ドラゴンの流儀 - ドラゴンの流儀その2

第二話 ドラゴンの情報収集

―某国―
―某所―
―――

「・・・なに、結界が砕けた、だと?」
「はっ、観測班の報告によると、かの存在を封印していた結界が突然消失。原因は不明、とのことです」

ざわざわざわ・・・

「ばかな、当時の技術の粋を尽くして築き上げた、対竜結界だぞ!!1000年は耐え得るよう、常に魔素も補充し続ていたはず。それが、たった二百年で壊れたというのか!!」
「ありえん・・・中からは絶対に壊せないはず・・・弱体化の魔術もかかっていたのだぞ!!絶対にありえん!!」
「だが、実際に結界は消失し、奴は逃げ出した・・・」
「どうする?われわれの計画が・・・」

そのどことも知れぬ場所に集うものが、ありえないはずだった事態に慌てふためく。
だがそんな中で冷静に事態を見極める者がいた。

「静まれ」
「―!?」

報告を受けていた、恐らくこの場に集う者たちの上に立つ者。
その者が、ただ一言。声を荒げることもなく呟くように発した言葉に、慌てふためいていた場がしん、と静まり返る。

「それで、奴は何処へ?」

ただ淡々と、聞くべきことだけを聞く何者か。

「は、はっ!かの存在は、南東へ恐るべき速度で飛翔。観測範囲からすぐに外れてしまい、見失った、と・・・」

伝令は、芳しくない報告に、暗い表情を浮かべる。

それに構うことなく、言うべきことを言う。

「そうか。・・・皆の者、聞け!」
「「はっ!!」」
「確かに、結界は破られた。だが、これは、好機である。我らの悲願、それを今成せと、我らにしか出来ぬと、偉大なる始祖が我々にもたらした、啓示であるのだ!!」
「「おお・・・」」

さすがは、我らが盟主、この事態を好機と捉えるとは・・・
やはり、盟主は度量が違う・・・

などと囃し立て、盟主とやらの言葉で先ほどの悲観的な空気はなくなっていたように見える。

「(・・・ふん、所詮は権力にすがる凡庸共、か。これしきのことで慌てふためきおって。見え透いた世辞にも飽き飽きする・・・しかし、同盟という体を取っている以上、全てを黙殺し<計画>を進めるのが難しかった。が、<奴>が結界を破ってくれたおかげでもう行動に移すしかなくなっている、この<好機>。これなら、頭の堅い老害共に邪魔されず思い通りに事が進められるというもの。感謝するぞ、ククク・・・)」

と、<盟主>は声に出さず、<計画>とやらの算段をつけ始める。


<彼>が結界を破ったことで、外れて止まっていた運命の歯車は、完全ではないものの、嚙み合わさり、ギシギシと音を立てて回り始めるのだった・・・


―――
パクリ。もぐもぐ。

「・・・おお、これも美味いな!もしかして、これも<書の賢者>が創った料理か?」
「おう、ヤキソバってんだ、美味いだろ?俺達屋台で生計を立てる身としては、仕入れた材料を炒めるだけで売り物が出来るってえのはありがたいこった。ま、ソースは俺の屋台の特製だがな」
「へー、作りやすいってのは確かにいいな。ソースも美味いし。他にもいろいろ書の賢者は作ってたんだっけ?」
「ああ。食べ物の他にも、二ホンのカガク、だったか?それで魔法を使わなくとも手軽に火がつけられたり、自動で走る馬車を作ったりと、もう凄かったらしいぜ?他にも・・・」

ここは、街の屋台広場の一角。
今、我は、ヤキソバを食いつつ情報収集を行っている。
何せ、何年寝ていたかわからないのだ。ある程度の一般常識を知らないと安心して飯が食えないし、何より、美味い飯の情報でも逃したら我の流儀の中でも特に重要な、

「美味い食い物を得るためには妥協しない」

が達成できない危険性がある。情報収集を怠って、その土地や街独自の珍しい料理や限定メニューを食いそびれたら目も当てられない。

というわけで、今は飯を食いつつ話を聞いているのだが、これがちょっとコツがいるのだ。
何せ、今がフォルス歴5478年だということすら知らなかったのだ。

「今、フォルス歴何年?」

と聞こうものなら、そこらへんのものを知らぬ子供ならともかく、大の大人、それも旅人が知らないというのは怪しすぎる。今から数千年前、人と交流し始めた時は、それは怪しまれたものだが、長い時を生きる中で、自然と対処法は身についていった。

例えば、聞いてもおかしくない情報をほんの少しだけ聞くこと。
この街に来たばかりの旅人なら、宿は何処か、とか、美味い屋台は?などまず来たばかりでは知らないだろうことを聞く。そして、得た情報や固有名詞を使って、次の場所でもう少し深いことを聞いていく。門番の〜から聞いたんだが、ここがいい宿だって、とか、美味い屋台なんだって?とか。

人は、知っている人の名前や物の名前が出てくると、共通感を抱き、親しみやすくなる。特に、知人の紹介や友人の紹介なら、他人がいきなり聞けないことでも、少し聞きやすくなる。まあ、無論、限度はあるが。

これを繰り返していき、色々な人から聞いた断片的な情報を纏めていく。ついでに知り合いも出来るので、何回か会って行けばもう少し深い情報も知れるようになる。
ついでに言うと、口調も若者っぽい言葉に合わせている。我、とか言う奴は一般人にはいないのでな。

で、サクッと得た主な情報を列挙すると、

・今はフォルス歴5478年で我が昼寝して、200年ぐらい経っている。
(良く寝たとは思っていたが、まさか200年も寝てたとは・・・)
・この街の名前はローストである
・昔、書の賢者と呼ばれる人物がこの世界に召喚された
・名前の由来は、召喚時、大量の書物と一緒に召喚されたことから
・書の賢者と書物の知識で、さまざまなことが改善され、発展していった。
特に料理←ここ重要
・今の時代、冒険者は一般人より能力が高く、それを傘に着るものもいるが、まともな冒険者のほうが多い

そして、なにより重要なのが、ここローストは物流の中心。様々な食い物が集まるので美味い物にありつきやすい、とのこと。

特に甘味。このもらったクッキーというのもそうだが、昔は砂糖と言えば高級品で貴族ぐらいしか口にできなかった。それが、賢者のおかげでサトウキビ、というものの栽培法が見つかり、砂糖が安定的に生産できるようになった。同時に、お菓子、という様々な甘味が開発され今に至る。

全く、賢者様様だ。残念ながら我が昼寝している間に寿命で亡くなってしまったらしいが、できれば酒でも酌み交わしたかったところだ。賢者直伝の料理を肴に。

「そうそう、これは知ってるか?」
「ん?」


今度はクレープ、という薄い生地を焼いて、野菜やチーズや肉を包んだ持ち運び、食べ歩きに便利な食べ物をもしゃもしゃと食っていると、そこの屋台の店主が言ってくるので耳を傾ける。

「書の賢者がもたらした異世界の書物。そのなかでも、ライトノベルと呼ばれる最高位の本がある。様々な世界の冒険や未知の魔法技術。戦術や戦略を取り扱ったり、日常の何気ないひと時までもが記されている、実に多様な書物らしい。普通に読み物としても楽しめて、時に思わぬアイデアの源泉ともなる非常に有用な本なんだとよ」
「へえ。異世界にはそんなものがごろごろあるのか」
「ああ。原書は<宝具化>して国の宝物庫などに納めらえているようだが、複写されていて、そっちは図書館にも何冊かおいてあるらしいぞ」
「そうなのか。今度寄ってみるよ。・・・これ美味いからもう一つくれ」
「おう、まいど!」

こんど見てみるのもいいかもな。
とくに、グルメ系のが面白そうだな。

さて、次のおやつは・・・

「お、<ソポルテ洋菓子店>、か」

安くしてくれるっていってたし、入ってみるか。

食にこだわりを持つ我の舌を満足させてくれるこの時代をもたらした書の賢者に感謝しつつ、先ほど知り合ったソポルテの店に行き、新たな甘味<お菓子>を買い食いすることにした。

・・・クッキーも美味かったし、非常に楽しみだ。

後書き

謎の存在を書くのに、思ったより文字数使いました・・・

果たして、あの集団は何者なのか?
盟主とは一体!?

それは、作者にも分からない!
(人はそれを見切り発車という・・・)


現在鋭意構想中。

この小説について

タイトル ドラゴンの流儀その2
初版 2016年10月30日
改訂 2016年10月30日
小説ID 4834
閲覧数 148
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teiwazの写真
ぬし
作家名 ★teiwaz
作家ID 1049
投稿数 33
★の数 29
活動度 3362
はじめまして。teiwazといいます。
思いついた作品を思いついたときに投稿しますので、よかったら見てみてください。
これからよろしくお願いします!

尚、小説のタイトルと紹介文は必ずしも小説の内容全てを表しているわけではありませんのでご注意下さい。

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