●poem shot「鎮魂歌というには軽すぎる八月の想い」

そら てんご
もう悲観の詩など書かないと決めていた。
私のその密やかな誓いの「タガ」を軽々と流していった、土石流。

冷酷さを狂うほどの八月の熱風にからめて、それは日本の西南から押し寄せた。
やすやすと多くの陰謀で膨れあがった入道雲は、重く黒い雨に変化(へんげ)した。
そして野生の森にたっぷり浸み込んで、
容赦なく人々のささやかな眠りを黒く塗りこめ、森から滑り落ちたのでした。
人々の五感を強引に塞ぎ、森の言葉を略奪して容赦なく滑り落ちたのでした。

家族と言う食卓を食い漁っていったその悪魔たちは、
きっと感情も口も付いていない怪物なのでしょう。
人々のささやかな幸せを見逃すことなく、
きっと、嫉妬のかたまりで押しつぶしたに違いない。
悪魔たちは何十年も連添った二人を、
分厚い和紙でも引き千切るように冷酷な音を発して引き裂いたのです。
こうしてより多くの人々に懺悔の時間を押し付けた悪魔は、
今も天上から俯瞰しているに違いない。
助け合う人間界を見下すように。

……(私たちはしばらく沈黙しよう)
そうして一日も早く心の泥をぬぐい去り、さっさと嗽(うがい)で胃の中を洗浄して、
互いに人差し指を唇にあて仲間を探し出し、憎き悪魔に覚(さと)られないように準備をしよう。
憤怒を反撃の拳(こぶし)に握り締めて、いま少し耐えようではないか。
悲観している時間は、敵を強固にする。このことをまず肝に銘じようではないか。
……(沈黙こそが人を強くするのです)

私たちは幾度か学んできた、だからまずそう決めよう!
萎えてばかりいないで唇をキッと引き締めて、面(おもて)を上げ天上を睨みつけよう!
そこから反撃を始めようではないか!

人生が永遠性を含んでいることを知ってしまえば、
きっと独りで生きる孤独を寄せつけなくなるのです。
私たちのたましいは互いに幾度も、
永い修羅場の空間を乗り越えてきたに違いないのです。
亡くなった同志も生き残った同志も、
この奇跡の星の束縛からは、逃げることなどできないのです! 
永遠に。

今度こそ私は、悲観の詩は唱えないでいようと想う。


H26年8月25日4時30分記す。


後書き

少しばかり人類の「負」の側面が勝っている近頃。

個々が、その場で踏ん張るしかないのかも知れません。

この小説について

タイトル ●poem shot「鎮魂歌というには軽すぎる八月の想い」
初版 2014年8月25日
改訂 2014年8月25日
小説ID 4572
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コメント (2)

かおる 2014年9月4日 0時42分48秒
この奇跡の星の束縛からは、逃げることなどできないのです!

どういった心境なのでしょう?

きっと、裏返しの希望でしょう。
そら てんご コメントのみ 2014年9月6日 13時00分57秒
かおる さん

ありがとう。きっとお元気にお過ごしですね(?)。

・・・心境は、そう、私たちは決して独りではないし独りでは生きてゆけないという、ごく単純な制約の中で泳ぎ続けている、と言った感じかな。
・・・答えになっていないかも(苦笑)。
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