空を泳ぐ金魚

 ふと、教室の窓から外を見ると、金魚いでいた。夢でも見ているのか、そう思い、頬を抓ってみると、普通に痛かった。教師から注意の声を掛けられたが、その間も、その金魚いでいた。

 お祭りの屋台でよく見る、あの赤い金魚。そんな生物が、何故いでいるのだろうか。友人に相談してみたが、「お前、夢でも見てるのか?」 と笑われた。他の友人にも相談したが、答えは全て似た様な「大丈夫?」 と、俺の頭を心配する様な返答だった。いい友人達と言えばいいのか、何なのか。

 しかし、ある結論が出た。あの金魚は、俺にしか見えていないのだ。お前の頭が可笑しいだけだろ、と言われたら終わりな訳だが、何故か終わらせる事が出来なかった。一日だけだろう、そう思っていたのだが、次の日も、そのまた次の日も、その金魚いでいたのだ。

 何故あの金魚は、ぐのだろうか。二日、三日はそう思っていたが、いつの間にか、その疑問は消え去っていた。見慣れた、と言うのは少々可笑しいが、見慣れた以外、言葉が見つからなかった。

 金魚はただただ優雅に、あの広いぐだけだった。それ以外、こちらには何もしてこない。肉眼でも見える程大きい訳だが、それでも金魚独特の愛嬌があり、見ていて不思議と、心が落ち着いた。

 しかしある日、金魚ぎ方が変わった。いつも優雅にぐのに、ここ最近は、いつものスピードの10倍近く、速くいでいるのだ。

 何か、あったのだろうか。俺がそう思っても、所詮はの向こう側。俺の気持ちは、ちっとも届かない訳で。それでも、俺はその金魚を心配した。何か痛いのだろうか、何かつらいのだろうか。まるで子供を見守る親の様に、俺はあの金魚を心配した。

 そんな事を思っていたある日あの金魚の隣に、もう一匹、金魚いでいた。金魚を優雅にいでおり、隣の金魚と、楽しそうににいた。

 その瞬間、あの変なぎ方は、もしかしたら、隣の金魚が理由なのだろう、と。彼女か、それとも親友か。はたまた兄弟か両親か、娘か息子か。色々な推測が浮かんだが、直ぐにその思考は止まった。

 考えるだけ、意味は無いかな。そう思ったのだ。あの金魚には、金魚なりの何かがあるのだろう。パーソナルスペース、だっただろうか。そんな物も、彼等金魚にもあるのだろう。

 金魚ぐ理由は、俺には分からない。でも俺は、こうやって下から、あの広く美しいを見るだけで、十分なのだ。

 俺はそんな風に自己完結をして、再び帰り道を歩き出した。



 「すみません……っ!!」

 が、後ろからふいに呼び止められた。振り向くと、そこには金髪碧眼の、いわゆる英国少年が、息を切らしていた。走ってきたのだろうか、大丈夫か? と声を掛ける前に、少年はバッとこちらを見た。

 「お兄さん、もしかして……」


 「あの、見えるんですか?!」

 …………前言撤回。俺とあのは、深い関係になりそうだった。

後書き

ちょっと使いすぎた気がする。

この小説について

タイトル 空を泳ぐ金魚
初版 2015年5月7日
改訂 2015年5月7日
小説ID 4668
閲覧数 9212
合計★ 8
小夢居イアノの写真
常連
作家名 ★小夢居イアノ
作家ID 917
投稿数 8
★の数 25
活動度 984
チョコチップメロンパンビーム!!

コメント (8)

空とぶ天悟 2015年6月7日 2時10分40秒
小夢居イアノさん

文字を『絵』と捉えてみる。
平面の白黒(二次元)を多次元(色の世界)で捉えてみる。
つまり貴方は変化を求めているのでしょうか。
たぶん心理分析すれば、そうゆうことかも知れませんね。
その心がけ、あるいは遊び心は、物書きにとって大事な要素だと私は思います。
私も時に『造語』をつくりだしたり、これまでにない手法を試みたりします。
いつまでも貴方のように、冒険心を忘れないようにしたいものです。

空とぶ天悟もしくはtadano豚。
小夢居イアノ コメントのみ 2015年6月7日 10時48分54秒
空とぶ天悟様へ

ありがたきお言葉……ありがとうございます!!
私自身、この機能はどう使えばいいかを考え、この話が生まれました。
冒険心、大事にしたいです。
コメントありがとうございました!
★たこ焼きの中のタコ コメントのみ 2015年6月15日 1時00分12秒
空を泳ぐ金魚かぁ。とってもかわいらしいんでしょうね!
綺麗なお話だな。と思いました。
続きが読みたいですね。
★小夢居イアノ コメントのみ 2015年6月15日 17時42分01秒
たこ焼きの中のタコ様へ

コメントありがとうございました!
この作品は、夢で金魚が出てきたのが発祥です。
続編……頑張ります!!
★植木青葉 2015年11月2日 18時16分52秒
小夢居イアノ様
空を泳ぐ金魚なんて良いですね。
とても綺麗なんでしょうね。見てみたい。
英国少年との後日談とかがあったら良かったなあって思います!
小夢居イアノ コメントのみ 2015年11月3日 8時56分05秒
植木青葉様へ

コメントありがとうございます!
空を泳ぐ金魚がいきなり見えたら怖いけど、一度は見てみたいですねぇ。
続きが出来次第、またこちらであげようと思っています。
芦川テル 2015年11月8日 14時29分45秒
五感で形成される世界とは所詮は感覚器が受容出来得る波長がその限界です。未知の波長で出来ている幾つもの世界がこの私たちの世界と重なっているのかも知れません。何かの拍子にあちらの波長を拾ってしまった場合、或いは空飛ぶ金魚も現れるのでしょう。金魚を切っ掛けとして次第に浸食してくる異世界の恐怖が頭を掠めました。
文字の色分けですが、こうした試みがSSやTwitter内での軽妙な符丁よろしく巷間に広く認知されれば、活字表現の可能性が大きく広がると思います。
別作品にて星印の機能を知らずに投稿してしまいました。失礼をお詫び申し上げます。
wty123 コメントのみ 2018年1月10日 12時09分34秒
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