世界終了チャイム - 世界終了チャイム*2*

あれから三日、<輪廻>のメンバーは、無断で学校を休んで<輪廻>に参加することを許された。
今までは届けを出す必要があったが、便利になってよかった。
何と言っても、世界を滅亡から守るのだから。
まだそんな実感はないけれど。

あの日から泊まり込みで練習を重ねてやっと移動手段に難なく『魔法』を使えるようになった僕らは、次の段階へと入った。
今度は、「悲しみ」を固形、詳しく言うと結晶化することのできる魔法だという。その魔法では、悲しみの量、カタチを見ることもできるらしい。僕らは感情を結晶化なんて今まで聞いたこともなかったので正直とても驚いた。だが、世界を救うために必要だってことは、わかった。
結晶を取り出す方法は、相手の心に手を当てて、「クリスタライズ」と言って、トン、と押す。
見るだけなら、手をかざして目を閉じて同じ呪文を唱える。サラさんは簡単だと言ったが、少し、難しかった。しかも、人の心の中を覗くのにはとても勇気がいった。そして、最大の難点は何度もむやみに実践することができないことだ。そのための装置はあるが、サラさんによると本当の感覚とは少し違うらしい。改めて世界をまもることのたいへんさを知る。

そんな頃、救命隊『輪廻』では世界終了阻止プロジェクト、通称「世終阻」に向けた班分けが行われていた。僕らは、サラさんをはじめとする主要メンバーとともに総合班に属することとなった。他にも、マスコミ対応班、護衛班、治安維持班などいくつもの班がある。総合班はそのいくつもの班の頂点に立つ班であり、だからこそサラさんが入っているのである。今度、班ごとの顔合わせがあるようだ。ただ、主要メンバーの皆さんはサラさんとともに僕らに魔法などいろんなことを教えてくれたので、顔見知りばかりであったが。

*   *   *

今日、僕らは早朝にサラさんに呼び出された。
やっと布団から出るのが億劫ではなくなったこの時期でよかった、と思ったのもつかの間、サラさんは真剣な顔でこう告げた。
「渋谷の駅前、バスロータリー側で、暴動を起こしている奴らがいるようだ。」
僕は思わずええっ、と言ってしまった。なぜなら僕は毎日、渋谷からバスに乗って学校に通っているので、渋谷のバスロータリーは結構知った場所だったからである。
サラさんは声を上げた僕を一瞬見て、話を続けた。
「さらに暴動だけではなく、彼らは反『輪廻』と言って回っている団体のようなんだ。」
そこで、もう一度僕は声を上げそうになったが、今度は飲み込んだ。
反「輪廻」?なぜ世界を救うはずの僕らが、疎まれなくてはならないのだろう。そんなことを考えている間に、サラさんから声がかかった。
「今回は、総合班はもちろん、治安維持班とも合同作業になる。礼儀をきちんとわきまえて行動したまえ。間違っても感情的にはなるな。顔合わせまえなのに活動になってしまい、すまない。一度家に戻って、集合は渋谷駅山手線の出口付近とする。工事中のところが多いが、気にするな。」
「はい。」
声が揃う。移動魔法の練習の成果が発揮された。もっとも、このためにやったのではないが。
僕らには輪廻の制服があるが、それで行くと逆効果だと考えたサラさんは、全員私服で行くように指示した。私服、と言っても、ちゃんと渋谷にいてもおかしくない格好で、と言われた。僕は渋谷のバスロータリーだと友達に会わないか心配だったが、今更そんなことを言っている暇はなかった。
そして、集合した僕たちはすぐ作戦を開始した。それとなく彼らの周りを包囲し、一番弱々しく見える輪廻員が彼らに近づく。そこで輪廻員だといい、なぜ暴動を起こすのか聞く。作戦では、その質問の答えを聞くのが目的というよりは、彼らが怒り出すのを待ち、それの取締という形で連行しようと考えていた。
だが、現実はそこまで、作戦に忠実ではない。彼らは、こう言った。
「俺らは、自分たちが正しいと思ってる。輪廻は『世界平和』を掲げてやっているが、実は10年前の事件を捜査してるんだろ?」
そこで、僕らがきょとんとする中、僕ら以外の輪廻員たちの顔が強張った。そんな顔をしたら誰だって図星だとわかってしまう。
輪廻員たちは、容赦など微塵もせずに彼らに襲いかかった。もう言えただけでいいのか、彼らは抵抗しなかった。
その日中僕は、反『輪廻』の人と帰りにすれ違った時、耳元に囁かれた言葉を脳内で反芻し続け、何か引っかかるものを導き出そうとした。
そしていつしか、眠りに落ちていた。

*     *     *

『そろそろ行こうか?』





『僕も?』





『もちろん。』





『行く時はみんなで、だろ?』





『さあ、冒険だ。』






子供達は静かに家を抜け出すと、目的地へと歩き出した。








*     *     *

夢と、彼の言葉が重なる。
でもやっぱり何も、思い出せない。
何か引っかかるのに。
何に引っかかってるのかさえ、わからない。

彼の、『知らないくせに。』という、一見負け惜しみにしか聞こえない、そんな言葉に。

後書き


読んでいただき、ありがとうございました。
世界終了チャイム第二弾、お楽しみいただけましたでしょうか。
これからも私の文章力をフルに使って頑張って書いていくので、宜しくお願いします。

ご意見、ご感想などお待ちしております。

P.S
つまらないことですが、救命隊『輪廻』は、救命隊、というところから全部含めて正式名称です。
知ってましたかね?

この小説について

タイトル 世界終了チャイム*2*
初版 2016年5月11日
改訂 2016年5月11日
小説ID 4783
閲覧数 1292
合計★ 4
ポンダンの写真
駆け出し
作家名 ★ポンダン
作家ID 1011
投稿数 4
★の数 10
活動度 441

コメント (3)

弓射り 2016年5月20日 1時47分35秒
さて、勝手ながら負荷をかけさせて頂きました。短期間にどれくらいの文章を練れるか見てみたいと思い、イチ読者の分際でワガママを言ってみました。

淡々とした文章ですが、独特の味わいがありますね。そんなにクセがあるわけじゃないですが、村上春樹みたいなリズムというか。
長編になっても面白く読んでいけそうだなぁ、と思いました。
プロローグとあまり読み味が変わらなかったですが、これは作家の個性が強く打ち出されたというプラス評価で見れると思います。

★ポンダン コメントのみ 2016年5月20日 18時18分04秒
コメントありがとうございますmm

確かに、プロローグと同じような状況説明?が多かったかな、と思います。

これからも皆さんに面白い、と言ってもらえるような作品にしていきたいな、と思います。
★ポンダン コメントのみ 2016年5月25日 23時34分39秒
読者様へ
次の投稿は6月中にします。できるだけ6月前半に頑張ります。
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