ドラゴンの流儀 - 第二章 ドラゴンと人々

第五話 ドラゴンの能力


見渡す限りのアンデット。
街の住民の姿は見えないが、この様子では無事ではいまい。
国軍は大丈夫だろうか・・・


「・・・竜種が二体いるのは驚いたが、これならどうにもなるまい」

周りのギャラリーが騒ぎ出す。

「然り。いくらでも生えてくる民草も我々の崇高なる使命の礎になれるのなら本望だろう」

この大規模なアンデット生成。
代償がないわけがなく、それは、住民の<命>を糧にしているらしい。
だというのに、それを全く気にせず・・・さらには当然とすら考えている者達だったが・・・


「我らの高貴なる血は、この世界を統べるために・・・ぐっ!?」
「どうされ・・・ぐはっ!?」

突然、同盟員と思しき者たちが苦しがる。
まるで、何かに生命を喰らわれているかのように。

「エク、ス様・・・これ、は、一体・・・」
「我々は・・・安、全な、はず、で、は・・・」

苦しみ、もがき、盟主エクスへと途切れ途切れに疑問を発する同盟員たち。

「なに、貴殿らの<高貴な血>があれば、より強い<軍>を生み出せると思うてな。<崇高なる使命の礎>となれて本望であろう?」
「き、貴様・・・!」

エクスは聞こえてくる怨嗟の声もどこ吹く風。
恐らく、最初から使いつぶすつもりであったのだろう。
次第に声も弱まり、その場に立っているのは盟主エクスだけになる。

空中でその様を見ていた二体だが、

「・・・フォルツァ君、いくわよ」
「ああ。早くしないと、国軍にも犠牲者が出るだろうしな」

今優先すべきは、目の前の軍勢を排除すること。
人化を解いた今、力の制限はない。


「浄化の極光」

ただ一言、フォルツァは以前に使った魔法を使用する。
腐竜ですら、すぐに浄化させた古代魔法。
しかも、今は竜の姿で放つので威力は以前の比ではない。

上位個体といえども、全て浄化しつくせるだろう。



眩い光が辺りを照らし出し、
その輝きは全てのモノに、等しく降り注いだ。


その光が過ぎ去った後、その場には・・・



―――
「・・・なるほど、な」
「・・・これまでとは、ね・・・」


その場にいたアンデット、その半数ほどは消滅した。
そう、半数はその場に形をとどめていたのだ。
それも、格としては前回完全に浄化できたはずの腐竜ぐらいか、それにすこし劣る程度のアンデットすらが大量に残っていたのだ。
上位個体は言わずもがな。
流石に動きは鈍くなっていたが、それでも、驚くべき耐久力である。


「驚いたかね?」
エクスの問いかけに、フォルツァは、

「ああ、我の浄化魔法でも浄化しきれないとは、正直驚いたな」
と、素直に驚きを伝える。

「ふふ、かの高名な黒竜殿に驚いてもらえるとは光栄だな。時に、フォルツァ殿。書の賢者が残したという書物。そのなかでも、ライトノベルがなぜ最高位の書の宝具として扱われるか、その理由はご存知かな?」
「過分にして知らんな」
「そうか。では教えて進ぜよう。それは、な、書の賢者の残したライトノベルは、現実に影響を及ぼすのだよ」
「なに?」


大抵の物語では、何故か敵の親玉が自分の手の内を明らかにすることがある。
勝利を確信しているのか何なのかは知らないが。
今回もその例にもれず、エクスはライトノベルがなんであるかを説明した。

曰く、ライトノベルに書かれた内容は現実に影響を及ぼし、具象化する。
本に「〜を生み出す」などと書かれていれば、その手順に沿って行えば実際に生み出すことが出来るのだ。
今回の大量のアンデット召喚もその一つ。
「死者の法典」というライトノベルの中にある術式を用いたのだとか。
そして、ライトノベルによって生み出されたものは、非常に強力な個体としてこの世界に生み出される。黒竜の浄化魔法すら抵抗できるほどに。

現実すら塗り替える、世界を文字通り変えることが出来る。
それゆえ、ライトノベルは最高位の書と呼ばれるのだそうだ。

ローストの街近くの森で腐竜や他のアンデットを倒せたのは、正式なライトノベルの術式ではなく、実験的に疑似術式とも呼べるもので生み出したからだそうだ。

「だから正直驚いたよ。下級のアンデットとはいえ、<死者の法典>から正式に術式を組んで生み出したアンデットが浄化されるとは、ね。流石は黒竜といったところか。だが、全てを滅することは出来なかったようだな。」

「ふむ。妙に自信があるとおもったら、そういうことか」
「ふふ、ライトノベルから生み出されたものは、ライトノベルで対抗するしか方法はないのだよ。それ以上の力がない限りは、な」


他にも、制約やら何やらあるらしいが、おおざっぱに言えばそういうこと。

エクスは、自身の勝利を微塵も疑っていない様だ。
先ほどの浄化魔法に耐えきったことも自信の一つであるだろう。
エクス自身をすぐに倒せれば、また話も違うのだが、そうもいかない。
何故なら、ゴーレムなどの魔法生物やアンデットなどの使役魔物は、その主、指揮者を失うと暴走するからだ。この数のアンデットが暴走すれば、国軍はおろか、近隣の国々まで巻き込んで被害が生じかねない。
だから、この世界では指揮者の撃破はかなり厄介なものとして位置づけられている。
ある程度、使役しているモンスターなどを倒し、脅威を取り除かなければなければならないからだ。


・・・まあ、それも人の身であるならば、だがな。

「なら、それ以上の力で<焼き尽くせば>いいわけね」
「何?」
シェーンの言葉に、怪訝そうな表情を浮かべるエクス。

ゴウっ!!

何の予備動作を見せず、シェーンの口から炎が噴き出される。
赤竜の固有能力<炎熱>。
その名の通り、自身の体内や周囲の温度を操作し、自由に炎を生み出し攻撃に用いることができる。その温度幅は、屋台の料理から全てを塵も残さず焼き尽くす、太陽すら超える高温を生み出すことも出来る。

シェーンの放ったブレスはその直線上の物、建物だろうがアンデットだろうが焼き尽くし・・・後には赤熱し、ドロドロに溶け、一部ガラス状になった地面だけが残った。


「ばかな・・・」
「ふむ、シェーン、腕をあげたな」
「えへへ、ありがとう」

絶句するエクスをよそに、フォルツァたちはいつもの調子だ。

「なら次は我の番だな・・・<浄化の極炎>」

今度は、光り輝く火柱が戦場に降り注ぐ。

浄化の極炎。
それは、浄化の極光とシェーンの炎熱を合わせた能力。

シェーンが赤竜と呼ばれる所以は、その深紅の竜鱗と熱を操る能力から。

では、フォルツァはというと、その漆黒の竜鱗が元になっている、と一般の者達(とはいっても、黒竜の存在を知る物自体限られているが)は思っているが、一部の歴史ある国の上層部や親交のあるものは、その能力ゆえだと知っている。

全ての色を混ぜ合わせれば黒になるように、黒竜は全てを持ち、全てを混ぜ合わせることが出来る。

<万能>と<合成>

それがフォルツァの能力。
万能でシェーンの能力を会得し、合成で浄化魔法と炎熱の能力を組み合わせたのだ。

炎熱の威力はそのままに、浄化魔法の特性、アンデットのみにダメージを与えることが出来るその性質で国軍に被害を出さず、アンデットのみにその猛威を振るったのだ。


戦場に残るは・・・

後書き

フォルツァの攻撃は、果たして敵を殲滅したのか・・・

この小説について

タイトル 第二章 ドラゴンと人々
初版 2017年1月22日
改訂 2017年1月22日
小説ID 4876
閲覧数 82
合計★ 0
teiwazの写真
ぬし
作家名 ★teiwaz
作家ID 1049
投稿数 33
★の数 29
活動度 3362
はじめまして。teiwazといいます。
思いついた作品を思いついたときに投稿しますので、よかったら見てみてください。
これからよろしくお願いします!

尚、小説のタイトルと紹介文は必ずしも小説の内容全てを表しているわけではありませんのでご注意下さい。

コメント (0)

名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。