ドラゴンの流儀 - ドラゴンの流儀その3

第三話 ドラゴンの怒り

<竜>と<竜種>。
言葉も似ており、同じ内容を示すこともあるが、違いもある。
まず、竜。これは、一般的に地上最強の生物である竜のことをさす。
対して竜種はそれに加え、他の位階も含めた呼び名となる。
例えば、亜竜。<飛竜>ワイバーンや<土竜>アースドラゴンなど、いわゆる下位の竜のことをいう。
そのため、竜と言えば強力な個体、竜種といえば、下位の亜竜まで含めた竜全体を指す言葉になり、自然と竜種は主に弱い固体を指す言葉となった。
・・・一般的には。

貴族や特権階級―富豪や豪商がこれにあたる―の一部では、竜種の意味がガラリ、と変わってくる。世間に知られている最高位の生物は竜。だが、何事にも裏があるように、竜種にはさらに上の固体、高位竜ともいうべき生物が存在し、それも含んだ呼称になる。それは太古から存在する<始祖竜>であったり、長い時を経た<古竜>であったり、何かの拍子に力を得た固体であったり・・・

一般人に竜よりさらに上があると知られ、それが迫っている、などと言われれば大騒ぎになる。そのため、人びとを統率する立場にあるこれらの人びとは混乱を生まぬよう、あえて竜種と言うことで、例え聞かれても何のことかわからぬよう会議やら何やらで使うわけだ。

大抵の高位竜は出現しても人里近くにいくことはない。興味もなければ、用もないからだ。
まあ、何事にも例外はある。
例えば、人族の屋台で買い食いをする高位竜、とか・・・

―――
「いらっしゃいませ!あ、ファル兄ちゃん、こんにちは!」
「ん?・・・アユーティ、か?」
「うん、そうだよ!」

ソポルテ洋菓子店に入った我を、フリルのついた可愛らしいエプロンを付けた女の子が出迎える。はて、と思い、ああ、あの時の、と思い至る。

あの時は、仕入用の動きやすい丈夫そうな男物の服に短く切った髪で、抗議の仕方も男の子っぽかったので勘違いしたが、どうやら女の子だったらしい。

「おお、フォルツァ様、ようこそいらっしゃいました」
そういって、奥からソポルテがやってくる。

「早速きさせてもらったが、おすすめとかはあるか?」
挨拶もそこそこに、我は色とりどりのお菓子を早速選びにかかる。

「でしたら、ケーキなどいかかがでしょう?」
「ケーキ?」

ソポルテが言うには、ケーキとは、スポンジケーキという甘くて柔らかいパンのようなものを何段か重ね、その間にホイップクリームという甘いふわっとした雪のように口どけのいいものを挟み、果物などで飾りつけした逸品だという。他にも、モンブランであるとか、ロールケーキなるもの、様々な種類があるらしい。その中で、一際目を引く豪華なケーキがあった。

「おお、これはすごいな」

五段に積まれたスポンジケーキと真っ白なホイップクリーム。茶色い板状のもの、細長いクッキーっぽいもので飾り付けられ、真っ赤なイチの実がふんだんに盛られている。見るからに高そうな品だ。

「こちらは・・・かなり高額の商品となりますが、よろしいので?」
「いくらだ?」
「・・・定価が金貨一枚となっておりまして・・・」
「ふむ」
屋台の串焼きが一本銅貨5枚。
銅貨100枚で銀貨1枚。
銀貨10枚で金貨1枚。

つまり、このケーキは串焼き200本分、というわけだ。
銀貨一枚あれば、結構いい宿に泊まれる中で、ケーキ一つが金貨1枚とは、確かに高額な商品といえよう。
だが、

「なら、これで」
と、こちらも以前の供物でもらった金貨を差し出す。

「流石ですね・・・では、お釣りは銀貨5枚となります」
「ん?確かに、安くするとは言っていたが、少し安くし過ぎでは?商売それでやっていけるのか?」
何かに感心しながらも、ソポルテが返してきた銀貨を見て、半額にまでして大丈夫なのか心配して聞くと、

「これは、何と言いますか・・・仕入先で不良在庫を押し付けられたようなものでして・・・味はいいのですが、高すぎて買い手がいなかったんですよ。冷蔵の魔道具である程度は保存できますが、やはり生ものですので長くは持たないんですよ。断りずらい相手だったので仕入はしたのですが、買い手はつかないと思ってまして。売れただけでも助かるんですよ」
「ほう、そういうものなのか。まあ、安いに越したことはないからありがたく頂こう」

こうして、ケーキをゲットした我は、ついでに茶もサービスしてくれるというので、店内のお食事コーナーで食べることにした。

「こちらへどうぞー!」
「おう」

席までアユーティに案内され、

「では、ごゆっくり〜」
「おう。んじゃ、まず一口」

早速とばかりにケーキの攻略にかかる。
無造作にフォークで牙城を崩し、白い衣をまとった、城壁に見まがうケーキを一口。

「おお・・・」
甘い、そして、柔らかい。ふんわりとしているスポンジケーキ、これ自体も甘いが、何よりこのホイップクリーム。ハチミツとはまた違い、強烈に主張してくる甘さは、されどくどくなく、イチの実の酸味と合わさることで見事に調和されている。
出された茶、コウ茶というらしいが、その薫り高いお茶は舌を洗い流し、ケーキだけではいつか来たであろう、飽きを感じさせないようになっている。

「(・・・我が寝ている間に、こんなうまいものが出来ていたとは・・・)」
その時代に目覚めた僥倖。そして書の賢者に感謝しつつ、一口一口食べていくと・・・

カツン。

「ん?」

何かがフォークに突き当たる。取り出してみると・・・

「・・・宝石?」
「どうかしましたか?」

とりだした宝石のようなものを観察し、フォークの止まった我を心配し、ソポルテがやってきた。

「いや、こんなものが入っていてな」

そういい、宝石(仮)をソポルテに渡すと、

「・・・これは!?」
「なんなんだ、一体?」

息をのむソポルテに説明を求めると、どうやら昨晩、王都にある王城の宝物庫から<封魔の宝珠>という宝具が盗まれたとのこと。それはいまだ見つかっておらず、そして、今手にしているこれはその宝具の特徴と一致する。

「・・・まさか、犯人がこのケーキの中に隠した、と?」
「おそらくは。あとで取り出すつもりだったか、ケーキを買うことで手元に戻そうとしたのか・・・」

ふむ。犯人とやらは、宝具を盗み出し、ケーキに隠す。
それをあとで入手するためには・・・買うか、奪うか。
そもそもなぜケーキに?
仮説だが、外からは見えないケーキの中に隠すことで、王都の検問を通りやすくするため?
しかも、自分で運べば発覚した時に疑われるから、ソポルテに押し付け、ここまで運ばせた・・・
そして、後で奪う。
たとえば、先ほどのC級冒険者を使って、商品を巻き上げるチンピラを装わせて・・・いや、多分あれは元からチンピラか。
ま、金で雇って持ってこさせるつもりだった、とかな。
全部仮説。証拠はない。
例え、この仮説が正しいとしても、恐らく、あのC級冒険者はパシリ。聞いたところで大した情報は持っていないだろう。
なら、黒幕を絞り上げた方が早いな。
そして、何より許せないのが・・・

「フォ、フォルツァ様?」
「おっと。悪い」

どうやら、怒気が漏れていたようだ。

「なに、これを仕掛けた奴が許せない、と思ってな・・・俺は、食べ物を粗末に扱うやつが一番許せないんだ」
「は、はあ・・・」

気の抜けた返事をするソポルテだが、ここは譲れない。
我の流儀、その一つ。

「食べ物を粗末にするやつには、容赦するな」

食べ物とは、その名の通り、食べるためのもの。
こんな美味くて素晴らしいものを盗みの隠れ蓑にするとは・・・
・・・誰が裏で糸をまいているのが知らぬが、必ず見つけ出し、断罪してやる

後書き

次回、王都へ(予定)

この小説について

タイトル ドラゴンの流儀その3
初版 2016年11月6日
改訂 2016年11月6日
小説ID 4836
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teiwazの写真
ぬし
作家名 ★teiwaz
作家ID 1049
投稿数 32
★の数 25
活動度 3247
はじめまして。teiwazといいます。
思いついた作品を思いついたときに投稿しますので、よかったら見てみてください。
これからよろしくお願いします!

尚、小説のタイトルと紹介文は必ずしも小説の内容全てを表しているわけではありませんのでご注意下さい。

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