ヴァグァブゥオンドゥ〜漂流

ヴァグァブゥオンドゥ
漂流

幸…親がつけてくれた名前だ
昔はこの名前は妙にうざったく、好きになれなかった。

でも
あの人は褒めてくれた
誰もが 幸福 を願っているよ
だから名前に込められた意味がとってもいいよって

だったら 簡単に死ぬな…バカ男

幸を幸福にしようとしてしそこなった男性は、無責任だと今でも恨んでいる

でも 忘れられそうもない
あの人はあたしを束縛したまま この前から姿を消した…永遠に
だから あの人は… 尚 は無責任で 勝手な男だと思って恨んでいた。


雨の日はいつもそうだ
うっとおしい…あの人が交通事故にあったのも雨の日だ…
だから余計うっとおしい
だから 幸 はスクーターに乗るためあれから原付の免許を取った
あの人みたいに 雨水でスリップしてトラックに突っ込んだら本望だって思っていた

いつもの待ち合わせ場所
そこは退屈なラーメン屋

龍一 とはなんとなくつき合っている
多分最初は 尚 を失った寂しさから 誰でもいい
寂しさを紛らわせてくれる人ならと思って 癒し系の雰囲気の龍一に近づいて行った

幸 からアタックしての交際だった
でも好きでも何でもなかった
つき合ってみると 妙に 気になるところがある
マイナスに気になるということだ。
いまどき 寅さんの映画が好きだって言う人も珍しい
はやりの音楽のことをニューミュージックっていう
いつも同じ服を着ている

数え出したら気になるところがたくさんある
気に入らないという意味で…

無趣味なところは 尚 も龍一 も似ている
ヴィジュアルも大してどちらが魅力的というわけではなかった

しかし 尚は 幸を大切にはしてくれなかった
何故 こんな男性に 他界してまでしがみついているのかよく幸にもわからなかった。

妙に親切で 優しすぎる 龍一は 妙に重たかった
龍一はそれが自分の長所だと思い込んでいるフシがあるので
よけい厄介で 印象が悪い…


教えてくれた携帯手の番号も、アドレスも何度も消した
でも
なんとなくズルズルと付き合っている…

「おかわりしなよ…当然おごりだからさ…」
つばを飛ばしながら食事中にベラベラしゃべる龍一
つばが幸のタンメンのスープに入る
幸は気にしない…潔癖症ではないから…でも…
「あたし…そんなに食べちゃったら太るから…」
「じゃ、俺お代わりしていいかな…」
「ここのラーメン上手いだろ…結構 値段高いし…」
はいはい、あなたはどうせお金持ちでしょうしね…
心の中でそう言った
そして笑顔で言った
「あたし 帰るから…」


何もかも嫌になっていた
それから一週間 マンションの一室に閉じこもっていた。
「ラーメンしかなかった…ラーメンはもうたくさん…」
会社は無断欠勤
それでも、時間は過ぎて行く

電話が何度もなった
ケータイは窓から投げ捨てた
もうどうなってもいいって感じで…。

時々、脳裏によぎる夢は尚との想いでばっかり…
タカシ

タカシ

タカシ

あの人が、あんな無責任な男のどこがいいんだ…
でも 尚 が好き…


尚は何物にも執着していなかった
あの余裕がどこから来るのか
友達がいなくなっても、誰もそばにいなくても平気な人に思えた
もし、逆にあたしが死んで、あの人が生き残ったらあの人はすぐ立ち直るだろう

それに比べて 龍一は育ちが良かったのか
どこか優等生的な部分が強かった
優しさで他人に接して
そして他人に尽くす

それって
孤独を怖れているだけじゃん

弱い人
そんな風にしか感じられなかった…

もう龍一とは会うまい
そう、心に決めた


一週間ぶり
幸は出社した
あたしは仕事に生きるんだ
どんなに時間がたっても
どんなに イケメン でも
どんなに いい条件の男性が現れても
好きになることは無いのだ
タカシ タカシ 尚 以上には…
四か月前に他界した尚以上には…


新しく出勤して、部長にことごとく小言を言われて
そして昼食のハンバーガーをもどしてしまった。
そういえば 吐き気が 数日前から続いている

まさかかと思い 婦人科を受診した…

妊娠7週だった
尚との子供だ
それも尚が事故を起こす直前に出来た仔だ
涙があふれていた
涙が止まらなかった
涙はうれしいに違いない涙だった。


尚に又会える
そう思った…



だから もう、スクーターには一生乗るまいと誓った…

後書き

ちょっとクール

この小説について

タイトル ヴァグァブゥオンドゥ〜漂流
初版 2011年2月21日
改訂 2011年2月21日
小説ID 4215
閲覧数 750
合計★ 3
エーテルの写真
ぬし
作家名 ★エーテル
作家ID 179
投稿数 38
★の数 72
活動度 6746

コメント (3)

★那由他 2011年2月21日 22時19分31秒
こんばんは。那由他と申します。

御作を拝読いたしました。拙いコメントになりますが、感じたことを書いておきます。

最初は高校生同士の話だと思いこんでいたのですが、社会人でしたね。意図されたものなのかどうか、わかりませんが、個人的には前半と後半のギャップがいい意味で吸引力のある展開でした。

あっさりとした味付けのモノローグとでもいいましょうか、作品の雰囲気は私の好みでした。最後の締め方も読んでいてホッとした気持ちになります。「幸」という名前のとおり、これからたくさんの幸福が彼女におとずれるよう、願いたくなるような、そんな読後感でした。

気になった点を書いておきます。揚げ足をとるみたいで、すみません。四ヶ月前に尚が死んでいるのだとしたら、妊娠十六週目ぐらいになると思いますので、妊娠七週目というのはちょっと少ないかな、と。妊娠十六週目になるともう安定期ですので、つわりがそろそろおさまる時期ですね。細かいことで恐縮ですが、少し計算が合わないな、と思いましたので。あと、妊婦を診るのでしたら「産婦人科」か「産科」で、「婦人科」ではないと思います。「婦人科」は子宮や卵巣に関係する病気を診察する診療科ですので。男性にはあまりなじみがない診療科だと思いますが。

コメントは以上です。いろいろと書いてしまってすみません。的外れなコメントのようでしたら、平にご容赦ください。
次回の作品も期待しております。
それでは失礼いたします。
★連打 コメントのみ 2011年2月27日 19時48分03秒
拝読させていただきました。前科者の名ばかり管理人です。ウキャー。
吉村萬壱「チュクチュクバーン」のような、なんというタイトルホイホイ。ヴァガヴォンドォ。いい。声に出して初めてわかる良さ。男子は濁音が好き。
「ラーメンしかなかった…ラーメンはもうたくさん…」
この一文は素晴らしい。書いていないとこういうのは出てこない。笑える。でも悲しい。ラーメンの油と一緒に、つばが浮いていてもいい。てらてら光っている。
さ、俺も頑張って続き書こう。
★エーテル コメントのみ 2011年3月2日 22時36分42秒
那由他 様
連打⇒

返信遅れてしまいました

誰かを好きになるというのは
かなりのデメリットを産んでしまいます

だから恋愛は危険でもあります

去って行った人
その人への想いが強ければ強いほど
違った恋愛には進めません

進みたくても進めないものです

時は癒してくれますが
出会いて言うものは大切だし
でも
前の人と比べてしまうとどうしても納得いく交際になれない

異性なら誰でもいいというわけにはいかないですからね

正直あかしておきますが
性別シチュエーションはアレンジしましたが
実際 エッセイ的な部分で書きました

勇気と将来について前向きに生きていきたいものです



ご拝読ありがとうございました…
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