淡恋色






「悠くん、うち結婚すんねん」

「……は?」

「祝ってくれるよね」




「――――ッ!」


息切れしながら飛び起きた。漫画でしか見たことが無いその行動を頭のどこか冷静な部分が(ほんまにこんな風に人って飛び起きるんや)と考えていた。
昔から寝覚めは良く無かったが、今回ばかりは酷かった。心臓は異常なまでにでかい音を立て、早く波打つ。汗もかなりかいている。シャワーを浴びようと思い、ベッドからおりた。
メンバーで、小学生のときから幼馴染の川村が夢にでてきた。川村と俺は夢にまで見た音楽界メジャーデビューを果たしたばかりの新人アーティストだ。
女なのにウザキャラを売りにする川村と冷静な俺というバランスが受け、関西出身ということもありノリも良いからか新人とは思えぬほどテレビに出させてもらっている。
お互い結婚なんて一生できないと思っていた。今はどの、なによりも音楽が一番楽しくて大切だから。
けれど夢の中の川村はいつもと変わらないムカつく顔で、結婚をすると言った。
なんのギャグやねん、そういつもなら返せたのに言葉が出なかった。「……は?」という間抜けな声だけが喉から出た。俺が困惑しているというのにアイツは平然としたまま「祝ってくれるよね」とのたまって。

「…夢でも、めっちゃ腹立つわアイツ」

ゴリラみたいな顔してるくせに。わけの分からないイライラをシャワーで洗い流す。今日は昼過ぎに収録がある。こんな気分のままではいけない。仕事に私情は挟まないのがプロだから。
シャワーをすませて着替え、本を読みながら迎えの車を待つ。数十分してマネージャーが運転する迎えの車に乗り込むと、先に誰かが座っていた。ちょっとがさついたきったない声で、「おはよぉ、悠くん」そう挨拶する。俺は夢のことを思い出してしまって、少しだけどもりながらも挨拶を返した。
いつもは車内でも楽屋でも一言も交わさないけれど、なんとなく口を開いた。今日な、と言い始めるとアイツは少し間を置いて、うん。と続きを促した。

「お前の夢見てん。」
「うちのぉ?」
「『うち結婚すんねん、祝ってくれる?』て言うねん。」
「えっ! 誰とぉ!」
「知らん。そこだけで起きたんやけど朝からめっちゃ腹立ったわ」

なんで腹立つんよ、汚い顔をもっとぐっしゃぐしゃにして川村は笑う。しょうもない夢やろと聞くと、ほんましょうもない夢やねとまた笑う。
その顔を見てたらなんとなく俺も自然と頬を緩めて笑ってしまった。
しょうもないよな。めっちゃしょうもない夢やけど、俺、起きたとき泣いてたんやで。
それは、言葉にはしなかった。



後書き

造語です。たんれんしょく。
最近これてませんがみなさんの作品は読んでいます><!
ただコメント苦手で後を残せていません。

この小説について

タイトル 淡恋色
初版 2010年11月27日
改訂 2010年11月27日
小説ID 4128
閲覧数 814
合計★ 4
佐藤みつるの写真
ぬし
作家名 ★佐藤みつる
作家ID 510
投稿数 36
★の数 195
活動度 4935
だらだら社会人やってます。
本(漫画・小説)の量が半端なさすぎて本棚がぎちぎちになってます。

コメント (2)

★鷹崎篤実 コメントのみ 2010年11月27日 2時59分47秒
どうもお久しぶりです。
では、コメントを。
とか言いつつ、どうにも僕には感性というやつが欠落しているようで、この作品がショートショートとして見た場合、良い出来なのか、それとも、悪い出来なのか判断できないわけでして、じゃあ、コメントすんなよって話なんですが、コメントします。
新人アーティストという設定に関しては、あくまでバックボーンであり、人によってはこの設定必要なの?とか言う人もいるかもしれませんが、ぼくは二人の関係性を明確に示す分にはありかな、と。
構成に関してはショートショートなので、あくまで短く、けれど、薄くならないように、それでいて、佐藤さんの味が出るように。
ぼくとしれは、もう少し尺を取って佐藤さんの味を出してもよかったとは思うんですが、このあたりのさじ加減は微妙ですよね。
川村さん、ゴリラみたいな顔っていうのは男には書けないですよね。基本的に物語における女の子は守ってあげたくなるような可愛い子にしたくなるのが男ですから。
でも、川村さんはゴリラだけどどこか可愛げのあるジャイ子ですね。ぼくもビッチなしずかちゃんよりジャイ子のほうが好きですし。
全体的に見た場合、語り手の彼がツンデレな感じの無難なショートショートでありながら、うん、お前ら上手く行くといいな、と微笑んでしまうタイプの作品だと思います。やはり、ショートショートである以上、どこかにアクセントが必要だとは思うんですが、やっぱり難しいところですね。
とりあえず、個人的なものですが、秒速五センチメートルを観た後にこの作品を読むとある種のカタルシスを得られるかもしれません。
色々と関係のない駄文をだらだらと書きましたが、文章を書くという難しさを改めて実感させられる作品でした。
ではでは
★芳乃 2010年11月30日 0時25分18秒
初めまして。芳乃と申します。
作品読ませていただきました。
テンポがよくてすらすら読むことができました。
読後感も爽やかな感じで、こういう作品わたし大好きです。
って、個人的すぎますね。
精神描写が人間臭くて人物の中に引き込まれるようでした。
川村さんがすごくかわいく見えるのがどうも不思議です。
駄文ですが、少しでも糧になればと思います。
ではでは。
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