咲カナイサクラ


 俺が通う高校には、伝説のようなものが生徒たちの間で語り継がれている。
 多感な思春期の重要なウェイトを占めるこの3年間は、やはり恋愛というものに生徒はある種の憧れを抱くと思うが、まさにそこから生まれたと思われる顕著な例の伝説である。
「………おい山田、聞いてるのか?」
 友人の声で俺は我に返った。俺は教室でいつものように携帯をいじってボーっとしていた。
「え? あぁ悪い。聞いてなかった」
「ちょっとは言い訳してほしいんですけども」
 俺はよく友人の鈴木の話を聞き流してしまう癖がある。理由は単純、コイツは面白くない。
 別に先生の話が聞けないわけでもなく、クラスメイトから話しかけられるのを華麗にスルーするのに長けているわけでもない。ただ純粋に、鈴木の話はびっくりするほどに面白くないのである。
 どうせ今回も………と思っていた俺の耳に、今最も過剰に反応してしまう単語が聞き取れた。
「彼女」
「………へっ?」
 間抜けな顔で聞き返す。
「いや、だからさ。俺に彼女ができたんだよ」
 時間が、止まった。するとすぐにどうしてか、イライラした感情がわき出てきた。
「………ついにお前も幻想郷入りしたってことか?」
「あぁそうだ霊夢は俺の………ってお前、それ以上は教室で言うことじゃないからやめてくれ。だから、俺に3次元での彼女ができたんだって話。信じられないのは分かるけどさ」
「その彼女って言うのは誰さ?」
 不信感をたっぷり込めて言い放つと、鈴木は教室の隅にいたある女の子に手招きしたのである。
 すると女の子は最初は戸惑った様子だったが、あまりに鈴木がしつこく手招きをするので、観念してこちらにゆっくり歩いてきた。
 俺は歩いて来る女の子を見てますます驚愕した。
「ごめんな、コイツが俺の彼女」
 鈴木は女の子を肩に抱き寄せた。
 その女の子―――堀谷さんは俺に対してほんの小さく会釈をした。
 俺は驚きとショックで言葉が出なかった。
「ごめん、ありがとう。もう戻っていいよ」
 わかった、と小さな声で堀谷さんは言うと元いた場所へ戻って行く。
「いや、悪いな。実は堀谷のほうから俺に告白してきたんだよね。伝説通り、4時に桜の下に呼びだされてさ」
「………お前、なんで俺に今その話をするんだよ。というか、俺の事件知ってるよな?」
「………申し訳ないが」
 何を隠そう俺は2日前、堀谷さんに告白をしているのである。学校の伝説通り、校庭の隅に一本だけある桜の下で午後4時に告白をすると必ず成功するというのに則って。
 結果は見事玉砕。好きな人がいると言って振られた訳だが、まさかその人が鈴木だとは、たとえ親友だからと言って生かしておくわけにはいかない。
「でさ、このまま隠しててバレたら怖いし、何より山田に黙って堀谷と付き合うとかどうしても俺の良心が痛んでできなかったんだよ。だからさ、なんとか許してくれないかな?」
 珍しく鈴木が真剣な顔をして俺に話しかけてきている。俺はすぐにここはふざける様な場じゃないと理解した。
「………分かったよ、勝手にやれよ。別に振られたことなんて気にもしてねえし」
「じゃあなんで靴下を互い違いに穿いてんだよ」
「やっぱお前今死んどけ、このリア充がぁ!」
 机の上に盛ってあった消しゴムのカスを鈴木の顔の思いっきり投げつけた。


 俺はため息をついていた。ただのため息ではない、元水泳部の肺活量を存分に発揮した特大のため息である。
 俺と鈴木はモテないキモオタ同盟を結んでいたはずである。でも、文書通してないし、無効なのかな、というつまらない一人ツッコミも、虚しく頭の中を反芻するだけだった。
 伝説通りにちゃんと午後4時に桜の木の下で告白したのに、なぜ鈴木は成功して、俺は成功しないんだろう。
 学校中のカップルの8割が、この伝説を用いて成立しているという話も聞いたことがあるし、失敗したという例を今まで聞いたことがない。
 気がつくと俺は例の桜の木の側にまで来ていた。帰宅部の俺が放課後にこんな場所にいるのは、どう考えても不自然である。
 鈴木は補欠だがサッカー部だし、その点で成功したのかな、などと考えていた。
 世間に春は来ていても、俺に春は今まで一度も来たことはない。

 ―――しかし、この桜に春が来たところを見たことは、一度もない。

 幹は飛行機のタイヤぐらいある。太い根は俺の胴ほどあり、ちょうど目線の高さあたりに大きなのうろがあるこの桜には花が咲かないのだ。
 どうやら開校当時からここにあるらしいのだが、植物医を呼んで診察してもらったところ、死んではいないという判断だったし、花が咲かない理由が見当たらないという。
 この話は30年以上うちの高校に勤続している先生から聞いたものである。もう1つ興味深い話を聞いたのだが、どうしてだか忘れてしまった。
 生徒の間では、この桜に春が来ない分、カップルに春をもたらしているなどという浮ついた話が出回っているが、俺に春を分けないなんて、ついに植物からも差別される時代になったか。
 次は誰を好きになろうか、堀谷さんのような物静かな女の子が俺はタイプである。そうだな、隣のクラスの大西さんなんか俺は好みだ。彼女は学級委員も務めているし、非常にしっかりした人だ。去年同じクラスであったことから、偶然にもメールアドレスも知っているし仲もいい方である。よし、大西さんだ。
 安易な考えで好きな人を変えるなんて、自分でもよくないことだって言うのは分かっている。ただ、傷ついた心を癒すには、これが最善の方法であると俺の中ではじき出した
 別に堀谷さんに振られたことがショックなわけではない。なぜ俺にだけこういう仕打ちなのかが理解できないのである。
 根も葉もない伝説を信じ込んで憤慨するなんて、落ち着いて考えればおかしな話だというのに、それに気付かない自分が恥ずかしかった。
「ちくしょう!」
 渾身の力で桜に蹴りを入れるが、びくともしない。当然である。
 体力の消耗の裏腹に、何も起きない世界にいらだちを感じた。
 何をバカなことをやっているんだと感じ、さっさと帰路につこうと思った時、どこからともなく「あぶない!」という声が飛んでくる。
 何事だと思い、辺りを見回していると頭部一瞬の痛みと共に、眼前が漆黒に包まれた



 痛みはもうほとんど感じなくなった。
 なぜだか体が包まれるように温かく、リラックスしきっていた。抽象的な言葉だが、『気持ちいい』という表現が最も的確である、そんな感じだった。
 誰かが俺の頭をなでてくれている。まるで優しく吹くそよ風のように。
 そうか、体が温かいのではなく、俺の冷え切った心を誰かがそっと温めてくれているんだ。
 誰かが? じゃあ、一体誰に?
 その答えを得るべくして、俺は急激にまぶたを開いた。
「ひゃんっ!」
 俺が急にまぶたを開いたから驚いたのだろうか。女の子が俺の眼前で涙目になっている。
「あれ?」
 俺は横になっていた。さらに目の前の女の子に膝枕までしてもらっている。俺は全く状況を飲み込むことができなかった。
「あ、ようやくお気づきになられましたね」
 女の子が優しく艶やかにほくそ笑んだ。女の子の顔が近い。こんな距離で話したのは初めてかもしれない。
「え? あ、あのー………」
 俺は誰が見ても動揺していた。知っている人ならまだしも、見たこともない女の子に膝枕をしてもらっているのだから。
 慌てて体を起こした。女の子は少し驚いてのけ反る。
 体を起こしたことにより、俺の視界にはこの世のものとは思えぬ光景が広がっていた。
 文句のつけようのない快晴で、桜吹雪が舞う。さらには大樹には桜色の光がまばゆいばかりにちりばめられており、空色と桜色のパステルカラーのコントラストは桃源郷をイメージさせた。
「………ここは?」
 女の子のほうに向いて問いかけた。
「『桜待の丘』と申します。この世とは美しいところでしょう?」
「え、まぁ。あなたは誰? なんで俺はここにいるの?」
 俺の頭の中ではまだ10%も状況が理解できていなかった。実は、本当にここはこの世ではないんではなかろうか、などという最悪の事態も想定してすでに心の準備をしていたのは秘密である。
「申し遅れました、私、桜歌姫(おうかひめ)と申します。単純に姫と呼んでくだされば結構ですよ。それで後の質問ですけども、残念ながら私にもよくわからないんです」
「そうですか………」
 俺は力が抜けてその場に座り込んだ。草原の上には散った桜が雪のように積もり始めていた。桜を手につかむと、何をするのでも無しに適当に投げつけた。
 そう言えば頭に何かぶつかったみたいだし、その拍子に死んじゃったのかな、などと考え始めた。
 はぁ、短い一生だったな。結局彼女はできず、童貞だったし。いいことなんて何にもなかったじゃねえか。別に残すこともないしここが天国ならそれでもいいか。かわいい女の子もいるし。
 静かすぎるこの世界で俺の思考は麻痺し始めていた。生に対する執着は徐々に薄れ、たった数分でこちらの世界に酔い始めてきていた。
 すると姫が俺の元に寄ってきた。
「どうかなさいましたか?」
 よく見ると、姫は時代錯誤な格好をしている。洋服ではなく、少し質素な和服を着ている。現代人から見ると、それでも十分に美しいのであるが。
 年はちょうど俺と同じぐらいで、少し垂れた目が姫の優しさを十二分に表現しているようだった。おとなしそうで整った顔、俺のストライクゾーンでは直球ど真ん中である。
「どうもしないけど、こっちの世界もいいかなー、って思ってきたところさ」
 俺は空を見上げながら言った。
「私も、もう500年はここにいますから、愛着しかございませんよ」
「500年も1人でここにいるの?」
「はい、1人でございます」
 姫のこの言葉で俺はここがあの世であることを確信した。どう考えたって、生身の人間が500年も老化することなくいれるはずがない。
「ここはずっと桜が咲いてますし、ずっと晴れてます。夜は来ますけども、それ以外は何も変わり映えしない毎日。私の日課と言えば、桜の大樹の幹にあるうろの中に、夜が来るたびに小石を入れることですかね。365個たまれば、一度小石を全て外に出す。それを繰り返して500年なんです」
「………」
 途方もない時間に俺は言葉が出なかった。姫はそんな長い間、一人ぼっちでつらかっただろうなという同情の念がわき出てきた。
「大丈夫。これからは1人じゃないからさ」
 初めて女の子に男らしい言葉をかけれた気がする。自己陶酔してしまいそうだった。
「ありがとう」
 すこし震えた声で姫は言った。
 それから少しの間、姫と他愛のない会話を楽しんだ。
 これほど楽しかったことは、生きている間にあっただろうか。少なくとも俺の記憶には残っていない。
 そうしてこの世界に夜が来た。俺が経験する初めての夜。しかし姫にとっては何万分の1でしかない、夜。
 灯りがない世界だから、真っ暗になるんだろうと思っていたが、月が空に架かり、その光を浴びて桜の花びらが蛍のように自ら淡く発光し始めた。これは前の世界にはなかった現象である。
「今日は俺が小石を入れてくるね」
 俺はゆっくりと立ちあがり、大樹に向かった。
足元にあった小石を手に取り、目線の高さにあるうろに石を入れる。
 そこで、一つの疑問が生まれた。
 木の幹にうろ? 目線の高さで?
 良く見まわしてみると、この幹に根、枝ぶりまでどこか見覚えがある。
 これは、高校にある咲かない桜であることを俺は確信した。
「どうかなさいましたか?」
 ずっとその場に立ちつくしていた俺を心配して姫が駆けつけてきた。
 俺は姫に対して何か言葉を投げかけることができなかった。
「大丈夫ですか?」
 俺は、意を決した。
「姫、………あなた、俺がここに来た理由知ってますよね?」
 俺の唐突な発言にも、姫の表情は揺らがなかった。
「やっぱり、気付かれましたか?」
「やっぱりじゃない。何か企んでるよね?」
 姫は一歩下がって口を開いた。
「全て、お話しましょう」
 俺の喉が小さく鳴った。丁度いい気候なのに、汗が噴き出してきた。
「私は、私が生きていた時代に恋をしていました。相手の人は下流武士で、私は一国の主の娘。相思相愛でしたが、身分違いの恋でした」
 俺は話を聞きながらその場に腰を下ろしたが、しかし姫は依然として立ったままだった。
「ある日、私は城を抜け出して、その人に会いに行きました。この桜の下にです。彼が戦に出かける前日でしたので、労いの言葉をかけに行ったのです。はっきり言って戦の勝敗は見えていました。敵戦力は我が城の数倍あり、敗戦覚悟の出兵でした」
 姫は止まることなく続ける。
「私も彼に会うのは最後かもしれないという覚悟はしていましたが、『帰ってきたら、またこの桜の木の下で会おう』という契りを交わしたのです。その言葉が、諦めかけていた私を繋ぎ止める、最後の欠片でした」
 俺は耳を背けたくなった。しかし、逃げるという選択肢はないに等しい。
「戦の結果は惨敗。彼が帰ってくることはありませんでした。しかもその数日後、敵が城に攻め入り、火を放たれ、落城いたしました。私もその時は城の中に避難していましたが、火は避けることができず、そこで死んでしまいました」
 姫の声が、少し震えだした。
「しかし私は嬉しかったのです。これでようやく彼に会える。その時を楽しみにしていたのです。しかし生前私がこの桜に対する未練が強すぎたせいで、願いはかなわず、中途半端にこの桜の世界へと迷い込んでしまったのです。彼に会いたい、その願いが叶うことはなかったのです」
「もう嫌なら、止めても………」
「そこへ、あなたが現れたのです」
 俺はうつ向いていた顔を上げた。姫は大粒の涙を何粒もこぼしていたが、笑顔でいた。背後には大きくそびえる桜が彼女の妖艶さをより引き立てている。
「あなたは、似すぎているのです、彼に。顔といい、性格といい、私の理想だったのです。そして私がこの世界へ呼び込んだ―――本当に申し訳のないことをしたと思っています」
 劇的すぎる、悲劇―――。俺の身に起こった出来事など、姫の前では皆無に等しい。
 姫が一歩。また一歩と俺に歩み寄ってくる。
「一緒に、いてください………どうか…………………お願い………」
 姫は俺の胸に体を預けてきた。
 カッターシャツを通り抜け、俺の皮膚を姫の涙が熱く染めた。
 でも、それはできない相談である。俺がまだ死んでいないとわかった以上、まだ生きていたい。ここにきて、身勝手な生への執着が噴出してきた。
「姫、それは………できません」
 こんなことを言うのは非常に心が痛かった。少し姫に共感できる部分があるからである。
「どうして? どうしてなの? それは私が………」
 姫の頭にあったかんざしが、力なく大樹の根元へと落ちた。


  こんなかおだから?


 胸にうずめていた姫の顔が目前に迫ったかと思えば、その顔に皮膚らしきものはどこにも張っていなかった。赤い筋肉が露出し、髪の毛も数本を残して抜け落ちており、眼球が不自然にうろうろしている。
 声にならない叫びでパニックに陥り、恐怖と気持ち悪さで、酸っぱい味が口の中を支配した。
「ねぇ、助けてよ………私を助けて…………?」
 姫はそれしか言わなかった。願望への執着は、言いにくいが、姫の現在の容貌のように醜かった。
 ここで、高校の先生から聞いた話を思い出した。
 昔このあたりで戦があり、その戦で死んだ侍の恋人がこの桜の木の下で腹を切って自害したという話を。少し内容は違うが、姫のことで間違いないと思った。
 俺が一歩下がるごとに、姫は一歩前に出る。逃げ出すことはできない。
 気持ちが、揺らぎ始めた。助けてあげたいが、ここにいたくはない。身勝手な気持ちだったが、それが両立できるなら是非そうしたい。
 そう、もう姫を―――。
「………ごめんなさい」
 姫を優しく、強く抱きしめた。姫の頭を支える右手が滑り気であふれたが、今はそんなことを気にも留めなかった。
「俺には、好きな人が―――堀谷さんという好きな人がいるんです。だから、姫と一緒にはいられません」
 姫が、動くのをやめた。
「姫もつらいと思いますけど、俺もつらいんです。姫は美しいし、女性らしさに溢れています。俺も姫のことが大好きです。でも、俺はその武士ではないんです。俺なんかと一緒になるより、その方と一緒になった方が、姫も幸せでしょう? だから、そう。ゆっくり、休んでください。きっと、会えるはずですから」

 姫は胸の中でうなずいた。何度も、何度もだ。
 すると姫は俺の腰に手を回し、強く抱きしめてきた。
「ですよね、そうですよね」
 涙声だった。姫は少し距離をとって言う。気がついたのだが、姫の容姿がいつの間にか、あのかわいらしい風貌に戻っている。
「ありがとう」
 刹那、姫の体が透けたような気がしたが、徐々に残影となってゆく姫に、俺は抗うことのできない運命のようなものを感じた。
 消えゆく姿は、桜の花びらと化して夜空へと立ち上ってゆく
 当初残影の背景だった大樹は、その立ち位置を逆転してしまっている。
「姫………」
 俺は別れを惜しむようにつぶやいたが、それに呼応するように一番の笑顔を見せてくれた。
 残影が全て消え去った後に残ったのは、俺の頭の中に反響するこの言葉だけだった。


(あなたに会えて、よかった)


 夜空に消えてゆく花びらを見て、俺は何かを得ることができたような気がした。



















 という夢を見た。
 目を覚ますと、俺は保健室のベッドに寝ていた。
 どうやら、俺は校庭の桜の木の下でサッカーボールに襲撃されたらしい。その後、気を失ってしまったため、保健室へと運ばれてきた次第らしい。
「ちくしょう、嫌な夢だったな」
 顔をしかめながら頭を強く掻いた。
 日が落ち始め、空は夕焼けに染まっている。すると、遠くの方にではあるが、俺は確かにそれを確認した。

 決して咲くことのなかったあの桜が、どうだと言わんばかりに咲き誇っているのを―――

 俺は安静にしていなさいと言う養護教諭の制止を聞かず、慌ててあの桜に駆け足で向かった。
すでに生徒たちが桜の周りにたむろしていたが、そんなことはどうでもいい。ここは先程まで、俺たちの世界だったのだから。
 見覚えのある幹、根、目線の高さのうろ。何より絶世の桜の花々………これはやはりあそこにあった大樹そのものである。
 人目をはばからず、おもむろに木のうろを覗き込むと、案の定だった。
 あの時置いた小石が散乱しているのが見て取れた。
 こんな位置に、小石があるなんて不自然すぎる。
 夢じゃなかったのか? しかし、どの小石を置いたのかは分からないし、成長の過程でここに石が乗ることだってあり得る。鳥の仕業かもしれない。
 その時、俺の足元に何か違和感を感じた。すぐに足元を確認する。
 それはあの出来事が夢ではなかったことを決定づける物証だった。
 それを見つけた時、俺の顔からは自然と笑顔がこぼれ出た。
 すると、鈴木が俺に話しかけてきた。
「おい山田、大丈夫だったのか? その、頭」
「え、あぁ。心配しててくれたのか。ありがとう」
 珍しい鈴木の一面に、感心する俺であったが。
「心配って言うかその、お前にぶつけたの実は俺なんだよね」
 俺の顔から一瞬にして笑顔が消えた。それを見て鈴木は思わず身構える。
「ちょ、ごめんって!」
 しかし鈴木の予想とは裏腹に、俺は高笑いをした。
「………頭ぶつけておかしくなったのか?」
「ははは。いや、人生どんなことが出会いに結び付くか分からないもんだな」
「どうしたんだ、急に?」
「まぁいいじゃないか。お前、部活、もう終わりだろ? 一緒に帰ろうぜ! あと、堀谷さんのことは絶対お前に譲らないからな!」
「なんでそんな急にポジティブになったんだよ」

 何でもない、と流しつつ、俺は右手に持っていた古びたかんざしをポケットにしまった。

後書き

前半と後半で意図的に文体を変えてみたりしたんですけども・・・。
というか、姫の人物設定がぐちゃぐちゃ過ぎて自分が読んでても混乱しました。
直せよ、と思われるかもしれませんが、これが今の自分のせい一杯です。





………個人的には、オチがバシッと決まっていれば☆5つなのですw

この小説について

タイトル 咲カナイサクラ
初版 2011年3月22日
改訂 2011年3月22日
小説ID 4243
閲覧数 949
合計★ 8
せんべいの写真
作家名 ★せんべい
作家ID 397
投稿数 66
★の数 625
活動度 12726
卓球とみたらし団子とピアノが大好きな変態です

コメント (2)

★那由他 2011年3月22日 22時57分05秒
こんばんは。那由他と申します。

御作を拝読いたしました。読んでいて感じたことをコメントしておきます。なお、コメントはすべて私見であることをお断りしておきます。

最初に読んでいて気づいた誤字などを挙げておきます。

>鈴木の顔の思いっきり投げつけた。
「顔に」でしょうか。

>大きなのうろがあるこの桜には花が咲かないのだ。
「大きなのうろ」の「の」が衍字でしょうか。違うのかもしれませんが。

>眼前が漆黒に包まれた
最後に句点(。)がありません。


「いいハナシだなー」が正直な読後感です。花が咲かない桜の木と姫さまの登場で、なんとなくオチは読めたのですが、最後まで一気に読者を牽引していく勢いがありました。五百年もの年月のあいだ、ずっと凍てついたままだった少女の心を融かしてしまうシーンはとても絵になりますね。桜の花が舞い散る情景が頭に浮かんできて、イメージがきれいでした。かんざしの伏線も効果があり、とても好みのストーリーで楽しかったです。

気になった点は五百年ものあいだ凝りに凝っていた姫さまの妄執(?)が主人公のセリフだけで氷解してしまい、ちょっとあっけなく思えたことでしょうか。「俺には好きなひとがいるんです」という彼の口上も、直前で大西さんに乗り換えようか、などと思っていたことから、どこまで真剣なのかな、という印象はありました。あと、これは個人的な好みですが、せっかくですから姫さまだけでなく、堀谷さんにももっと活躍してもらいたかったです(笑)

コメントは以上です。いろいろと書いてしまい申し訳ありません。あまり参考にならないかもしれませんが、少しでもお役に立てるようでしたら幸いです。最初にもお断りしましたが、あくまでも私見ですので的外れなことを書いているかもしれません。

次回の作品も期待しております。これからもがんばってください。
それでは失礼いたします。
安中 2013年6月26日 16時31分22秒
せんべいsの話の中で、これが1番好きです!
全部良いです。本当に!


いやぁ〜。せんべいsはホント凄いですよ。
こんなに人を引き込むような、素敵な話が書けるんですから!!
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