お姉さん

部活帰りの電車で。

いつも一緒に帰る面子は塾だったり委員会だったりで、今は一人で帰っている。

たまにはぼっちもいいかな、なんて考えてふっと前を見ると、向かいの席にいる女の人が目に留まった。

その女の人は、若くて淡い黄色の服を着ていた。なぜか、危うげだな、と思った。




今日は友達との帰り道。帰り道と言っても家が遠いため、やっぱり電車に乗って帰る。

みんながクラスで一番かわいい小田切さんの話をしているとき、見つけた。あの人だ。私立大学の図書館前の駅から、乗ってくる。

あの人は、真っ白な服だった。ちょっと長くて茶色い髪に白い服がよく合っている、と思った。


部活の帰り。今日はたくさん走ったからか、とても眠いので、うとうとしていた。

すると、となりからいい匂いがするのに気づいた。

匂いの持ち主は、お姉さんだった。茶色い靴に長い丈のワンピース。

何となく表情が暗い気がする。痛いのを、我慢してるみたいな。

「次は、◯◯駅ーー◯◯駅ーー」

駅のアナウンス。我に返った。ずっとあの人を見ていたらしい。

降りないと、と思って席を立つ。その拍子に何か落とした。慌てて拾おうとすると、あの人が拾ってくれていた。

「落ちましたよ、」

そう言って立ち上がり、彼女は顔をしかめた。それを見て、クラスの女子が靴擦れが痛い、と言っていたのを思い出した。

「どーもです。お姉さん、ひょっとして靴擦れしてないすか?はい、これ。あげます」

俺はバンドエイドを一枚、お姉さんに差し出した。

「ありがとう。靴擦れしてたから、助かります」

「いえいえ、お大事に」

そう言いながら、電車を降りた。



日曜日の夕方。クラスの友達と遊んできた帰りだ。やっぱり電車に乗る。まあ、そうしないと帰れないし。

今日は、なかなか電車が混んでいた。空席はないかと探しているとき、お姉さんを見つけた。薄ピンクのパンツは、お姉さんの危うさを匂わせるのを助長していた。

うん、周りみても、お姉さんの隣しか、あいとらんし、しゃーないしゃーない、

自分に訳のわからない言い訳をしながら、お姉さんの隣に座る。

「ねえ」

うわ、近い。のぞきこんできた黒い瞳に奥の奥まですいこまれ、もってかれそうな気がして、やっぱり危うい、と思った。

「この間、絆創膏くれた人ですよね?」

「はい」

「この間のお礼に何かしたいんだけど、いいかな?」

「いいっすよ、お礼なんて。あ、でも、お姉さんがエロいことしてくれる、っていうのは大歓迎です」

「うわ、サイテー」

お姉さんは、そう言いながらも、クスクスと笑った。お、なかなか好感触なんじゃないか?

「あ、じゃあ勉強教えてくださいよ。お姉さん、頭いいっしょ?いっつも図書館の駅から乗るし」

「まあね。じゃ、お礼は勉強を教えるってことにする。次の土曜日は、時間ある?」

「うん、ひまひまー」

「じゃ、次の土曜日に◯×大学図書館前駅に来てちょうだい」

まじか、やった。お姉さんと会う約束しちゃった。




一週間長かった。今日は約束の土曜日だ。

◯×大学の図書館と言えば、頭のいい人がたくさんいると有名だ。

だから、ガリ勉の温床くらいとしか考えてなかった。けど、あんなお姉さんがいるなんてなかなかいいとこじゃん。

そんなことを考えながら、ふと見ると

遠くにうすい紫のかたまりを見つけた。お姉さんだ。

「じゃ、ついてきて」

図書館はたくさん人がいるのに、とても静かで、ちょっと落ち着かなかった。お姉さんが進むほうへついていくと司書室があった。

「さ、入ってね」

お姉さん、ここの司書さんだったのか。

司書室にはたくさん本があって、いかにも頭のいい人の部屋という感じがする。

「じゃあ、今日はよろしくお願いしまーす」

勉強を教えてもらい、しばらくすると

「今日はもう終わり。休憩しましょう。」

と、お姉さんが言った。

それからしばらく、ずっとだべっていた。何の話をしたかはあんまり覚えてない。でも楽しかった。

お姉さんはなかなか自由な人だなあ、ということもわかった。ただ自由な訳ではなく自由奔放に振る舞う姿がなんというか、面白いのだ。

話題が、もうなくなってしまった。

しん、とした。


お姉さんを見る。眉のあたりで切り揃えられた前髪。奥へ、奥へと誘う黒い瞳。

すべてが危うげで、まるでこの光景が、夢なんじゃないかと、錯覚させる。

お姉さんの、すっと通った鼻筋。薄い桃色をした、唇ーー。


お姉さんの長い髪が、はらり、と落ちる。

俺はやっぱり危うげだと、思いながら、



をした。









この小説について

タイトル お姉さん
初版 2016年4月17日
改訂 2016年4月21日
小説ID 4772
閲覧数 2988
合計★ 7

コメント (4)

★HIRO 2016年4月17日 21時19分07秒
こんばんは、HIROです。

読ませていただきまして思ったのが、
頭の中で内容を理解する前に話の中にスッと入り込んでしまっていたのがすごいと思いました。
何度も自分の学生時代を思い出していました(笑

話の内容、書き方等もとても参考になりました。
これからも楽しみにしています。
★にのやしあ コメントのみ 2016年4月17日 21時26分37秒
HIROさん、コメントありがとうございます。
あんまり上手ではないと思ったので、(今からどんどん修正がくわえられていくと思います)素直に嬉しいです。
ただ、私は私自身の小説のレベルをあげたいとは思うので、もしよろしかったら、次回は直したほうが良いところなども教えていただけると励みになります。
ベタ褒めありがとうございます。えへへ^ ^
弓射り 2016年4月18日 23時02分39秒
どうも、ゆみしにコメントありがとうございました。

雰囲気はとても良いと思いました。でも何というか、かなり手触りをリアルにしたいという意欲を感じる文章なんですけど、まだ匿名性が高い文章だなぁと思います。誰にでも当てはまる感じ、といえば分かりやすいでしょうか。色とか匂い、手触り、形、味に踏み込もうとしてるけど、まだ具体的にありありと見えるほどの描写や表現ではない。

惜しいなと思ったのが、最初にお姉さんが淡い黄色の服を着てるじゃないですか。次に会ったときは白。でも3回目と4回目の出会いのシーンに服の描写がないのです。
文章はリズムが大事ですから、ここで服について触れとくと文章に区切りが出来て、構造が複雑になります。また、服の色にメタファーを仕込むことも出来ます。シーンが変わるごとに変化するお姉さんの服の色の違いに意味を込めたりもできます。もちろん服じゃなくても、靴の色でもバッグの色でも良いのですが。これくらいの長さのお話だと比較的短いので、読み応えを出すのに色々工夫が凝らせるとより良くなるかもしれません。

良いなぁと思ったのが、危うげ とか 黒い瞳の奥の奥 とか薄い桃色 などポイントになる言葉が美しいこと。文章中に繰り返し出てきたり、ここぞというところで五感に訴える表現を使う勘は鋭いなぁと思いました。
最後の表現もはらり、なんて言葉と響き合ってキス?を連想させるやり方も効いてると思います。
★にのやしあ コメントのみ 2016年4月19日 21時28分41秒
弓射りさん、コメントありがとうございます。
ゆみし本当に良かったです!大好きです!もし良かったら、次作を書いて欲しいくらいです!
たくさん褒めていただき、ありがとうございます^ ^
服の色のご指摘はとても参考になりました。文章に区切りを付け、リズムを作ることで、こんな短い短編でも複雑に作れると知り、驚きました。
匿名性が高い文だと言うことについては、まだよくわからないので、もう少し落ち着いて考えてみます。
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