ドラゴンの流儀 - 第二章 ドラゴンと人々

第四話 ドラゴンの出陣

「・・・用意はいいか?」
「ええ」
「はい。敵本拠地の包囲、完了してますわ」


フォルツァにうなずきを返すシェーンとソフィア。
出会った当初は、相手が始祖竜の一体ということもあり、緊張していたソフィアだが、話すうちに打ち解け、今は普通に共に作戦行動をとれるようになった。

さて、現在地だが、盟主エクスとやらのパーティ会場、とある山間の街へと来ている。
ここは地図にはなく、どの国にも属しておらず、当然街の名前もない。
奴らは、ソヴァール、と呼んでいるらしいが。

そこに、ウィアーム国軍1万がソヴァールを取り囲むようにして布陣している。
騎馬兵や重歩兵、弓矢隊、魔法師隊などといったこの世界に元々あった兵種を中心に、鉄砲隊、装甲車を用いた強襲隊などで構成されている。

書の賢者が齎した技術と知識は有用であったが、この世界の元々の技術とかけ離れすぎてそれを再現するのには大きな時間が必要であり、全軍に行き渡らせられるほどの量はどの国でも揃えられないのだ。

暗躍する盟主を打ち取れる機会とあって、かなりの戦力を投入した形だ。

「では、後は手筈通りに」
「ああ」
「いってくるわ」


作戦と言っても単純なものだ。
フォルツァたちがパーティとやらに参加し、直接降伏勧告を行う。
もし応じなければ、全軍をもって制圧する。
それだけだ。

盟主とやらは所詮、うだつの上がらない奴らを集めた烏合の衆。
・・・だとは思うが。


正直、何か引っかかるものを感じていたフォルツァだが、まあ、いざとなれば我が殲滅すればいいか、と思い今回の作戦にゴーサインを出した。

さて、盟主とやらはどんな人物なのだろうかねえ。

―――
「よくぞ参られた、フォルツァ殿」

会場に一歩足を踏み入れると、上座に座る仕立てのいい礼服を着た男が話しかけてくる。
その声に、やたらと豪華で派手な格好をした周りの参加者たちの視線が一斉にこちらを向く。


「お前が盟主、エクス・ト・レームか?」

単刀直入に、その上座に座る男に話しかける。
敬語を使わず、呼び捨てにしたことに、「不敬な・・・」と周りがざわつく。
が、エクスはそれに気にした風もなく、

「いかにも。ワタシがこの国家間同盟の盟主、エクス・ト・レームだ」

国家間ねえ、物は言いようだな。
確かに、色々な国の出身者がいるようだ。
・・・その者が有能かどうかは別にして、な。


「で、何故今回俺たちを招待したんだ?」

作戦に移る前に、少し気になっていたことがあるので聞いてみる。
あの招待状、「お連れの方もどうぞご一緒に」と書いてあった。
恐らく、少しはこちらのことを知っているようだが、なら、何故わざわざ自分の居場所を知らせるようなことをした?今のように軍に攻め込まれる可能性もあるのに?

「なに、ちょっと提案があってな」
「提案?」
「ああ、もしワタシたちの一員となり、今後協力してくれるならとある願いをかなえられる用意がこちらにはあるのでね、どうかと」
「協力、ね。全くその気にはなれないが、一応聞いておこう。どんな願いが叶う、と?」
「死者の蘇生」
「な、に・・・」
「え・・・」

予想外の言葉に、絶句する2体。

「それだけ長く生きていれば、生き返らせたいものの一人や二人いるのではないか?例えば、大切な友人とか」
「・・・」

フォルツァが黙ったのを見て、好機と思ったのか畳みかけるエクス。

「なに、難しいことを頼むつもりはない。貴殿には、ただにらみを利かせてもらいたいだけだ。<黒竜フォルツァ>が上空で威圧するというだけでほぼ立ち向かってくるものは居なくなるだろうし、それでも来るものは・・・<我が軍勢>で叩き潰すだけだ。どうかな?悪い話ではないと思うんだが?」
「・・・」
「フォルツァ君・・・」

シェーンが心配そうにフォルツァを見るが、彼の答えは決まっている。


「断る」
「・・・よみがえらせる、というのが信用できない、ということかな?なら・・・」
「そんなことは関係ない。可能だろうが、不可能だろうが、お前に頼むつもりはないし、また、誰にもそんなことを頼むつもりもない」
「・・・」
「人は、竜は、命はいつか尽きる。その尽きた命を無理やり引きずりだすようなことはしたくはない。倫理だとか法だとかは関係なく、我がそれを嫌う。我の流儀に合わない。死したものは誰であれ、生を全うし、この世をはなれ、安らかな眠りについているはずだ。それを叩き起こすなど・・・その者の生きた時間、過ごした場所、その全てを否定することになると我は思っている。故に、我は蘇生など望まぬ」
「・・・交渉決裂、か・・・出来れば貴殿は敵に回したくなかったが、仕方ない・・・」

残念そうにエクスはそう告げると、本のようなものを一冊取り出す。

「・・・亡者よ、目を覚ませ。生者を糧に、死者を力に。我は汝らを統べる者。我が声を聞け、我が声に従え。<アジヴァーニエ>」
「何を・・・!?」

途端、この付近に今まで感知できなかった気配が続々と浮き上がってくる。
我の感知能力をすり抜けた、だと?
そうフォルツァは思ったが、正しくは違う。
それらは元々在ったのだ。
そして、出てきたのだ、ここ一帯に。

仮初の命を吹き込まれて。

「おおお、素晴らしい!!」
「これぞ、無敵の軍勢!!」
「これで我らの悲願も達成できよう!!」

無駄に豪華な服を着ているパーティの参加者たち、まあ、十中八九同盟員だろう、が口々に感嘆の声をあげる。
その視線の先には・・・おびただしい数のアンデットがうごめいていた。

「何故、ワタシが貴殿らにパーティの招待状を送ったか。目的の一つは、協力者になってもらうよう頼むこと。これが出来れば、計画は極めて簡単に進むが、失敗すれば、貴殿らに加え、ウィアーム国軍を相手取ることになる。その危険を何故犯したか。それは・・・見てもらって分かるように、貴殿らも、国軍も、簡単にひねりつぶせるほどの<軍勢>を用意できるからだよ」

その街には、もはやこの世の終わりのような景色が広がっていた。

・・・死者の蘇生、か。
と、すると・・・

フォルツァの視線から何を読み取ったか。
エクスは、

「察しがいいな。貴殿らが暮らす街近くの森。あそこで実験をさせてもらったのだよ」
「そうか・・・ならば、<礼>をせねばならぬようだな」
「この軍勢相手に、勝てるとでも?」

アンデットの中には、上位個体も数多く見られ、腐竜を遥かに超えるような、おぞましい瘴気を放つ、明らかに他とは格の違うモノも混ざっていた。

「シェーン」
「ええ、わかったわ」

ただ一言、名前を呼ぶだけで伝わったようだ。
そして、2体は<人化>を解除し・・・

黒竜と始祖竜がその枷を外し、全力で殲滅する体制へと移行した。

ドラゴンの出陣である。

後書き

戦闘開始。

この小説について

タイトル 第二章 ドラゴンと人々
初版 2017年1月15日
改訂 2017年1月15日
小説ID 4868
閲覧数 95
合計★ 0
teiwazの写真
ぬし
作家名 ★teiwaz
作家ID 1049
投稿数 34
★の数 29
活動度 3463
はじめまして。teiwazといいます。
思いついた作品を思いついたときに投稿しますので、よかったら見てみてください。
これからよろしくお願いします!

尚、小説のタイトルと紹介文は必ずしも小説の内容全てを表しているわけではありませんのでご注意下さい。

コメント (0)

名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。