月読島の月隠し - 一夜目 【民話】

深夜
(プロローグ的なヤツです)

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民話集 ***話目【冷たい狼】

 昔々、とある孤島に月読命(ツクヨミノミコト)という夜を司る男神と人に紛れる人狼の一族が暮らしておりました。

 ただ、その一族と神は大変仲が悪かったので、双方なるべく逢わぬ様にひっそりと生活していました。
 
 ある年の冬、男神は何となくその一族の隠れ村を天から覗いて見てみました。

 すると、心なしか幾分か数が減った様な感じがして、何とも言えぬある種の不安が胸をよぎり、一抹の不安を感じたままその日は自らが鎮座する社へと戻りました。

 次に神が永き眠りから覚めると、以前は見かけなかった人の子がたくさん暮らしておりました。

 どうやら眠っている間に人の子が荒波を越えてはるばる移住してきた様でした。

 男神は人の子も気になりましたが、もう一度何かにつき動かされるようにあの忌々しかった筈の一族が住まう隠れ村へと足を向けました。

 隠れ村は跡形も無くなっていました。

 あの人狼の気配も薄まりすぎていてもうこの地を去ったのか、あるいは滅んでしまったのか。

 もう神には終えぬ程気配も何もかも感じ取る事ができず、もう森の一部と成り果てた元人狼の隠れ村には何か過去を匂わせる物ももう残っていませんでした。

 神は社へ打ちのめされて戻ってきました。

 苦しくて、辛くて、寂しくて。

 何処までも深淵の虚無に堕ちていきそうな感覚に陥り、いつもの星達を猛々しく輝かせる天を駆け上がる様ないつもの朗らかな笑い声も、幸福に満ち足りては紡ぐ弥栄の言の葉すらもう神には残っておらず、数年間うちひしがれる毎日が続きました。

 しかし。

 神に恐ろしくも確実な変化が起こりつつありました。

 人の子へ本来抱くべき感情とは全く裏腹の感情が溢れて溢れて仕方ありません。

 人には聴こえぬ悲痛な胸の内を男神は叫んだ。

 嗚呼、嗚呼。

 何故消えてしまったのだ。

 忌々しくも気の知れた一族よ。

 そなたらとは腐っても末長く続いてきた誠の縁なのだぞ。

 そして何故起こしてくれなんだ。

 別れ際に社を蹴りつける位なら構わぬのに。

 嗚呼、嗚呼。

 何故やって来たのだ愚かで恐ろしく浅はかで醜くくも愛しい我らが人の子よ。

 何故だ。何故だ?

 私を独りにしないでくれ。

 なぁ、友(人狼)よ。

 なあ?
 



 …そうか。

 嗚呼、どうしてこうなったのか分かったぞ。

 分かってしまったぞ。

 ふふ、お主らの選択の末よの。

 あい、分かった。

 神の心意は、大気を震わせ風を揺るがし、静かに尖った鋭利な想いは人の子を狙い定めて離さない。

 そして人の子の町へ神風が吹き下ろさんとするその刹那ー・・・


「止めてくだされ!」
「お鎮まり下さい!」

 二人分の声はかつての敵の耳に確かに届く。

 そしてかつて慣れ親しみ、心底嫌ったその気配が酷く男紙を不安と安堵に包み込む。

 男神がぎこちなく振り返った先で静かに佇んでいたのは、あれほどに渇望し、痕跡を、想いを辿ろうと躍起になった、人狼の姿に他ならなかった。

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「・・・という話な訳よ。」
「はあ。」
「へー」

そう、どっかの民話集片手に立ち上がるのは都市伝説研究部とかいうめっちゃ胡散臭そうなサークルのリーダー、アイカだった。

てか、このサークル名前はもう少し何とかならなかったのかと俺ー・・・ユウは隣の席のイッセイを見やった。

イッセイはいつも通り困ったように笑って肩をすくめるだけだった。

「て、事で!このお話のある島には色ぉーんな噂があんのよ!」
「何でそれをお前が知ってんだよ」
「ふふふ、私に不可能はないのよ!」

そんなことあるわけと言いかけてやめた。ありえそうで怖い。コイツなら軽くやりかねる。

あれから数分後。

俺達はこのクソ熱い炎天下の中、蝉時雨を身体中に受けながらチャリを漕いでいた。
うう、アスファルトからの照り返しがキツいぜ…

振り返ると、先程上ってきた坂道の下で、陽炎がユラユラと嘲笑うように揺れていた。

数日後、俺達(アイカを除く)が生まれて初めて本州から離れる事になるのだがー・・・

それは、もう少しだけ後のお話。

後書き

キャラクター紹介

神無 愛花 (カンナ アイカ)
大学一年生。都市伝説研究部発足者。

遠藤 悠 (エンドウ ユウ)
大学一年生。苦労人。ロックが好き。

草間 一成 (クサマ イッセイ)
大学一年生。色々巻き込まれやすい。

この小説について

タイトル 一夜目 【民話】
初版 2017年9月29日
改訂 2017年9月29日
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