LostChildrenシリーズ - Case8〜疑惑、そして願い〜

「……これが、10年前────この街と私達に起こった事の顛末です」
「………………マジかよ」
「えーっと────済まない、空気を読めてないのは百も承知の上で聞かせて欲しいんだけど……どこからどこまでが本当の話なんだい?」
 
 さすがのアランとエッジも言葉に詰まる。
 だが、それ故に雰囲気にそぐわない質問をしているというのは彼自身も理解していながらも、あまりに現実離れしすぎた展開にリナからの説明に理解がてんで追いつけないでいた為に、あの質問となったのだ。
 ある意味これは最終確認。
 だが無情にも、リナは静かにこくりと頷いて話し続ける。
 
「全部、本当の事ですよ────
私の暴走のせいで、沢山の人達が犠牲になってしまった事……そして、大切な男の子をこの手で殺めてしまった事────」
「ああもう繰り返すんじゃないわよ!」
 
 虚ろな瞳のままで肯定の意を示すリナの言葉を遮る様にリディアが叫ぶ。
 リディア自身も、さすがにこの手の話を長時間聞き続けられるほど肝が据わっているというわけでもないようだ。
 現に、表情が嫌悪感でいっぱいに埋め尽くされており、もう聞きたくないという雰囲気が嫌でも伝わってくる。
 
「……あー、ゴメン。さすがのあたしも完全に頭のキャパ、オーバー気味なのよ。
でもま、これで色々と納得がいったかも。そうでなきゃ、アンタがあれほどまでに“自分に”対して嫌悪感丸出しなのも説明が付かないもの」
「…………」
「────確かにこれは、一人の女の子が背負うにはあまりにも重すぎるな」
 
 苦笑とも取れる微笑を浮かべるリナに対して、リディアとエッジは相変わらず意気消沈気味だ。
 だが、彼女の過去を聞く事で、今までの彼女の思いや言葉の真意にも納得がいく。
 
 ……リナは未だ、半年前の事件という闇夜から抜け出せないまま、その身を戦いに投じている。
 その事で、更に自らの心に傷を負いかねない事を承知の上でだ。
 
 やがて、重く沈み続けていた空気はベルドの言葉でやや上向きに持ち直す。
 
「……関係各所の中では“ヴァニシング・イヴ”という大層な名前の事件としてそれなりに知られている。その事件によって救出されたリナは3ヶ月程精神病院の方に搬送されて治療を受け……それからすぐにOCSIAN(ウチ)に入隊」
「それで現在に至る、と……」
「正直オレも最初にこの話を聞かされた時はタチの悪い冗談かと思ったよ。
でもな……こんな悲しみと絶望に染まりきった瞳をしたまま話されて、冗談だと否定する事なんて出来やしないさ」
 
 無意識にベルドはリナの頭に手を乗せて、そのまま優しく撫でてやる。
 それに対してリナは笑う事も、邪険に扱う事もなく、そのまま俯いてしまう。
 
「そしてこの話をお前達にも聞いてもらったのには、当然ながら理由がある。それは……」
「なるほど。オレ等でそこら辺のフォローを頼むっつー話ッスね?」
「……いや、違う」
「え?」
 
 どういう事だろうか?
 普通こういう話を聞かされたのならば男として……人生の先輩としてフォローする側に回れと言われるのが道理のはず。
 続けざまに自分の意見をバッサリ否定したベルドの真意を図りきれず、アランは思わず不満が入り交じった返答を漏らしてしまった。
 
 だが、これにはベルドも特に追求する事もなく話を続ける。
 
「アランやエッジ、そして実にリディア。
お前達にしてもらいたいのはリナのフォローではない。4人にやってもらいたい事は実に簡単な事だ。
すなわち────」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「リナの……味方であってくれ」
 
 
 瞬間、その場にいたベルドを除く全員が呆気に取られた。
 
 
Lost Children
〜The opening of the end of the sorrow〜
 
Case8〜疑惑、そして願い〜
 
 
 第54番街のR3Dエリアにて発生した、正体不明の戦闘人形との戦闘を終えたリナ達は、
 一端補給と怪我の治療を施す為に、ちょうど近隣に位置していたリナの実家にお邪魔する形となった。
 
 半年前の事件の時は、距離があった為に何とか無事で済んでいたとの事らしいが……
 それでも彼女からすればこの家はかなり複雑な想いのこもった場所である事には違いない。
 それが、リナの過去を聞いた面々共通の見解だった。
 
 そして現在……ベルドからの提案によって全員が固まっている状況へと繋がる。
 
「……えと、それは一体どういう事なんですか?」
「────『CHILDREN』の力は、余りにも強大だ。特にリナの場合はそれが顕著でな……話を聞いても判る通り、制御するのにも結構な負担が掛かる」
「それに悲しいかな、現在の一般世論からすればあたし達『CHILDREN』は紛れもない“化け物”扱い……他意は無いにしても、何気ない一言や処遇で孤立するのは必須」
「だからこそ『味方である』必要があるんだ……。
時には背中を押して叱咤激励し、時には手を引いて導いてやる必要がある」
 
 フォローというのは完全にリナ側……言い換えれば『CHILDREN』の意見や意志を優先するという形になり、それは『CHILDREN』と『ノーマル』双方の為にはならない。
 つまり、ベルドはその両極側の意見を鑑みて、客観的にリナとの距離を一定に保ちつつ上手くやってくれと言いたいのだ。
 ベルドの言葉にリディアが補則を入れると、アランとエッジは納得した表情で頷く。
 この辺りは二人も僅かながらも考えていたらしく、反対する気は微塵もなかったようだ。
 
 そして二人は……いよいよ“彼”の問題へと切り出した。
 
 
「ところで────あのツンツン坊主はこれからどうなるんですかね?」
「話を聞く限り、彼は我々(OCSIAN)に対して激しい嫌悪感を抱いている。
……今の状態のまま迎え入れても、ただ亀裂を生むだけだろうし、かといってそのまま野放しというのも────」
 
 言いかけてエッジは言葉に詰まる。彼の云わんとしている事に気付いたのか、リディアも沈んだ面持ちで頷いた。
 
「……下手をすれば、リナの二の舞になる、と。いろんな意味で付け狙われる事になるだろうし、迂闊に暴走されたらそれこそ……ね」
「なあ、言っちゃ悪いがそれっていわゆる八方塞がりってヤツじゃねぇのか?」
「アンタなんかに言われなくても判ってるわよそれくらい。
……説得に素直に応じてくれるタマなら何とかなるんだけど、先の捕縛作戦であのツヨシってやつが超弩級のバカって事が判明したし。説得もムリっぽそうだもの」
「な、なかなかに辛辣だね……」
 
 だがすぐにフォローできないのが辛い所だと思った。
 アランの言葉に返すリディアの毒舌に、苦笑でしか答える事の出来ないエッジは正直複雑だ。
 
 親友であるはずのリナの制止を振り切り、孤軍奮闘の道を選んだ剛……言い方は非常にアレだが、
 ただひたすらに自分のワガママを通しているだけにも見て取れる。
 だが同時に、女の子の説得に易々とは折れない強さを見せたのは個人的には印象が良かったなともエッジは思っていた。だから────
 
 
「よし、彼の説得は僕の方で何とかしてみます」
「……いいのか?」
「ええ」
 
 ベルドの問いかけに迷うことなくエッジは頷いて、更に続ける。
 
「捕縛作戦の時もそうでしたが、彼の決意の真意はともかく、それの固さは相当なものです。
親友であるはずのリナの言葉でも解きほぐす事が出来なかった事を考えると必然的に、リディアさんや実君でもそれは当てはまる事になります」
「……下手に同年代であり、同じ境遇のヤツらが押しかけて行っても逆効果、ってワケか」
「そうです。……自分がそれほど偉い人間だとは思っていませんけど、それでも、人生の先輩として言える事はあるかなと」
 
 エッジの言う事は実に的を射ていた。
 プライドというわけではないが、剛はとかく意地っ張りな面が強い。それが同年代の人間であるなら尚のこと、余計に意地を張って説得にも素直に耳を傾けないし、自分達の考えに共感する事もないだろう。
 そういった『壁』を取り払い、ゆっくりと時間を掛けて彼の決意をほぐしていこうというのがエッジの狙いであった。
 そのことにすぐに気付いたベルドはさすが年の功といった所だ。……が
 ふと、ある事に気付いた人間が小さく手を挙げて尋ねてきた。
 
「おいおいエッジ。人生の先輩っていう観点からだとオレでもいけるんじゃねえぇのか?」
「アンタバカじゃないの? 自分に説得とかカウンセリングとかそんな高等技術出来る脳ミソがあるとでも思ってる?」
「…………人の事言えるか、自意識過剰のアンテナ娘が。
アレじゃねぇのか? 電波受信しすぎて思考がおかしいからツヨシの説得要員からも外されたんじゃねぇの?」
「その台詞、そっくりそのまま返してあげるわよこの脳筋キン肉マンが。
自分だってその脳筋思考のせいで説得要員からあぶれたって気付きなさいよ」
 
 ……相変わらずこの二人は犬猿の仲のようだ。
 静かにドス黒い殺気を炎のように燃え上がらせながら睨み合う二人を尻目に、エッジとベルドは細かい説得内容を詰めていく。
 
 
 
 ────というか誰かツッコめよこの場違いな空気を。
 リナはまだ過去話をした後遺症でまだ雰囲気が暗いままだし、ベルドとエッジ、実に至ってはもう放置状態だし。
 
 
 ……………………
 …………
 ……
 
 
 カオスと化しつつあるリビングを放置して、剛の説得をすべく、エッジは彼が安静にさせられている一室へと歩を進めていた。
 とは言うものの……ベルド達にはああいったものの、正直成功する自信はあまりなかった。
 何故なら、エッジは生まれてきてこの方、その手の交渉の類は殆ど経験がなかったから────まあ下っ端同然の下級ソルジャーでなくても、そういう事態に携わる機会がなければ当然と言えば当然のこと。
 だが、それでも『自分がやらなければ』という想いが彼を剛の元へと向かわせていた……。
 その想いがどこから来るものなのか……何度自分に問いかけてみても出てくるものではなく、結果として今、エッジはもの凄く沈んでいる。
 
 
「……ま、なるようになるか」
 
 それでも潔く覚悟を決め、ドアノブに手を掛け────かけてドアがいきなり勢いよく開いた。
 
 扉の前に立っていたのは、当然さっきまで絶対安静を言い渡されていた張本人。
 担ぎ込まれた時の顔色の悪さはどこへやら。すっかり顔色も良くなったようで、突然の来訪者の存在に、剛はやや驚きながらも静かにエッジに語りかけてきた。
 
「えっと……エッジさん、でしたっけ? どないしたんです、こんな所に?」
「あー、えーっと……」
 
 思わず言葉に詰まるエッジ。さすがにバカ正直に『君を説得しに来たんだ』とは面と向かって話せる訳がない。
 だが、ここで引き下がってはここまでやってきた意味がない────意を決したエッジは真剣な表情で剛に告げる。
 
「少し────君と話をしたくてね」
「話……でっか? 『ノーマル』の……しかもOCSIANの狗が『化け物』の俺に何のようです?」
「なに、大した事じゃないよ。リナから、君が大切な友達だというのを聞いて、純粋にどんな人なのか興味がわいただけさ」
 
 勿論ここは本当の気持ちだ。
 ……想像以上に彼のOCSIANに対するイメージはすこぶる悪い。
 エッジ自身も思い当たる節が無い訳ではないので、安易には否定に走るような真似はしないが────それにしても異常すぎる。
 だからまずは、そこを切り崩す事から始めようと思い至ったのだ。
 その為の手土産も、ちゃんと持ってきてある。
 
「リナが作ってくれたホットミルク。君が目を覚ましたら渡してくれって頼まれてたんだ」
「…………」
「立ち話も何だし、部屋に……入れてくれるかな?」
「ここ、俺の部屋ちゃいますよ。正確には────祐坊の部屋っす」
 
 ぶっきらぼうにツッコみながらも、剛は無下にエッジの入室を拒む様子はなかった。
 つまり……第一関門はなんとかクリア。
 
 安心したエッジは持ってきたホットミルクをこぼさないように、慎重に部屋へ入ると、片方のミルクが入ったコップを剛に差し出す。
 『どうも』と短くお礼を言いつつ、剛はコップを両手で受け取った。
 
「祐坊……リナが面倒を見てた居候の男の子、だったよね? 君はその子とも面識があったのかい?」
「当然です。何度かこの家に遊びに来させてもろた時に会うてますから。
その度に俺や一はアイツの遊び相手になって……どっちが世話になっとったんかよう分からん状態でしたけど」
「そっか。────君たちにとっても、祐君は弟のような存在だったんだね」
 
 エッジが呟いた瞬間、剛の表情が更に強ばる。
 言い様のない理不尽に対する怒り……そういう感情にも見て取れたが、すぐに一変し、寂しさに打ち拉がれたようなものに変わる。
 
「そうッスね────。
アイツの親御さんを恨むんは筋違いや思うてますけど……それでも、あのタイミングで祐坊を連れ戻しに来たんには、未だに納得いかへんのです」
「君や一君は……祐君に別れを告げる事は────」
「あ、そこは大丈夫です。
あちらさんも気を遣ったらしくて、俺等の家にもお礼を言いに来てくれたんです」
 
 せやけど……そう言って剛は言葉に詰まる。
 ホットミルクの入ったコップを握る両手は僅かに震えており、込み上げる感情を必死に押さえ込んでいるのがよく分かる。
 
「それに……今生の別れとちゃいますから。
住むコロニーは別々になってまいましたけど、それでも、会いに行こうと思えば行けへん所でもないですし」
「でも……君は会いに行ってない。いや────“行けない”と言った方が正しいのかな?」
 
 コクリと頷くと、剛は一口ミルクを口にする。
 ゆっくりと喉を鳴らして飲み込んだ後、再び悲しそうな表情でエッジに話しかける。
 
「リナが一生懸命我慢しとんのに……それなのにダチの俺が、一番祐坊に会いたいはずのリナを差し置いて会いに行くなんて許されへんでしょ」
「なるほどね……友達思いなんだな、君は」
「や、それがダチとして当然の義務やないですか」
 
 友達か……。
 同じ境遇だからか、はたまた別の理由でそういう結論に至ったか……どちらにしても彼もまた、リナの心の支えになっている人物の一人である事は間違いない。
 だとしたら────今までの会話を統合し、意を決してエッジは剛に尋ねてみる。
 
「君は……リナの事情を、どこまで知っている?」
「────全部知っとります。
アイツがいろんなモンを背負ってるって事も。……そして今でも、やり直せるならやり直したいって言ってた事も」
「……そうか」
「リナのヤツ、自分の過去……エッジさん達に話したんですよね?」
 
 無言で頷くエッジ。
 それからしばらく、重く、暗い沈黙が部屋を埋め尽くしたが、剛が呟くように語り出す。
 
「アイツ……泣きじゃくりながら今までの事、全部話してくれたんです。そん時のリナの顔────今でも忘れられまへん。
……自分も包帯でグルグル巻きになって、せっかく評判良かった髪や目ぇもグシャグシャになってしもうて辛そうな顔や言うのに、それでも全部話してくれたんです。
『大切な友達だから……これ以上あなたに迷惑を掛けたくない』言うて────全部を話してくれました」
 
 きっと彼が抱いてる感情は、自分への怒り。
 友がこんなにも苦しんでいるというのに、何一つ力になる事が出来ない無力な自分への怒り。
 強く握りしめられたコップは激しく揺れだし、中のミルクも数滴分、零れ出す勢い。
 
 だが、剛は急に決意を固めたような顔でエッジに問いかける。
 
「エッジさん……正直に答えてください」
「────何かな?」
「リナは……いや……OCSIANは、リナを人殺しの道具にするつもりですか?」
「っ!!」
 
 やっぱり、結局はそこに集約されるのかとエッジは絶望に狩られてしまう。
 
 先にも述べたが、OCSIANは民間会社が立ち上げたとはいえ、その規模はもはや世界的にも静観できるレベルを遥かに超えてしまっている。
 つまり、現在において、地球圏の治安維持等様々な問題の殆どに対応する事ができる程に、強大化してしまった軍事組織なのだ。
 
 軍事組織という事は、従いたくもない命令にも無理矢理に服従されるという事も示す。
 その上で『CHILDREN』という存在は、あらゆる戦況を覆すジョーカーとも言える存在……必然的に最前線に投入され、その結果、多数の命を殺める事になるかもしれない。
 
 剛がOCSIANを徹底的に毛嫌いするのは、友であるリナにこれ以上罪を重ね続けるのを認められないのと、そんな現状を変える事が出来ない自らの不甲斐なさに対する深い憤り。
 そんな感情がせめぎ合った結果でもあるのだ。
 
 だからこそエッジからは何も言えない。
 イエスと言えばそれこそ彼は、これからも徹底的に自分たちを敵視し、最悪友達同士で傷付け合う悲しい結末をも引き起こしかねない。
 反対にノーと言える根拠も、自信も、悲しいかな現状のOCSIANを見る限りでは無いのも事実。
 だからこそ、彼はこう答えるのみである。
 
 
「……ごめん、その事については僕からは何も言えない。
イエスと言えばそれこそ本末転倒だし、逆にノーと言い切れる自信もない。────中途半端、だよね。僕もだけど、このOCSIANという組織そのものにも言える事だけど」
「ええんですか? 仮にも現役のソルジャーが自分の組織を批判やなんて」
「だけど事実だ。僕等も『人間』だもの。このまま自分の上司が報われないってのも納得いく訳無いさ」
 
 エッジが何の躊躇いもなく言いのけた言葉にさすがの剛も驚きを隠せない。
 剛自身も、エッジがこんな答え方をするとは予想だにもしてなかったのだろう────訳が分からないと言った表情でエッジを睨み返す。
 
「“僕等も『人間』”……ねぇ。
“化け物”の俺等もそのカテゴリーに含める意味が分からへんですわ」
「それを言い出したら僕等も『化け物』さ。
────口では何のかんの言いながら君の事を信用しきれてない『疑う心』を持った僕等も、ね」
「……!!」
 
 剛が目を見開いてエッジを見つめる。
 エッジ自身もこれは事実として認識している事。親友であるリナの言葉を振り切り、自分の戦いを続けようとする剛に対して、大なり小なり疑いの視線を向けている。
 ……まあ今こうして剛と対話する事で大分その疑いも消えつつあるが。
 
「あと、ついでに聞かせてくれないか? ……君が一人で戦う事を選んだ理由を」
「はぁ? ……アンタ、何寝ぼけた事を言っt」
「答えてくれ。
────でなければ、君はいずれ後悔する。大切な友達同士戦い、傷つき、そして命を落とす事になるかもしれない」
「…………」
「僕達は模索し、そして見いださなければならない。相互に手を取り合い、最善の未来を掴む為の方法を。
どうしても僕達が信じられず、話す気が起きないというのならそれでも構わない。でも、出来れば教えて欲しい……僕達の大切な上司で、妹のような女の子の為にも」
 
 言ってエッジは深々と頭を下げた。
 剛との会話で改めて気付いた事がある────それは、リナの存在。
 初出動での任務で彼女が見せた様々な思い、そして今までのやりとりに加えて、彼女が背負っている大きな業。
 それら全てをひっくるめた上で、エッジ……というより、このメンバー全員リナに対して程度の差はあれど、皆好意を抱いている。
 それ故にエッジとしても彼女がこれから先、辛い事があったとしても間近で支えてくれる存在は多いに越した事はない。
 だからこそ、今こうして剛の存在を欲しているのである。
 
 エッジの言葉にしばらくの間唸り続け……そして答えた。
 
「もし────」
「え?」
「もし……リナの心が壊れる様な事が起こったら、アンタはどないするつもりですか?」
「…………君が望むようにするさ。
僕を殺したいのなら殺せばいいし、背負って……再び彼女を守れと言うならそうする。
ただ判って欲しいのは、僕も生半可な気持ちでこんな事を言ってるってワケじゃない事。
これでもそれなりに、同期や仲間が命を落としたり心を壊してしまう所を見てるから、僕自身も、もう絶対に仲間にそんな思いはさせたくないんだ」
 
 そう、エッジが自分達の事を『同じ人間』扱いしたのはそこから来ている。
 任務上とは言え、死や絶望に心を砕かれた仲間を救えなかった事。それ故に大切な人を失い、残された者どんな風に思うかも痛いほどよく分かるから……。
 
「……アンタ、真性のアホやな」
「リナの制止を振り切ろうとした君に言われたくないよ」
「それもそうやな。
とりあえず、結論から言わさして貰うとすると……一人の方が何かと都合が良かったからや。
組織に入ると情報仕入れに行くんも何かと許可がいる。そんで、立場上触れる事が出来へん物もあるし、何よりリナをフォローしようにも組織行動やったらそうもいかへん事態もあり得る」
「なるほど────純粋に彼女のフォローを考えると組織の中では様々な弊害がある。
その辺りに限界を感じて……という事か。ただ単純にOCSIAN嫌いというだけでは無かったようだね」
 
 納得した様子のエッジだが、それでも色々と解せない部分はある。
 というか、それだけでは単独行動を取る理由の半分くらいしか満たせてない。
 
 『CHILDREN』の力を悪用しようとしている連中は少なくはないのだ。
 だが、剛が続けざまに放った言葉は、エッジを驚愕の色に染める。
 
「そっちの理由もあるけど、大半は今言うた事が単独行動の理由ですわ。
……ぶっちゃけ、白龍の連中も出張ってきてる以上、表立って目立つ訳にもいかへんですし」
「えっ、ちょっと待ってくれ! ど、どうしてそこで白龍の名前が出てくるんだ?!
というか、その口ぶりだとまるで……」
「お察しの通り、ちょっとした昔のゴタゴタのせいで俺、白龍の連中から狙われとるんです。
んで、エッジさん達が襲いかかってくる前に俺がバトったグレムリンと、アンタ等が戦った新型の戦闘人形も恐らくはヤツらの差し金です」
「な、何だって?!」
 
 余りに突拍子のない話に、完全に話について行けない様子のエッジ。
 というよりも、今まで生産元すら判っていなかったグレムリンの出所の事を知っている事と言い、この少年は一体何者なのだろうかと逆に疑いを強くしてしまう。
 
 だが今はそんな事を議論している場合ではない。
 剛がOCSIANの保護下に入るのを拒み続けていた最大の理由がここにあった。
 
 要は自分絡みのゴタゴタを、リナの頑張っている組織に抱え込ませたくなかったという所なのだろう。 普通に考えれば軍事組織であるOCSIANに身を預けるのが最良の策なのだろうが、彼にとっては正解ではなかったという事だ。
 OCSIANという組織そのものに対する不信感と、リナの居場所に自分絡みのトラブルが降りかからない様にしたいという思いからの決断。
 ……既に2度もグレムリンに襲われ、最終的に彼のいざこざに関わってしまった時点でその目論見は泡と消えてしまった様なものだが。
 
 ……パッと聞いてる分だけでもかなりヤバ目の臭いが漂ってくるのはきっと気のせいではないはずだ。
 
 
「……君がいろいろ躊躇った理由、ようやく分かったよ。確かに、これは悩むよね」
「OCSIANとしても、白龍関連のネタは避けてる体があるでっしゃろ? そういう意味でも関わるのはちょい遠慮したかったんですわ。それに……」
「それに?」
 
 続けて放たれた剛の爆弾に、エッジはただただ言葉を失うしかなかった。
 彼の言うことが真実であるという確証はどこにもない。
 しかし、逆にそれが真実であった場合、自分達の信じてきた物が根本から覆される事にもなりかねない。
 そう……彼が放った“爆弾”とは────
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 治安維持組織であるOCSIANと、テロ組織である白龍への癒着というものだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ……………………
 …………
 ……
 
 エッジと剛がそんなやりとりを始める数分前……
 何とか落ち着きを取り戻したリナは、ベルド達に出したコップを流し台で片づけていた。
 洗い物をする彼女の、随分と慣れた手つきにただ溜息しかでない様子のリディアは、ついに重い口を開いた。
 
「……しっかし、アンタと実君が既に面識があったなんてね。
道理で実君のアンタへの対応が小慣れてるというか────慣れ慣れしいと思った」
「別に、そういうのじゃないよ。あの時は、互いに互いの名前も知らなかったわけだし」
 
 返してきたリナの答えはあまりにも素っ気ないものだった。
 まあこの辺は予想していたので、まだいい。
 というより────
 
「……地雷源に足踏み込むようで悪いんだけど、ぶっちゃけアンタは実君のこと、どう想ってるの?」
 
 ココだった。
 リディア自身、正直これは単なる嫉妬だと解ってはいる。
 リナも実も、異性関係に関しては殆ど(特に実は壊滅的に)奥手と言ってもいい。
 どう考えても恋愛的なフラグが立つ要素が欠片も見あたらないと考えるのは決して間違ってはいないと思う。
 
 ただそれでも……惚れた弱みというか、一抹の不安を抱いていたのは間違いない。
 だからこそ、あえてこの場で……爆弾発言であることを承知の上で聞いたのだ。
 
 しかし、リナから返ってきた答えは、これまた素っ気ないものだった。
 
「……実君は、私の大切な友達。
厳しいことも言うけど、それでもいろいろ助けてくれた────数少ない私の友達の一人」
「数少ないってアンタ、学校に通ってた頃はそれなりに人気あったんじゃない?」
「そんなことないよ。実際、私こういう性格だし、自分から積極的に友達とか作ったりはしてなかったんだ」
 
 リナの意外な言葉に思わずリディアは呆気に取られる。
 まぁ、リナの性格を考えれば多少は納得できる。内気な性格が災いして中々積極的には────といった所はあるかもしれない。
 だが、その分慎重に選んで友達を作る分、相手となる人間には恵まれている様に思える。
 
 ……剛は多少アウトコースな感が否めないが。
 
「それに────私には、そんな資格はないと思ってるし」
「……リナ、それ本気で言ってるの?」
 
 これにはちょっとムカッと来た。
 思わず目元をヒクヒク引きつらせつつ、リディアが尋ね返すと、リナは今までコップを片付ける為の作業の手を止め、自信の右手を開いてジッと見つめる。
 
「私は負けた。自分の中にある『闇』に────
だから私は大切なものを、この手から取り零したの。それは、さっき話した通り」
 
 洗い物を途中で中断した為に、リナの右手からポタポタとお湯の滴が滴り落ちる。
 実際には無色透明なはずなのだが……今彼女の目には間違いなく“見えて”いるのだろう。
 
 自信の手から滴り落ちていく、真っ赤な液体が────
 
「その時の感触は今でもはっきりと覚えてる。
あの人の温もりが次第に消えていって、私の手を握り返す彼の右手の力が段々弱くなっていくのを────」
「リナ、あんた……」
「忘れたいんだけど、なかなか頭から離れてくれないの。
まるで、足枷が心にグルグル巻き付いてるみたいな感じ。それ以来かな……人を好きになる事を止めたのは」
    
 結局、半年前の事件がきっかけで、リナは決して癒される事のない大きな傷を心に負う事になった。
 それは今でも様々な形で彼女の足枷となり、今もなお彼女の心を苦しめる……言うなればトラウマというヤツだ。
 そこをまず何とかしない事には、リナは決して前に進む事は出来ないし、新しい自分というのも始める事が出来ない。
 だがその為には、自分の『過去』に対して自分なりの明確な答えを出さないといけない。
 そしてさらに、その答えを見いだす為にはリナ自身が『背負う』事から逃げ出してもいけない。
 
 あまりにも成すべき課題が多い上、現状の深刻さ故に思わず目眩がしたリディア。
 でも、同じ『CHILDREN』として、リナが少しでも前に進める様に優しく諭す。
 
「……誰も忘れろなんて言ってないでしょ。
てーか、そんなの忘れろったって忘れられるワケないし。だったら────『持ってく』しかないっしょ?」
「『持って』いく?」
「そうよ。自分が背負った過去。自分が今こうして生きてる今。そして自分が生きてるハズの未来────この3つは全部一つの線(時間)で繋がってる。
繋がってるから切り離す事なんて出来ゃしないんだもの……だったら、罪やら何やら全部背負って生きるしかない」
「……リディアちゃんも、背負ってるの?」
 
 リナの問いかけにリディアはコクリと頷く。
 
「忘れてるかもしんないけど、あたしもアンタと同じ『CHILDREN』なのよ?
そういう風な“自分が自分でなくなる”恐怖ってのはよく分かるし、こう見えても……アンタよりは色々な汚いものとかドス黒い物に関わってきたし、触れたり、この手で産み出したりって事もあるわ」
「うん……。リディアちゃん、私達の『先輩』だもんね」
「そゆこと。
同じ事をしろだなんて無理強いはするつもりはないわ。アンタはアンタ、あたしはあたし。
でもね────根っこは、一緒だと思う。やるべき事や出来る事とか、ね?」
 
 リディアは物事をあまり深く考えない────いい意味でも悪い意味でも行動が純粋で一直線なライフスタイル。
 だがその分、彼女は自分の行動には常に自分が納得できるだけの『理由』を求める。
 自由に動き、進む生き方を望むが故に、間違って後悔しないための選択を常にしてきた。だからそれはそのまま己への自信へと繋がるし、生きる糧にもなる。
 
 だからこそ、リナは思った。
 自分も、こんな風に強く生きることが出来ればいいなと────
 
「私も……」
「ん?」
「私も……強くなりたい。心も身体も────。
もう誰も傷付けなくてもいいように……もう誰も、悲しませないように…………自分の人生を、胸を張って誇れるようになりたい」
「そうね────」
 
 思わず漏れた本音にも、リディアはただただ優しく答えるだけだった……
 
 
 ……………………
 …………
 ……
 
「……えと、話を整理させてもらってもいいかな?
テロ組織である白龍の首領を始めとする幹部メンバーの殆どが未だに捕捉・逮捕されてないのは、OCSIAN上層部と白龍の幹部メンバーとの密接な関係があるから」
「ええ、そうですね」
「そしてOCSIAN上層部は半世紀の長きに渡って、『CHILDREN』のそれを始めとする機密情報を連中に提供し、彼等の行動を黙認していた。
これに対して白龍側は見返りとして新型の武器や装備品の一部を提供と……」
「その通りですわ」
 
 衝撃の爆弾投下から数分経った頃────あまりにショッキングな内容にエッジもただ言葉を失うのみ。
 繰り返すが、この情報は現時点では剛の憶測に過ぎない。だが、それでも彼の情報には言葉には言い表せない、異様な説得力があった。
 
 ……エッジが最初に違和感を感じたのはリナの暴走時の話を聞いた時だった。
 彼女の話によると、武装集団に殺害されたソルジャーは、確かに任務中での殉職として部隊の会報にて発表された。
 だが、実際には遺体すら回収されておらず、空の棺桶と写真だけの葬儀……しかも式そのものが形式的な、いわゆる『形だけ』の物として執り行われていたこと。
 
 続いて感じた違和感はリディアの意見と現状との差。
 剛捕縛前の一幕であった通り、『CHILDREN』の引き起こした事故は一変の例外なくOCSIANが捜査・解決を行う。
 だが、彼女の暴走事件に関しては捜査はおろか事件発生の旨すら部隊には通報されてなかった。
 
 最後の違和感が新型の戦闘人形だ。
 ……結果的に全機撃破という憂い目になってしまった訳だが、それでも出現のタイミングとしてはあまりに“出来過ぎて”いた事。
 もし仮にOCSIAN上層部に白龍との内通者がいたとすると、投入のタイミングを図ることは十分に可能だし、こちら側の戦力ダウン……はまずあり得ない。
 互いに密接な関係を築いている2組織にとって、相手の戦力を削るという行為は、信頼を損ねるだけでなく、“売り上げ”にも直結する。
 だが、もし“新型の性能テスト”という名目も兼ねていたとしたら……
 
 一度負の方向に考え出すと、そちら方向にどんどん引きずられていくのは当然の真理。
 なのでエッジも正直この事実を認めるべきか否か、非常に悩んでいた。
 
「君は……一体どこでこんな情報を?」
「これがソロの強みですわ。
組織やったら入り込めへん所も、ちょっとしたコツでひょいっと…ね」
「これが、君が組織────いや、
OCSIANというものを根本的に否定している理由か」
 
 確かにこれはブッチギリでアウトだろう。『情報が本当』ならばという注釈が付くが。
 ……どちらにせよ、この様子だと剛は本格的にOCSIAN上層部からマークされることは確実だろう。
 上層部からすれば、自分達の与り知らぬ所でコソコソと調べ回られてる訳だから、いい気分はしないだろう。加えて彼は『CHILDREN』。
 白龍との関係を維持するのであれば、剛を取り込みにかからない訳がなかったのだ。
 
 かといって引き続き単独で活動を続けるというのもNGだ。
 マークされるということは監視の目や、最悪暗殺部隊の投入も考えられる。それに、諜報活動を続けるにしても一人ではやはり限界が出てくる。
 これらの問題を鑑みても、最善というか一番後腐れがないのは『彼がOCSIANの傘下になる』ということのみ……。
 
 しかし、彼の返答は決まりきっていた。つまり────
 
「言っときますけど、俺はOCSIANには入りまへんよ?
どっちにしたって居心地が悪いんは変わらへんですし。肩身狭めてOCSIANン中でビクビクするよか外で堂々と動いた方が性に合うてます」
「情報集めは堂々と動く内には入らないと思うんだけど……」
 
 予想通りの回答にエッジは逆に清々した。
 ある意味彼らしいと言えば彼らしいのだろうが、それでもエッジは根強く交渉を続ける。
 
「それに、一人で諜報活動をやるっていうのは想像以上に大変なことなんだ。
今までは何とかお咎め無しでやってこれたかもしれないけど、それでもそんなのが2・3日も続くとは思えない」
「逆にOCSIANに入り込んだ方が見入りも大きい……ちゅう事ですか?」
「あくまでも僕個人としての見解だけどね」
 
 そう。今後の事を考えると、はやり剛がOCSIANに入った方がメリットの方が多い。
 情報の入手や『CHILDREN』としての能力強化や制御技術の習得etc...
 ただ、そうするにしてもいきなりだとかえって状況を悪化させかねない。
 物事は慎重かつ確実に進めなければならないのだ────。
 
「……確かに、リナのフォローをするにしても現状のままやといろいろ制約が多い。
メリットを考えるとあえて死中に活を見いだすのもありっちゅう事ですね」
 
 ここにきてようやく剛の強固な壁が崩れ始めた。
 やはり、リナの事となると結構……アレだ。
 良く言えば『一心不乱』……悪く言えば『単純明快』と言ったところ。
 ────前者と後者の違いがよく分からないと言う読者がいるような気もするが、この場はあえて置いておく。
 それよりも、気になった事が一つ頭の中に浮かんだので、エッジは剛に真剣な面もちで尋ねる。
 
 
「そんなにもあの子の為に考えるなんて────君は本当にリナの事が“好き”なんだね」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「え゛?」
 
 間の抜けた一声と共に、一瞬で凍結状態に陥る剛。
 ワザとらしくピキーンなどという効果音が聞こえたが、気のせいではないと思う。
 しばらくの間そのままの状態で沈黙し続けるが────
 
「……あ、あれ? ち、違ったk」
「違う違う!! そ、そそそそそんなんありえまへんて!!」
「え、だって君たt」
「違います違います、断じてありえへんですっ!! 俺とリナがそんな“好き”やなんて────」
 
 ……なんだろう。さっきから妙に会話が噛み合ってないような気がする。
 しかも剛、リアクションでおもいっきり本音が暴露されてる事に気が付いてない。
 気付いたエッジは頬を緩めながら剛を試してみる。
 
「あれ、おかしいなぁ?
僕が言ったのは“友達として好き”っていう意味だったんだけどな?」
「はうあっ!!」
「君はひょっとして……“異性として好き”と思ったりしたのかな?」
「っ────!!!」
 
 瞬間、剛の顔が真っ赤に沸騰した。
 というか、判り易過ぎる。……気持ちは判らなくもないが。 
 さすがにからかい過ぎたという結論に至ったのか、申し訳なさそうな表情でエッジが剛に謝罪する。
 
「ゴメンゴメン。ついついからかいたくなっちゃってさ」
「確信犯ですかいアンタ!?」
「いや、君の『想い』に気付いたのはついさっきだけどさ。……でも、うん。納得だよ。
リナ自身は否定するだろうけど、あの子普通にモテそうだし────っていうか実際ウチの部隊じゃリナの人気は相当だs」
 
 言いかけて気付く。
 ……剛の目が非常に判りやすいレベルで殺し屋の雰囲気を漂わせる。
 というかむしろ「ソイツ等マジぶっ殺す」と言わんばかりの表情だ。
 
「……エッジさん、俺やっぱOCSIANに入りますわ。
そんでリナに色目使っとるアホ男共に地獄を見せたります。大丈夫……目覚めた俺の力を使えばそんくらい」
「うん、気持ちは分かるけどそれだけは止めてくれないかな?!
冗談抜きでウチの部隊全滅させられちゃうから!! もっと言うなら君の立場が危うくなるから!!」
 
 と言うか……剛の惚れっぷりがもう一般レベルを遥かに超越してる気がするのは気のせいだろうか?
 端的に言うなら────“ヤンデレ”とかそういう領域?
 このままではいろんな意味でまずいと思うので、エッジは改めて、剛に『人付き合いの大切さと難しさ』について説いていこうと誓った。
 
「……まあ、“半分”は冗談としても、OCSIAN入りは善処しますわ」
「う、うん。ありがとうね……あと出来れば暴力沙汰は止めておいた方がいいと思うよ。
OCSIANの中に限らず、外でも言えることなんだけど」
「大丈夫ですわ。……理論武装で徹底的に口撃して二度と俺等に刃向かえられへんように────」
「…………うん。分かった」
 
 一応『力』で解決する方法は止めてくれただけでも御の字ということで、エッジは納得する。
 同時に……部隊で未だリナの帰りを待っているであろう『リナ様親衛隊』の(精神的な)冥福を祈った。
 
「まあ、親友どうこうはさて置いても、君がリナの事を大切に思ってくれて何よりだ」
「……そこから誘導尋問的に無理矢理告白された気がするんは気のせいでっか?」
「気のせいだ。────それはともかく、OCSIANに入ったらくれぐれも彼女の事は頼んだよ」
「それは念押しされへんでもそのつもりですわ。てーかそんなにアレなんですか?」
 
 エッジのあまりにも強い念押しに若干引き気味の剛。
 まあ自分の今までの立場ややり口を鑑みると、当然とも言える様な気もしたが……
 エッジ本人はそれだけが理由ではないようだ。
 なのでエッジも念押しに付け加える形で、自らも“爆弾”を投下する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「リナの能力云々の絡みもあるけど……僕の命は、もうあまり長くないからね」
 
 
 
 
 to be continued...
 
 
 
 
−The next previous notice−
 
 第54番街での一戦から1週間が経過したとある日────ついに剛がリナ達の元にやってくる。
 様々な想いが交錯する中、一同はただひたすらに修練を積み重ねる。
 
 守りたいから────全員の思いは一つだった。
 だが、リナの心は相変わらず霧が立ちこめたまま……。
 強くなりたいという思いと相反するかの様に膨らみ続ける戦う事への恐怖。
 
 だがら“彼”は、言葉をかける。進み続ける為に────
 
 次回、Lost Children 〜The opening of the end of the sorrow〜
 Case9〜強くなるという事 −リナ編−〜
 
 唱える時、世界は暗転し……この世は朱に染まる。

後書き

どうもおはこんばんちわ。
『一分間の深イイ話』で存在を知った『pomera』で今回の第8話を書いたtakkuりばーすです。
本当にメモ書き機能“しか”ないのですが、こと執筆に関してはパソコンに触れない空き時間(例:家族の買い物に付き合っての待ち時間など)等を使って執筆が出来るので結構重宝してます。
メモ帳代わりとしても使えるので、小説のネタを実際の文章形式で書き残しておくことも出来ますし。

さてさて、8話目にして早くも後の複線が大量にだだ漏れとなった上に、リナが主人公補正(ヒロイン補正とも言う)によって剛にもフラグを立てていることが判明する等、結構カオスな状況になってきてますw
何はともあれ、色々と立て込んでる状況を維持しつつも、次回からはシリアス度を若干下げて4人組のインターミッション的なお話を書いてみようと思ってます。まぁどんな風になるのかは書き上がってのお楽しみと言うことで。でわ。

この小説について

タイトル Case8〜疑惑、そして願い〜
初版 2011年1月26日
改訂 2011年1月26日
小説ID 4187
閲覧数 796
合計★ 4
takkuりばーすの写真
ぬし
作家名 ★takkuりばーす
作家ID 194
投稿数 12
★の数 54
活動度 2247
ぬるぬる更新となっていますが生暖かく見守ってください(謝)

コメント (1)

★ひとり雨 2011年1月26日 23時20分24秒
こんばんはー。
人の作品を読むのは殆ど読んでるんですが、コメントするのは久しぶりすぎて何か震えます……変なこと口走ってたらすみません。

『Lost Children』はシリアス+コミカルが本当に上手く成り立ってますね。今回はそれを強く実感しました。
リナの過去話から、ツヨシの説得までちょっと暗い感じになってましたが、エッジさんは流石ですね。
爆弾投下されるわ、爆弾投下するわ。凄いです。驚きっぱなしでした。

これまで以上に物語が広がっていく感じがしますね。
また読ませていただきます。
長々と失礼しました、それでは。
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