ドラゴンの流儀 - ドラゴンの流儀その1

第一話 ドラゴンの起床

「ふわあああ」

パリ―ン!

「ん?」
とあるドラゴンが目覚めたとき、何かガラスが割れるような音が聞こえた。
が、特に気にすることもなく、伸びをする。

「ん〜、良く寝た。軽く100年ぐらい昼寝しようと思ってたけど、この感じだともっと寝ちゃったかな?」
鬱蒼と繁る森の中、首をコキコキと鳴らし、妙に人間臭い仕草で四肢の動作確認をしていく。

真っ黒い、鈍色に輝く竜鱗。体長は10メートルを優に超え、蝙蝠のような翼を持つ、こことは違う世界の一地方、西洋と呼ばれる場所で古来より語られる<竜>という姿に似ている。実際、この世界でも、<ドラゴン>と呼ばれたり、<竜>と呼ばれたりする彼。名を<フォルツァ>という。

そんな彼だが、

グギュウルルルル・・・

「あー、腹減った・・・」

100年、いや、それよりも長い時間寝ていれば、当然腹も減る。
さて、何を食うか、と思ったとき、

「やっぱ、食事なら人里が一番だよな」
と、何の迷いもなく、長い時を生きる中で<人の味>を覚えてしまった彼は、その抗いがたい魅力に抵抗することなく、人里に降り、<人の味>を食することに決めた。

「んじゃ、行くか」

バサッと両翼を広げ、彼は人里へと向かい、大空を信じられないスピードで羽ばたいていくのだった・・・

―――

ガブリ。
むぐむぐ、ゴクン。

「うめー!!こんなうまい串焼き、初めて食った!!」
「おお、そうかい、兄ちゃんうれしいこと言ってくれるね」

ここはフォルツァが探し当てた人里。記憶にある人里と比べずいぶん大きい気もしたが、細かいことは気にせず、とりあえず飯を食うことにしたフォルツァ。

そして、そんな人里で串焼きを頬張っている青年。髪も目も黒く、服装も黒一色。それでいて暗い感じがせず、快活に、明るい印象に映るのは、目に宿る活力と心の底から串焼きを楽しんでいるその姿からだろうか。

もうお気づきかもしれないが、この青年、あの漆黒のドラゴンのフォルツァである。
竜種に限らず、他の動物や魔物、神獣といったものは長い時を経て人化の術を得、人の姿を取ることができる。彼は人の味<人が作る料理>を目当てにここにやってきたのだ。
数千年前まで動物の生肉や木の実を口にしていたが、ある時、人族が供物として焼いた肉を持ってきたことがある。これまで人族など食える部分もそれほどなく、力も弱く気にも留めていなかったが、守護を求めて捧げられた鹿肉のステーキ。ただ塩を振って焼いただけにも関わらず、生肉にはない、その芳醇な味わいに彼は料理の虜になった。
ただ焼いただけの肉がこんなにうまいとは・・・

以来、彼は人族の守護神として各地を転々と回ったり、気まぐれに助けたりしてきた。そのうち、供物はどんどんと豪華になって行った。ちなみに、彼は生まれてから一度も人を喰らったことはない。一度、供物として人が捧げられたが、丁重にお断りしたのだ。

さて、そんな彼だが、彼なりの流儀というものも存在する。
色々ある様だが、そのうちの一つ、

「脅して奪うことをよしとしない」

というものがある。
供物、料理は欲しいが、脅してまで奪おうとは思わない。
自発的に持ってくるならありがたく頂こう。
だが、無理に持ってくる必要はない。

彼は、人を対等な交渉相手として認めている。
ある種友人というべき相手だとも思っている。
友人なら友人らしく相手しようと考えているのだ。

長い年月を生き、人と、他の種族と触れ合う中で、彼はそう思うようになっていたのだ。

―――
「んじゃ、まいど!」
「おう、また来るよ」

以前の供物の銅貨で支払い、屋台を後にする。
我が寝ている間に、ずいぶん豊かになったものだ。街並みもきれいな家・商店が立ち並び、何より、この串焼きのタレ。食うことが一番の楽しみの我にとって、これほどうれしいことはないな。

そんなことを思い、歩いていると・・・

「おい、それをよこせ!」
「ひ、ひいいい・・・」
何やら騒がしく、人垣ができている場所がある。
何事か、と近づいてみると、

「おれはCランク冒険者だぞ!!このおれがありがたく貰ってやるってんだから、早くよこせ!」
「で、でも・・・」

何やらひ弱な商人っぽい男が、商品を抱えて武装したそこそこ鍛えてあるだろう者に脅されていた。

「おい・・・誰か衛兵呼んで来いよ」
「今、バレットが向かってるってよ」
「間に合うのか?あの商人、今にも殴られそうだぞ?」

ひそひそと、商人を心配しているようだが、力の差があるのか、迂闊に手が出せない様だ。

「ふむ・・・」

さて、どうするか。衛兵が間に合えばそれでよし。
だが・・・

「父ちゃんをいじめるな!!」
「ああ?」

商人の子供が武装した男に気炎を上げる。
それをイラついたのか、そいつは、

「うるせえ!!ガキは黙ってろ!!!」
「「ああ!!」」

武装した男が、商人の子供に殴りかかる。

誰もが、子供が大ケガをする、と思っていた。
一人・・・いや、一頭を除いて。

パシッ

「おいおい、子供相手に大人げないだろ?」
「あ?だれだ、てめえ、おれの邪魔を・・・イだダダ!?」

フォルツァはいつの間にか子供を背にし、殴りかかってきた男の手をつかみ、ひねりあげる。

「全く、世の中は豊かになっても、こういうバカは減らないんだな」
「あ、あがががが!?」

「・・・すげえ」
「だれだ、あれ?」
「Cランク冒険者を片手で・・・」
「ということは、彼も冒険者なのか?」

武装したバカを制圧した我に、周りがざわめく。
どうやら、この程度の相手でも、今の時勢ではそこそこの実力らしい。

「道を開けろ!!」
と、そこに衛兵っぽい人が到着した。

一瞬、バカを捻りあげる我に疑いの目を向けたが、周りの人と商人親子の証言で、誰がこの騒ぎを起こし、罰せられるべきかは伝わったようで、

「疑って申し訳ない、ご助力感謝する」
「いやいや、この程度造作もない」
「・・・Cランク冒険者相手に造作もない、か。なかなかできる御仁のようですな」

などと衛兵と軽い挨拶を交わし、
「では、私はこれで・・・さっさと歩け!!」
「ぐっ・・・」

衛兵は馬鹿を連行していき、この場は解散となった。
うむ、話の分かる衛兵でよかった。昔は頭の固い奴もいたからなあ・・・
と、

「あ、あの、ありがとうございました!」
「父ちゃんを助けてくれて、ありがとう!」

先ほどの商人親子が頭を下げ、お礼を言ってくる。

「ま、大したことはしていない。気にするな」
「いえいえ、私と・・・アユーティまで助けていただいて・・・」

アユーティとは、子供のことだろう。
その後、お礼をしたいとのことなので、まあ、貰えるものはもらっとくか、と商品をいくつか貰うことになった。

「私はソポルテ、と申します。商品がまたお入用でしたらお声がけください。この街で商いをしておりますので、お安くさせてもらいます」
「そうか、それは助かる」
「いえいえ、助けていただいたので。では」
「ばいばい!」
「ああ、またな」

こうして、久々の人里・・・いや、もう街か?は、うまい串焼きと、食料品店の店主、その子供との知己を得て、大変満足いくものであった。

・・・ほう、クッキーとな?どんな食い物か楽しみだな。
と、お礼に渡されたクッキー缶を抱えながらまた街をぷらぷらと歩くのだった。

後書き

初連載作品投稿となります。
何話まで続くかは・・・未定です。

この小説について

タイトル ドラゴンの流儀その1
初版 2016年10月22日
改訂 2016年10月22日
小説ID 4830
閲覧数 231
合計★ 0
teiwazの写真
ぬし
作家名 ★teiwaz
作家ID 1049
投稿数 33
★の数 29
活動度 3362
はじめまして。teiwazといいます。
思いついた作品を思いついたときに投稿しますので、よかったら見てみてください。
これからよろしくお願いします!

尚、小説のタイトルと紹介文は必ずしも小説の内容全てを表しているわけではありませんのでご注意下さい。

コメント (2)

弓射り コメントのみ 2016年10月25日 8時46分29秒
1話的には情報量は良い塩梅ですね。
週間漫画誌みたいに、1話でひとつお話がまとまる感じは安定感あります。

長編なので色々ネタを仕込めると思いますが、個人的な要望は本気で笑いとか、ものすごい切なくて泣ける、とか、ものすごいこの1文に共感できる、とか、なにか読者のこころを獲りにきてる、凄味を感じるポイントが話が続く中でハイライト的にあれば良いなーと期待してます。試みがうまくいくにせよ、失敗するにせよ。


タイトルセンス抜群ですね!表紙絵次第でジャケ買いしちゃいそう(笑

一個だけ、竜「種」と人「族」、もしかして表記揺れかなーと思いました。なにか細かい違いとか設定上で分けなきゃいけなかったらごめんなさい。伏線があるっぽいので、回収を待って★をつけようと思います。
★teiwaz コメントのみ 2016年10月26日 19時32分09秒
弓射り 様

今回もコメントありがとうございます!
タイトル、気に入っていただけて凄く嬉しいです!
実際に売っていたら、ジャケ買いして良かった、と思えるような作品にしたいものです。

伏線は、次話から少しづつ回収していきます。
そして、ちょこちょこまた仕込んでみたり…

「人族」と「人」については、世間一般的な表現では「人族」、フォルツァが「人」という感じで認識し、彼が少し親しみを込めて使っているというもの。文脈によってはどっちか怪しいところもありますが、概ねそんな所です。

「竜」と「竜種」については…特に考えなしでした。
なんとなく、片方は響きで「竜種」と言いたくなったのですが、
せっかくなので、こっちも理由付けして作品に生かしていきたいと思います。

さて、今後の展開に読者の皆様に気に入っていただけるネタを盛り込めるかどうか…
どうなるかは未知数ですが、出来る限り頑張っていきたいと思います。


ではでは、ありがとうございました。
今後もよろしくお願いします!
名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。