恭子の場合 - 15、16歳位までに童貞を捨てなければ女体化する世界だったら…1

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  1.恭子の場合

 ─これから、最後の週末が始まる。男の子として最後の。
 
  恭平は、布団からゆっくりと起き上がると、部屋にある立ち鏡の前に立った。
 高校生になってから、ことに体が女性に向けて変化しはじめた頃からは毎日のように、自分の変化を気をつけて見るようにしていた。
 ふくらみ始めた胸元や、お尻。やわらかな表情を見ていると、決断まで時間がないことを思い知らされた。

  2017年、日本の少子化、人口の減少はますます顕著になり、もはや国家存亡の危機とまでいわれていた。そこで政府は優秀な遺伝子を伝えることが国益にかなうとし、一夫多妻制を導入した。しかし、これにより結婚できなくなった男性が大量に溢れたため、政府は人数調整と称して、たくさんの男性を女性にした。政府にとって、女性のほうが従順で統率しやすかったのであった。

 しかし恭平の時代になり、人口の減少も落ち着いてきたことから、今ではもっぱら性別自由化の目的により、16歳の誕生日までに異性と性交渉をしなかったものは、今の性別と反対になるというシステムが導入された。
 第1期は幼稚園卒業時、第2期は小学校卒業時、そして第3期は16歳の誕生日、この3つの時点で自分の性別を政府に届け出ることによって、しかるべき研修を政府によって施され、その性別としての天寿をまっとうすることになる。恭平両親の反対をよそに、第1期、2期とも選択を留保してきたので、最後の第3期、16歳の誕生日─7月21日─までもつれこむことになってしまった。
 性別の選択が遅れれば遅れるほど、それは2次成長が遅れるということなので、不利になる。たいていは1期、2期の時点で8割は性別を決定する。恭平はしかし、ずっと迷っていた。

 しかしそれでも、今日か、明日のうちに異性と性交渉をしなければ、自分とは反対の性の女性になってしまう。その後は1ヶ月学校を休んで、政府の研修所で、女性として生活するためのイロハを叩き込まれることになる。第3期の後は一切の性別変更は許されない。
 恭平は考えたあげく、この最後の2日間、旅に出ることにした。

 準備は昨晩のうちにすませておいた。いちおう男の子なので、荷物は簡素なものである。野宿ができるのも男の子だからだが、それも今回が最後になるかもしれない。

 1階に下りると、母親が声をかけてきた。日々、女性化していく恭平を心配そうに見つめていた。恭平は、うっすらと膨らんだTシャツの胸元を隠して、わざと男の子らしく、低音を聞かせたが、それでも小学生の男の子が話すような声にしかならなかった。
「じゃ…、いってくるから」
恭平が無愛想に出ようとすると、母親は玄関に立ちはだかった。
「ねえ、もう決まったの?」
母親は不安そうな表情で恭平を見つめた。身長は同じくらい。恭平が第1期のとき、男の子を選択していたら、とうに母親の身長なぞ追い越していたことだろう。
「いや…、自分でも、どうしたらいいか」
「なら、いま決めて」
母親はそういうと、突然、エプロンをはだけて、服をぬぎ裸になった。そして、恭平の前には2つの大きな乳房が立ちはだかっていた。
「私だって、一応女性よ、私とセックスをすれば、あなたはいまの恭平のままでいられるわ…」
母親の希望はいつもそうだった。恭平にはずっと、男の子の恭平でいてほしかったのだ。自分が生んだそのままの性別でいて欲しいという気持ちは恭平にも理解できた。そして、自分が女性としての人生を歩んだ時、自分も彼女のような気持ちを抱くようになるだろうかと思った。
「じゃ、いくよ」
恭平は、母親にキスをして玄関を後にした。母親の鳴き声が聞こえてきた。
─おかあさん、私が女の子になったら、もう子供じゃないの?

 いつもの通学路を歩いていた。幸い、土曜日、日曜日とも全国的に晴れるそうだ。もうすっかり夏だが、まだ朝の6時である。途中ジョギングをしている中年の男性を挨拶をかわしながら、恭平はあの男性は優秀な遺伝子を持っている人なのだろうと関心した。50〜60歳の世代は、ちょうど2017年のときに青年期だった世代で、そのときに男性でいることを許された人たちである。
 
 駅まで歩いていると、同級生の美智子と交差点ではちあわせになった。
 なにを話してよいか、わからず、信号機が青になるのをじっと待っていた恭平だったが、美智子は、
「明日、誕生日だったね…」
 とぽつりとつぶやいた。恭平も美智子も、クラスでは目立たない存在である。恭平は昼休みはもっぱら机で寝るフリをしていたし、美智子は一人で本を読んでいた。
 他のクラスメートは体育館や、運動場でスポーツに興じている。
 美智子は男の子として生まれたが、第1期のときに女の子として生きる選択をして、以後ずっと女性でいた。だから、もうどこから見ても、女の子だった。
「もう決めたの?」
女の子とあまり話さない恭平は、前を見つめたまま、
「まだだよ」
と言うのがやっとだった。でも、自分が女の子になったとき、美智子はいい友達になってくれそうな気がしていた。
「わたしは両親にいわれて、女の子になったんだ。お兄ちゃんがいたから…、次は女の子が欲しかったんだって。わたしは男の子だったけど、お父さんとお母さんが喜んでくれるならって思って、小学校に入学する前に、書類に名前を書いたの、美智子って」
美智子が話すのを聞きながら、恭平は、第3期まで待ってくれた両親に感謝していた。参考になるかと思い、恭平は聞いてみた。
「どう、女の子を選んで、よかった?」
「わからない、だって、ずっと前から女の子だった気がするの。でも、アルバムの写真で、幼稚園の頃のがあるんだけど、半そで、半ズボンで、運動場を走り回っている自分を見ていると、不思議になるんだ。そのときの自分は、今の生きている自分なのかなぁ、って」
美智子が遠い目をして、空を見上げたとき、信号が変わった。恭平が歩きだそうとすると、恭子が後ろからシャツをつかんできた。
「どうしたの?」
「ねえ、その荷物、これから、旅にでるの?」
「…そうだけど?」
「一緒に行く!」
「えっ…」
いつもと違い、積極的な美智子に驚きながら、恭平は押し切られる形で、美智子と一緒に旅をすることになった。美智子は
「じゃ、すぐに準備してくるから、駅で待っててねーっ!」
と、スカートを翻して、来た道を戻っていった。そのとき、パンツが見えたのだが、恭平は何も感じなかった。頭のなかも女性化が進んでいるのだろうかと思い、ますます時間のなさを実感した。うつむくと、くつを隠すほど乳房が成長していて、どうしようかと頭を抱えた。

 目的の駅まで、新幹線と特急電車を乗りついて、9時間かかった。到着したときは山に太陽が沈み始め、道端の街頭がつき始めた頃だった。
 電車の中でずっと、恭平は考えていた。素直に、生まれたときの性、男性として生きるのか、それとも、このまま時間にまかせて女性になってしまうのか。
 美智子はしばらく本を読んでいたが、そのうち、考え事ばかりしている恭平にあきれて、眼鏡を外して眠ってしまった。
 美智子は眠っていたが、眼鏡をしていない美智子を見るのは初めてだった。女性らしく、すねたように首を傾げて、美智子は安らかに眠っていた。美智子は意識してそうしているわけではないのだろうが、女性としての本能が自然とそういう行動をさせるのだろうか。だとしたら、このままだといずれ自分もそうなる。そうなりたいそうな気もしたし、いまの美智子にそっとキスをしたいような複雑な気持ちだった。ふと、美智子の寝顔を見つめていた恭平は自分の股間に目をやった。久しく反応していなかったが、あそこがすこし、硬くなっていたのであった。

 山奥の田舎になる小さな駅舎だったので、恭平は約束していた迎えの人と、すぐに会うことができた。すっかり健康そうに日にやけた、Tシャツに短パン姿の女子高生が、恭平たちを迎えた。Tシャツの下には乳房が苦しそうに膨らんでいる。
「あたし、美咲っていうの、御崎くんの従姉妹です。はじめまして、よろしく」
美咲という女の子に言われたが、恭平は御崎に従姉妹なんていたっけと、首をかしげた。
「あれ、御崎、くんは?」
出迎えてくれるのは、小学校の頃の同級生である、御崎くんだとばかり思っていた恭平はすこしあわてた。彼はあまり女性と話すのは得意ではない。むしろ苦手である。
「あー、ちょっと、用事でさ…」
美咲ははぐらかすように笑うと、二人を促すように、待たせていたタクシーに乗せた。小学校の時の親友である、御崎はどちらを選択したか、彼といろいろ話して、決心をつけようと思っていた恭平はすこしがっかりしながら、車窓を眺めていた。

 やがて車は古めかしい、木造校舎の小学校前に停車した。すでに廃校になっていたが、中は村役場の生涯教育や文化交流の施設として使われており、きれいに整備されていた。旅館もあるので、希望すれば格安で泊まることができる。
 ここは、恭平と御崎が通っていた小学校だった。村の過疎化で廃校が決定したときは、生徒は恭平と御崎だけだったから、二人はよい友達になった。
 廃校になったあと、恭平は都会へ引越し、御崎は近くの学校へ編入することになった。そのときは、まだ二人とも、性別をきめかねていて、男の子だった。今回、この小学校へ来ることになったのも、御崎から、手紙でお誘いがあったからだった。

(つづく)

この小説について

タイトル 15、16歳位までに童貞を捨てなければ女体化する世界だったら…1
初版 2007年5月14日
改訂 2007年5月14日
小説ID 1510
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コメント (2)

chenyingying コメントのみ 2017年11月1日 12時10分06秒
w^~)ހ
★ccc コメントのみ 2018年3月21日 14時53分42秒
w^~)ހ
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