はんたーズ! - はんたーズ! <前編>

まず、自己紹介をしようか。
俺の名前はバジル。人呼んで、疾風剛剣のバジル。
モンスターを討伐し、その報奨金やらなんやらで生活している『モンスターハンター』を営んでいる。
もちろん、ただ自分で名乗っているわけじゃない。
ちゃんと協会が出しているライセンスも取得ずみだ。
「バジル様、現実が辛いのは解ります。しかして空想の世界に飛び込むのはもっと末期でいいと思うのですが」
となりで俺に形式上だけの敬語で馬鹿にしたように話しかけてくるのは俺のサポーターのシナモン。
女みたいな名前だが、れっきとした男だ。ちなみに名前が女みたいだな、って言った奴は血を見る。
「お前な……この状態でなんでそんなクソ冷静なんだよ!」
今俺たちが居るのは、暗い洞窟の中。
外はびゅうびゅうと雪風が吹き付けて、気温は低下し体温をがっつんがっつん奪っていく。
まあ、いわゆるあれだ。俺たちは……
「たかが真冬の雪山遭難でしょう?もっと落ち着いてください」
「たかがって何だたかがって!真夏でも死ねるっちゅーねん!!」
「ええ知ってますよ」
「わかったら場所と天候の把握しろよ!」
「……仕方がありませんね。
 貴方のその醜悪な面を引っさげて唾液をまき散らし泡吹いて
 ぎゃーぎゃー喚いている様を見ていると、私の心は洗われるようですのに」
「洞窟の外に放り出すぞ」
肩をすくめるシナモン。言い忘れていた、コイツはめちゃんこ性格が悪い。
他人の不幸は蜜の味どころか極上の菓子だと言い切った奴だ。
だが、とてつもなく癪なのだがサポーターとしての腕はムカつくほど確かなので、ここ3年程ずっと『契約』している。
「ふう、仕方がありませんね」
シナモンは肩をすくめると、長ったらしいローブの裾から一本の試験管を出してきた。
あれは魔素と呼ばれる魔法を使うための媒体だ。ほんのわずかに灰色がかった小さなラムネ菓子のようなものを口に含み、口内で溶かしながら呪文を吐くことで言霊に魔力を付加させ、魔法を使う。
シナモンのような『サポーター』には、魔法の教養が義務付けられているのだ。
『望むは導き手、我らは迷い子。哀れな子羊に、慈悲の光を』
シナモンの口から空中で黒いインクで書かれた文字もどきが宙へ流れて消えていく。これは言霊が魔力を帯びている証拠だ。俺にはわからんが、この間に周辺の地図が頭に浮かんでいるらしい。
「……なんですか、此方をじっと見て。ああ、バジル様も召し上がりたいのですか?」
「いらねー。っていうか食ったら死ぬだろ」
「大丈夫です、魔素1%ですから、お腹を壊すくらいです」
「どっちみちいらん!」
そう、この魔素――人体には劇薬と言って良いほどの毒物。だから市販されているものはごくごく薄くまで希釈されているのだ。もちろん、濃ければ濃いほど魔法の威力や汎用性が高まるので、俺たちのような荒事を職業としている奴は、もうちょっと濃いものを手にしているが。
「で、何かわかったのかよ?」
俺が再び問いかけると、シナモンはさっきまでの表情とは変わって、真剣みをおびたものになる。
ああ、やっと仕事スイッチが入ったか。こいつは一回スイッチがオフになると戻るまで俺をひたすらおちょくりだすから厄介だ。
「そうですね、ここは雪山の正規の登山ルートからかなり東に逸れたところであるということ。
 この吹雪は10分後に比較的穏やかになっていき、再び30分後から吹きすさび同様の天候になるということ。
 その間に正規の登山ルートの方へ歩いて行けば、休憩用の小屋に一応到着します」
ずらずらと並び立てるシナモンに、俺は大きくため息を着いた。
「ちなみに、ここから登山ルートまでどんくらいかかる?」
「……道を見失わなければざっと1時間かと。
 ですが道中確認を10分おきにしていく事を考えれば実際にかかる時間は1時間と30分程度ですね」
「……おい、どう考えても30分で行ける気がしないんだが」
「奇遇ですね、私もですよ」
にっこり笑いながら向けられた死刑宣告に、俺はその場で膝をつき、がくりとうなだれた。
なんだ、死ねってか!話始まって早々遭難して死ねってか!?
いや、遭難で死ぬのはまだいい!
よりによってシナモンと二人きりで死ぬシチュエーションが嫌だっ……!!
「安心してください、バジル様」
「シナモン……」
「私が死ぬとしたら、貴方が死ぬのを見て楽しんでからゆっくり死にますので」
うなだれる俺の肩をぽんと叩き、とてもいい笑顔でグッと親指をたてるシナモンを、洞窟の外に投げ飛ばした行為について、誰が責められようか。いや、誰も責められない。
「おやバジル様、ご乱心ですか?」
悲鳴も何も上げずに服に着いた雪を払ってすぐに戻ってきやがった。畜生。
「どちらかというと俺はお前の発言全てが乱心に聞こえるんだが」
「失礼ですね。私は本気ですよ。ただ、話の途中で勝手に絶望して勝手に放り投げたのは貴方でしょう」
「話の途中?」
「ええ。この洞窟、元々はトンネルのような通路になってまして、
 今年の集中豪雨で地盤がゆるんだのか一部崩落して崩れただけなので、掘れば簡単に向こう側に出られますよ」
「……出たら何なんだよ」
「なんとびっくり、我らが宿をとっていた小さな町が目と鼻の先に」
「…………」
俺は無言でシナモンを投げ飛ばした。猛吹雪の向こうに。
きっとこの行為も、誰にも責められ無いに決まっている。ああ、決まっている。


-*-*-*-


かくして、俺たちは雪山の中腹にある小さな町に戻ってきたのだった。
「死ぬかと思った。真面目に」
「おやおや、バジル様とあろうお方がそのような弱音をお吐きになられるとは」
宿屋兼食堂でメシを食う俺とシナモン。暖かいスープが生きているという事を実感させてくれる。
俺はシナモンの皮肉だかなんだかよくわからん発言を聞き流しつつ、食事を続行する。
「今回の件は全面的に私が悪かったと思っております。
 本来のルートを逸れて遭難という愚かしい状況に至ったのは、このサポーターである私の不手際に他なりません」
シナモンが珍しくしおらしい。
ハンターとサポーター。
腕のいいハンターは一人でモンスターを討伐するもできるが、大体そういった奴は戦う事に特化しすぎて他の事――土地カンを始めとして、モンスターの生態・協会が打ち出してる討伐状況や保護区域の把握等細かい事を考える奴が正直少ない。中には強い奴と戦えればそれでいい、なんて奴がいるほどだ。
俺はそこまで愉快な人間になれないが。
それで、ある一定以上の実力を持つハンターは、こうしてサポーターとしてそういう細かい事を把握している……いわばマネージャーのような役割の奴を『契約』して傍に置くことを義務づけられている。
ただ倒せばいいハンターと違って、サポーターの役割は多種多様。戦うことは特別しないが、こうして道案内等も彼の肩にかかっていたりするのだ。
「ああもういいよ、気にしなくて!お前がそんなに凹んでたら飯が不味くなる」
「ありがとうございます、バジル様。
 まさか崖が積雪で道があるように見えていた事を知りつつ
 黙っていたことをお許しいただけるなんて、なんて心の広いお人でしょう」
「は?」
シナモンの言葉に、俺は食いかけのパンを片手に動きを止めた。
「ターゲットの痕跡を見つけてはしゃぐバジル様のお顔が一変し、
 驚愕の表情を浮かべながら情けない悲鳴とともに滑り落ちていく光景は、
 このシナモン、一生のものとして心のアルバムにしまっておきます」
見る者が見ればそれなりに綺麗な笑顔を浮かべるシナモンに、俺は血という血が沸騰し、逆流していく感覚を覚えていた。
「てめえええええ!!!やっぱ知っててやったのかよ!」
「申し訳ございません。つい魔がさしまして」
「魔っていうか悪魔やってきちゃってるだろ!!ざけんな!」
「次は無いようにいたしますから」
「当たり前だっつの!」
俺は乱暴に食器を叩きつけ、大きな音を立てて立ち上がる。ああ、苛々する。
本当に今年で契約切ってやろうか。
「おや、バジル様、どちらへ?」
「疲れた寝る!」
「はい、了承いたしました。明日の午前中は天候が落ち着いているようですが何時に向かいますか?」
「起きたら行く!」
「……かしこまりました」
こうして、ハンターの横暴で無茶な注文には特に何も言わず、そして実際的確な時間になったら起こしてくれるであろうシナモンは、間違いなく有能なサポーターだ。最も、誰のせいで俺がここまで腹を立てているのか冷静に考えれば、色々どす黒い感情が溢れだしそうになるのだが。


-*-*-*-


「あーやれやれ、全く酷い目にあったぜ」
俺はわざと大きな声で独り言を叫んで気を紛らわせつつ、ベッドにもぐりこんだ。
まだ寝るには早い時間だったが、この田舎では時間つぶしができるような場所もないし歩きづめで疲れた。
結局、トンネルを掘るのも俺一人の力だったことを思い出して、更にムカつく。
そもそも今回のターゲットは希少種になりつつあるモンスター、『エンゼルラビット』の捕獲だった。
さながら天使の羽の生えた小さな白いうさぎの様に見えるそいつらは大人しい上に知能も高く、金持ちがこぞってペットとして買おうとするので、いわば安全な金づるだった。それをまあ、アイツのせいで痕跡は見失うわ崖から落ちて遭難しかけたわけで。
「……あー、苛々して眠れねえ!!」
分厚い毛布を跳ね飛ばし俺は体を起こした。
この怒りは何かにぶつけなければ気が済まない。だが何にぶつけるよ。
俺は身の丈ほどある自分の獲物を握りつつ、悶々としていた。誰かがこの光景を見たら警備隊に通報されるに違いない。
「そんなバジル様にご朗報が」
「おわっ!?てめぇいきなり入ってくるなよ!」
ノックもなしに部屋に入ってきたシナモンに文句を言うと、シナモンは肩を大げさに竦めやがった。
「お召し物を変えている最中でもありませんのに、さながら乙女のような事をその図体で申さないで頂けますか」
「で、お前は何だ。喧嘩を売りに来たのか?今ならサービスで開きにしてやるぞ」
相変わらず口を開けば俺の皮肉しか言いやがらない雇われ者を俺は睨みつける。主人はどっちだと思ってやがんだ。
「いえ、ここ数日仕事が数年連れ添ったこの私めが驚きたくなるほど上手くいかず、
 かといってどこかで鬱憤をぶつける相手もおらず、
 性欲を持て余しても娼館もない小さな街の宿のベッドの上で
 しまりなく膝を抱えているバジル様にとっておきの情報を、と思いまして」
「よしわかった。今から三枚に下ろしてやるからそこ動くなよ」
俺が手に持ったままの剣を鞘から抜き、膨大な殺気と共に剣を向けてやる。モンスター人間問わず大体の奴はこれだけで勝手に気圧されて尻尾を巻いて逃げるのだが、シナモンは軽くため息を吐くだけだ。
「相変わらずバジル様は乱暴ですね。ですから女性との付き合い経歴が非常に残念になってしまうのですよ?」
「お前なんなの!?マジなんなの!?」
「ですから朗報をお持ちしたんですよ。先程、協会の方から連絡がありました。
 この町より北3km地点にて、駆除種モンスターであるイエティが目撃されたようです」
俺はシナモンの言葉に目を細めた。駆除種モンスターとは、人間を襲ったり食物を漁ったりと害になるモンスターの事をさす。種により金額は変わるがそれを殺せば協会の方から特別な報酬が貰える。
またそれが金的に結構美味いので、それだけを退治する専門のハンターもいるくらいだ。
「……それをわざわざ言いに来たってことは、俺らに仕事が回ってきたことか」
「はい。この町周辺で滞在なさっている高ランクハンターはバジル様だけですからね。
 発見場所の距離といい、悠長に物事を構えてられないというのが上の指令でして、我らに討伐せよとの事です。
 もちろん、緊急なので報酬もそれなりに色がついておりますよ」
「めんどくせー。っていうか、それのどこが朗報だっつの」
確かにイエティは討伐報酬も高く、上手く皮をはぎ取ればその手触りと機能性からかかなり高額で売り払えるが、もっと手軽で安全なものに手を出そうとしていた俺にとっちゃやる気が出ないこと限りなし。
別に戦うのが嫌というわけではないが、危ない事に首を突っ込みたくない至って正常の神経な持ち主なだけだ。
「実はですね……どうやらそのイエティは雌
言いかけたシナモンを俺は部屋の外へ放り出してドアをおもいっきり閉めた。っていうかアイツをブン投げた。
今回三回目の遠投だが、悲鳴も無様な落下音も聞こえなかったところをみると、上手く受け身を取りやがったらしい。
こういう所だけ無駄に器用だから腹が立つ。
「よし、寝るか」
とりあえずアイツを投げたことでちょっと気はまぎれた。
明日は結構強いモンスターを相手するだろうし、体を休めておく必要があるからだ。


-*-*-*-


翌日。俺とシナモンは発見地点に居た。道案内をしたのはシナモンで、俺はそれについていっただけだ。
今日は天気が落ち着いているようで空は快晴。いや、午前中だけだったか。
「発見しました、足跡です」
「……おおう、でけぇ」
シナモンが指した方向をみると、大体1m程の足跡がぽつぽつと続いている。
この場に足跡をつけてから幾日か立っているようで、その痕跡は今にも消えてしまいそうであった。
もしこれがイエティのような大型モンスターでなければ、見つからなかっただろう。
「数は一つだな。なら単体か」
「そうですね。イエティはあまり群れで行動いたしませぬから。繁殖期に入れば夫婦で行動するようですが」
「今って繁殖期だっけ?」
「繁殖期からは外れております。……最も、繁殖期でなくともむざむざで出歩くような種ではありません」
「……なーんかひっかかる言い方しやがるな、お前」
イエティは生命力も高く、一体倒すだけでも結構な労力になる。毛皮の事を考えれば一撃でしとめるのがスマートなんだろうが、敵対したこと事態があまりないからいまの所上手くいったためしはない。
「イエティは危険種ですが飢えや好奇心から人里を進んで荒らしはしません。むしろ、山奥に生息しているのです」
「何か問題あるって言ってるようなもんだろそれ」
「はい。出歩かなければならない何かが起こったと考えるのが妥当かと」
いつものように冷静に告げるシナモンに、俺は深いため息をつく。おもいっくそ面倒な案件じゃねーか。
イエティだけではなく、更にもう一つ面倒が見えるだなんて、いくら調子コキの多い中堅ハンターでも手を出さないレベルじゃねーか。急を要して俺みたいな若くて強くなる有望なハンターが命を落としたらどうするっていう話だ。
「ご安心くださいバジル様。微力ながらこのシナモンもお力を添えさせていただきますから」
「あー、はいはい。解った当てにしねぇ」
胡散臭いセリフを吐くシナモンに、俺は手を軽く振っておく。
魔法は決して万能ではない。ちょっとした光をともしたりマッチで火をつけたり飲み水を確保できたり生活には便利だがそれ以上にはならない。手練れと呼ばれる人になってようやく戦いの援護ができるレベルだ。
「おや、信用ありませんね」
「戦いが始まりそうになったら確実に安全圏に逃げる奴の言葉が信用されると思ってるお前にびっくりだよ」
そう、シナモンは戦いの予感を察知したらふっつーにその場を離れる。しかも確実に戦いに巻き込まれない位置まで的確に逃げやがる。その距離の計り方があまりにもピッタリすぎて、俺がげんなりするくらいだ。
「それは仕方がありません。私、バジル様と違って痛いのは嫌いなのですよ」
「俺も嫌いだ。人を被虐性欲の塊みたいな言い方しやがって」
「おや、違ったんですか?
 この私を好き好んで雇っているものですから、てっきりそのケがあるのかと思っておりました」
「…………お前、一回マジ死ね」
これは間違いなく本音だった。目の前で可哀そうな者を見るような目になっているシナモンをグーで殴らなかった自分をいっそ褒めたいレベルだ。
「お言葉ですがバジル様、人は一度死んだらおしまいでございます」
「知ってるっつーの!ああもうほら行くぞ!さっさと終わらして俺は帰りたい!」
俺はぽつぽつと続くイエティの足跡を追いかけ始めたのだった。
とにかくもうエンゼルラビットも良い。この駆除依頼が終わればかなり高額の報酬をいただけるはずだ。
もう今回はそれでよしとしよう。そうしよう。
そして一刻も早く存在だけで腹が立ってくるサポーターと別れて金が続く限り自堕落な日々を送るのだ。


-*-*-*-


足跡をたどって、歩く、歩く。
元々日付が経過している足跡だ。たどっていてゴールに行き着くのかはどうか不明なのだから、容易にしっぽがつかめるわけがない。
「バジル様、申し上げます」
「なんだ」
シナモンがいつものポーカーフェイスで声を上げる。
何時いかなる時でも自分から『報告』するならいつもつけやがる前置きのようなものだ。
だいたいこういう時は俺にとって無視できない情報であるので、俺はシナモンの声に集中する。
「先ほど時刻が11時を過ぎました。
 前方、北東の方角から発達した積乱雲が此方へとゆっくり向かっております。
 私見では30分後に昨日と同規模の吹雪が2時間程度続くかと。如何なさいます?」
そういや、午後からは崩れるっつってたなぁ……けど、ふぶいたら最後、足跡は完全に消失するだろう。
そうなりゃ格段に発見が難しくなる。となるとさらに数日こいつと付き合って雪山デートを決行しなければならない。うわぁ嫌だ。
「近くにしのげそうなところは?」
「足跡を外れて西へ10分程度の場所に小規模ながらも洞窟の存在が協会の報告にあがっております。
 情報の信頼度としては最高ですね」
シナモンの言葉に、俺は実に嫌な顔をしていただろう。
足跡を外れて10分。今なら確実に避難ができる。それはいい、それはいいが、目的をロストしろといっているようなものだ。
こいつが言わないから無駄だろうとは思いつつ、俺はシナモンに『命令』する。
「シナモン、調べろ。近辺に洞窟の有無。ついでに足跡の向こう側に隠れられそうな場所があるかどうか」
「かしこまりました。探知に3分頂きます」
シナモンは一つ返事をすると、魔素を取り出し口に放り込んでから、昨日とまったく一緒の呪文を唱える。
サポーターは『明確な理由がないかぎり、ハンターの命令を無視もしくは破棄してはならない』。
協会が厳重に定めた条例のひとつだ。シナモンは基本的には協会の条例を厳守する。
厳守したうえで俺で遊びにかかってくるのだから、タチが悪い。上告して罰を負わせることもできないギリギリのボーダーラインで仕掛けてきやがるのだ。
……だから無駄だと思いつつも探索呪文を使わせるという嫌がらせをさせたくなるのは、当然といってもいい。俺悪くない。
「……申し上げます。周辺5kmの探知に成功しました。足跡からややそれますが北東にも洞窟があるようですね」
「協会に情報あがってなかったのかよ、それ」
だいたい何処に行ってもその土地でしかわからないものというものは存在する。
ハンターについてまわるサポーターの記録から主に作られ、協会がそれをまとめ他のハンターに情報として提示されている。
どうしてもあちこち回るために周辺の情報に疎くなる俺達ハンターにとっては、正に生命線の様な代物だ。
それが無料提示(もちろん此方から情報を提供することがあるが、俺の仕事じゃねーし)されているのだから、ありがたい。
「それが、洞窟と呼ぶようにしては『浅い』ようです。爆発物を使用して人為的に掘られたかと」
「……怪しいな」
シナモンの見解に、俺は眉をひそめていただろう。
態々情報に上がっている洞窟を使わず、別方向にわざわざ『掘って』まで作った人工の避難所。
爆発物を使用している、というのならば確実に人間の仕業だ。同業者がやった可能性もあるが、それなら報告が上がっているはず。
――報告が更新されない程最近なのか、それともそれが出来ない程切羽詰った状況だとしたら話は別だが。
「如何いたしますか?」
「そっちの洞窟に向かおう。避難するかどうかはさておき、調べておきたい」
「かしこまりました。では此方に」
シナモンが先導し雪山を歩くので、俺はその後ろをついていく。
……間違っても先日のような事はならないだろう。今回は協会からの直々の仕事だし。

後書き

こちらは前編になります。

この小説について

タイトル はんたーズ! <前編>
初版 2013年1月21日
改訂 2013年1月21日
小説ID 4453
閲覧数 613
合計★ 0
冷奴の写真
ぬし
作家名 ★冷奴
作家ID 452
投稿数 18
★の数 66
活動度 2156
どうも、別名絹越 木綿とか名乗っている奴です。
本家『http://www.geocities.jp/minyatyuki/index.html
辛口でも甘口でも激カラでも、今後の参考のためにさせていただきますので
感想とかよろしくしてくれるといい感じです。

コメント (0)

名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。