鍛冶屋ヨロヅヤ

鍛冶屋ヨロヅヤ。
それは、とあるプレイヤーが趣味(ゲーム)と趣味(遊び)を兼ねて、趣味(気まぐれ)でやっている鍛冶屋。
悩める新人プレイヤーに自分の作品を無償で提供している彼。
その素材やお金は何処からくるかというと、その新人プレイヤーがトッププレイヤーとなったときの出世払いであったり、攻略組の武器作成依頼での報酬が元となっている。
彼自身、前線で攻略組に武器・防具・アイテムを供給し、かなりの利益を上げ、その時の財産だけでも文字通り一生遊べるほどの額と素材アイテムを持っている。

そんな彼が新人プレイヤーを支援している理由。それは、<面白いから>である。
攻略組に武器を造れば、それはもう儲かる。
だが、求められる品質や能力が似通っていて、面白みに欠ける。

だが、右も左も分からない新人プレイヤーの悩みはそれこそ千差万別で、くだらないものもあれば、意外と難易度の高い<面白い>依頼もある。

VRMMOという、自分が仮想世界(VR:バーチャルリアリティ)に入り込み、現実と同じように動き回るこの世界。プレイヤーは皆中身の入った人間。
そんな人々との触れ合いも楽しんでいる。

ちなみに、<ヨロヅヤ>という名称は、なんでもそろっている<万屋(よろずや)>という意味に、鎧(ヨロイ)からとったヨロ、剣(ツルギ)からとったヅ、矢(ヤ)と槍(ヤリ)からとったヤを合わせた、彼にしてみたらこだわりの店名なのだが、それに気づいているプレイヤーは余り多くない。誤字か?と思われている始末である。


さて、そんなヨロヅヤに今日も悩めるプレイヤーが一人やってきた。


―――
カランカラン

「こんにちはー・・・」
「らっしゃい」

やってきたのは、一人の小柄な女性プレイヤー。
手には、ラウンドシールドと片手剣を装備している。
服装はまだ旅人の衣で、見るからに初心者であることがうかがえる。

「ここで、初心者の悩みが解決する、と聞いてきたのですが・・・」
「んー、まあ、間違っちゃいないが、俺は生産職だ。武器・防具・その他諸々、悩みに応じたアイテムを創って解決するって感じだな」
「そう、ですか・・・でも、私、まだゴールドほとんど持ってなくて・・・」
「ああ、かまいやしない。依頼が面白ければ問題ない」
「はあ・・・」

タダでいい、という言葉に少々気の抜けた返事をする彼女。
それに構わず、

「じゃ、その悩みを聞かせてくれ」
「はい。実は・・・」

―――
彼女の悩みを整理すると、
今までVRゲームをしたことがなく、やってきたのはもっぱらコントローラーを使って画面のキャラを動かすゲームのみ。
人気のタイトルであるこのVRMMOをやってみたのはいいものの、現実世界でスポーツすらほとんどやっていない彼女は、この世界で<戦う>ことが難しいという。

剣の振り方も分からなければ、目の前に現れるリアルなモンスターを相手にするにも怖くてうまく戦えないとか。

かといって、弓や銃といった遠距離武器はさらにプレイヤースキルを必要とし、難しくて扱えない、ということ。


「で、掲示板でここの情報を発見し、藁にも縋る思いできた、と」
「はい・・・」
「ふむ」

初心者にありがちな悩みだな。
普通は、それを何とかして克服したり、逆にそれが原因でやめてしまったりする。

・・・そうだな、なら、あれを創ってみるか。ちょうど造ってみたいと思ってたところだし。

「了解、任しときな」
「本当ですか!?」
「ああ。今日中に創っとくから、また明日、適当な時間に来てくれ」
「ありがとうございます!!・・・でも、本当にお代はいいんですか?」

悩みが解決するかもしれない、というのはうれしいようだが流石に何の対価も払わない、というのは気が引けるのだろう。かといって、払える物も無し。

そんな彼女に、

「まあ、気になるんなら、成長して、そこそこのプレイヤーになったら、また客として俺の造った装備でも買ってくれりゃあいい。出世払いってこった」
「・・・分かりました。必ず、買いに来ます!!」


こうして、彼は依頼を受け、作成に取り掛かるとした。


―――
「さて、と。右手と装備は、とりあえず片手剣でいいか。左手は同じようにラウンドシールド。ギミックを仕込んで、左手はサブマシンガンが出るようにしとくか」

ガサゴソと素材を漁り、

「ふむ、刀身はアダマンタイト、柄はライトスチール。ラウンドシールドは多層式で様々な金属を仕込んで・・・」


カン、カンと金属を叩くと、少しづつ装備が形になってくる。
このゲームでは、実際の作業手順を踏む方法と、システム的に作る方法がある。
システム的とは、光った個所を規定回数叩いたり、タイミングよく溶鉱炉から出したりと、鍛冶をやってる感覚もありつつ、知識のない人でも装備を造れるようミニゲームのような感じで装備を造ることが出来るのだ。

時にリズミカルに光るポイントを叩き、時に実際の手順を踏み、時にまたシステムを使って一つの作品を作り上げていく。

「サブマシンガンと収納用のギミックはミスリルを使って・・・そのほかはヒヒイロカネと、制御装置に・・・遠隔コントローラーっと」


アイテムボックスに×999となっている様々な素材を使い、一般的なギルドなら運営費用1年分ぐらいの値段となってくる作品を彼は作り上げていく。

まあ、彼にとってはただの趣味であるが。

こうして依頼から数時間後。このVRMMOの世界に新しい作品が誕生した。


―――
「これは・・・」

依頼主の女性プレイヤーは、完成した作品を見て驚いている。

「これなら、敵キャラクターに接近して恐怖を覚えることもなければ、操作性の違いも問題にならない。早速使ってみてくれ」
「は、はい」

そういって彼女は、片手剣とラウンドシールドを装備・・・した物を動かすためのコントローラーを手に取った。

「操作方法は十字キーで前後左右に動き、L、Rボタンと組み合わせることで<ソイツ>の視点移動ができる。動きは視点を中心に前後左右が決められ、移動に反映される。Cボタンでジャンプ、A、Bボタンの組み合わせで各種攻撃が・・・と、他にも色々なボタンとコマンドがあるが、後は、まあ、あとは使って慣れてくれ」

「はい!」

そう、彼が創ったのは、一種のロボット。
コントローラーの入力に応じて様々な動きをする、ラジコンっぽいアレだ。
段ボールの戦争だとか、昔からゲームでキャラを動かすように、相棒を操作して敵を打ち破ってきた。
剣が振れないなら振らなければいい。
得意なもので勝負すればいいのだ。

フィールドに出た彼女は、昨日までの動きが嘘のように、鍛冶屋の作品を操り、次々と敵モンスターを殲滅していった。

「・・・すごい、これなら私でも戦えるっ!!」

後に彼女は、攻略組となり、前線で様々な二つ名で呼ばれ、鍛冶屋ヨロヅヤで相棒の様々な強化パーツを買う常連客の一人となるのであった。

―――

カランカラン

「らっしゃい、次はどんな依頼だい?」


後書き

VRMMOとか、やってみたいですねえ。
戦う生産職とか、憧れる。

この小説について

タイトル 鍛冶屋ヨロヅヤ
初版 2017年2月26日
改訂 2017年2月26日
小説ID 4892
閲覧数 201
合計★ 4
teiwazの写真
ぬし
作家名 ★teiwaz
作家ID 1049
投稿数 34
★の数 29
活動度 3463
はじめまして。teiwazといいます。
思いついた作品を思いついたときに投稿しますので、よかったら見てみてください。
これからよろしくお願いします!

尚、小説のタイトルと紹介文は必ずしも小説の内容全てを表しているわけではありませんのでご注意下さい。

コメント (2)

匿名 2017年2月28日 20時57分57秒
★teiwaz コメントのみ 2017年3月5日 19時35分13秒
高評価ありがとうございます!
同じ方ですかね?

今後ともよろしくお願いいたします!
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