アルカン六校回顧録 - 走らしてみたにょ。

まっさらな世界があった。
まっさらな世界は、何もなくてただただまっさらだった。

創造主ジギーは考えた。この世界に一番最初に何をつくり出せばいいか。
世界を作るのに、協力してくれる者がほしい。ただ私だけで全て作り出すより、ずっといい。
そして、創造主は自分と同じ形の模型を作った。
これが、世界に初めて生み出されたものである。

しかし、作られたヒトガタは動かない。
どうにかこの分身を動かしたい。

創造主はひらめいた。

世界を回して力を与えればいい、と。
そして、創造主は時間を作った。
これが、世界に二番目に生み出されたものである。

創造主は自分の分身をたくさん作った。
そしていざ、分身に命令しようと思ったが、どうやって命令をつたえるかを考えていなかった。
そして、創造主は言葉を作った。
これが、世界に三番目に生み出されたものである。


創造主とその分身は、世界にさまざまなものを作った。
美しいもの、汚いもの、大きいもの、小さいもの。
硬いもの、柔らかいもの。重いもの、軽いもの。

あまりにたくさんのものを作ったので、分身は力を使い果たしてどんどん倒れて消えていった。

全ての分身が消えたとき、創造主は言った。
私は疲れた。少し休むことにしよう。

そして創造主はまっさらではなくなった世界からはなれ、もとの世界へと帰ってしまった。

この世界は、その作りかけの世界なのである。






***帝立アルカン総合学校帝都第六分校第二校舎テス講堂***

霧の中を走っていた。火照った顔に当たる水の粒が気持ちいい。
ふと、前の方に人影が見えた。霧でかすんで距離は分からないけれど、確かに人影だった。
人影だと分かった瞬間、本気で走った。追いかけないと。なぜだかそう思った。
追いかけても、追いかけても、人影は近づいてこない。あの人も走っているのだろうか?
というか、なんで追いかけなきゃいけないんだろう?
そのとき、風が吹いた。




「・・・おい、いつまで寝てんだマキト、授業終わってるぞ」
聴きなれた声。そうか、俺は寝ていたのか。それを認識すると同時に身体の感覚が戻ってくる。
「う、むぅ・・・」
「次、語学だろ。早くいかねぇと」
「ふぁ〜っ、急かすなよユズ。別に間に合うだろ」
「語学今日はウツネ教室でやるんだっつの!いつも通りだったら急かさないよ!」
「そんなこと言ってたっけね」
「言ってたっけね、じゃねーよ!早く行くぞ」
「へいへい」

古代歴史、通称古歴の授業では担当のエナシ先生が長くてよく分からない話を滔々と語ることが毎度なので、睡魔に敗北した生徒が勢い良く机に頭を打ち付ける、通称エナシハンマーという現象がたびたび発生する。このため、古歴の授業で一番大切なことは、エナシ先生の長話が始まった瞬間、睡魔に降伏宣言をして机にふせておくことなのである。

と言う恐怖の授業で一度も寝たことがないばかりか、エナシトークの内容すべてを記憶しているというツワモノが俺のクラスに一人だけいる。俺を起こしたユズタカという男だ。


「あと2分しかないって!」
古歴の授業をやったテス講堂をあとにし、二人で廊下を走りながらユズがやる気のない俺を急かす。
「いいじゃん。どうせユムラ遅れてくるだろうし」

ユムラとは語学担当のユムラ先生のことだ。ユムラ先生は授業開始のベルからきっちり4分遅れて教室に来ることで有名なのだ。

「教室違うんだから分かんないだろ!」
「え、どこだっけ?」
「ウツネ教室だよ」
「だからそれ・・・どこだっけ、地下?」
「旧館特別棟の二階!」
「うわ、遠いな〜」
「だから急げっつったんだよ!」

帝立アルカン総合学校帝都第六分校、通称六校は、とにかく敷地がでかい。何代か前の校長がカリスマで、自分の方の事業で得た金を学校の周りの土地を買いまくったからとかなんとかいう理由らしい。
そんなことで新しい校舎を作ろうという時に元の校舎をそのまま壊さないでとっておこう、という話になり、新しい校舎と渡り廊下でつないでそれぞれ使えるようにしたようだ。
その後も何度か改築があり、当然その度校舎が増えていった。
という経緯があり、六校には、本館、北館、旧館、実験棟、旧館特別棟という五つの校舎がある。(このほかにもA部室棟、B部室棟、体育場などの施設がある)

なので、北館一階のテス講堂から旧館特別棟二階ウツネ教室に行くには、北館二階の渡り廊下を使って本館に行き、東西に広がった本館の一階の東端まで行って旧館に渡り、旧館特別棟の二階に上がらなくてはいけない、という事態も発生する。

***帝立アルカン総合学校帝都第六分校ウツネ教室***
「はっ・・・はぁ、はぁ。間に合ったか?」
「はぁっ・・・、先生は来てないけど・・時間的にはアウト」
「いつも細かいっつうの、ユズは」
教室に入った瞬間、既に集結していたクラスメイトにものすごい睨まれた。
このタイミングなら先生だと思うよな。まぁ、仕方ない。
とりあえず二人で席に着いた。
「俺もう疲れた・・・。寝るわ」
「またかよ!ここまで走った意味どうなんだよ!」

その日、語学のユムラ先生の声を聴いた記憶がない。

この小説について

タイトル 走らしてみたにょ。
初版 2013年5月19日
改訂 2013年5月19日
小説ID 4503
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プラスティックノートの写真
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作家名 ★プラスティックノート
作家ID 818
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