練習場

「お前、本当に生きてんのか?」

 彼は僕にそう言うと、手に持ったメロンパンにかぶりつきました。お昼にメロンパンだなんて、後からつらいだろうに。とか思いますが、正直言って彼の体調管理など当てにならないので、僕は無視してカップヌードルをすすります。
 彼、天道君は、何故か僕を気にかけてくれます。何が目的なのでしょう? お金でしょうか? 嫌々、僕の家はありません。いや、母にはありますが、僕自身は追い出されてる状態なので、半ばホームレスと変わりません。つまり、お金なんて無いんです。お金は全て母に行くのです。まったく。
 ……では、何でしょうか? お金以外の関係だなんて、僕は分かりません。あ、いや、他の人は分かるのでしょうが、僕は友達が居なかったので、単にそういった関係を認識していないだけなのでしょうか? あー、それっぽいですね。それっぽい。もえこれで良いですね、決定です。

 「……どうした、孤月。気分悪いのか?」

 おっと、自分の思考回路に堕ちていました。これは僕の悪い癖ですね。癖とは怖いものです。何をするにも、癖は主張してくるんですから。うざったいたらありません。

 「……こーづーきー?」

 「ん? はい、何ですか?」

 僕がそう答えると、彼はハァー、とやたら深いため息をつきました。失礼きまわり無いですよ天道君の癖に、とか悪態を付こうと考えましたが、ここは理性を落ち着かせ、ちらりと天道君を睨んでみます。無言の抵抗というやつです。
 それに気付いたのか、天道君はメロンパンを乱暴に食いちぎりました。おぉ、怖い怖い。唯でさえ目つきが悪いのに、更に悪印象を与えてどうするんですか。

 「お前さ、そろそろ友達作れよ。いつまで俺にカップヌードル恵んで貰おうと考えてんだ?」

 「僕の自殺が成功するまでです」

 「つまり一生じゃねぇかよ!」

 思った事を言っただけなのに、怒られました。これだから人間関係は面倒臭いんですよ。絶交とか言いながら直ぐに戻ったりして、彼等に絶交という言葉は似合いませんよ。全く、似合いません。むしゃくしゃします。

 「……てか自殺って、お前まだ考えてたのか?」

 天道君は気付いたように言うので、僕は素直に頷きます。
 自殺、それは僕にとって癒しでした。つらい現実から目を逸らす為の行為が、いつからか快感へと変貌を遂げ、こうして僕の心にこびり付いているのですから。まるでゴキブリ並みの生命力ですよ。
 ですが、天道君と会ってからは、自殺行為に手を着けていません。勿論リストカットはしますが、あれぐらいで死ぬならところてんと同じですよ。リストカット程度、自殺行為に入りません。
 そう思っているのに、何故かしようと思えないのです。彼に、天道君に会ってから。自殺行為を天道君に止まられてから、上手くいかないのです。

 「ねぇ、天道君」

 僕はそんな思いを巡らせながら、天道君に尋ねます。天道君が反応する前に、素早く次の言葉を吐きました。

 「何で自殺って駄目なんですか?」

 「……………………」

 天道君は答えてくれません。いや、寧ろ答えとか出されたら、違和感爆発で琵琶湖が吹き飛びますね。答え何て無い質問しておきながら、随分酷いですね僕は。
 しかし、何故自殺は駄目なのでしょうか? たった一人の死に関わるのが、せ精々80人弱だというのに、この世界は可笑しいのでしょうか。それとも、僕が可笑しいのでしょうか。
 僕が可笑しいのは自覚があります。自殺行為に依存するのも、男としか性関係を持った事が無いのも、一般常識では可笑しい、と認識されるくらい、知っています。

 「……………………そりゃ、あれだろ」

 おっ、頭の中で独白を繰り広げていたら、天道君が答えを見つけました。はてさて、何て答えを出すのでしょうか。

 「自殺した奴が、一番後悔するから、だろ」

 ーーーー。
 そう、来ましたか。
 はぁ、そうですか、そうですか。

 「だから、お前は後悔、すんなよ」

 そう、ですか。
 後悔、ですか。



 「もう、遅いですよ」

後書き

自殺系寂しんボーイ弧月君とお人好し馬鹿の天道君

この小説について

タイトル 練習場
初版 2015年3月1日
改訂 2015年3月1日
小説ID 4647
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小夢居イアノの写真
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作家名 ★小夢居イアノ
作家ID 917
投稿数 8
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活動度 984
チョコチップメロンパンビーム!!

コメント (2)

★堀田 実 2015年3月1日 19時23分19秒
病的で独特の論理の跳び方が面白かったです。
「あれぐらいで死ぬならところてんと同じですよ」
「寧ろ答えとか出されたら、違和感爆発で琵琶湖が吹き飛びますね」とか。
ただ僕にはそれでもかまい続ける天道君の心境がよくわからなかったので星−1しました。
★小夢居イアノ コメントのみ 2015年3月1日 19時31分10秒
堀田 実さん、コメントありがとうございます。
狐月くんの考えはやたらブレないので、私自身も書きやすくて楽しいです。
天道君の心境は、次の本編にて語ろうかと考えております。
よろしければ、お楽しみください。
評価、ありがとうがざいました。
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