短編 - 遠く彼方

 遠く彼方

『なんで私がこんな目に合うんだろう……誰か助けてくれないかな』
 少女−九条春香は状況を見て思った。
 春香は襲われている。
 そして外は暗闇。月の光も差さない。
『ううっ……嫌だよぉ……』
 もう駄目か。
 そう思ったとき、攻撃側が気絶している。
「――公衆を考えろ、畜生が。まったく……純粋無垢な少女を畜生色に染める気か、阿呆。
 で、大丈夫か?」
「ええ……ところで、貴方は?」
「俺か? 俺は藤沢修治」
「修治……? え、私を知っている?」
「――春香?! どうしてお前がこんな所に!!」
 修治は彼の記憶の中にある春香とは違っていた事に驚いた。
「シュウちゃんこそ、なんで?」
「そんな事はどうでも良い……!!
 ――お前、また家出しようとか思っていたのか。この家出娘め! 一体どれだけ俺に迷惑を掛ける気だ!!」
 彼は怒鳴った。
「それがこの始末だ。良いか! 俺が武術を体得していなければお前は終わっていたぞ!
 何度家出をするなって言わせれば気が済む! ええい、この女め!」
「そんなに怒らなくたって……」
何処がだ!! このバカ女!! 怒りたくなるのは当たり前だっ!!」
「――分かったよぉ、もう、そんなに怒らないでよ」
「……全く」
 修治は一度、大きくため息をついた。
 藤沢修治と春香−進藤春香は、幼馴染の関係。
 昔から修治は春香を守ってきた。
 修治が春香を守ってやろうと思ったのは今日昨日ではない。
 春香が近所の悪がきに苛められていた時、修治は何とかして春香を守ろうとした。
 殴られて倒れようとも立ち上がって春香の『壁』になって守った。
 そして悪がきが諦めて帰ったときには、修治の全身はあざだらけになった。
 そこから修治は、空手、柔道、剣道、少林寺拳法などを習い始めた。
 彼は春香を守るためならどんな事も頑張ってきた。
 彼にとって春香は守るべき存在、そして妹の様に見ている。
 恋愛感情は皆無だろうと思われた。
 だが、春香は修治の事を気にしていた。
 彼女の身体が、女らしく育った時に気がついた。
 だから春香は――。
「とりあえず、家に帰るぞ」
「うん♪」
 春香は修治の腕に絡みついた。
「春香、お前と言う奴はどうして可愛い仕草を見せるんだ……」
 修治はまたため息を吐いた。


『朝〜朝だよ〜起きて〜 早く起きないと学校遅刻しちゃうよ〜 それでもいいなら……』
 修治は目覚ましのスイッチを勢いをつけて止めた。
「くそっ。春香の声は良いが、なんでまた『水瀬名雪』っぽいんだ」
 彼はそう呟いた後、居間に向かって朝食を食べた。
 その後、学校に行く準備をして学校に向かう。
 その時に春香と共に学校へ行く。
 会話は他愛のないことが殆どだった。



 昼休みになった。
 修治と春香は屋上に向かった。
「ここがいい場所みたいだぉ〜」
 春香は屋上に上がって『いい場所』に立ってそう言った。
「お前なぁ……」
 修治はため息をついた。
 奔放な春香の性格は分かっているのだが、それでもため息をつきたくなる。
「もう、シュウちゃん〜ため息ばっかりついていると、幸せが寄り付かないよ〜」
「煩い。お前がその性格を直せばため息なんて出ないよ。全く……」
「あはは〜」
 春香はにっこりした。
 だが修治はため息はつかず、微笑した後座って弁当を食べ始めた。

 放課後、修治は春香と共に帰ることにした。
 春香はクラブに入っていないから修治もそれに合わせた。
 修治は柔道部などに勧誘されたが、全て蹴った。
 その訳は春香を守るためだ。
 彼にとって春香は守るべき存在であり、妹みたいな存在。
 『妹』を守らない『兄』が何処にいようか。
 修治はそう思っているのだ。

「ねえ、シュウちゃん」
 春香が通り道で修治に聞いた。
「――私のこと、どう思っているの?」
「……あのなぁ、お前。最近、その質問多いよ。何度も言うけど、ただの幼馴染だって」
「えー……『気になる存在』とかそう考えた事ないのー?」
ない
 修治は断言した。
「そうなんだ……単に私は可愛い幼馴染だけなんだ……」
「悪いな。そうとしか見えないからさ……」
「うん……」
 春香は頭を下げた。
「あのさ、シュウちゃん、家に来てもいい?」
「……ン? それは構わないけど?」
「それじゃ、鞄置いて着替えたら直ぐに行くね♪」
 彼女は頭を上げて満面の笑みを浮かべた。
 修治はそれを見て、顔を赤くした。



 ――シュウちゃん、大好き。

 修治は春香にそう言われた。
 春香が家に来て、修治がサイダーを出した時に春香がふと、そう言ったのだ。
 修治は飲んでいたサイダーを吹いた。
「けほっ、けほっ……い、いきなり何を言い出すんだ」
「だって、本当の事だもん」
「本当の事って……」
「……信じてくれないの」
 春香が冷たく言い放った。
「信じるとか信じないとか、そういう問題じゃなくて……なんでいきなりそんなこと言うのかなって」
「……いきなりそんな事言うって……酷い」
「――酷くはないよ。だって俺がそう言ったら春香だって驚くだろう?」
「驚かないよ」
「どういう神経しているんだよ。普通驚くだろ……」
「驚かないよ。シュウちゃんの事好きだから」
 相変わらず、真剣な表情で言い放つ春香。
「……――」
 もはや修治には手段がなかった。
 沈黙の空気が修治の家のリビングを包んだ。


 数分沈黙が続いた後、春香は行動に出た。
 彼女は修治に近づいた。
 そして華奢な両腕で修治の首の後ろをそっと掴んだ。
 春香は修治に抱きついていた。
「シュウちゃん……」

 ――春香の唇が修治のと触れた。

 修治は春香をじっと見た。
 春香は目がとろんとしていて、顔が赤かった。
「分かってくれる……?」
 春香は修治を上目遣いで見ていた。
「……ああ。さっきので春香が俺の事好きだって分かった。だから――」
 修治は春香にさっき彼女がとった行動で返した。
 唇が離れると、春香は修治にまた抱きついた。
「――このままずっといたい。シュウちゃんといたい。ずっと、ずっとだよ……」
「春香……俺の事そんなに思ってくれていたんだ……俺だってそこまで思ってくれる幼馴染がいるなんて、夢にも、思わなかった、ぜ……」
 修治は泣いていた。
「シュウちゃん……泣かないでよ」
「ごめん……すげぇみっともない。けど……止まらないんだ、涙が……」
 春香は修治の頭を撫でた。
「――春香」
 修治の涙はそこで止まった。
「……シュウちゃん……愛している。『大好き』って単語は今は使わない。だってどれだけ『大好き』って言ったって、気持ちは……」
『――早く気がついてやればよかった。それだったら春香は……』
「シュウちゃん、明日休みだから夜一緒にいたいの……」
 春香は言った。
「どうしてそう思うんだ?」
「……シュウちゃんを私のものにしたいから。私が一番最初に好きになったから……
 もう誰にも渡したくないの……」
「春香……ああ、そうだな。そうしようか……」



 ――月明かりが修治と春香を包んでいた。

「……シュウちゃん」
「――? 何?」
「全裸を見られるのが恥ずかしいから、電気を消してもらったけど……
 あまり変わらないね、これじゃあ……にはは……」
「……そうだな」
 修治はそう言った。
 修治と春香はまだ『繋がってはいなかった』。
 春香の纏っていた服を全て脱がした後だった。
 束ねられていた春香の髪は枕に広がっていた。
「シュウちゃん、早く……」
「急かすな。大丈夫だって」
「うん――」



 翌朝、修治が目を覚ますと春香が巻き付いていることに気がついた。
「うにゃあ〜……うにゃあ〜ん……」
 春香は寝言を言っていた。
 二人ともまだ何も着ていない。
『起きられないよ、春香……』
「にゅ〜ん……シュウちゃん〜……にゃあ〜ん……」
 まだ、彼女は寝言を言っている。
「起きろ、朝だぞ」
「……うにゅ……おはよう、シュウちゃん」
 そう言って春香は起き上がった。
「うん、おはよう」
 修治はようやく起き上がって言った。
「――凄く気持ちよかったよ」と春香は思い出した様に言った。
「それはよかった……」
 修治は何故か、ホッと息を吐いた。
「……シュウちゃん。私の身体はどんな感じだった?」
「ふにふにしていたな。そんな感じ」
「そうなんだ……」
 春香は修治をそっと抱きついた。
「これでシュウちゃんは私のものだね」
「そうだな」
「――もう離さないから。絶対に離さない」
「春香……俺もだよ」
「シュウちゃん……」

 ――二人は幼馴染という関係から脱した。

 ――何年経っても、春香の愛は変わらなかった。



 数年後。
「結婚する事になる、だなんてね。驚きだよね」
「そうだよな……。あの時はそうは思わなかったし」
「――好きになってよかった」
 春香は言った。
「そう、かな……よく分からないけど。でも、春香のお陰で色々助けられた事もあった訳だし」
「感謝してよね?」
「してますよ。それのお礼として身体渡しているじゃないか」
「そうだったけ? あはは〜」
「全く……」
 修治は春香を抱きしめた。
「どうしたの、いきなり?」
「急に抱きつきたくなった。それだけなんだ……
 ――これからも守っていくよ、春香」
「うん、修治さん」

 ――そして修治と春香は結婚した。

 その時は桜の花びらがとても優しく舞い、二人の門出を祝うようだった。

後書き

こんばんわ、月詠祐平です。
最初にお届けする短編は恋愛小説。
純愛モノこそ私の真骨頂と思います。

この小説について

タイトル 遠く彼方
初版 2005年3月31日
改訂 2005年3月31日
小説ID 472
閲覧数 869
合計★ 3

コメント (6)

弓射り 2005年3月31日 22時01分44秒
恋愛小説を読むと顔がにやける癖のある弓射りですw
というのも、恋愛小説には目を覆いたくなるような甘ったるい雰囲気やらセリフやらがぎょうさんあるからなのですが、この作品にはその”雰囲気”を感じられませんでした。ま、これだけ短いと無理もない話ではあるのですが、もう少し内容をしぼってみてはいかがでしょう。短編のいいところは、テーマを一つに絞ってそこだけを見てもらえることですから、それを大いに活用するともっといい短編が書けると思います。
匿名 2005年3月31日 22時11分44秒
これのコメントをつけるにあたって、自分の作品を棚に上げます。なので色々言いますがこれは自分の事を棚に上げて言っているので少なくとも好感を持たれるようなコメントは出来ません。申し訳ありませんが…
まず、というより最初から最後まで通して筋が粗いです。何を書こうとしているのかは真っ直ぐに分かるのですが、やはり肉付けがされていないように感じます。
冒頭のシーンを上げてみても描写が殆んどされていないので、「襲われている」という状況にも関らず全く緊張感も恐怖感も伝わってきません。助けに登場した修治が戦うといった描写も全く無く、更に視点がコロコロ変わるので非常に読みにくいです。
更に登場人物の心理描写も、よく言えば真っ直ぐに書きすぎているせいでとらえ難くなってしまっています。ゲームなどのネタを出したりするのも分からない人には全く分かりません。
そして今回一番の山場だと思われる二人が愛し合うシーンですが、これはコメントのしようがありません。自分はこういうシーンを書いたことが無いので大変さなどは全く分かりませんが、流れから反しているような気がします。

今回読んで思ったことは起承転結をしっかりつけ、肉付けをできるだけするべきだということが一つ。
もう一つは、「じっくり推敲するべきだ」ということです。
細かい事を述べていくときりがありませんが、今回はこれだけをここにコメントします。
自分の事を棚に上げているくせに辛口なコメントで申し訳ないです。次作に期待しています。
★イカサビS コメントのみ 2005年3月31日 22時15分14秒
ええと、何故か匿名になっていますね(汗
↑のはイカサビSです。では・・・
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