自殺系寂しんボーイ

 俺はお人好しではない、と思う。実際友達からも「お前はお人よしだ」 だなんてレッテルを貼られているが、俺程度の人間がお人好しになったら、世界の半数は千手観音になるだろう。
 俺はお人好しではない、自己満足なのだ。老人に席を譲るのも、泣いている子供をあやすのも、全て自己満足なのだ。俺がしたいから、そうやってしてるだけ。唯それだけなのだ。
 他人の為じゃない、自分の為。それが俺、天道白夜のモットー、言わばルールであった。親が毎晩くだらない口喧嘩するおかげで、目の下には立派な隈が出来ている。それは俺の生まれつきである目付きの悪さを、更に沸き立たせていた。
 そのせいで、俺の16年続いた人生には、友達と呼べる者が、両手で数え無くても十分な程度しか居ない。非常に寂しい人生だ、何て思った事もあったが、友達関係も自己満足で構成する俺には、正直言っていらない関係なのかも知れない。

 「……大丈夫かい、天道君」

 頭の中で独白を繰り広げていると、隣でカップヌードルをすする狐月が、小さく首を傾げた。
 晦狐月、最初は名前が読めなかった。読み方自体も独特で『つきこもりこづき』 だなんて、馬鹿な俺の頭では読めない名前だった。何を考えてつけたんだ、こいつの親は。
 しかし狐月、とは寂しく空に浮かぶ月の事らしい。それを知った時、まさにこいつの事だと思った。友達が一人も居ない、半ばホームレス状態の生活。無数の自殺行為の跡。それで居ても栄える整った顔立ちは、こいつ、晦狐月特有の物だと思えた。

 「知っているかい、天道君。レタスは野菜の中で最も食物繊維が少ないらしいよ」

 しかし何を考えているのか分からない。この様に何の話題も出していないのに、唐突に一生使わないであろう雑学を披露してくる。どっからそんな情報もってくるんだよ。
 しかしこの行為は、自己満足だけで関わっている俺に対しての好意、とも捉えられる。それこそ自己満足だとか、思わないでほしい。

 「今日もいい天気だね、天道君」

 「そーだな」

 どう反応したら良いのか分からない言葉には、とりあえず「そーだな」 で済ましている。それ以外どうしろという。俺は狐月程ユーモアが無いんだ、仕方が無い。
 そう考えながら、俺は今朝買ったメロンパンにかぶり付く。やっぱり美味い、昨日の昼飯もメロンパンだったが、美味い物何だし仕方が無い。ちょっと前に狐月に「お昼にそれはどうなの」 と言われたが、狐月に体調管理をされても困るので、スルースキルを全開して無視した。
 ……しかし狐月は、何故こんな性格なのだろうか。少し気になった。本人は「家庭環境」 だとかで性格が歪んだ、何て言っているが、もはや病的だろう。自殺中毒者であり、男性との性関係を持っているだけで、十分に一般常識に歯向かっているのに、こいつと来たら、どーでもいいです、と言いたげな顔をするだけだ。
 何かしらの感情が抜けているのだろうか、それともそういった精神疾患なのだろうか。そう考えるのは、単なる俺の自己満足。身勝手な行為だ。世に言う好奇心だ。

 「……ねぇ、天道君。一つ尋ねていいかい?」

 思考回路を巡らせていると、狐月が尋ねてきた。そして、俺が何かを言う前に、次の言葉を発した。

 「何で僕に構うんだい?」

 「…………」

 言葉が喉に詰まった。
 何で。と聞かれても、それは俺特有の自己満足でしかない。自己満足の筈なんだ。そう、こいつにカップヌードルを恵むのも、こいつと一緒に帰るのも、こいつの事を気にかけてしまうのも、全部俺の自己満足なんだ。
 自己満足。そう、そうなんだ。自己満足だけの関係で十分なんだ。誰かに裏切られる事もない、自己満足でしか成り立たない関係でいいんだ。
 俺は、自己満足で生きているんだ。
 決して、狐月と仲良くしたいだなんて、思っていないんだ。
 狐月の事を心配何て、していなんいんだ。
 それでも口は、身体は、本能に正直だ。



 「ほっておけない、から」

 自己満足が、いいんだけどなぁ。

後書き

素直になれない天道君と地味に気に入ってる狐月君。

この小説について

タイトル 自殺系寂しんボーイ
初版 2015年3月1日
改訂 2015年3月1日
小説ID 4648
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小夢居イアノの写真
常連
作家名 ★小夢居イアノ
作家ID 917
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活動度 984
チョコチップメロンパンビーム!!

コメント (2)

★堀田 実 コメントのみ 2015年3月2日 0時46分44秒
良くも悪くもラノベを読まないのでこれについてはどう評価していいかわかりません。
率直に思ったことを書けば、晦狐月は男性を装っていながら実はあなた自身の投影で、天道のような理想的な男性に「ほうっておけない、から」と言って欲しいという願望の現われじゃないかと思いました。
小夢居イアノ コメントのみ 2015年3月2日 6時44分06秒
堀田 実さんへ
うーん、そう見えてしまいましたかぁ。
私自身少女漫画みたいな自己投影大っ嫌いなんですけど、そう見えてしまったならごめんなさい。
天道君は自己満足でありたくても、結局弧月君を気にしてしまうお人好し、というイメージで書いていました。
実はこの話の本は、同性愛者をテーマにした作品だったので、そう見えてしまったんですかね。ごめんなさい。
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