勇者→貧乏魔王 - 交差−交わる思い−

[お前ら。勇者を討伐するぞ。]
勇者−今は魔王の姿だ−がそう言ったとき、ふとあることに気づく。
(あれ、勇者の俺が魔王になったんだから、勇者は誰なんだ?···ひょっとして···)

ーその頃。
「俺はなぜ、こんな所にいるんだ?」勇者−になった、本来は魔王−の声。
ここはどこだ?なぜ俺はこんな格好をしている? 頭の中の?マークがどんどん増えていく。
「おい、大丈夫か?」どうやら心配されているらしい。ただ、俺はこいつが誰かは分からなかった。
「大丈夫ですか? 薬、飲みますか?」少女の声。こいつも誰か知らないが···心配してくれているのは確かだ。しかし、しかしだ。俺は魔王だ。病気になんて生まれてこの方一度もかかったことがない。たとえかかったとしても、すぐに魔法で治せるはずだ。薬なんて飲む必要もない。手下もそんなこと知っている。つまり。俺は手下じゃないやつに看病をしてもらっている、が···。全く見覚えの無いこの男や少女に心配される心当たりはなかった。
「なぁ、剣士。勇者、大丈夫なのか?」分厚いローブを纏った男。恐らく魔法使いだろう。前に何度か人間と戦争をした時に、コイツらに散々苦しめられた。ただ、なんでこんなやつが俺を···いや。さっき、『勇者』と言っていたな···勇者だとぉ!? 俺が勇者? 何故だ? 俺は魔王のはず···。
そう思って俺は体を見たが、魔王の風格なんてどこへやら。『勇者っぽい』格好をしているではないか。鎧を見にまとい、背中には剣が吊られている。
「ようやく目が覚めたか。全く通りの真ん中で倒れてるから心配で心配で。」
「ほんとです。心配したんですからね。」
「目ぇ覚ましたんだからさっさと宿にいこうぜ〜。」そういって、剣士、少女と魔法使いが俺を宿まで連れていく。何が何だかさっぱりわからない。俺はさっきまで魔王で、手下のために隠れて働いて、奴等をビックリさせようとしたのに。なんで今は勇者の仲間たちと一緒に宿に向かっているんだ? 分からない。何しろ情報がない。俺は本当に勇者なのか−の姿をしているのか−。それに、ここはどこで、奴等は誰なのか?
こういうとき、魔界のテレビドラマでは『記憶喪失』という手段を使っていたな。記憶が消えた振りをして、事情を聞き出してみよう。
「あれ、俺は···一体誰なんだ? ここは···どこなんだ。お前らは何なんだ?」
「おい、どうした? お前は、勇者で、俺は剣士。こっちの男が魔法使いで、この女の子は途中でついてきただろう。で、ここは、ホルムの町だ。大丈夫かホントに?」効果覿面、だな。殆ど情報は貰った。ただ、勇者ってことは···
「俺の目的は···何なんだ?」
「そんなのも忘れたのかよ? もちろん、魔王を倒すことだ。」···予測はしていたが、やはりそうか。俺は、どうすれば良いのだろうか? 俺は魔王なのだ。まさか自分で自分を刺すわけにはいかないし···

その晩。食卓を囲み、俺と勇者の仲間たちは、晩御飯を共にしていた。
「なぁ。本当に、魔王を倒す必要なんてあるのか? お前らは、世界を平和にするのが目的なんだろ? だったら、魔王とも仲良くして、血を流さずに終えた方が良いじゃないか。」
「いえ! 魔王は絶対に倒すべきです! だって、悪魔は人を誘拐したり、お金を盗んだりしてるんですよ? その王なのですから、倒さなくてはならないのです!」
「悪魔にも、何か事情があるんじゃないかなぁ。」
「ねぇ勇者。魔王は僕らの王を殺しているんだよ。そんなことされて、仲良く出来るわけないよ。」あとで聞いたが、王とは、勇者や剣士、魔法使いが生まれた場所を治めていた人物で、人柄がよく、慕われていたそうだった。やはり、俺は−魔王は−恨まれている。しかし、あれは、どうも違う気がする。なにか理由が−。だめだ。魔王の時の記憶が思い出せない。
「何がどうあれ、俺たちは魔王を倒すにしろ、説得するにしろ、魔王に会わなくちゃいけない。だから、俺たちは、大陸の中央の魔王城に向けて進んでいる訳だ。」なるほど。でも···魔王が勇者だったら、俺は−俺本来の姿は−どうなっているんだ?

−その頃、魔王城では、悪魔の軍隊による戦闘訓練がなされていた。
「狙うは勇者一人だ。他の人は絶対に傷つけるな! 分かったな?」
「何故ですか? 手当たり次第に攻撃した方が良いじゃないんですか?」およそ10キロあるダンベルをもって筋トレし、息もあがらずに質問するとは、相当の力が必要だ。やはり悪魔は強いな。
「罪の無い人々を傷つけて何になる? 大勢の人が悲しむだけだ。俺たちの生活のために多くの人が犠牲になっちゃ意味無いだろう?」
「分かりました! 皆、狙うのはただ一人、勇者だ!」
「「「「おう!!!!!」」」」全員が声を揃えて言う。この主従関係によって悪魔は組織化され、集団で戦う術を身に付けたのだろう。
「出陣は五日後。真夜中だ。ここから南東に向かって進む。」
「おう!!!」



「皆、聞いてくれ。」剣士の声。
「「何(何だよ)?」」
「俺たちは、出来るだけ早く魔王城に到着しなければいけない。」急な発言に少女は驚き、魔法使いは飲んでいた酒を吹き出した。当然、俺も不思議に思う。
「町の人から聞いたんだが、魔王が戦闘訓練をしているらしい。強くなったら、それこそ倒せなくなっちまう。だから、早いとこ片付けようぜ。ってことだ。」町のNPC−ノンプレイヤーキャラクター、すなわち勇者やその仲間以外の人は、情報が早いし、正確である。詳しい理由は知らないが、だから、急がなくてはいけないと思ったのだろう。
「よし、じゃあ出発は明日早朝。五日後に魔王城につくように行くぞ!」
「おぉ!!!」
終わり!

後書き

「まだ序章かよ!」と思っているであろう皆さん。これは序章です···が中盤が無いので一気に終盤突入! となるかも知れません。暖かく見守ってください。お願いします。

この小説について

タイトル 交差−交わる思い−
初版 2013年5月4日
改訂 2013年5月5日
小説ID 4498
閲覧数 656
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川原晴輝の写真
ぬし
作家名 ★川原晴輝
作家ID 812
投稿数 7
★の数 21
活動度 2195
川原晴輝、中二やってます。AKBの渡辺麻友とラノベと読者さんのコメントが大好きです。どうかコメントは甘口で宜しくお願いします。

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