まったりれー‐Cordial Storys-3

文化祭の予行演習

わいわい、がやがや・・・

「うー、どうしよう、緊張してきた・・・」

トマトは、大勢の観客を舞台袖から見ておろおろとし出す。
今日は文化祭の出し物、舞台「伝説のクワ」の予行演習の舞台。
いつもの身内だけの練習とは違い、今日は他の科の野菜たちも大勢来ている。

「トマトさん、落ち着いてやれば大丈夫だよ」
同じ演劇部のプチトマトが励ます。

「なに、観客皆、ジャガイモか大根だと思えばいいって」
とアドバイスするプチトマトだが、

「・・・今日来てるのは、じゃがいも研究会の野菜とだいこんの集いのみんなだから、もとからじゃがいもとだいこんしかいないけど・・・」
「・・・そういえば、そうだな。何で、俺、そんなこと言ったんだろう・・・ま、まあ、あれだよ、<野菜>って手に書いて飲み込めばいいって聞いたことあるよ?」

と、新たなプチトマトのアドバイスを試してみるトマト。
「野菜っと・・・ごくん。」
「どう?落ち着いた?」
「いや、全然・・・」
「「・・・」」

ビー、間もなく開演します。

「あ、始まっちゃった!!」
「トマトさん、出番だよ、頑張って!」
「う、うん・・・」

こうして、上がったまま舞台に上がることになってしまったトマトであった。

―――
『むかしむかし、まだこの世界が荒野ばかりで私たちの居場所である畑が余りなかったころ。ちいさな畑を耕しているトマトが居ました』

「よ、よーし、畑を耕すぞ!!」

『でも、このトマトはちょっとおっちょこちょいで、度々クワをどこかに置き忘れることがありました』

「えーと、確か、この辺にクワが・・・あれ、ない!?」

『トマトは必死にクワを探すものの全く見当たりません』

「え、え、何で!?あそこに置いといたのに!?」
「「おお・・・」」

トマトの必死の演技に、観客が感嘆の息を漏らす。
みな、すごい演技だ、本当にクワを無くしてしまったようだ、と思っていた。

それもそのはず、本当にトマトはクワを見失ってしまって焦っていたのだ。
演技ではなく本当に無くしてしまっていたのであった。
元から真っ赤な顔をさらに赤く染めて必死に探し・・・

「ぐべっ、あ、あった!!」

『躓いたものの、トマトは、それが捜していたクワであったことに喜びました』

「よ、よかったよう・・・」

奇跡的に舞台の内容と、演技に見える本気が合わさり、観客はその舞台に見入っていくのであった。

―――
「ゼブラトマト村長、私、<伝説のクワ>を探しに行きます」

『伝説のクワ。
それは、どんな荒れ果てた大地であっても、一瞬で耕してしまうといわれる文字通り伝説の存在。この野菜世界の中心にある、最も栄えた畑であるセントラル、そのセントラルの畑を耕したクワだといわれています』

「トマトよ・・・その旅路は長く、困難なものとなろう。それでも行くのか?」
「はい!私、この村を救いたいんです!」

『トマトの真っ直ぐな瞳に、村長は折れ、』

「分かった。ならば村の者を何人か共に連れていくとよい。決して無理をするでないぞ?」
「ありがとうございます!!」

『こうしてトマトは伝説のクワを求めて、セントラルへと旅立ったのでした』

―――
『旅路は、長く、色々な者にトマトたちは出会いました』
『トマトの村より畑が小さい村では、トマトたちが一緒に畑を耕し、畑を広げ、』
『土地に元気のない地では、一緒に肥料を開発し、』
『水が少ない土地では、井戸を掘ったり、遠くの川から水路を広げたりしました』

『そして、ついに一行はセントラルへとたどり着きます』

―――
「お願いです、伝説のクワを貸してください!!」

『トマトは、セントラルの代表であるミディトマトに訴えます。
しかし、』

「それは出来ません」
「そんな!?少しの間だけでいいんです、お願いします!!」
「お気持ちはわかります。ですが、無理なのです。じつは・・・」

『ミディトマトの話によると、伝説のクワは実在しました。ですが、長き時畑を耕したことで折れ、失われてしまったというのです』

「そんな・・・」

『トマトはがっくりと膝をつきました。ここまで来て、村を救えない・・・絶望に打ちひしがれようとしたトマトを、しかし、ミディトマトの言葉が救います』

「しかし、村を救いたいのであれば、いくらでも方法はあります」
「ほんとですか!!でも、伝説のクワもないのにどうやって・・・あ」

『トマトははっと気づきました。今までの旅路、そして、このセントラルの畑を見て』

「気づかれたようですね。そう、伝説のクワが失われたここ、セントラルであっても、こうして畑が広がっている。それはつまり、伝説のクワに頼らずとも、荒野を一面の畑に耕す方法がある、ということです。私たち、セントラルの野菜たちは、伝説のクワを得、畑を得てから、また、失ってから、どうしたら畑を最高の状態にできるか。その方法を常に模索し、情報を蓄積していました。その全てをあなたたちに伝えましょう」
「ありがとうございます。これで、村を救うことができます!!・・・でも、いいんですか?いきなり伝説のクワを貸してくださいって言いだしといて何なんですが、対価もなしにそんな貴重な情報を頂いてしまって・・・」

『トマトは、おっちょこちょいうえに、伝説のクワを借りる事ばかり考えていましたが、今冷静になって考えてみると、ただでもらうことに、すこし気後れしてしまいました。でも、そんなことは杞憂だったのです』

「問題ありませんよ。むしろ、こちらからお願いしたいくらいなので」
「え?」
「ここセントラルは確かに畑が豊富にあります。しかし、土地は無限にあるわけではありません。今も居住者が増え、このままではいずれ、耕す土地がなくなってしまいます。そこで、新たに耕す土地を探していたのです。そのために、畑を耕すノウハウをまとめたマニュアルと指導者を育成していました。彼らを開拓村へ送り出し、ここセントラルと同じように耕していけば、この世界全てをセントラルのような畑にすることができます」
「す、すごい・・・」

『トマトは、その壮大な計画に圧倒されました。自分の村だけでなく、世界を畑に変えてしまうのかと』

「ですので、一つお願いが。この情報の対価として、ここセントラルからの移住者を何十野菜か、あなた方の村で受け入れてほしいのです」
「わかりました。お安い御用です!村長も村の野菜の減少に悩んでいたので、むしろ喜んでくれると思います」
「ありがとうございます。では、お願いします」

『こうして、セントラルからの指導者と移住民を連れたトマトは村へと帰って行ったのでありました。もちろん、村を救うことに大きな役割を果たしたのはその指導者たちだったのですが、彼らだけがすべてではありません。他にも、この旅で得られたものはありました。それはトマトが帰ったとき・・・』

「え?みなさん、どうしてここに?」

『そこに居たのは、旅路で助けた他の村の人々でした』

「なに、わしらも助けてもらったんでな」
「すこしでも恩返しがしたくてな」
「「んだんだ」」

『情けは人の為ならず。他の村を助けて回ったトマト一行に恩を返そうと、他の村々の有志が集まり、畑を耕してくれていたのでした。伝説のクワはなくとも、トマトは自分のクワを大切にし、ここトマトの村も、他の村も、セントラルの指導者・移住者たち、数多くの出会ってきた野菜たち、そして、もとから村にいた野菜たちは力を合わせ、豊かな畑を耕すことに成功しました。そうして、出来た畑で皆幸せに暮らすことが出来たのでした。めでたしめでたし。』

ぱちぱちぱちぱち!!

舞台の幕が下りると、観客席からは割れんばかりの拍手が鳴り響いたのであった。

「よかったー、終わったよ」
「お疲れ様。いやー、迫真の演技だったね、観客の反応がよかったよ」
「あはは、ほぼ偶然の産物だけどね」

と、迫真の演技の真相を語るトマト。

「でも、そのあとの演技は緊張せず、実力を発揮できたんでしょ?」
「あ、そういえば」
「この調子で本番もよろしく」
「了解!」

こうして、トマトの予行演習は終わり・・・
本番の演劇も大好評のうちに終わるのであった。


後書き

「Cordial」には「心からの」という意味があるそうです。

本作を書くにあたって、何故か<舞台>が<部隊>になってることが多かった・・・

というわけで、本作をご覧になっているそこのあなた!
そう、夜更かしをしてるあなたです!
え?してないって?
まあ、様式美ということで。


そんなわけで、続きを書いてみませんか?

この小説について

タイトル まったりれー‐Cordial Storys-3
初版 2017年4月29日
改訂 2017年4月29日
小説ID 4930
閲覧数 105
合計★ 4
teiwazの写真
ぬし
作家名 ★teiwaz
作家ID 1049
投稿数 34
★の数 29
活動度 3463
はじめまして。teiwazといいます。
思いついた作品を思いついたときに投稿しますので、よかったら見てみてください。
これからよろしくお願いします!

尚、小説のタイトルと紹介文は必ずしも小説の内容全てを表しているわけではありませんのでご注意下さい。

コメント (2)

★餅村 みみ 2017年5月7日 11時17分27秒
★teiwaz コメントのみ 2017年5月8日 0時49分18秒
餅村 みみ 様

高評価ありがとうございます!
今後ともよろしくお願いします(^-^)
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