踊る大捜査線[青室青] - 2/14…幸せについて。(後)[青室]

取り調べ室、青島の隣.室井side>

主導権を握った青島の、本領発揮は凄まじいものだった。名前、喧嘩になった経緯、相手をなだめ、落ち着かせ、上手く取り調べを進めていった。

「・・・取り調べ、終わり。ありがとね。全部話してくれー・・・」
「幸せでした?」

終わらせようと青島がペンを置いた瞬間、不意に容疑者の男が口をはさんだ。

「それはー・・・」
「恋人と離れてる間。幸せでした?」

男が青島のいいかけた言葉を遮る。その瞳は真っ直ぐで、私達2人を見据え、訴えている。

「・・・。」
「そんなに離れてて。幸せでしたか?」

何度も問われる幸せについて、青島が悲しげにうつ向く。次に出す・・・この男に出す答えが見つからないのだろうか。

「・・・室井さんは?」

言葉に詰まる青島を見て、男は私にきりかけた。男が知りたい答え。望む返事・・・。

「・・・幸せだった。」

容疑者の男も、青島も、予想していなかった答えに違いない。凝視しては、理由を待っている。

「・・・幸せだった。とても。」
「それは、どうして?」

緊張を口から吐きだすように、一つ大きく溜め息をついた。意を決して、語りかける。

「離れていた6年、ずっと相手ー・・・青島を、想っていた。会えない分、話せない分、ずっとずっと。すごく、幸せだった。想えば想うだけ、愛し愛せるような気がしたから。だから、6年という長い年月を終えても、こうして恋人でいられたんだ。・・・むしろ、好きだという気持ちが強くなっていた。」

「室井さん顔真っ赤・・・。」
「うるさい。」

青島に指摘されずとも、自分で顔から湯気が出るのではないかというくらい熱く、赤面しているのは予測できる。現に、鼓動が速い。今、恥ずかしさから、また気難しい顔をしているのだろう。


「・・・そっか。」

男は穏やかに微笑んでは椅子の背もたれに体重を預ける。「幸せだったんだね」と納得したようにうなづいては少し頬を赤らめた。

「でもやっぱ不安だなぁ。」

容疑者の男が、消え入るような声で呟く。

「信じていれば、きっと大丈夫だよ。」

優しい青島の言葉が、きっと男を安心させ、心に響いたのだろう。

「ありがとう、刑事さん。」

男はそう言うと、最愛の恋人と共に釈放。2人は互いを想い、信じることを約束に、離れることを決意した。




  *     *     *





寒空の下、恋人と2人きり青島side>

「妬けるなぁっ・・・。」
「・・・何がだ。」
「えっ、ぁっ、き、聞こえてました?」

ボソ、と聞こえないよう呟いたはずの言葉が、室井に拾われ、心の底から驚き、しどろもどろになってしまう。

・・・甘ったるい匂いが鼻をつく。

はぁ、と寒空の下、白い息を手に吹きかけ擦る。室井と2人、肩を並べて歩く夜道。チョコレートの沢山入った紙袋のガサガサと揺れる音と、室井の革靴の音が響いては消える。

「何が妬ける。」
「む、室井さんの貰ったチョコレートの量をみて、か、な・・・は、ははは。」
「貰った量としては、見た限り君とさほど変わらない。それに、私達の関係を怪しまれないよう、あまり断らず貰おうと提案したのは君だろう。」
「ぅ、だってさぁ・・・。」
「妬くなら何故そんな提案した。」
「それは・・・、そうっすけど・・・。」

(室井さん狙ってるライバル把握しときたかったし・・・)

・・・こんなに多いなんて思わなかった。紙袋から漂う甘い匂いが嫌というほど思い報せてくる。・・・ふと、室井が口を開いた。

「・・・君は、どうだった?」
「・・・、何がっすか?」
「私と離れている間、どうだった?」

先程の容疑者の男とした会話だろうか。横を向くと、室井は表情険しいまま前を向き、青島に問いている。

「・・・室井さんは、幸せだったんでしょ?」
「・・・す、こし、寂しかったから一言で幸せだったとは言えないが・・・。」

こちらの視線に気づいたのか、室井はふぃ、と顔を逸らし、さらに続けた。

「・・・お前は、俺と離れてる間・・・平気だったか。」

“お前„、“俺„・・・少しずつ、「恋人」に戻っていく2人はの空間。寒いからか、照れているからか、室井の耳は赤く染まっている。

「さぁね。どうでしょ。」

答えにならない答えを聞いては、室井の足が止まる。数秒遅れて、自分も足を止めた。背後の距離に立つ室井に、向き合うように振り向く。複雑な表情をする室井と視線が交じわった。

「俺も寂しかったっすよ。平気なわけないじゃない。でも、信じてたから。不安はなかったよ?」

立ち止まったままの恋人に歩み寄ると、紙袋を持つ手をそっと握っては、その瞳を見据える。室井の瞳に、青島がしっかりと映っていた。

「そうか・・・。」
「俺も、幸せでした。ずっと、貴方のこと想ってたから。」

握る手から伝わる体温がひどく熱い。白い息を互いに吐きながら、距離を縮めて額を合わせた。

「青島・・・。」
「今の方が、ずっと不安。こんなにライバル多いんだもん。頑張らなきゃ、取られちゃう。」

額を合わせたまま見つめる室井は目を伏せ、その長い睫毛が微かに風で揺れた。

「・・・言っておくが、俺だって妬いている。今の方が不安・・・になった。」
「もっと不安になるよ?これからも・・・さながらロミジュリ状態になるんだから。」
「所轄と本庁だからか?」
「それでもちゃんと想ってますけどね。会えないわけじゃないけど、あんま職場では盛れないし。」
「間違っても盛るなよ。」
「へへ、どうしよっかな〜?」

無邪気に笑いながら、指を絡めて見つめ合う。室井の真っ赤に染まった顔が、可愛らしくてたまらない。その顔が、無意識で青島を高揚させる。「どうしよっかなじゃないんだ馬鹿。」と言いながら怒る室井の手にある紙袋がガサガサと揺れる。・・・今にも中の箱が落ちそうで。

「室井さん、チョコレート。1個くらい食べました?」
「食べてない。どうも匂いにやられてな。お前は?」
「いくつか、取り調べの前に。少しずつ消費しないと、後が地獄なんで。」
「・・・すまないが、お前にチョコレートは買えていない。どうせ沢山貰うだろうと思っていた。」

室井が悲しげに下を向く。・・・自分で言っておきながら、そんな表情をするのか。

「・・・食べる?ちょっと苦いかもだけど。」
「は・・・?青、・・・んっ。」

有無を言わさず、青島は室井に素早く口づけた。まだほんのすこしチョコレートの味が残る青島の口から、舌を絡め、室井に移す。

「・・・っ、ふ、」

室井から甘い吐息が漏れると、青島は理性を保つようゆっくりと唇を離した。口づけから解放された室井がまるで沸騰するのではないかと言うほど赤面しては、その唇を手で覆い隠した。

「・・・んなとこで盛るな馬鹿・・・。」
「ね、チョコレートの味、した?」
「・・・煙草、みたいな・・・。」

もごもごと感想をのべては、青島の視線を避けるよう顔を背ける。その室井の行動が、無意識に青島を高揚させる。

「もっとしたくなっちゃうじゃない。・・・そんな顔。」

自分に向かせようと両手で室井の顔を包みこむ。もう一度その唇に触れようと顔を傾け、近づけると、今度は室井の手にキスしてしまった。

「・・・家でなら許す。」

許すー・・・それじゃあまるで自分が無理矢理してるみたいじゃないか。

「許す、じゃなくて?」

青島はに、と意地悪く笑うと、口元の室井の手を引き寄せた。

「家で、したい。」
「・・・了解。」

絞り出した小さな小さな室井の声を、しっかりと耳に残しては、べ、と舌を出して見せた。

2月14日、バレンタインデー。

青島
    と過ごすのも、毎年恒例だな。
室井さん



  ・・・と互いに密か、ほころんだ。





            ー・・・了。

後書き

青室の大人な恋愛素敵です。
どうか増えますように((

この小説について

タイトル 2/14…幸せについて。(後)[青室]
初版 2017年11月17日
改訂 2017年11月24日
小説ID 4998
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みずぬまの写真
駆け出し
作家名 ★みずぬま
作家ID 1099
投稿数 4
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活動度 108
まだまだ未熟者ではありますが、たくさんの作品を執筆し、上達していきたいと思います。よろしくお願い致します。

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