詐欺師の善政

「・・・ん?」

気が付くと、俺は見知らぬ暗い部屋の中にいた。

「ここは、どこだ?」

確か、俺は、資産家のじいさんに適当な金融商品を高値で売りつけようとして・・・
んで、そのじいさん、実はヤの付く人々の元締めで、わらわらと出てきた明らかにやばそうな奴らから逃げて、逃げて、逃げて・・・

「こちらを向き給え」
「え?」

言われて後ろを振り向くと、そこには、ごてごてと宝飾品を付けた、横幅の広い、中世の貴族って、こんな感じなんだろうなって感じの男が立っていた。

「誰・・・ですか?」

見るからにやばそうなので、とりあえず敬語を使っておく。
何せ、暗くて一瞬分からなかったが、よく見るとその周囲に鎧を身にまとい、でかい槍・・・それも、模造ではなく、刺せば俺の体に風穴が開くような、そんな鋭い穂先を持っているだろう槍を持っていた奴が大量にいたからだ。
下手な対応をすれば殺される、そう思わせるには十分な光景だった。

「ふむ、異界の者であれば知らぬのも無理はないか。まずはステータスオープンと唱えてみよ」
「ス、ステータスオープン?」

こちらの問いには答えず、言ってみろ、と言われたので口に出してみると・・・

「どわっ?!」

目の前に、ホロウインドウ、とでも呼ぶべき、半透明の板が浮かび上がり、そこにはこう書かれていた。

―――

名前:佐木志陽(シヨウ・サギ)
職業:詐欺師(異界の賢者)
性別:男(男)
年齢:35(35)
体力:400(900)
精神力:600(2000)
物理攻撃力:20(200)
魔法攻撃力:30(400)
物理防御力:15(100)
魔法防御力:20(500)
知力:1000(3000)
スキル:情報検索(情報検索)幻惑魔法(全属性魔法)消費精神力軽減(全消耗軽減)詐術(交渉術)(他多数)
加護:超ご都合主義(運命神の加護)

―――

・・・意味が分からない。何だよ、職業詐欺師って・・・そりゃ、まあ、似たようなことしてた自覚はあるが・・・
と思っていると、職業のところでポップアップウインドウが開き、

―――
詐欺師
自身の持つ情報、伝えたい情報を自由に改竄、表示できる。
また、相手の思考をある程度誘導できる。
例:ステータスの表記においては、左側に書かれているのが本来のステータス。()内に示されているのが相手に見えるステータス。
ただし、見た目が変わるだけで自身の実際のステータスや実際の事実は変わらない。
―――

・・・
まじか。
・・・

しばらく途方に暮れる・・・暇もなく、

「おお、賢者を引き当てたか、でかした!!」
「ははっ!」

と、暗いから見えなかった、黒いローブを着たいかにも魔法使いっぽい爺さんが貴族っぽい奴に褒められている。

「さて、サギよ、汝を呼び出したのはほかでもない。ちと知恵を貸してほしくてな」
「は、はあ」
「実はな・・・」

この貴族っぽい男、エスプロ・ジーヴィといい、まんま貴族であった。それも、公爵家という王族の次に偉い貴族であった。

しかも、ここは地球ではなく、スタンダルド、という異世界だという。

・・・頭痛くなってきた。これ等の事実を、真実はどうであれ、とりあえず現状を説明する一つのピースとして、とりあえずそうなんだな、ぐらいに受け止めとく。

で、だ。ここからが厄介なんだが、この公爵様が言うには、最近税収が下がって来て、このままでは領地の経営もままならないので、民がより税を納められるような制度を考えてくれ、とのことだった・・・

「そうですね・・・現状をまず把握しないことには何とも言えませんね」

とお茶を濁しておくと、

「なら、今月までの収支報告書を用意させよう」

といい、俺を執務室っぽいところに連れてきた・・・いいのか、そんな簡単に見せて、俺、今日召喚?されたばっかの素性も知れない奴だぞ?とも思ったが、面倒なことになるだろうから口では言わない。恐らく、職業詐欺師の思考誘導の効果なんだろうが・・・


―――
さて、見せてもらった感想だが、ヒドイ、この一言に尽きる。
あらゆるところに税金をかけ、絞りに搾り取っている。
よく、民が飢えて死なないものだ、と疑問に思うほど。
生かさぬよう、殺さぬようとはこのことを言うのだろう。

で、そこで搾り取った金はほとんどが公爵の贅沢とよくわからない公共事業っぽいものにつぎ込まれている。それと、色々な助成金。主に大きな商会向けに高額の税金を納めた者や、商品を多く流通させた対価、その他いろいろ、見てるとまた頭が痛くなってくるほどに様々な助成金が支払われている。

これは、昔からの慣例で富める者がより富める仕組みになっているのだ。

さて、どっから手を付けた物か・・・とりあえず、

「税金、減らしましょう」
「なんだとっ!貴様、儂の話を聞いていなかったのか!!」

と、公爵様が激昂するのを、

「まあ、落ち着いてください。要は、<我々に>集まるお金が多くなればいいんですよね?」
「う、うむ。そうだな」

職業詐欺師、結構使えることが分かって来て、ある程度強気の交渉に出られるようになってきて、後ろの兵士に対する恐怖も和らいできた。

「税金を下げて、それ以上に助成金を下げればいいのです」
「助成金を、か?」
「はい。入るお金が減っても、それ以上に出ていくお金が減れば、結果的に手元に残るお金は多くなるのです」
「ううむ、それはそうだが、そうすると、大きな商会の反発がなあ・・・」

渋る公爵殿に対し、

「なあに、目に見える税率を減らしてやれば、賢くない商会はそこにばかりに目が行きます。加えて・・・」

助成金も一律で下げる訳ではなく、それぞれバラバラに給付額を下げ、逆に、元から少なかったものは微妙にあげて目くらまし。金がかかってたものの半分を徹底的に下げ、残りの半分は目くらましにそのまま。
パズルのように複雑に操作しまくった結果・・・

「・・・確かに、これだとぱっと見は分からんかもしれんのう。よし、これでいくか」


こうして、異界の賢者(詐欺師)の発案により税率が下がるとお触れが出ると、民衆は沸き返った。補助金が下がることに難色を示していた商会も、それ以上に税金が下がると(ぱっと見では)思い、この政策を歓迎した。

その結果、この国の中で最も重い税率であった公爵領地は、重い税金が少し減ったことで先月より民の消費が増え、商会も税率が安くなったのでどんどん商品を売り売り上げが増え、流通量も増し活気が出てきた。
公爵にとっては、費用の一つであった助成金が減り、手元の金が増え、まさに、Win-Winといえる状態になった。

まだ幼い公爵の孫はその様子を見て、

「やはりおじいさまは、本当に民のことを考える、素晴らしい領主様なのですね!」
「うむ、もちろんだとも!」

と、常日頃孫に嘘を吐いていい領主であると信じ込ませていた公爵もこの時ばかりは嬉しそうに笑っていた。

―――
そんなこんなで数か月が過ぎ、さらに活気を増した公爵領。
そこに、一つの商会が直談判に来た。

「ふむう、ガミオン商会か・・・」

ガミオン商会。
あらゆる商品を取り扱い、この公爵領で1位2位を争うほどに大きな商会。
その商会長はケチで有名で、銅貨一枚(この国での最低額貨幣)すら負けないことで有名。
そんな商会の商会長が来た理由。それは・・・

「公爵閣下。この度の税率引き下げ、誠にありがとうございます。しかし、助成金の引き下げについては承服しかねますな」
「うむ、それはだな・・・」

面倒な奴が来たものだ、そう公爵の顔に書いてある。
権力で黙らせるのは簡単だが、ここまで大きな商会となると、領内の流通の多くを取り仕切っており、万が一ボイコットでも起こされると、流通に大打撃を受けるのだ。

さて、どうするか。
まあ、考えてあるから言うことは決まってるんだか。

「商会長殿。私たちは、あなたのような目端の利く、真に優れた商人を探していたのです」
「ほ、ほう。なるほど?」

褒められて気分が悪くなるものはいない。
まず、褒めておく。
そして、本題をいい気分の時に切り出す。

「今回の助成金切り下げ。これは、真に優れた商人でなければ気づけない。他の者どもは気づいておらず、あなただけが気づいた。これは、そんな真の商人にしか扱えない<とある情報>を伝える相手を探し出すためだったのです」
「なるほどなるほど。流石は公爵様と異界の賢者様は考えることが違う」
「う、うむ」

公爵はとりあえず頷いている。

「で、その私に伝えたい情報とは?」
「これです」

そういって、俺は、この公爵領の地図とデータを映し出す。このデータはスキル<情報検索>で得た物。また、詐欺師の職業効果で、データをホロウインドウに映し出すことが出来る。

「こ、これは・・・」
「気づいたようですな」

そこに映し出された情報。
それは、各商品における需要量・供給量・生産量から価格まで、ありとあらゆる商品のデータだ。これが意味するのは・・・

「・・・なるほど、確かにこのデータを上手く扱えるのは、私のような<真の>商人だけですな」
「然り然り」

と、適当に相槌を打っとく。

その後、上機嫌に帰って行った商会長。
この情報の価値はつまり、こういうこと。
とある地域では生産量過多で大して価値のない商品も、ほとんど流通してない地域ではかなりの高値で吹っ掛けても売れる。

需要と供給によって物の価値は変わる。

インターネットはおろか、通信手段は高価な魔道具による音声のみの通話か手紙しかないこの世界。情報の価値は計り知れない。

事実、商会長は、生産量過多の地域から二束三文で買いたたき、需要があるのに全く生産量が足りてない地域に法外な値段で売りさばき、かなりの利益を得たそうだ。
その売上げ利益が増えた分、物理的に我々の税収もアップ。


普通なら、ここでその地域から苦情なりなんなりが来たであろう。
が、逆に感謝の声が寄せられた。

曰く、大量に取れたが取れすぎて売り切れず、このままでは腐ってしまうばかりだった魚介類をすべて引き取ってくれて廃棄のコストがかからずに済んだ、とか。
曰く、高かったが、めったに手に入らない薬が手に入ったおかげで助かった人がいた、とか。

こうして、いつの間にかすべてがご都合主義的にうまくいき、異界の賢者として、詐欺師の名声は高まっていき、いつの間にか、公爵家は善政を敷くと評判になって行った。
超ご都合主義の加護を持つ詐欺師は、過去最高の賢者として、歴史書に記されるほど皆に称えられ、なんやかやで結婚もし、幸せな人生を送ったのであった。

終わり

後書き

ご都合主義的な物語の主人公の強運に憧れる・・・
・・・現実であったら収集つかなくて大変そうだけど。

この小説について

タイトル 詐欺師の善政
初版 2017年3月26日
改訂 2017年3月26日
小説ID 4904
閲覧数 48
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teiwazの写真
ぬし
作家名 ★teiwaz
作家ID 1049
投稿数 33
★の数 29
活動度 3362
はじめまして。teiwazといいます。
思いついた作品を思いついたときに投稿しますので、よかったら見てみてください。
これからよろしくお願いします!

尚、小説のタイトルと紹介文は必ずしも小説の内容全てを表しているわけではありませんのでご注意下さい。

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