メイワクな贈り物 - 最終話『迷惑だった贈り物』

頭の中は真っ白な雪国の世界のようだった。
何の感情も生まれない、物事一つ考える気力すらも湧かない。
ただ一つ、自分にとっての希望が見えていること。

自分の生活が元通りになる。

世間では恐れられている不良の自分、置田浩二はあることがきっかけで一人の子供の面倒を見ることになり、自由や落ち着ける場所がなくなっていた。

それが今夜で終わる、最高の出来事。
自分はその時が来るのを待っていた。
成大高校二年D組で行われている授業など当然耳には入ってきていない。
授業中に窓の外を眺めている姿を怒る教師はいない、もちろん自分限定だ。

正志「失礼しまーす」
教室の後ろの扉が開く。
忘れていた、授業中に堂々と教室の扉を足で開けるような生徒がもう一人いた。
坂本正志、幼馴染でこの辺では有名な不良チームのリーダーをしている。

正志は一番後ろの窓側席にいる自分のもとへと歩いてくる。
教師や生徒はやはり恐れて何も口を挟まない。

正志「よう」
浩二「授業中になんだお前は」
正志「はっはっは、いやぁちょっと小言を言いにきたのよ」
大声で笑いながら肩を二度叩く。

浩二「あ?」
正志「なんでお前ここにいる?」
浩二「バカかお前は、生徒だからに決まってんだろ」
正志「バカはお前だコラァ!!!」
浩二「………っ」
正志が繰り出した拳は眉間にヒットし、自分は身体ごと地面に叩きつけられる。
喧嘩最強とも言われているこの男が本気で殴ったとなれば自分だってただでは済まない。
叩きつけられた自分の頭は少し床にめり込んでいた。

正志「何やってんだよコラ!今夜月夜ちゃん帰るんじゃねぇのか!!」
浩二「テメェコラ……そんなことを言うために」
正志「真夜ちゃんは学校まで休んでんだぞ!幼稚園にだって一緒に挨拶に行ってるって!」
浩二「だからなんだ」
正志「だから、お前はここで何やってんだ、って聞いてんだよ!!」
浩二「ガタガタめんどくせぇんだよ!!」
起き上がった自分もまた、負けない勢いで正志の腹部に蹴りを繰り出した。
見事にヒットし、彼の身体は後ろの扉のところへと吹っ飛んでいく。

月夜のもう一人の保護者、鏡真夜が正志に伝えたのであろう。
今夜月夜は親のもとに帰ります、と。
この調子だと自分の姉や生徒会長の耳にも入っているだろう。

正志「最後の…日に、なんで一緒にいねぇんだよっ」
腹部に手を当てて立ち上がる正志は一歩も引こうとはしない。

浩二「俺を知ってんだろうがよ!何年俺といてんだお前は!」
置田浩二という人間、無愛想で冷血、冷静で優しさのカケラも見せたことのない男。
月夜という存在も、真夜という存在も鬱陶しいとしか思っていないこと。
この男も当然それをわかっているはず。

正志「知ってるに決まってんだろうが!だから……」

怒ってるんだ、と。
頭の中は真っ白で寒さを感じるほど苛立ちを覚えていた。
机を蹴り飛ばして正志の横を通り過ぎて教室を出る。

正志「あの子の父親は誰だ!!」
彼の怒声は学校中に響くほどだった。

――――だから今夜迎えに来るって言ってんだろうが。
殴られた眉間の痛みに耐えながら無人の廊下を歩く。
今日一日どこかで時間を潰していれば全てが終わっているんだ。
迷惑な全てが。



油断をすれば泣いてしまいそうだった。
鏡真夜は幼稚園で友達とお別れをしてきた月夜と一緒に、残り少ない時間を過ごしていた。
一緒に公園で遊んで、一緒に甘いものを食べて。
それでもやはり時々月夜は寂しそうな表情をしていた。
月夜は短気だが間違いなく浩二のことを慕っていた、しかしこの場に彼はいない。
真夜は母親と認めても彼だけは絶対に父親と認めることはなかった。

真夜「ね、月夜?」
月夜「え〜?」
ベンチに座り、アイスを頬張りながら少女は返事をする。

真夜「もしも…向こうの世界が嫌になったら帰ってきてもいいんだよ」
月夜「…ママ」

最後の最後くらい偽者でも母親らしいことを言ってやりたかった。
本当は一生一緒にいたいと泣き叫びたいけど、そういうわけにもいかない。
少女は不思議な力を持ち、非現実的な状況で生まれた。
人間ではなく精霊族であることが判明した月夜が、真夜のわがまま一つでどうにかなるものではない。

月夜「でもそーなったらコージ怒るだろうなぁ」

父親と認めない彼は最後まで少女にパパとは呼ばせなかった。
月夜は嫌われているとわかっていても彼が大好きな気持ちはずっと変わらなかったんだ。



赤い夕焼けの空。
この空も時期に暗くなり、夜へと変わっていく。
行ってほしくない、ずっと一緒にいてほしい気持ち。

真夜「それじゃ月夜、学校の屋上に行こうか」
月夜「…うん」

悲しそうな表情をしてしまえば余計に月夜を苦しませるだけ。
今にも口の中が切れてしまいそうなほど歯を食いしばり、いつもと変わらない笑顔を少女に向けていた。

浩二と月夜と3人で遊んだこと、家でのんびり過ごしたことなど、数え切れぬ思い出たちが真夜を襲う。
それでも真夜は耐えた。

無人になった校舎、月夜と手を繋いで上る階段。
到着地点はそう、初めて月夜と出会った場所。
そして浩二と《再び出会えた》場所。
屋上へと繋がるこの扉をどれだけ開けたくないか、手が震え鉄製のノブを回すことができない。

月夜「ママ?」
真夜「あ、ごめんね、ちょっと錆びてるみたい」
嘘を付き、無理やり震えた手を押さえて古びた扉を開け放った。

月が出ていた。

それはスタートの頃と同じ風景。
ただ違っていたのは、

正志「おっそいぞー!」
瑞樹「月夜、今日一日楽しめたか?」
亜夜「真夜、月夜、こんばんは♪」
ヒロミ「あのバカは…やっぱり来てないか」

生徒会長の瑞樹と真夜の母である亜夜、浩二の姉の浩美、そして浩二の幼馴染の正志がすでに待機していた。

月夜「わぁ〜!みんなぁ!」
月夜が嬉しそうに走り回る。
真夜は周りを見渡すが、やはり浩二の姿は見えない。

ヒロミ「あのクソ弟が……探してくる!」
正志「だってよ、どうよ浩二?」
浩二「ったく、弟の顔が見てみたい」
開け放たれた扉の向こうから現れたのは誰でもない、彼だった。

月夜「コォーージーー!」
興奮した月夜が周りの目も気にせずに空を浮遊しながら向かってくる。
外では力を使うのは禁じたはずだが今日のところは大目に…、

浩二「テメェクソガキ、人前で空飛ぶなっつったろうが!」
月夜「あっ!わすれてた」

正志「……今、空飛んでた気がしたが…気のせいかな?」
浩二「まぁ、こいつ人間じゃねぇからな」
正志「あぁ、それでかぁ」
浩二「あぁ」
正志「………」
浩二「精霊だそうだ」
正志「………」
浩二「………」
正志「びっくり!!」

言われてみれば月夜の正体を知らないのはこの中では正志だけ。
浩二の人間性からして詳しく説明するというのが面倒だったのだろう。

ヒロミ「知らねぇのはお前だけだ」
正志「ひどい!浩二!!俺たち親友じゃなかったのかよ!」
浩二「あぁ、お前は珍友だとも」
正志「それバカってことですよねっ」

とても平和に感じた。
とても幸せに思えた。
それはお金持ちに生まれてきたからといって手に入るものではない。
真夜は左耳に付けてある《彼》からもらった大切なピアスを一度指先で触れる。
この光景をずっと、ずっと見ていたかった。



月夜「コージ、コージ!」
浩二「あんだよ、鬱陶しい」
月夜「わたしね、ものまねできるの!」
浩二「なんだそれ…」
時が来るまでの他愛のない会話達。

月夜「えとね、えとね」
浩二「……」
月夜「めんどくせぇ」
浩二「……他は?」
月夜「うるせぇよ」
浩二「……他は?」
月夜「うっとうしぃ」
浩二「……他は?」
正志「どすこい!今日の晩御飯!」
浩二「言わねぇよ!」

最後の最後までいつも通りの調子、しんみりするよりは幾分かマシだろう。

月夜を抱き上げている亜夜の目は少しだけ赤かった。
祖母にあたる彼女も必死で辛いのを耐えているのだ。

真夜「浩二さん」
浩二「説教を聞くつもりはないぞ」
真夜「信じてました、来てくれるって」
浩二「全てから解放される大イベントだ、参加して当然だ」
真夜「はい、本当にありがとうございます」

突如、かつて月夜が現れた時と似た光が辺りを包み込む。
自分と真夜以外はみんな何事かと周りを見渡している。


本当に現れた月夜の親。
自分たちと変わらない人間の姿、もしかすると真実の姿はもっと恐ろしいものなのかもしれない。

「初めまして」
「……初めまして」
少し大きめの身体の父親、大人しそうな母親、月夜は間違いなく母親似だ。

月夜「パパ…、ママ?」
父「そうだよ月夜、会いたかった」
母「ええ、ママよ」

月夜がゆっくりと二人のもとへと歩み寄る。
真夜はその姿を直視することができないのか、ずっと下を向きっぱなしだった。

月夜「あぁあぁぁぁああっ」
母「ああ、本当によかったっ」
母の胸に飛び込む姿はまさしく親と子だった。

父「娘がお世話になりました」
真夜「ぃぇ…」
父「いい子に育ってます、本当に」
浩二「相当鬱陶しいガキだった」
真夜「月夜はいい子…です」
真夜は歯を食いしばって今にも流れそうな涙を堪える。

本当の親ではないという事実を改めて実感しているのだろう。

真夜「それじゃぁ月夜…元気でね」
瑞樹「真夜、それだけでいいのか」
亜夜「真夜…」
ヒロミ「もっと伝えたいことあるんじゃねぇのか?」
真夜「ううん…大丈夫」
月夜「マ…マ」

浩二「ほんっとうに迷惑なガキだった」

タバコを口に銜えて背伸びをする。
これで全てが終わり、やっと縛り付けていたものから解放されるんだ。

月夜「…コージ」
浩二「いきなり現れたと思ったら勝手に家に住み着きやがって」
ヒロミ「おい浩二、いい加減にしろ!」

自分の姉が何を言おうが構わない、溜まりに溜まったもんを全て吐き出してやれ。

浩二「朝は無理やり起こされるわ」
       『コージ!あ〜〜〜〜さ〜〜〜〜!!』
浩二「晩飯は勝手に横取りしやがるわ」
       『もう食べちゃったもんっ』
浩二「幼稚園の送り迎えとか面倒すぎるしよ」
       『いってきまーす、と学校いってらっしゃーい』
浩二「不思議な出来事に巻き込まれて何度も死にかけた」
月夜「……」
迷惑だった思い出たちが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。

父「本当に申し訳ないことをした」
母「ごめんなさい…」
父「お詫びと言ってはなんだが…」
母「何か一つお願い事をかなえさせてください」
浩二「あ?」
父「私たちには力がある、何でも願いごとを言ってくれ」
深々と頭を下げて謝罪をする親、それを見た自分は腕を組んで考える。

真夜「そんなものいりませ…」
浩二「マジでかっ、やったね、なんでも?」
母「はい、何でも叶えます」
浩二「最高じゃねぇかっ!」

瑞樹「置田!お前…っ!」
浩二「おいおい何怒ってんだ、何でもだぞ?」
ヒロミ「バカ野郎!」
正志「……」

説教してくる一同を無視して何でも叶えてくれるというお願い事を考える。
そう、何でもだ、ちっぽけなものだったらもったいない。

高級マンションを建ててもらう、とか。
いやいや、それなら金持ちって言った方が断然いい。
一生働かなくていいし、明日から学校も行かなくていい、最高じゃないか。

       『コージ』
こんな迷惑なことをされたんだから、誰も文句は言わせない。
       『コージ』
自分の貴重な時間をどっかのクソガキに奪われたのだから。
       『コージ』

月夜「…コージ?」
浩二「おーし、それじゃあ願いを叶えてもらおうか」

ヒロミ「てめぇ、どこまで腐って…」
今にも殴りかかってきそうな雰囲気、今の自分にはそんなもの眼中にない。


浩二「願い事は……最後くらいパパって呼んでくれないか、月夜」



頭の中で、
ずっと頭の中で願い事を考えているフリをしていた。
パパと呼ぶことを禁止したのは誰でもない、自分だ。
父親と認めたくなくて、関わりたくなくて。

――――全部、強がりだ。

月夜「……パパ、パパ!!!」
本当の親がいるすぐ隣で、月夜は必死に言葉をこちらに放ってくる。
目を真っ赤にして、大量の涙を流しながら。


浩二「真夜、我慢すんな」
真夜「こ…じさん」
浩二「大丈夫だ、全部吐き出せ」
大丈夫という言葉で真夜は一気に肩を落とし、

真夜「づぐよーーーー!離れだぐないよぉ!!!」
月夜「…ママ」
真夜「向こうでも、ちゃんとご飯食べるんだよー!!!!」
月夜「うん!」
真夜「友達いっぱい作るんだよー!!!」
月夜「うん!」
真夜「それから…それから…」
月夜「ママ」
真夜「え?」
月夜「ありがとう」
真夜「……っ」

詰まりきった思いからはもう言葉が出てこない。

父「それでは、帰ろうか」
母「行きましょう」
月夜「…うん」

正志「月夜ちゃんバイバイ!」
亜夜「うぅ…ばいばぃ」
瑞樹「元気でな」
ヒロミ「また…会えるといいな」

空に舞い上がり徐々に小さくなっていく3人。
本当の母に抱かれた月夜は泣き顔で自分に問いかけた。

月夜「パパ、わたし迷惑だった?」

浩二「当然だ」

月夜「…そっか」

浩二「本当に……迷惑な贈り物だ」

月夜「おくりもの…」

浩二「世界一幸せな、迷惑な贈り物だ」


真夜「月夜、いつでも浩二さんと待ってるからね」

浩二「しかたねぇから、待っててやるよ」

月夜「……っ」

すでに視界に入らなくなっている月夜が必死に何かを伝えようとしているが、はっきりと聞こえない。
大きな光とともに、月夜は帰るべき場所へと戻っていったのだ。

ただ一言だけ。
ただ一言だけ自分たちに届いた言葉があった。



――――ありがとう、本当のパパとママ、と。









毎日何度も耳にするチャイムの音が一日の終わりを告げる。
担任が適当にホームルームを終わらせて教室を出て行くと、クラスメイトたちも終わるのを待っていたかのように動き出す。
自分も寝ぼけた頭を何度も振って意識をはっきりとさせてから立ち上がる。

「置田くんバイバイ」
「じゃあまた明日」
「置田、じゃーなー」

浩二「あぁ、じゃあな」

当然のごとく帰宅部である自分が学校に残る理由などない。
さっさと家に帰ってのんびりしたい、それが今の望み。

靴を履き替え、一人で校門まで歩いていく。
成大高校の不良問題児、置田浩二と一緒に歩くような生徒などいない。
いつも一人で、口数も少なくて。


そう、確か前はそんな感じだった。


真夜「浩二さん」

校門前で自分を待っていた女子生徒。
黒のロングヘアーの美少女、学校でも大人気だそうだ。

浩二「あぁ」
当然のように隣を歩く真夜。

「真夜、置田くん、ばいばい」
「置田先輩!鏡先輩!さようなら」

真夜「さようなら〜」
浩二「じゃあな」

不良とお嬢様なんていうミスマッチ、だが、まるでそれが当たり前かのような光景。
かつては挨拶をすること、されることなんて全くされなかった自分。
―――それは過去の自分だ。


真夜「そうだっ」
浩二「あ?」
真夜「さっき浩二さんに会いました」
浩二「そうか、どこの浩二さんだ」

突然謎めいたことを言ってくる真夜。

真夜「んー、浩二さんにそっくりで、、、間違えて話かけてしまったけど浩二さんで…」
浩二「全くもって意味がわからん」
真夜「同じ顔、いや…ちょっと大人っぽかった、けど同じ顔でした」

歩く足を止めてよくわからない言葉を投げかける真夜。

真夜「話しかけたら少し焦った感じで逃げてしまいました」
浩二「…声は?」
真夜「似てましたー、というか同じ?」
確か真夜も自分と同じで視力がいい、見間違えとかは考えられない。
もしかすると授業中に夢遊病にかかって勝手に動き出した、とか。
まず、それはない。


―――――あぁ―――なるほどな。


逃げたということはきっと、急いでいたのであろう。
急いで向かった先に何かがあり、今の自分たちの知らない出来事。

浩二「真夜、月夜の部屋そのままにしとけよ」
真夜「……え?」
浩二「片付けたらうるさいからな」
真夜「……あっ」
真夜も自分が伝えたいことに気がついたようだ。


きっと、真夜がさっき見たというのは置田浩二。
大人びた未来の自分。
何かが起きて、何かを変えるために過去に戻ってきたのだろう。

過去から飛んできたのなら、大人びているわけがない。

未来から飛んできたのなら……。


不思議な力のない自分が未来から飛んでこれるというのなら。



浩二「未来の俺も大変だ」
真夜「ふふ、大丈夫ですよ」
浩二「そうだな」



きっとメイワクな贈り物が、帰ってくるということ。

後書き

メイワクな贈り物はこれで終わりです。
本当はいろいろな話や続きがあったのですが、長々とするのもあれかな…と思いましてここまでとしました。

皆様長い間メイワクな贈り物を読んでいただきありがとうございました。

この小説について

タイトル 最終話『迷惑だった贈り物』
初版 2011年6月2日
改訂 2011年6月11日
小説ID 4280
閲覧数 872
合計★ 4
HIROの写真
ぬし
作家名 ★HIRO
作家ID 199
投稿数 35
★の数 52
活動度 4213

コメント (2)

★那由他 2011年6月11日 0時11分23秒
はじめまして。那由他と申します。

完結、ということで御作を始めから通しで拝読いたしました。執筆、お疲れ様です。
上から目線のコメントになってしまいますが、読んでいて感じたことを書いておきます。なお、コメントはすべて私見であることをお断りしておきます。

おもしろかったです。
長さを感じさせず、サクサクと読める軽妙な文体もあいまって、最後まで楽しませていただきました。

キャラの造形がとてもお見事だと思いました。根は優しいところがあるのにどうしても素直になれない主人公と天然なお嬢さまで剣道が滅法強い美少女のヒロイン──しっかりとキャラがつくりこまれていて、物語をグイグイと牽引する効果を読者に与えます。

主人公の親友の正志、ツンデレ(?)の生徒会長、実は弟想いの姉、娘と同じ天然の母親などなど、脇を固めるキャラも多彩かつ個性的でストーリーを盛り上げてくれます。月夜がとてもかわいいですね。読んでいるとほんのりと温かい気持ちになってきます。浩二と正志の掛け合いもおかしくて、笑いました。このふたりが本気で殴り合いを始めたシーンはハラハラしました。

読み終わったあとに彼らと「さよなら」するのが惜しい、という読後感が残る作品でした。

ストーリーの方も流れがシンプルでとてもわかりやすかったです。謎の少女との出会いと別れは「竹取物語」のかぐや姫を彷彿とさせるようなストーリーですね。ひょんなことから始まった月夜や真夜との生活を通じてしだいに浩二の心から闇が払拭されていく過程には共感を覚えました。「めんどくさい」と口では言いながらも最後は行動を起こす浩二がかっこいいですね。さらに、真夜がしていたピアスがああいう形での伏線になっていたのは好印象です。

と、ここまではすばらしい、と思った点です。以下は私の意見になりますので、話し半分で読み流してください。

まず、誤字脱字がちょっと多かったように思います(20箇所ぐらいありました。特に最初の方です)。いつもコメントするときは気づいた誤字脱字を挙げておくのですが、今回は割愛させていただきます。

それと、実力のない私が偉そうに言うのもなんですが、小説の技術的なことに関して少々述べさせていただきます。

まず、会話文が台本みたいな感じで先頭にキャラの名前があるのに違和感を覚えました。おそらく、作者さまは会話文のスピード感を演出する目的でこのような形にしたのだろうと思います。全部が全部、このスタイルですとそれはそれで統一感があっていいのですが、モブキャラは普通の会話文と変わらないので、見た目や体裁という点でちょっと読みにくいかな、と感じがなくもありませんでした。キャラの名前がなくても誰のセリフなのか判断が容易なものが多いので、不要のようにも思いました。

各話の冒頭で浩二が不良高校生であること、真夜がお嬢さまの美少女であること、月夜が不思議な現れ方をした少女であること、正志が不良チームの頭であること──そういうキャラの紹介がありますが、第1話から通読すると何回も繰り返し出てくるため、ちょっとくどいかな、という感じを受けます。途中から読む方はおそらくそれほどいないと思いますので、このあたりは省略してもいいのではないでしょうか。

それと、真夜、月夜、亜夜と似たような名前であるため、三人がいっぺんに出てくると混乱します。注意して読まないと誰が誰だかわからなくなってしまうため(特にセリフは頭にキャラの名前がついていて発言者を判別するため)、せっかくのテンポのよさを減殺する原因になっているような印象がありました。

ストーリーはエピソードが豊富で、どれも惹きこまれるお話しばかりなのですが、多少疑問に感じる点もありました。

第1話で夜の学校の屋上にどうして真夜がいたのかな(明日から通うことになる学校を見学していたのでしょうか? 私の読み落としでしたら申し訳ありません)、とか、ところどころ腑に落ちない展開もありました。そのあたりの説明がもう少しあればよかったかな、と思います。

コメントは以上です。初めての方にいろいろと手厳しいコメントを書き連ねてしまい、申し訳ありません。あまり参考にならないかもしれませんが、少しでもお役に立てるようでしたら幸いです。最初にもお断りしましたが、あくまでも私見ですので的外れなことを書いているかもしれません。

次回の作品も期待しております。これからもがんばってください。
それでは失礼いたします。
★HIRO コメントのみ 2011年6月11日 0時53分06秒
>那由他さん
初めましてです。
読んでいただきありがとうございます、うれしいです。
>上から目線のコメント
いえいえとんでもない、どんどんご指導お願いしますっ。

>キャラの造形
自分が今まで考えてきた小説の中でも一番気に入ってます。
絶対つるむ事のない二人、それが最初に考えた設定です。

他のメンバーたちも「浩二にとってめんどくさい者達」という設定で話を進めていきました。

>読み終わったあとに彼らと「さよなら」するのが惜しい
すごく嬉しいお言葉です、ありがとうございます。

>ストーリーの方も流れがシンプル
自分が高校生の頃に初めて考えた小説で、心の闇や悩み、感動がスッと入っていけるようにしたかったんです。
ピアスも当初から決まっていた設定で、ストーリーの初めは謎にしといて後のほうでわかるようにしました。

>誤字脱字
本当に申し訳ないです…仕事の休みの日に一気に書いてしまおうとしたのがいけませんでしたね…あまり確認もできてないです(焦
あと国語が毎回赤点だったのも問題が(笑

>会話文が台本
どうすべきかかなり悩んだ点です。
小説っぽくないな…と何度も思いました(泣
確かに誰が喋っているかというのはわかりやすいものだったのでなくてもよかったですね。

>それぞれのキャラについて
確かに言われてみて読み直してみると不良高校生とかお嬢様とか「何回言うんだ…」って気持ちになりました。
毎度わかりやすく、って思いながら書いていたのが逆にマイナスだったようです。

>第1話で夜の学校の屋上にどうして真夜がいたのか
1話から長文になってしまった!という考えがだめでしたね…。
省いてはいけないところが多々ありました。
他にも何故真夜は玉を持っていて、何故二人の前でふ化したのか、重要すぎる点を謎にしてしまいました…。

>初めての方にいろいろと手厳しいコメント
とんでもないです、すごく勉強になりました。
コメントをいただき1話から再び読み直したりするくらい参考になりました。

本当にありがとうございました。
これからもよろしくおねがいします。
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