夢の楽園 - 第5章:夢に見た世界


第5章:夢に見た世界


「さて」
 問題が山積みの状態で話は始まる。
 ザウラの小屋を離れたロアン・シェラ・ザウラ・ラウディス・エオの5人は一先ず宿に泊まっていた。
 あの森からはだいぶ離れた小さな町で、とりあえずここで休もうということになったのだ。
 話はまとまったように見えて、実は全くまとまってなどいない。
 問題は、エオだ。
「ここまで荷物を運ぶのを手伝ってもらってすまない」
 新しい拠点を探すつもりで持ってきた荷物は、旅をするには重かった。
 ザウラとラウだけでは運べずエオが残りを運んでくれていた。
 ロアンはというとまだ体力が戻っておらずシェラに肩を借りる始末だった。
 エオが現れて体力が回復できないまま全力でネオン達から逃げたのだ。
 当然といえば当然なのだが。
 エオの目的はアルベールというあの組織の上の人間だといった。
 ロアンが奴らに狙われているなら、一緒に行動すれば会える可能性は高くなる。
「ところでエオ」
 ザウラの声に振り向く。
「俺達はロアンたちを危険にはさらしたくない。お前はロアンを利用する気なのか?」
 ザウラが率直に尋ねた。
 ロアンはエオを見る。
 エオは言っていた。オレもあいつらの被害者を見たいわけではない、と。
「どう見てくれても構わない。オレに用がなくなったならオレは消える」
 立ち上がるエオを、ロアンは引き止めた。
「また、怪我するかもしれないぞ」
「ふん。それならそれでいい。何があろうと俺はあいつを見つけ出すまでだ」
 エオとアルベールという男に何があったのかは知らない。
 でもエオは自分を助けてくれた。
 エオがいなければ自分はすでにここには存在しなかったのだ。
「エオ。オレを利用したければ、それでいい。だから、一緒に来ないか?」
「「「!!!」」」
 ザウラの顔が険しくなる。
「ロアン! 何を言ってるんだ」
「ザウラ。ザウラ達を危険にさらして本当に悪いと思ってる。でも、オレもエオと同じくあの組織の上の人間。ネオンに聞きたいことがあるんだ」
 空気が沈む。
「もちろんシェラも皆も危険にはさせない。お願いだ。どうせそうなら、エオがいたほうが助かるだろ?」
 ロアンがネオンに会いたいと思っているのは嘘ではないかもしれない。
 だがそのときのザウラたちにはロアンがエオを助けようとしているようにも見えた。
「どうだ、エオ」
「・・・・・・いいのか、それで」
 ロアンは微笑んだ。
 ザウラはため息をつき、
「分かった。お前たちの考えは認めよう。でもあくまで危険にはさせない。いいな?」
 ロアンとエオは頷いた。
 シェラはロアンをじっと見ている。
 その視線に気づき、ロアンは苦笑した。
「ごめんシェラ。ちょっと気になることがあるんだ」
 ネオン。
 どうしてあいつは、あの時あんなにも同様したのか。
 自分に近づいた直後にあの同様を見せた。
 それは何故か。
 それから。
 どうして、シェラを作ったのか。
 シェラは一体何者なのか。
 シェラを守りたい気持ちは今も変わらない。
 だが、このまま何も知らずに逃げているだけでは、何も変わりはしない。
「とりあえず全員傷を癒そう。ロアン、エオ。お前たちは特に疲労が酷い。今から休め」
 ザウラは立ち上がって部屋の扉を開ける。
「ザウラは?」
 ロアンが尋ねるとザウラは薄く笑う。
「奴らが来ないか見張りだ」
 パタムと扉は閉じ、ラウはロアンに苦笑した。
 残されたロアンたちは自分たちの部屋につく。
 ロアンとエオが同室。
 ザウラとラウが同室。
 もちろんシェラは一人で一室。
 何かがあったときの為にシェラの部屋を真ん中に、左右にロアンたちの部屋を用意した。
 この町に来るまでに皆体力を使ったことだろう。
 野宿もした。そのたびにザウラとラウが交代で見張りもしていた。
 ロアンは自分よりも二人の方が疲れているのではないかと見張りをしたいと申し出たがザウラは笑って断った。
「ザウラはちょっとずるいんだ」
 部屋のベッドに横になりながらロアンはとなりのベッドに座るエオに呟いた。
 エオは横になっているロアンを見る。
「確かに事の元凶になってるのはオレやシェラだけど、疲れてるのはきっとザウラたちだ」
「・・・・・・会って間もないオレにも判る。あいつはお前に対して過保護すぎだな。何かあったのか?」
 ザウラは優しいから。
 だけ、ではないことは知っている。
「ザウラはある研究をしてた。エオは見たことあるか? あの森に、変な光の境界線があるんだ」
「光の・・・・・・」
 エオはアルベールがいるあの研究所に向かう途中、そんなものを見たことを思い出す。
「エオは、世界が2つあると思うか?」
「世界が、二つ?」
 エオは夜の世界の人間だ。
 朝の世界のことは知らないだろう。
「・・・・・・あの境界線が、その二つの世界の分かれ目、だとでも言うのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
 ロアンは寝転がったまま驚いた。
「その通り」
 そしてロアンは上半身だけを起こす。
「で、それがどう研究に繋がるんだ」
「二つの世界の存在を知ってしまったら、人間は果たして何をするんだろうな」
 ザウラのように研究したいと思うのか。
 ロアンのようにそれを信じるのか。
 シェラのようにただ眺めるのか。
「知らんな。オレには関係ないことは確かだ。お前、あの境界線と何か関係があるのか?」
「・・・・・・そうだな。それは、皆が復活してから教えるよ。エオももう休んだほうがいい」
 ロアンは再びベッドに身をゆだねる。
 彼が寝息をかき始め、エオも自分のベッドに横になる。
 瞳を閉じて、闇が訪れる。
『兄さん』
『どうした、エオ』
 いつも笑っていた。
 いつも、笑いかけてくれた。
 オレが何をしたとしても。
 ガシャンッ。
『あ・・・・・・』
『エオ!? ・・・・・・お前が割ったのか?』
『ご、ごめんなさいっ・・・・・・』
『・・・・・・いいさ。母さんたちには内緒だ』
 そうやって、頭を撫でてくれた。
 いつも見方でいてくれた。
「兄さん・・・・・・」
 瞳からは、涙が溢れていた。
 窓から朝日が差し込む。
 直ぐ横のベッドをみるとそこではロアンがまだ寝ていた。
 エオはむくりと起き上がりロアンを起こさないよう部屋を出た。
「お。随分と早いな、もう大丈夫なのか?」
「・・・・・・平気だ」
 部屋を出るといつものようにけろっとしたザウラが顔を出した。
「ラウにはちょっとお使いを頼んだ」
「なんで、それをオレに言うんだ?」
 ザウラの表情が何かをたくらんでいることを示していることは直ぐに判った。
「少し、話をしないか?」


「で、話ってなんだ?」
 誰もいないザウラとラウが使っている部屋でエオがベッドに座りながら問うた。
 ザウラは机からイスを離し、エオの近くに移動させて座った。
 薄く笑った笑顔がエオには奇怪に見えて仕方がなかった。
「お前が知っている、ロアンたちのことを狙っている組織の事を教えてくれないか?」
 突然の話の内容は、やはりロアンとシェラのこと。
「あんたはあいつらの親か? どうしてそこまで心配する」
「血は繋がってないが、一緒には暮らした。お前も、家族は大切だろう?」
 エオの目つきが鋭くなる。
「あんたは、オレを追い出したいんじゃないのか? ロアンを利用するオレを」
「いや?」
 ザウラはあっさりと否定した。
 唖然としたエオは顔を引きつらせる。
「はぁ? じゃあ、その笑顔はなんだ。どうしてオレに近づく!」
「オレはお前の目的は知っている。けど訳は知らない。それはここにいる全員が。言いたくないなら言わなくていい。それに、お前はロアンを利用してはいないはずだ」
 まるで泣き顔のようにエオはザウラに緩んだ瞳を見せる。
「どうして、そう思う?」
「利用がどうのこうのと言いはじめたのはオレだからな」
 笑顔でザウラは淡々と言う。
 その様子が怪訝でたまらない。
「オレがロアンを利用しないと分かっていて、どうしてあんな発言を言った?」
「お前、怪我してただろう。荷物を持ってもらってなんだが、お前をあのまま返したら無理して今度は命を落としかねないと思って。まぁロアンがあんな風にお前を引き止めるとは正直思っていなかったんだけどな」
 さらに唖然。
「オレの、ため・・・・・・? はっ、あんたがオレの何を知ってんだよ」
「何も知らない。でもお前を見ていれば分かる。お前の瞳は怒りを込めていた。その瞳に移している相手を、恨んでいた」
 沈黙になる。
 エオは何も否定はできなかった。
「それにお前はロアンとは別の意味で無茶をするようだからな」
 はははと笑顔を見せてザウラは続ける。
「ロアンとシェラを逃がしたあと。あの時のお前を見て、ちょっと似てると思ったんだ」
「似てる・・・・・・?」
 目を伏せてゆっくりと唇を動かした。
「目的の為なら自分の身の危険を感じても躊躇いなく突っ込む。昔の、オレに」

「あれ? ザウラは?」
 ロアンがやがて目を覚まし、部屋にいないエオを探して宿の中を歩き回っていると、ザウラの部屋から出てくる彼を見つけた。
 だがザウラの部屋から出てきたのはエオだけであった。
「さぁ。どっかに行った」
「・・・・・・エオ、何かあったか?」
 エオに微笑むザウラ。
 いつまりは昔の自分に似ていて放っておけなかったという事だ。
「そういえば、朝食は先に食べててっていう書置きが机の上にあったんだよな・・・・・・」
 エオは思わず笑った。
「ホント、お節介な奴」


「で、これからどうするよ?」
 ラウが朝食をほお張りながら呟いた。
 エオとの話が終わったあとザウラは帰りが遅いラウを向かえに行ったらしく、12時ごろに宿に帰ってきた。
 慣れない町でいろいろあったらしい。
 ラウを見つけるのに手間取りラウはというと道に迷ってしまっていた。
「ラウ。お前って方向音痴だったか?」
 半眼になって呆れながら言うザウラにラウはしらける。
「いや、やっぱなれないと判らないって」
「ごめんラウ。オレ寝てて」
「ロアンはいい。それにお昼まで待っててくれなくてよかったんだぞ? 腹へってただろ?」
「おいザウラ。あまりにも俺への仕打ちが酷くないか?」
 そんな会話を繰り広げるなかエオとシェラだけが無言だった。
「シェラ、どうした?」
 ロアンが気にかけると、
「・・・・・・何でもない」
 そう言ってシェラは笑う。
 エオは不機嫌そうな顔をしていた。
「エオ・・・・・・?」
 ザウラが覗き込むように彼の顔を色を窺うととうとう切れた。
「お前の言いたいことは判った。で? これからどうする気なんだ」
 ロアンは「これから」が何をさしているのかを即座に理解した。
 ザウラもそれが分かったのか申し訳なさそうに苦笑した。
 シェラは相変わらず黙ったままでラウは分かっているのかいないのか未だにがつがつと朝食を口にしていた。
「それは後々に言おうと思っていたんだ」
「オレはロアンを守れといわれれば守るし、お前と敵対する気もない。すべてを話せとも言わない。けれど、子供扱いは心外だ。どうせお前はオレやロアンたちに気を使って自分ですべてを考えているんだろう?」
 ザウラに痛い視線が向けられる。
 ロアンもその意見には同意だったらしくザウラに視線を向けた。
 顔を引きつるしかないザウラは分かっていた。
 エオはそうとう心配されているのを根に持っている。
 いや、心配がゆえに何も話してくれないザウラに怒っているのだ。
 それはロアンも同じだった。
「別に子供扱いしているわけでは・・・・・・」
「だがお前はこれからのことをオレ達に相談しようとはしないな?」
 ザウラの弁解の余地はなく、エオの攻撃をただ受ける事しかできない状況であった。
 ロアンの視線とエオの視線。おまけにニヤニヤしながら彼を眺めるラウの視線をあび、ザウラは観念するほかない。
「分かった。ちゃんと話す。別に隠すつもりはなかった」
 両手を上げてやけくそのように言い切った。
 ラウはザウラに微笑みを見せ、ザウラはそれに軽く口元を吊り上げる。
 彼らは、自分が思っているほど子供ではない。
 それからは静に皆で昼食をたいらげた。
「さて」
 そう切り出したのはザウラではなかった。
 一つの部屋に全員で集まったロアンたちは自分にベッドやイスに座り呟いたラウに目を向けた。
「ザウラ。今後のこともそうだが、どうする? エオも仲間にするなら俺らのもう一つの目的も話さなきゃならない」
「もう一つ・・・・・・」
 ロアンが言っていた研究の事だろうかとエオは呟く。
「オレが少し話したんだ。世界が2つあること」
「話していたのか?」
 ザウラが少々驚きロアンは続ける。
「ザウラの研究は二つの世界の事を知る事。あの小屋に沢山資料らしいのがあったろ?」
「ああ。だが、世界の何を調べるんだ?」
 その質問にロアンに変わってザウラが答える。
「・・・・・・この本から、すべて始まったんだ」
 ザウラは手に一冊の本を握る。
 自分が昔この本を読み境界線の事を知ったこと。
 世界が2つあるという事実が確かに存在したこと。
 そして、嘗て世界は1つだったのかもしれないこと。
 何かの拍子に2つに別れ、「朝の世界」と「夜の世界」に別れたのではないか。
 そして今、あの境界線が示すものは。
「そして・・・・・・」
 ザウラはロアンにバトンをあずけた。
「オレは、朝の世界から来た人間なんだ」
「ロアン、が?」
 エオは驚きを見せたものの、それがありえないと否定している様子は見せなかった。
 むしろ納得したような表情になる。
「それでザウラと一緒に行動するようになった」
 こうしてエオに自分たちの素性は説明し終える。
 エオが疑いの目を向けることはなくすんなりと話は通った。
「なるほどな。で、そいつに出会ったと」
 エオが指すそいつとは他の誰でもないシェラである。
 シェラはエオに瞳を向けるそれはどこか哀しげの見え、エオは小さくぎょっとする。
 だがその反応に気づいていないのか再びザウラが話しを切り出した。
「少し話しを変えてしまうが、エオ。お前は先ほど俺に言ったな。自分達を子供扱いして重量な事を後回しに話すなと」
 エオははっきり頷く。
「だから話そう。世界は一つだったのではないかと言う仮説を話した」
 そんなザウラの言葉から、話は始まった。
「ロアンが元いた「朝」の世界と、俺たちが住む「夜」の世界。元は1つだった世界が、2つに分かれた」
 ザウラが昔読んだという、1冊の本。
 その著者の考えを知り、ザウラはそう考えていた。
「どうしてロアンはこちらに来てしまったのか」
「それは・・・・・・」
 ロアンがそう言いかけた時。
「分かってる。きっとロアンがこちらに来てしまったのは偶然かもしれない。たまた境界線の影響を受けた」
 偶然と言いつつ、その口調は「必然」を語っているようだった。
「そして、ロアンが来てしまったのは恐らく境界線意外の何者の所為でもない。そして、俺はあの境界線が現れた事をそれほど危機に感じていなかった」
「・・・・・・?」
 その言い方はまるで、危機していなかったことを悔いているかのような。
「もしかしたら、世界は消滅するかもしれない」
「消滅っ!?」
 ロアンがベッドから飛び上がった。
 世界が交じり合う。
 そんな話は前にザウラがしていた。
「消滅? 元が1つだったのなら問題ないのではないのか?」
 エオがザウラに尋ねるがいい返事は返ってこない。
「俺も最初はそう思っていた。だが、ならどうして世界は2つに別れたのだろう?」
 世界が元は1つだったという仮説が本当ならば、どうして世界は2つに別れる必要があったのか。
 もちろんその仮説が当たっている可能性は五分五分だ。
 もとから世界が2つあったと述べる者がいたとしても、ザウラにそれをはっきり否定する説明はできない。
 けれど、ザウラが手にしているその本が。
 彼の考えをより深くする。
「この著者は語った。世界は2つあったのか。それとも1つだったのか。けれど世界が2つあったとしたらまた問題が発生する。何が原因で1つになろうとしているのか」
「それは嘗て1つだったにしても同じ事じゃないか」
 エオの言葉にああとザウラは頷く。
「その通り。その通りではあるが「世界が2つに分かれなければならなかった理由」と「世界が1つになろうとしている原因」は似ているようで異なる。俺はどちらにしても世界は消滅すると考えるが」
 全員が沈黙する。
 だがラウだけが少し落ち着いていた。
 ザウラの考えていることが分かっていたのか、自分も薄々感じていたのか。
「2つあったならそれら二つは別のもの。もちろん重なれば消滅が普通と考えてもおかしくはない。でも、1つになろうとするなら問題はないんじゃないか?」
「そこだ。その可能性を捨て去ることはできないが、・・・・・・感じるんだ」
 ザウラは拳に力を入れる。
「あの境界線を前に調べた事がある。ラウにしらべてもらったんだが、吹き飛ばされたそうだ。ロアンのように通る事ができた人間と、そうでない人間がいる。つまり、世界が1つに戻った時、2つの世界の人間の半分が、消えると言っても過言ではないかもしれない」
「「「!!!」」」
 ロアン、シェラ、エオの三人の顔色が悪くなる。
「質料オーバー、か?」
「そんなところだ。あくまで仮説なんだがな」
 残るだけましだと考えるべきか。
 くどいようだが、これはあくまでもザウラの「仮説」。
 仮説は仮説以上にはなりえない。事実にも真実にもその時点ではなれない。
 決定的な何かがなければ。
「そのいわゆる「証拠」が俺にはない。だから絶対とは言い切れない。でも、そうなる可能性もあると考えていて欲しい。昼間ラウに頼んで境界線が見える場所を探してもらった」
 昼間のお使いとはそれだったのか、とロアンたちは思う。
「俺の気のせいか判らないが、どんどん広がっている気がするんだ」
 広がる。
 それはつまり。
「もう、危ないかもしれないのか――?」
 ロアンの顔は青ざめている。
 ザウラは何も答えなかった。
 それはロアンにその真実は早いと思ったわけではない。
「どう、すれば・・・・・・」
「俺は長年研究をラウと続けてきたが、俺にもラウにも回避する方法は浮かばない。残念ながらな」
 それは世界の理だと突きつけられたかのように。
 彼らがその仮定を知りえたとして、それをどうにかできる術を持ってはいなかった。
 自分の無力さは、自分が一番知っていた。
「もどかしいよ、本当」
 ザウラの唇がそう口にする。



「ネオン様」
 ネオン。
 彼はとある組織のトップの人間。
 その部下のアルベールが彼に質問する。
「どうしたのですか、突然引き返すなど」
「・・・・・・・・・・・・」
 ネオンはロアンを見てあとづさった。
 それがどうしてなのかアルベールは不思議でならない。
 あと少しで確実にアンドロイドの少女は取り戻せた。
 少年が取引に応じなかったとしてもどうにでもできた。
 何故ならあの場にいたのは自分とネオン。それに非力な少年と人間でもない機械な少女だけだったのだから。
 あの場で引き返さなければならない理由があったとは思えない。
 あったとすれば。
「アルベール」
「はい」
 ネオンは机に肘を付き、両手の指を絡めながら言う。
「あの少年の居場所を突き止めろ」
「自分で逃がしておいて何を言うんですか」
 若干ネオンの心を貫く言葉を吐き捨てるとアルベールはただちに仕事にかかった。
「一言余計と言うか・・・・・・」
 ぼやきながらネオンは机の二段目の引き出しを開ける。
 そこには1つの写真があった。
 小さな少年と青年が映っている。
 ネオンはその写真を取り出さずに再び引き出しを閉めた。



 日がもう直ぐ大地に沈む。
 オレンジ色の夕焼けが宿の窓から部屋に差し込んでくる。
 話は終わり自由行動になった。
 だがロアンとシェラは外出はなしといわれた。
 ロアンとシェラはそれを受け入れ、今2人で部屋の中にいた。
 この宿も明日には発とうとザウラは言った。
 一箇所に長いすると見つかってしまう可能性がある。
 ロアンは自分だけでネオンと会いたいと思っていた。
 全員で襲われるのは避けたい。
けれどそのためには自分から会いに行かねばならない。
 シェラたちを危険にさらさず、自分がネオンに会うためには・・・・・・。
「シェラ・・・・・・」
 ロアンの声に無言でシェラは差し向いた。
「シェラは、これからどうしたい・・・・・・?」
 これから。
 このまま世界が消滅してしまうとしたら自分達に未来はないかもしれない。
 このままただ逃げ続け、その先に何があるのかも判らない。
 ロアンとシェラが立っているのは、とても不安定で歪んでいる。
「これから・・・・・・」
 遠くを見据えても何も見えることはなく、彼女の瞳にも何も映りはしなかった。
「世界が消滅とかピンとこないけど・・・・・・なんとなくそうなるんじゃないかって、気はするんだ」
 両手で自分の両目を隠すように覆う。
 瞳を閉じれば何も見えないように2人の未来も何も見えていない。
 地面に立っていられなくなる。
「・・・・・・ロアン」
「何?」
「・・・・・・ごめん。何でもない」
 夕日が二人の肌を染める。
 そろそろ夜になる。
 出かけたザウラたちもそろそろ戻ってくるだろう。
 ロアンはゆっくりと立ち上がる。
「行こう。そろそろザウラたちも帰ってくる」
「うん・・・・・・」
 差し伸ばされた手をシェラは握った。
 そして、彼女は決意した。
 彼の手を掴むのは、これで最後にしようと。
 夜。
 ザウラたちが帰ってくると皆で直ぐに夕食にした。
 何を買ってきたのかラウとエオは大きな紙袋を抱えており、エオはこれ以上荷物を増やすなとザウラに悪態ついていた。
 夕食を食べ終わるとそれぞれの部屋でそれぞれやりたいことをやり自由気ままに眠りに付いた。
 翌日。
 事件は、起こった。
「シェラ!!」
 ロアンが大慌てで宿の中を駆け巡る。
 その足音は他の客にも正直迷惑であっただろう。
 それに気づいたザウラが部屋から出てきてロアンを引き止めた。
「ロアン・・・・・・朝からどうしたんだ」
「ザウラ! シェラが」
 ロアンの焦りにザウラはクエスチョンを浮かべる。
「おいおいどうした〜?」
「うるさいぞ、ロアン」
 ロアンの大声にラウやエオも扱ってくる。
「シェラが、いないんだ!」

後書き

お久しぶりです。
初めましての方が多いのではないでしょうか五月です。

久しぶりのUPです。
作品も結構前に完結しているものであるので、文章が今よりつたないと思いますが、よろしくお願いします。

この小説について

タイトル 第5章:夢に見た世界
初版 2011年9月23日
改訂 2011年9月23日
小説ID 4324
閲覧数 681
合計★ 4
五月の写真
作家名 ★五月
作家ID 497
投稿数 60
★の数 166
活動度 11432
一言・・・・・・頑張ります。

http://simotukiharuka.blog.so-net.ne.jp/
自分の小説ブログです。
ここに載せた小説についていろいろ書いてます。

コメント (2)

★那由他 2011年9月23日 22時02分03秒
こんばんは。那由他と申します。

御作を拝読いたしました。上から目線のコメントになってしまいますが、読んでいて感じたことを書いておきます。なお、コメントはすべて私見であることをお断りしておきます。

この作品はすでに完結していて、続きはほかのサイトに掲載されているんですね。前に読んだときはそこまで気づきませんでした。今回はそちらのサイトに掲載されている分を全部(もう一度最初から)読みました。本来であればコメントもそちらのサイトに書いた方がいいように思ったのですが、長文のコメントを書きこむのも気がひけましたので、反則になってしまいますが、やはりこちらのサイトにコメントを残しておきます。以下のコメントは最後まで読んだうえでのものです。

最初に、前回も同じことを思ったのですが、ちょっと誤字・脱字が目立ちましたでしょうか。「シェラ」を「シュラ」としている箇所も何箇所かありました。苦言じみてしまい申し訳ありませんが、時間をかけて書きあげた作品は作者様にとってもいろいろと思い入れがあるはずですから、もう少し推敲を念入りにされて、きちんとした形で作品を残された方がよいと思います。

作品の方はおもしろかったです。まさか、ロアンとネオンとがアレ(自主規制)というのは予想外でした。シェラが存在する理由も読んでいて「おお!」と思った箇所です。朝の世界と夜の世界、という対立構造が秀逸でした。ほかにもいろいろとおもしろいと思った点があるのですが、こちらのサイトにはまだ未公開であるため、ネタバレとなる危険がありますので、自粛しておきます。

気になった点はロアンとエオのふたりにキャラをわけたことでしょうか。個人的な感覚になってしまいますので、なんとも言えないのですが、アルベールの存在を考えるとこのふたりはキャラをわけたりせず、ひとりのキャラとして登場させてもよかったように思います。あと、アルベールが過去にあのような行為に及んだ動機もちょっと薄弱だったかな、という気がしました。あとは……これも自粛、ということで。なんだか、ものすごく中途半端なコメントになってしまい、すみません。

最後まで書きあげた作者様のモチベーションを高く評価したいと思いますので、★の方は1個を追加して4個とさせていただきます。

コメントは以上です。いろいろと書き連ねてしまい、申し訳ありません。あまり参考にならないかもしれませんが、少しでもお役に立てるようでしたら幸いです。最初にもお断りしましたが、あくまでも私見ですので的外れなことを書いているかもしれません。

次回の作品も期待しております。これからもがんばってください。
それでは失礼いたします。
★五月 コメントのみ 2011年9月24日 11時28分53秒
那由他さん>コメントありがとうございます。
わざわざ完結したほうを読みに行ってくれたみたいで、感謝します。

言い訳、にとらわれてしまうかもしれませんがロアンは朝の人間ですので、アルベールとの繋がりを書くのは無理かな、と思いエオという存在を作りました。
彼にはロアンの友人的立場に立って欲しかったのです。読者様に伝わっていれば幸いですが。
素人なので、キャラも文章もまだまだ未熟です。
なので作品に☆4をつけてくださったことを心から感謝します。

ぱろしょでコメントを貰うのは久しぶりなので嬉しかったです。
誤字脱字の方は酷いものが多くて申し訳ありません(苦笑
直して行ってはいるのですが、UPする前に誰かに見せているわけでもないので(見せる人がいないので)見落としている箇所が何度もあります。
お伝えいただき助かります。

改めてコメントありがとうございました。
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