ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手 2話

水源+α
「お待ちしておりました。救世主の方々」

「「「......!?」」」
 
 ───しかし突如、クラスメイト達しか居ないこの広大な部屋の静寂を破った身に覚えのない威厳のある声に、全員が驚愕した。

誰、このおじさん......!?

 今まで開かずの大扉がゆっくりと開き、その奥には玉座に座る、王冠を被った老いた人物が座って待っていた。

「これって......」「誘拐のはずだけどどうして......?」「なぁ......あの人王さまっぽくね?」「あの......ネタということは......」「ないな」「うん、ない」「流石にこんな大きな扉作ってまでやらないでしょう?」

 全員が息を呑み、そのまま縫い付けられているように動かず、王冠を被っている人物と、その他に周りにいた部下達もこれには慌てた。

「何をグズグズしておる。早く私のまえに顔を見せて来たらどうだ」

「おい......来いだってよ」「お前行ってこい」「......行ってきたらどうだ?」「嫌よ......あなた行きなさいよ」「俺は......まだ生きたいし......」「死にゃしねえよ......多分」

 畏怖の目を王に向けながら、怯えた口調でそれぞれ口に出す。

 王はそんな生徒たちを見て、自分がなんかした訳じゃないのに何で怯えられてるのかが理解できず、しかも口々には「生きたいし」といわれる始末に焦った。

「待て待て......別にお主達を取って食べたりなんかしないのだが......」

 しかし、伽凛を筆頭にその言葉を警戒した。

「誘拐しておいて......よくそんなことが言えますね? 国ぐるみで私たちに辱しめをやるんでしたら私たちは断固拒否し、徹底抗戦します」
 
 そう伽凛が言うと、駿以外のほとんどの人が同調する。

 また、伽凛の後に続いたのは、友達である朝倉(あさくら) 優菜(ゆうな)だった。

「なにがなんでもいきなり何処か分からないところに皆連れかえっといて......そんな上から目線はどうかと思いますよ? 誘拐犯だったらその態度に納得できますが、あなた方のその姿じゃとてもじゃないけど、想像できませんね」

 優真も、優菜の後に続いた。

「何がしたいんですか?......手も足も縛り付けずにそのまま放置とは聞いたことがありません。逃げないようにする誘拐犯ならばそんなことぐらい常識だと思うんですけど?」

 その優真の言葉で、皆が首を僅かに傾げた。

 たしかにそうだ......と、何故この人達は自分達を縛らずに、そこの大きな部屋に三十人もろとも放置してたのか、理解できなかった。

「お主達......誘拐とは人聞きの悪いの」

「じゃあ何だって言うんですか?」

 王は伽凛からそう聞かれた時、玉座から立ち上がって、騎士達十人くらい連れて、呆然としている三十人の前で何故か、頭を下げた。

「今回は少々、いやお主達にとってはいきなりでよく分からない上、結構な手荒な真似と感じる事をしてしまった。誠に申し訳なかった......」

 下げた頭を元に戻して、王は続けた。

「これで謝罪が足りなかったら後でまた何か贈ろう────さて、では本題に入るとする。まず何故お主達がここにいたのかの経緯を話そう。先に言っておくが、お主達を呼んだのはこの私を含む王国じゃ。理由としてはだが、ある七つの剣を探してほしいのじゃ。その七つの剣は種類にもよるが、一つあれば小国を容易く滅ぼせる程の威力を持っておる......言わば伝説の剣じゃな。その剣を何故探すのかと言うと、今世界中の敵になっておる強大な勢力『魔王軍』が、その剣を求めて探し回ってるらしいのじゃ......『魔王軍』の強力な貴族に持たれると、もう私たちでは太刀打ちできなくなってしまう。そんなこともあって、先に見つけ出そうという魂胆に至り、お主達を呼んだというわけじゃ」

「え? ちょまって。『魔王軍』? なにそれ? ゲームじゃね? なんで今そんな話すんの? あり得ないだろ」

 一人の男子が王らしき者から放たれた意味不明な言葉を鼻で笑った。

 それは皆も同じようで、「この人なにいってんの?」と困惑した表情を浮かばせている。

 一部の男子は嘲笑し、大部分が困惑している中で、王は「あれを持って参れ」と近くの騎士にそう命令する。

 騎士は早々に立ち去り、数十秒後には赤い布で覆われた物を手に持って王に差し出した。

「......今から『魔王軍』と戦ったとある戦場の記憶を見せる......注意しておくが、残虐の限りを尽くしている過激な内容となっておる。目をそらすのもよしじゃが......これが真実じゃ」

 王は赤い布を取り、何のへんてつもない鏡を天井に向かって高らかに持ち上げた。

 すると天井に、鏡から一直線に伸びた光が当たり、その瞬間映像がうっすらと浮かび上がっていった。

「「「「「「「おお......!」」」」」」」

 それを目撃した皆は、一様にそう驚嘆する。

 うっすらと見える映像が段々と鮮明になっていく中で何人かはもうその映像がどんなものなのかを察し目をそらす。

「「「「「「「..................っ!?」」」」」」」

 やがて映像が完璧に写された時、皆はその映像に息を呑んだ。

 ────写るのは五メートル程の体格を誇っている牛人が、泣いて必死にその拘束を解こうともがき続けている騎士の腕をその大きな口を開けて食い千切って鮮血を至福な表情で浴びている───そんな内容の映像だった。

 映像はそこで止まり、天井に伸びた鏡から放たれていた光が消えた。
 
 皆は言葉を失い、しばらくの静寂が部屋を支配する。

 たった一分程度の映像で、皆の心には王が言った『真実』が深く刻まれた。

「......どうじゃ。信じてもらえたか」 

 王のその一言に誰も反論はできなかった。

 王の話を聞いていた皆の中の一人のクラスメイトが手を上げ、質問した。

「何故私たちなんですか?」

 その言葉に皆は同感し、頷く人も居た。

しかし、話を聞いていた駿は皆とは違い

魔王と戦えるのかっ! いや〜人生は生きてて分からないなぁ〜。俺的には戦いたい心もあるし、伝説の剣に触れてみたい気持ちもあるし、皆の意見を優先にしないとっていう気持ちもあるけど......やっぱり戦う方を選ぼっかな〜♪

 と、目を輝かせていた。

そんな駿をいざ知らず、王はまた続けた。

「お主達は多大なる力を秘めている可能性が大いにあるのじゃ......その力は、かつて現れた勇者に匹敵、いやそれ以上の非常に大きなもので、戦うごとにお主達はもっと強くなるのじゃ。その強力な力も相まって、力を持っているお主達にこれを頼みたいのじゃ。成功率もぐんと上がるし、何より安心だからの」


「なんであなた方の都合に私たちを巻き込むんです? 『魔王軍』っていう人達と戦争状態で、そもそもどちらが悪いとかじゃなく、戦争をやっていること自体が悪いことだと思いますけど......そして今、私達のように関係ない人も巻き込んでます......今は故意で私たちを巻き込んでいるのでしょうが、戦争をやっているあなた方の都合のことでどれだけの人たちが無意識にも巻き込まれていると思ってるんですか?」

 王が言った言葉に、伽凛が冷静に返答する。その声は冷静に聞こえても、凍えるような怒気を感じられる。

「むぅ......確かにそうだが、この戦争は仕方なくやっているのも同然のものなのじゃ......」
 
 王は困ったような顔をして、目をつむり、顔を横に僅かに振る。

「......? どういうことですか?」

 ここで初めて駿の声が響いた。

 皆はそんな普段は見せない、自分から発言することのなかった駿に少し驚いたが、王はそんな気も知らず、淡々と話した。

「『魔王軍』は、これまでこの世界に存在する魔物と、突如として現れた魔人を魔王が治める形によって組織された、いわば魔族の統制機関じゃ。その『魔王軍』が組織された当時から、近くにある国々を次々と無差別に殺戮を繰り返し、あわよくば世界中に、国として認めろ、と発言してきたのじゃ。最初は穏便に済ませたかったのじゃが、殺戮を繰り返してきた『魔王軍』の過去がどうしても足枷になり、なかなか認めてくれない『魔王軍』側は、ついに戦争を仕掛けてきたのじゃ......」

 その王の言葉に伽凛は瞠目し、さっきの発言と今の王の言葉を照らし合わせて、悩んだ。

これは......仕方ない......かな? 戦争はいけないと思うけど、理不尽な『魔王軍』の要求を飲んだらもっとこの世界は酷いものになってたかもしれない......殺戮を繰り返したのならそれは間違いなはず

「すみませんでした......先程の発言、撤回というわけにはいけませんが、少し間違っていました」

でも戦争はいけないのは当たり前だから、撤回をするわけにはいかないよね?

「いや、お主の発言はもっともだった。分かってはいたものの、最近忘れてきていたのは本当じゃった。改めて私に教えてくれて感謝しておる......さて、どうじゃろうか......? 私はこれ以上犠牲者を出したくない。伝説の剣を手に入れられば、負けは必至じゃ......負けたら私達人族の民族浄化もあり得るじゃろう。どうか......どうか私達に力を貸してはくれぬか......?」

 その王の言葉と、一連の話を聞いていた反対していた人達全員が肩を揺らした。

 駿も同様に肩を揺らし、拳に力を入れて、目を細めていた。

静寂が続く。

───

───

───最初に静寂を切り裂いたのは


「皆、やろう」

 駿だった。

 誰もが駿に注目した。

「ここの世界は、もう俺たちが住んでいたところとはかけ離れた世界だ」

 今までとは違う、凛々しく、堂々とした駿の姿に伽凛、そして皆が目を見開いた。

「俺達が居た世界は、果たして俺達を欲していただろうか......? 俺はそうは思わなかった。俺に場合、ただ毎日、学校の教室に来て、ひたすら退屈な授業を受けたあと、机に突っ伏して寝て、チャイムが鳴った後でまた授業を受ける......ただこれだけだった。もちろん、皆の場合は友達と話すというものがあるが、本当にそれだけで本当に楽しいと思ったことがあったか? それだけの生活にほぼ反日無駄にして、そこの世界は俺達を欲していると思ったことがあったか?」

 その問いかけに、皆は目を逸らした。

「......だが、この世界は、俺達を欲していると、そう口々に出してくれている。決してこの世界を望んだわけじゃない俺達をだ......俺はこの世界で、存在価値を示したいと思ってるんだが......皆はあんな退屈な世界で存在価値を示したいか......? 退屈な日々にまた戻りたいのか......?」

まぁ......皆を誘ってるのは怖いだけ......だからこんな大口を叩いてるだけ......ただそれだけだ、うん

 駿はそう言い聞かせてる自分が見苦しく思い、苦笑してから、嘘でも本当でもないことを口にする。

「───俺は一人でも......この世界に残るつもりだ。皆は?」

「「「......!?」」」

 その発言は皆を驚愕させる。

 しかし誰もが頭を悩ませた。

 駿の言ったことは、皆の心の奥底に仕舞い込んでいた『日常からの解放という』言葉を引き立たせた。

 毎日、密かに思っていた、退屈というものの裏にある、解放というもの。

 まだ子供であることを再確認できたこの思いは、皆に止められなかった。

「近藤君、私は残るよ」

 伽凛が挙手する。

「俺も......なんか見過ごせないわ。魔王とかいう奴。あと、駿と討伐してみたいし」

 優真も挙手する。

───それにより

「私も!」

「お、俺も!」

「僕も!」

「俺もだ!」

「私も......」

────......

と、続々と皆が挙手し、ついに全員が挙手した。

「お、おぉ......! やってくれるか! 頼もしい限りじゃ!」

 王の他にも、周りにいた騎士や大臣らしき人達が歓声を上げた。

「お主のお蔭で皆が賛同してくれた! 感謝しておる!」

「ど、どうも......」

 と駿が恐縮するのを笑顔でうんうん、と頷いた王は「よし、さっそく......あれを持って参れ」と命令し、武官が例のあれを持ってきたらしい。

「これからお主達には自分の実力を知ってもらうため、ステータスを調べる。やり方は簡単じゃ。その水晶の上に手を置くだけじゃ。さぁ、まずは並んでやってみるのじゃ」

 皆はそう言われたので水晶の前に並んだのだが

───並んでいる間、皆から駿は質問攻めを受ける。

「近藤......お前どうした! いきなり言われたときはビックリしたぞ!」

「近藤ってさ......案外いいこと言うよな」

「近藤! てめーなに格好つけてんだよ! 格好良かったけど!」

「近藤なんでそんなに変わってるんだ?」

「近藤君って、案外しゃべる方なんだ......」

「近藤君......なんかすごいね」

 と、賞賛や皮肉なども度々混じっている。

なんか......お前らがすごいよ

 と、すごい人数で囲まれている駿はそうつくづく思っていると

「近藤君!」

 と、伽凛が呼んでいるため、駿は「なんだろう?」と、首を傾げた後、人混みをかき分けながら駆け寄った。

「なに? 峯崎さん」

「いや、近藤君の番だから呼んだんだけど......」

「あ、あぁ! なるほどね。じゃあ行ってくるよ」

「う、うん!」

いや、ちょっとまてよこれって峯崎さんのステータスを見れるチャンスなんじゃね?

「優真、先にやってて」

「うん? 別にいいけど」

 と、自分の番をすこし後ろに並んでいた優真に譲った。

よし......!

「そういえば峯崎さんのステータスってどうだったの?」

 と、駿は一度伽凛に背を向けた体をまた向けながら、質問すると......

「この紙に書いてるけど......見たいの?」

お、きたーっ!

「み、見たいです!」

「うん、いいよ? はい」

 伽凛は笑顔で快諾して、紙を見せてもらった。


すると、伽凛のステータスを駿は嬉しい気持ちで黙読する。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


ミネサキ・カリン 

女性 

人族

Lv1

HP  125

攻撃力 50

魔攻力 220

MP  250

敏捷  90

耐久  50



スキル

なし

固有スキル

女神の治癒(下位)
・対称の個体に、全回復、状態異常回復する。
・スキル使用後、自動回復(大)が付加。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

つ、強っ!? すんげえ回復出来るじゃん......しかも現時点で下位ということは、上位になったらどうなるのだろうか!

「はぇ〜......」

「近藤君、どうだった?」

「峯崎さんって女神だね」

「......うん?」

「............ぁ、あ! ぼーとしてた! うん、強い! あ、行かなくちゃ! またね」

「え、近藤君!?」

 駿は顔を赤くしながら、ステータスを確認しに行った。

すると......

「な、なんだこれぇ!?」
 

この小説について

タイトル ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手 2話
初版 2017年10月28日
改訂 2017年10月28日
小説ID 4990
閲覧数 38
合計★ 0
パスワード
編集/削除

コメント (0)

名前 全角10文字以内
コメント 全角3000文字以内 書式タグは利用できません
[必須]

※このボタンを押すと確認画面へ進みます。