時雨と咲いて狐の蝋燭 - 時雨と咲いて狐の蝋燭

狐稲荷
いつの頃だったか。空は清みきっていて、色とりどりの落ち葉が川に漂い、栗色の小さな命の粒が転がり、それを尾の長いネズミがかじっていた気がする。
そうー・・・・
確かこれはきっと・・・・
ー・・・【あき】というやつだ。
いつかそう、君が教えてくれた。
薄紅の花弁が舞うのが【はる】
虫達が騒々しい声を上げるのが【なつ】
白に静かに埋もれるのが【ふゆ】
それならば。
この鉄臭い雨が降りかかる今は一体、いつなんだろう。
はるでも、なつでも、あきでも、ふゆでも無い。
一体今はいつなんだろう。
君はどこに居るのだろう。
どうして私達の運命はいつもこうなのだろう。
どうしてあの子達が来てしまったのだろう。
分からなかった。
分かれなかった。
いや、違うか。
もう何も見えない目で天を仰いだ。
不思議と怖くは無かった。
ふっと苦笑が零れる。
「もう少し…もう少しだけだったんだけどなぁ……」
意識が遠のいて行く。
「ダメだなぁ…今回位は大丈夫かと……思って……たん…だ……け…ど……なぁ……」
もう、何も分からなくなった後。
ただ、相変わらず自分はダメらしい。という事だけが確かに分かった。
▲▼△▽
何とも言えない温度の中で生きてきた。
暑かったかと言えば、まぁ…暑かった
寒かったかと言えば、まぁ…寒かった
そんな曖昧な時間だ。
本来なら生きるべきでは無い時間を生きている己が怖かった。
己で己を殺す方法を必死になって探した。
探して、探して、探して、探して。
やっと見つけたけど、結局ダメで。
幾度そんな事を繰り返したのか。
幾年そんな生き方をしたんだか。
十年、百年、千年と長いー・・・いや、永い、永すぎるこの時間に。
己の、とても永い、永い、永すぎる記憶の中で。
唯一鮮明に覚えている事を、これに記すのもまぁ、悪くは無いだろう?
いつかこれを見返して、あの時はどうだったとかあれが旨かった…なーんて下らないが大切な思い出を語り合う。
そんな些細な事をした思い出も無い。だからそうだ。きっと己のこれからの支えとなりますように。
【ここに記す物語が、今尚誰かに受け継がれ、語り継がれてまた誰かの手にこの物語が渡るのなら。これも儚き命の世の常である。】
いつだったか。
兄には(と言っても血の繋がりは全く持って皆無だが)友人・・・いや、それすらを越えた、親友なる者がいた。
名前は…何だったかな。
仮に親友とでも呼んでおくか。
親友はいつも分けの分からない事を言っていた。
【ちょこ】だの、【てれび】だの、【くるま】に、【でんしゃ】上げ出したらキリが無い。
まぁとにもかくにも、兄も己もいつもその他愛も無いでたらめの様な話に耳を傾けた。多分、面白い(但し、それは兄の場合であって己は退屈だった)
から聞いていたのでなく、単に暇を持て余していたからに過ぎない。
あぁそういえば、一度だけ面白い事があった。先にも後にもあれ一回きりだったが、あのときはおくびにも出さなかったが、少し心が踊ったりしていたのだ。
あれは確か、昼を回った頃だったか。
誰かが腹が減ったと言い出した。
多分、誰かではなくそんな事をぬけぬけと言いやがるのは兄しかいないのだか。
それならと、持っていたドーナッツを兄に渡した。すると、親友はそれは何だ?と聞いてきたのでドーナッツ。と短絡的に答えると親友は、こちらにもあるのだとかなんとかぶつぶつ言っていた。
そして覚悟を決めた様に、ここ以外のドーナッツの話を聞いた。例えば甘い栗色の密がかかったのは【チョコレートドーナッツ】
甘いイチゴとさっきのそれとを合わせたのが【イチゴチョコレートドーナッツ】とか言うらしい。
うむ。全く持ってよく分からなかったが、食べ物で旨いというのだけが何となく分かった。
・・・という書き出しで始まってしまったが、果たしてこのような書き出しで良いのやら・・・
【ここに記す物語が、今尚誰かに受け継がれ、語り継がれてまた誰かの手にこの物語が渡るのなら。これも儚き世の常である】
▲▼△▽
この物語が眠るのならー・・・・

後書き

早速また意味が分からないですが、安心して下さい。これは後々お分かりになるシーンです。本編は次のお話からです。

この小説について

タイトル 時雨と咲いて狐の蝋燭
初版 2016年10月16日
改訂 2016年10月16日
小説ID 4823
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