーンコーンカーンコーン・・・・・


 『絶妙』・・・いや、『微妙』な、余韻を残し、古びたチャイムが学校内にこだまする。学校のチャイムって、誰かが決めたみたいに、どの学校でもこの音を聞くような気がする。まぁ・・・そういう訳ではないのだろうが。


 「なぁ、奏?かーなーたー?・・・・・奏!!」

 そう遠くから、俺を呼ぶ声が聞こえた。なんだよ・・・・・。

 「ん?・・・・・葵?」
 「来るぞ!ちゃんと目開けとけよ!!」
 「・・・んぁ?来るって何が?」
 「・・・・・・・・・。」

 俺の声に、葵は返事をよこさなかった。ただ、一点を見つめ、口をあんぐり開けたまま。俺もその先を見つめた。そこには、例の転校生が。

 「・・・・・やべぇ。」

 葵がそう嘆いたのに続いて、クラス全員から雄叫びが上がった。男子は勿論の事ながら、女子までもが目を光り輝かせている。

その反応にも頷ける。まさに容姿端麗。髪はこげ茶でミディアムの長さのストレート、身長は、160cmちょっと。男子の制服と同じく、グレーに青のチェックのスカートからは、白くて細い足が伸びている。確かに、綺麗だ。

 「じゃあ、自己紹介を。」
 担任が、自己紹介をするように促した。

 すると、怖ず怖ずと、遠慮がちに顔を上げ照れくさそうに頬を桜色に染める。続いて、その頬に似合ったピンク色の唇をゆっくり開いた。

 「・・・・・えっと、・・・香川・・・・・碧海(かがわ あみ)です。まだ、分からない事だらけなので、色々教えてください。よろしくお願いしますっ。」

 黙っていてもあの容姿。喋ってみれば、最後にあの笑顔。あれこそ天使の微笑みだ。葵を見れば、案の定・・・・・

 「あーーーみちゃーーーん!!!!Welcome!! 海南高校へようこそぉ!!」

 日本語に英語を織り交ぜて、見事なご挨拶だ。それを見て、彼女は少し退いたものの、先ほどと同じ笑顔を、葵に向けた。

 それにしても、先ほどから、どこからともなく殺気を感じるのは、気のせいだろうか?・・・・・いや、気のせいではなかった。葵のファンである女子が、鬼のような顔をして、呪文のように何かを言って。

 この様子だと、先が思いやられる。そう考えると、自然にため息がこぼれた。


 これが、彼女との出会いだった。

 この時は、君があんなに大切な人になるだなんて、思っても見なかったんだ。

 

この小説について

タイトル  2.−嫌な予感ー
初版 2010年10月26日
改訂 2010年11月14日
小説ID 4101
閲覧数 1916
合計★ 6
水無月 澪の写真
常連
作家名 ★水無月 澪
作家ID 691
投稿数 6
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活動度 670

コメント (4)

Seira 2010年10月26日 21時31分30秒
こんばんは。
早速拝見させて頂きました。

新しい出会い、瑞々しい作風にこれからも期待して
おります。頑張って下さいね。
★水無月 澪 コメントのみ 2010年10月30日 15時35分04秒
Seiraさん

いつもありがとうございます。

ゆっくりですが、頑張りたいと思います♪
弓射り 2010年10月30日 23時59分31秒
はじめまして。
最初の2文はとても読みやすく、綺麗です。こんな感じの文が占める割合が増えれば、作品の質がぐんと上がるように思います。頑張ってください。
★水無月 澪 コメントのみ 2010年11月6日 17時10分37秒
弓射りさん☆

コメントありがとうございます。

まだまだ初心者ですので、自分なりに一生懸命頑張ろうと思っております。
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