御影石幻明の日常生活 - 御影石幻明の日常生活 2日目

生活パターン18 〜携帯買った主人公〜
「良、俺の番号とメールアドレスを教えよう」
休み時間、次の時間の用意をしている良の行動を遮り、しかも良が携帯をバッグから取り出さないうちに番号とメールアドレスを伝える。
「携帯買ったの?」
「おう、今までは持ってても邪魔そうだと思っていたが、皆持ってるしな。大多数の原理だ」
「そっか。そんじゃとりあえず僕の番号、あとメールアドレスは返信するから」
俺が良を待たずに携帯番号を言ったにも関わらず、奴は文句も言わずそして聞き返してもこない。どうやら一度聞いただけで全て暗記して入力したようだ。
「……で、次はメールアドレス」
「自動で受信するのか?」
「そう」
「受信に必要な儀式は?」
「気長に待つこと」
「受信したメールを手でつかむことは?」
「できない」
…………。
〜〜ぴぽろぽんぽぽぽー(デフォルトの音)
と、そんなことを言ってると『新着メールあり』の文字が画面に出る。
「お、ほんとだ。自動受信なんだな」
適当にそれらしい中央の●ボタンを押すとメールが開けた。
本文は……、
『メール』
「お前他に書くことないのか」
「アドレス送るだけなんだからいいだろ」
「ふん、次からは何か意表をつくようなこと書いてこいよな。『九死に一生を得ました。コーラ一気飲み失敗で。炭酸を甘く見てました。でも実際コーラは甘いです』とか」
「意表をつくっていうか単に意味不明なメールだなぁ」
「そう、意味不メール。ま、良も本気を出せば俺を越えることは可能だろ。というわけで越えてくれ。意味不明さで」
「……」
「…と、他に誰かアドレス教えるやつは、と」
はぁ、とため息をつく良はほっといて……次は小夜ちゃんと天葉だ。やっぱり面白メール送ってくれそうな人に教えるのが一番だよな。
「小夜ちゃんと天葉、携帯あったよな?番号とメールアドレス教えてくれないか?」
「御影石くんが思いついたメールアドレスを登録していいよ」
「あたしのはわざわざ聞かなくてもトトロに会いたいと願いながらメールを送ればきっと届くから。トトロに(笑)
「両方とも絶対届かねぇ。特にトトロ」
二人してケラケラ笑っている。ちなみに良は既に次の時間の準備をしていて、こっちを見てもいない。
「トトロがITに興味あると思えないもんねぇ」
「それに俺はトトロにメールを出すとは一言も言ってないし。ってだからそうじゃなくて……俺に教えるのイヤか?」もしそうなら少しショックなのだが、と思いつつ少し緊張気味に聞いた。
「教える教える。今のはちょっとした余興」
余興って……。
まあ、拒否されなくて一安心だ。
「それじゃ言うからね」
小夜ちゃんが自分の携帯画面を見ながら、
「ポーズ時に上上下下…」
「そんな裏技はいらない」
「あ、ウソウソ。ちゃんと教えるから」
………。
……。
ともかく、本当は迷惑なんかなぁ、などと思いつつも携帯の番号を聞くことができた。
 
ってなワケで次に続く。

生活パターン19 〜続いてない〜
「馬鹿になれ!知力0光線!」←幻明
「バカ」←良
会話終了。

生活パターン20 〜こっちが本当の続き〜
結局あの後も他の友達から聞かれて登録作業が大変だった。
総計12人、このうちコンスタントにメールを出してくるやつは何人いるのだろうか。
家についてからそんなことを思いつつ携帯を見ていると、
〜〜〜『メール受信中』
「お?おおお?俺が携帯を見つめたからか?センサーでもついてるのか?この携帯」
〜〜ぴぽろぽんぽぽぽー(デフォルトの音)
〜〜〜『新着メールあり』
……と、1人でごちゃごちゃ言ってもつまらんのでさっさとメールを開く。
タイトルは「普通な人・異常な人」。差出人は…天葉だ。自分から出してくるってことは、教えるのはイヤじゃなかったということか。
『折角なので幻明君のメールの練習も兼ねて、出してみました。本当は小夜子が開発したメール遊びなんだけど、あたしは普通な人の例を出すからそれに対応する異常な人を書いて返信してね〜。
1.銃撃戦に備えて防弾チョッキを着る人
2.本に栞を挟む人
3.辞書を引く人
4.雨が降って傘がないため雨宿りする人
5.雪山でスキーをする人
それじゃ。この程度が出来ないと小夜子に勝てないよ〜?』
読み終えてすぐにメール新規作成の項目を開く。
……この程度が出来ないと〜どころか読んでる側から異常な人の例が出てきた。
…でも俺が異常ってワケじゃないよな。うん。
などと思いつつ一文字一文字ゆっくりとボタンを押して入力していく。
『むぅ、二人ともメールでこんなに面白そうなことをやっていたのか。これならもっと早く買えば良かったなどと思いつつ、異常な人を……
1.「これだけ固けりゃむしろ武器になる!」と防弾チョッキで敵をボコボコ殴る人
2.本に栗きんとんを挟んでベタベタになってしまった人
3.辞書に載ってる人(動詞)
4.お地蔵さんの隣で地蔵のフリをしてカサをかぶせてもらえるまで待ってたら雨があがってしまってがっかりしてる人
5.そのスキーをしてる人のスキー板として二人組で下に敷かれて滑っている人(実質三人滑り)
異常。いや、以上』
天葉め、俺に対してこの程度じゃ本当に練習にしかならないぞ。
なんてほくそ笑みながら送信をした。
〜〜〜『送信完了』
「なぁ携帯よ。お前たまには『送信?飛脚にでも頼めよ』とか言わないのか?」
……。
…。
言わないよね。
はい。
どうせ俺は異常な人。

生活パターン 〜寝る前に〜
夜、丁度寝ようと思っていた矢先、メールが入ってきた。
どうやら今時の高校生はこんな時間帯にもメールを出すらしい。
なんて新しい発見をしながらメールを開く。
タイトルは夢、差出人は小夜ちゃんだ。初メールだな。
『小夜子から問題です。御影石君の将来の夢は何ですか?できるだけ不真面目に答えてね。そしておやすみ〜』
「…………」
天葉が出してきた問題よりかなり難しいな…。自由度が高すぎて。
だが、俺はパッと思いついたものを入力する。
『ほうれん草か赤ピーマン』
ためらわずに送信。
〜〜『送信完了』
さ、今日はもう寝よう。
…ちゃんと電源切って、と。
おやすみ。


生活パターソ21 〜き〜
「機器!」
「凶器っ」
「近畿」
「んー、切り抜き」
「后」
「き……き……きつつき」
「汽笛」
「幻明に小夜子ちゃん、何やってるのさ」
俺と小夜ちゃんが向かい合って真剣にバトルを繰り広げていると良が割って聞いてくる。
「”き”で終わるもの限定しりとり」
「だから結局”き”で始まって”き”で終わる言葉になっちゃうんだよね」
「そうだな」
そう説明しても良は何を言ってるんだ、といいたげな表情をしている。
「何のために」
「小夜ちゃんに勝つために」
「御影石君に勝つために」
俺がいうと、小夜ちゃんも席に座ったまま負けじと体をずずっと乗り出して言う。
「……あ、そう。じゃあ続行して、遠慮なく。僕は加わる気ないから」
良は無理に話題についていくより一歩引いておくのがいいと判断したらしい。
「次、小夜ちゃんだぞ」
「………き、旧式!」
「きぃ……きらめき」
「き、切っ先」
「き…き…京劇」
そこまで言ったとき、一歩引いてなにげに見ていた良がまた口を開く。
「……二人ともよくそんなに続くなぁ」
「本気でやればこのぐらいできるぞ」
「だからよく本気でやれるなぁ、って」
「やれろ」
「横暴な」
「御影石君、それは時間稼ぎ?もしかしてギブアップ?」
「…いや、まだだ」
小夜ちゃん、勝負になると厳しい…。
「き……き……客引き!」
「あ、それ私が言おうと思ったのに…」
「残念だったな」
悔しがっている。このあたりで勝てるかもしれない。
「二人して思いついてるあたりで僕は両方勝利に思えるよ…。ほんと、奇跡だよね…」
「あ、奇跡!」
小夜ちゃんがパチンと指を鳴らして答えた。
「なっ、おい良!バカ!余計なこと言うな!」
「いや、そんなこと言われても……つい口をついて出たんだから仕方ないだろ…」
「ふふ〜、ありがとう、良くん♪」
…くっ、良のおかげで不利に…。
「き……き…」
「幻明、もうやめにしたら?」
「うっさい」
俺は頭を抱えて考える。
「ほんと、ここまでくると本気だか狂気だかわかんなくなるなぁ…」
「お……!狂気!」
またもやなにげなく言った良の言葉から見つかった。
「良くん、酷い〜」
「良、偉いぞ。というかこれでおあいこだ、小夜ちゃん」
「……うう…」
いくらなんでもそろそろ言葉がなくなる。勝った、か?
俺は良が何か言わないか警戒しながら言う。
「はっはっは、小夜ちゃん、ピンチか?」
「あ、危機!」
「……しまった、俺、大バカ…」
「今のは僕のせいじゃないぞ〜」
ピンチって、危機だよな……。今度は俺自身でヒントをくれてしまった…。
「御影石君、優しいね♪」
「ぐ…」
「私のこと勝たせてくれるなんて」
「……き……き……」
このまま自滅してたまるかと思いつつも流石に出てこない…。
「……き」
「き?」
「…………」
ダメだ……。俺は自滅して終わるのか…。
「負けた……。もう出てこない…」
「やった♪御影石君に勝った〜」
「はぁぁ……負けたぁ…」
小夜ちゃんはがくっと肩を落とす俺の頭をうれしそうにポンポンとたたく。
「単純だけど楽しかったね〜」
「まぁ、楽しかったけども…」
「御影石君はこういうの本気でやってくれるからうれしいな」
「ああ、類は友を呼ぶんだろ…」
小夜ちゃんにそう言われても、今の俺はその小夜ちゃんに負けたという無念でいっぱいだ。
「小夜ちゃん……次は負けねぇ…」
「いつでもいいよ」
「次のときまでには広辞苑を読破してきてやる……」
「…うーん、人は何でも真剣になるとすごいんだな」
良は勝手に1人で結論をつけて席を戻した。
「幻明、そろそろ授業始まる」
「おう…」
小夜ちゃんはやはり強敵だった……。
そう思いつつ俺も席を戻す。
…ん、強敵?
「小夜ちゃん、小夜ちゃん……強敵!」
「もう遅い♪」
「……」
強敵だった。


生活パターン22 〜ういろう〜
良が頭痛で早退しちゃって手持ちぶさたな3時間目の休み時間。
なんとなくクセで後ろを見た。
小夜ちゃんはういろうを食っている。
その横で机に両手を置いて小夜ちゃんを見てる天葉。
「まだ3時間目の休み時間だろ?もう食後のデザートか?」
周りで弁当を食べてるやつは誰もいない。
俺がいうとういろうを持っている彼女は口の中のモノを飲み込んでから答える。
「小腹がすいたから、若菜ちゃんがさっきくれたういろうを食べてるだけ」
「……何故よりによってういろう」
「何故って、おやつといえばういろう!」
「悪いが初耳だ」
当たり前だといわんばかりの天葉、こいつも何かを間違ってる部類だと最近思う。
「初耳?あたしの中では当然の事項なんだけどなぁ」
「この前ヨーカンつくってたよね」
ようかんって、随分渋いのつくってるな…。
「ああ、そういや良もようかん好きだったな。和菓子仲間か」
「へえ、良くんも和菓子好きなの」
「かなりな」
「じゃあ今度良くんと和菓子対談第一回『水ヨーカンvs練りヨーカン』できる?」
「俺に聞かれても…。時に小夜ちゃん、早く食わないと授業始まるぞ」
「大丈夫、残りは”ろう”」
「ロウ?」
なんだかよくわからない。
「”ろう”でしょ、”ろう”」
この態度を見る限り、天葉はわかっているらしいが、にやにやしているだけで俺に説明してくれない。
俺がわからないと言うと小夜ちゃんはまたういろうをいくらか食べてから言う。
「これで残りは”う”」
「ウ……?う…。…ああ、”う”か」
残っているういろうは四分の一ほど。だから”ういろ”の部分は既に食べてしまっていて、残っているのが四分の一の”う”ということらしい。
「全く、幻明くんはインテリジェンスが足りないなぁ。理由は簡単、和菓子を食べてないからだ!」
「天葉、大丈夫か?」
……間。
「……大丈夫」
「俺につっこまれるのイヤなのはわかるけど、良がいないんだから仕方ないだろ」
自分でも思うが俺のツッコミはどうもトゲがあるのであまりやりたくない。事実、天葉は普通に落ち込み気味だ。
 
キーンコーロカンコロー(チャイム)
 
「ふぅ、これで四時間目も生き延びられる。若菜ちゃんありがとう」
チャイムが鳴ったと同時に小夜ちゃんはういろうを食べ終わった。
「はーい…どういたしまして」
天葉はやや足取り重く席に戻っていった。…少し、悪かったかなと思う。
だがとりあえず次の授業は数学。
 
 
そして昼休み。
「はぁ、ういろう一個じゃ50分で消化しちゃうねぇ」
授業が終わるとすぐにバッグから朝買ってきた昼飯を取り出す俺に言ってくる。
「そりゃそうだろう。小夜ちゃん、今日は何か買ってきたのか?」
「買ってきた」
そうして彼女はバッグからコンビニ袋を取り出し、さらにその袋から取り出したのは、
ツナコンデニ
…まさか。
そう思ってるうちに彼女は包装をあけて食べ始める。気になるので自分が食べるのは後回しだ。
「……」
「どしたの?」
「それ…」
「ん、初めて食べたけど、結構おいしいよ」
「なんていう…パン?」
「ナコーンデニッシュ」
やる気だ?!
っていうかやれるのか?!

生活パターン23 〜秀一さんってばメールだととても変な人〜
ここは銭湯。しかし銭湯といっても別に銭が湯船いっぱいに入れられているワケではない。ごく一般的な銭湯だ。
「秀一さん、こんばんは」
「やぁ幻明くん。今日は良くんは一緒じゃないのかい?」
秀一さんはいつもの番台に座ってPCをカタカタやってる。
「それが、僕は羊飼いになるんだって言ってニュージーランドに行っちゃいました」
「へー、羊飼いかー。『ヘイマスター、羊毛カツラ一丁』、なんてねー」
……話、聞いてないな。そして何が”なんてねー”なんだろうか。意味わからん。
こっちを見ず、カタカタやりながらだから当たり前かもしれないけど。
「……あの、秀一さん」
「ん?」
やっと手を止めてこっちを向く。
「良は今日調子悪いっていうから俺1人できたんですよ」
「あ、そうなんだ。ははは、本当にニュージーランドに行ったのかと思ったじゃないか」
ここで陽気に笑われると怖いんだが…。(っていうか一応話聞いてたのか…)
「…冗談ですよね?」
「安心していいよ。冗談だから」
秀一さんはまたPCに向かって何やら打ち込み始める。銭湯の湿気にやられてPCがダメになったりはしないのだろうか。
「ところで秀一さん。俺携帯買ったんですけど、一応連絡とれるように番号教えておきます」
「お、幻明くんも買ったのか。これで銭湯が空いてるかどうか僕に聞けるようになるねぇ。ま、聞かなくても君は空いてる時に来る特技があるのか」
「自分でもよくわからないんですけどね。ともかく教えますよ」
携帯をポケットから取り出して自分の番号を表示させながら伝える。どうもこういうのは覚える気にならない。
「それじゃ後でメール送るから。君も早く入らないと混んでくるよ」
「はい、そんじゃ入ってきます」
そういって入ろうと思ったら秀一さんに肩をつかまれた。
「と、幻明くん。料金」
「ああ、すいません。忘れてた」
料金を渡して改めて脱衣所へ向かう。いつもは良がいて適当にしゃべって入るのだが、たまには黙ってぼんやりとつかるのもよいものだと思った。
 
 
そして銭湯を出て家路に着くころ…
〜ぴんぽろろん♪
携帯の音が鳴ったので取り出して見てみる。
『新着メールあり』
きっと秀一さんからだろうと思って開くと、差出人には名前は表示されず、メールアドレスがそのまま表示されている。
そのメールアドレスから察するに秀一さんだと見当はついていたが、本文を見て確認する。
「えー…と」
 
『ほっほっほ、秀一お兄さんの豆知識コーナー。大豆は”だいず”、小豆は”あずき”と読む。空豆はそのまま”そらまめ”。しかし中豆とか土豆とかはないから気をつけよう。これこそまさしく豆知識。ほっほっほ。アデュー』
 
「……」
俺は少々ひきつったまま登録した。
「…返信はしないでおこう」
 
そういえば彼は最近おもちゃ屋のお姉さん(前回参照)とつきあい始めたらしいです。
きっとその影響でバカになってるんだと思うんです。
だから、大目に見てあげようと思います。
 

後書き

コメントしたくない(泣)

この小説について

タイトル 御影石幻明の日常生活 2日目
初版 2001年1月1日
改訂 2001年1月1日
小説ID 460
閲覧数 1290
合計★ 14
ビビンバ吉田の写真
作家名 ★ビビンバ吉田
作家ID 3
投稿数 148
★の数 1180
活動度 17563

コメント (3)

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