ぐちゃぐちゃになってもすてきなあなた

「意味」

 意味なんかなくったっていい

 余計な気づかいはいらない

 僕をこじつけないでいい

 後づけの理屈なんていらない


 僕はここにいる。確かに立っている。意味はここにある。


 
「西海の水竜」

 遠い遠い昔
ルークンドが海に沈んだのは
西海の水竜が子を産んだから
島の根に巣を作ってしまったから

ルークンドの民は水竜を殺した
 餌を使っておびき出し 一斉に剣を放った
水竜は血を流しながら餌をくわえ
子に食わせ 息絶えた

水竜の子が巣立つとき
巣が壊れ 島は沈む
子を殺せば 巣も壊れまい
 ルークンドの王は決めかねる

親も殺して子も殺すのか
民の命はどうなるのか
 命は秤で計れまい
運命もまた 計れまい

海底に沈んだ水竜の骸
 竜の子が巣を離れたのは
自分の親への慕情のみ
恨みや憎しみはそこにない

 遠い遠い昔
ルークンドが海に沈んだのは
海の上にも海の底にも
都合のいい命など なかったから



「リスペクト町田」

くっすん、いよいよ臭ってきたよ。川にあふれたミルクの父は。朝まで話しこむ酔いつぶれた母は。成してない子が子らへと伝染し、のっぴきならない犬。どうしてものっぴきならない。

ようようっと、わずか乾いてきたよ。しらばっくれたカフェラテの父は、母に説教。くずめくずめ。大風に巻きこまれ小指などが翻。ガムに聞かれては答えねばなるまい。



「ジムノペティ」

覆いかぶさってキスをする
禁じられた光 もっと光って
十分前の出来事に頓着する
思い出し笑って キスをする



「ぐちゃぐちゃになってもすてきなあなた」

 問題作でないと読む気になれない
 足元をぐらぐらさせない本に用はない
 僕が引き千切られたって
 愛してくれるだろうか君は

 君の手が 君の足が 順々に送り届けられる
 ひとつひとつふたを開けて中身を確認する
 君の心は代金引換
 エアパッキンに梱包されて

 ぐちゃぐちゃになっても関係ないよ
 僕もぐちゃぐちゃになったって



「器用」

器用貧乏って言うじゃない
 あれがよくわからない
  貧すりゃ鈍するとも言うじゃない
   あれもよくわからない

    すると器用だと鈍くなるのかしらね
   まぁ鈍器という言葉はよく聞くけど
  凶器よりでしょ 鈍器
 金属バットに灰皿 タライ
ドリフも鈍器使ってるのね

 五人もいればなにをやるにも
  スムーズにとはいかなそうよね
   それが見事なチームワークで
  笑いを誘うということは
 みんな器用ということよね――

 「あぁ ごめんごめん ちょっと考えごとしてた
  『器』という字の語源についてのレポートだったわね――」



「体内共生言葉」

中空に浮かぶ 言葉をひとつ 飲みこんだ
ぽんやりとしてたから
西方浄土から飛ばされてきたんだって
いくらなんでも飛ばされすぎ
いいから胃の中で落ち着きなさい

私の胃腸に浮いてる言葉
溶かされないよにバランスとってる
ファージにDNA注射されないでね
言葉の中でファージがあふれるファージ
いいから口まで避難しなさい

私の上あごにはりついた言葉
誰も知らない私の友達
たまには虫歯を治してみてね
セールスマンを追っぱらってね
いいからかわいい娘に見とれてないの



「舞台」

流れてくるのは
空っぽの言葉だけだ

僕にどうして嘘を?

ステレオで囁く
エルドラドの夢
語り手は冷たくなっている

黄色い機械のピースマーク
目をつぶれ 見てはならない
僕がなにを言っても
悪の枢軸 マンセーマンセー

もう終わりにしないか

銀幕を突き破れ流星
ステージを叩き壊せ流星



「厭われし春の宴」

全速で車が飛び交う三車線
踊るシャーマン
君の名を呼ぶ

生まれ出づる春
君のキーはここでいいか
念を押すシャーマン

心を開く 君を開く
体内の宇宙は花を残して世界を飲みこむ
讃えるシャーマン
厭われし春の宴が今から始まる



「意義」

 二重螺旋構造の波動に、
 巻きこまれ取りこまれ溺れ弱り切っている。
 信じられないことだろうが、
 ここに言語はない。
 翻訳しよう。“0”か“1”に。

 始終視線想像の粗相に、
 恥じ入らない君の愚かしさ。
 持ち切れないことだろうが、
 ダイヤのパンをどうぞ。
 贅沢しよう。“1”を“100”に。

 気球危険膨張の事態に、
 声のない君の表情もまたない。
 驚かれないことだろうが、
 しかし意義はある。
 推して量ろう。“100”も“∞”に

後書き

自分の言葉を洗いたくなると、詩を書きます。だいたいなんていうか、無意識っぽいのが顕著に出てきます。出てくるからって、どうするってこともないのですが。平沢進のCDを聴いたので、脳汁が耳から漏れてます。

この小説について

タイトル ぐちゃぐちゃになってもすてきなあなた
初版 2006年3月26日
改訂 2006年3月30日
小説ID 644
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合計★ 4
蓮打の写真
ぬし
作家名 ★連打
作家ID 9
投稿数 14
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活動度 8795

コメント (1)

弓射り 2006年3月29日 21時36分47秒
容量が多すぎて、3回読んでも全部を把握して感想を書けません(泣
小説10話よりも辛いですね。でも、楽しかったです。
一番僕の脳みそにもやさしいのが「西海の水竜」。
かっこよかったのが「リスペクト町田」です。
でも、どの詩も基本的にかっこいいです。

内容に触れられないこのコメントのなんと薄っぺらい事・・・orz
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