K氏シリーズ - Poem Shot K氏のタメイキ

そら てんご
深い眠りから私が目を覚ますと、もう貴方の住む地球が目前であった。
久しぶりの地球だ。こうして心が弾むのはいつの日以来であろうか、いやいやそんなことは些細な愚問だ。
大事なのは私の届ける伝言で、どれだけ貴方が喜び・泣き・笑い・慈しみ・怒り・安心して
次のステップを起こすことができるのかどうかであります。                            
私の命の源にすむ仏に、そのありさまをご報告する時の歓喜こそ、私を突き動かす原動力なのです。

だが時として私は、人の深い慟哭に言葉を失ってしまう時がある。
あまりにも傷つき、あまりにも錯乱した人々に、届けるメッセージを読み上げることさえ出来ずに、
やがて私の心までもが亀裂を伴い、枯れた大地に両膝を突くしかないのです。
その亀裂にしのび込む不幸という毒素には、心臓をねじ切るほどの力が潜んでいるのです。

私は貴方のあまりにも悲惨な記憶に声を失い、その不幸を受け入れる手段を失うことでしょう。
行き場を失った『魂』に、私は声さえかけることができないのでした。
私の不老不死を羨む人は多いが、死ねない苦痛を知りえる人は皆無でしょう。
そのある種の呪いは、際限なく私の記憶に、逢った人々の悲しみを蓄積するのです。
不老不死の私には、その悲痛を取り去ることができないのです、永遠に。

私は実体で移動している訳ではありません。
実体は一つの方便でしかない。命を可視化させる衣にすぎないのです、衣はいつしか朽ちてしまう。
だが、命とはそんなに柔な存在ではないのです。
ほら、私の眼の前の広大な宇宙の片隅で、今でも貴方の住む地球がはっきりと廻っている。
でも、この廻っている事実の意味の深さを、理解している人々は少ないでしょう。
そして夜には月が貴方の孤独をなぐさめて、星々は賑やかにさんざめくというのに。
ああ、何故に貴方を取巻くこれほどまでの慈愛が、この地球(ほし)には存在するのでしょうか。
止まれば、完璧に宇宙の藻屑になるのです。そこにはあらゆる愛は育たないでしょうに。

少々、私は恥ずかしいけれど。
私が何故に、とりたてて貴方のすむ地球が好きであるのか理由があります。
それは貴方が今でもそこに存在しているからです、実は。……そう、貴方の存在なのです。
誰かのことを想う気持ちが、これほどまでに私に勇気を与えることを知らなかった。
あと何回君を抱きしめたなら、地球は壊れてしまうのだろうか。

宇宙(そら)が反転する程の悲しさに、無限の流星が流れ込み、できあがった星の雫よ、地球。
そこが貴方のいる大地であり、きっと碧い水が煌き、貴方を無限の闇から招聘したに違いない。
だから、さあ涙を拭いて、深い憂いから立ち上がり、もう一度貴方は胸をはり、
私の腕(かいね)のなかで歓喜の詩(うた)を声高らかに謳うがいい。

後書き

久々のK氏です。

多次元な私の分身のなかで、もっともロマンチストな存在です(笑)。

この小説について

タイトル Poem Shot K氏のタメイキ
初版 2012年10月30日
改訂 2012年10月30日
小説ID 4426
閲覧数 643
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コメント (3)

★堀田 実 2012年11月10日 0時08分41秒
そら コメントのみ 2012年11月11日 9時27分37秒
堀田 実さん

気にいって貰えたの……ですね? (笑)

コメントなしで正直驚きました。

でも、単刀直入で嬉しいです。ありがとう!
★堀田 実 コメントのみ 2012年11月15日 3時37分18秒
はい、気に入りました。
すみません。感想を何度か書こうとしたんですけど、それを言葉にできず、結局書けなかったので星だけにしました。
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