弱虫

季節は、梅雨。
今日も、一日中雨だった。
公園を覗いても、人ひとりいない。
まぁ、当たり前だろう。
静かな公園は、雨に濡れて泣いているようだ。
「寂しいのかい?」
そう呟いたつもりなのだが、ニャーン という鳴き声にしかならない。
そう僕は、猫。
でもただの猫じゃないってことは、頭にいれて置いてくれよ?
僕は、神様に頼まれごとをされているんだ。
大事な仕事さ。

耳をすます。
ほとんど雨の音で、消えているけど小さな声がする。
泣き声のようだ。
公園の隅、植木のそばにしゃがみ込む女の子が目についた。
ゆっくりと近づき、擦り寄る。
「わぁ、猫さん?」
真っ赤に目を腫らした女の子は、声を上げた。
僕は、人間の言葉を知っている。
話すことも出来る。
ただ、仕事以外で話すことはできない。
誤って話してしまったら、大変だろう?

[人間を助けること]

これが僕の神様から頂いた仕事だ。
泣いている女の子、
その子を助けるのは僕の仕事なのだ。
すうっと息吸う。
仕事前の準備運動と似たようなもんだ。
「やぁ」
始めは挨拶だろう?
僕が、一言言葉を発すると女の子は目を、丸くした。
「猫さん喋れるの?」
少し声が震えている。
「うん。君は、なんで泣いているの?」
優しく、女の子が怖がらないように声を出した。
「え?‥‥‥な、なんでもないの。」
女の子の顔が曇り、下を向く。
「そっか。でも、君を助けたいな。誰にも言わないよ?だって猫だからね。」
話してごらんと、優しく諭す。
すると、女の子は少し考えるような間の後、ゆっくりと話し始めた。
「みんなが、怖くて喋れないの。学校で、ゆきのこと嫌いって言うの。涙が止まらなくなっちゃうの。そしたら、みんな弱虫って私をたたいてくるの。怖いの。」
震え震え言葉を繋ぐゆきの瞳に涙が溜まる。
この子は、自分を強く持てなくなってしまっているようだ。怖い怖いと、逃げてしまう。
少しの悪口でも、人はこんなに簡単に傷つき涙を流す。人間は、美しく繊細な生き物なのだ。
そして、我儘で傲慢な生き物でもある。
でも、僕は人間が好きだ。
彼らの、心はとても興味深い。
「そっか、ゆきはどうなりたい?」
確かめるように、たずねた。
「嫌なんだ。弱虫になっちゃうの。ゆきは強い虫になりたいの。なにを言われても負けない。そんな、強い子になりたいの。」
あぁ、やっぱり目が離せなくなる。
真っ直ぐな心は本当に綺麗だ。
しかし、ゆきはすぐシュンとしてしまう。
「でもなれない。弱虫だから」
ゆきの瞳から、涙が流れた。
ぽろぽろと、止まることなく流れ落ちる。
「君は、強いよ。とっても真っ直ぐな心を持ってるからね。そうだ、魔法をかけてあげるよ。」
微笑むように言う。
「え?」
ゆきは、不思議そうな顔をした。
僕はゆきの温かい手のひらに手を置いた。
「大丈夫。大丈夫。」
そう言いながら、手のひらを優しくぽんぽんたたく。
「猫さん‥ありがとう。元気出てきた!強くなれたの?」
「もちろん」
しっかりと答える。
「僕は特別な猫だからね」
「ありがとう」
ゆきは、まだ赤い目をこすり笑った。
彼女は、もう大丈夫。
きっかけさえあれば、誰だってなりたい何かになれる。
僕は背中を押しただけだ、彼女は最初から、乗り越える力をもっていた。
魔法だってかかってない。
いや、かかるかかからないかは、その人の気持ち次第と、言っておこうかな。
雨は止み、空は曇り空になっていた。
「猫さん!もう行くね?今なら、大丈夫な気がするんだ。」
「そう。頑張るんだよ?」
ゆきは深くうなずき笑うと、公園の外へ駆け出して行った。
にゃーんと小さく鳴く。
もう、人間の言葉は話せないみたいだ。
しばらくその場で空を見ていると、太陽が出てきた。
僕は太陽が出るのを、確認した後公園の外へ出た。
彼女の幸せを願いつつ、また人間を助けに行くとしようか。
軽い足取りで、茂みの中に飛び込んだ。

さぁ、次はどんな子に出会えるかな?








ドキドキと胸が脈打つ。
私は今、怖い友達の前に立っている。
不思議な猫さんと別れた後、すぐにここに来た。
「なに?」
キツく睨み付けられる。
泣いちゃいそうになったけど、ぐっとこらえる。
「私もう泣かないから!」
大きな声でいい返す。
周りの友達もビックリしているようだった。
「なに言ってんの?」
すぐに跳ね返ってくる。
凄く怖くて、手が震えるのに口は止まらない。
「私をいじめてなにが楽しいの?私は、何もしてないよ!もうやめてよ!」
すると、1人の子がもうやめようと呟いた。
悔しそうな顔をしていたけど、何故か安心しているような気がしたのは気のせいかな?
友達は、みんな私に謝ってくれた。
私には、沢山の友達が出来た。

幸せになれたよ。私、強くなれたかな?
ねぇ、猫さん。
少し会いたいなぁ
風で揺れるスカートを押さえ空を見る。
空には、大きな太陽と綺麗な虹がかかっていた。
「ありがとう」
小さく呟くと、私を呼ぶ友達の元へ走る。

猫さん。
助けてくれてありがとう。

後書き

こんにちは!こんばんは!
たこ焼きの中のタコです。
初投稿なので、短編小説です。
温かい気持ちになれたでしょうか?
次回からは、本番!長編を何か書きたいと思います。

では、また次のお話で!

この小説について

タイトル 弱虫
初版 2015年6月15日
改訂 2015年6月15日
小説ID 4681
閲覧数 503
合計★ 1

コメント (2)

★とまと 2015年7月9日 20時02分19秒
いじめに対抗する勇気って大事ですね
長編頑張ってください。楽しみにしてます。

あとコメントありがとうございます。
★たこ焼きの中のタコ コメントのみ 2015年7月9日 22時49分24秒
とまとさん
ありがとうございます。小説更新の励みになります。
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