今日も、重い足取りで通学路を歩く。
まだ桜は咲かないようで、花一つ付いていない木が、寂しい表情で立っていた。
私は、中学三年の、片桐明日香という名前だ。
慣れたことだけど、学校は毎日憂鬱だ。
だから、学校に行く時は、足取りが重い。
もうすぐ、卒業を迎える時期だというのに、教室は相変わらず活気めいている。
そんな明るい空間の中を、私はなるべく目立たないように歩く。
ストンと椅子に座ると、待っていたかのように、友達の山崎真理が話しかけてきた。
「おはよう、今日寒いね」
真理はそう言って、寒そうに手と手を擦り合わせた。
「そうだね」
あまり友達のいない私にとって、真理はたぶん唯一の親友といえるだろう。
真理は明るいけど、特定の人にしか心を許さないようで、友達はそんなに多くはない。
もったいないとは思うけど、そこが彼女の良いところでもある。
教室のドアが開き、
「席つけー」
という先生の声かけで、教室は静かになった。
HRをしている時、たまたま目に入るのは、一人の男子。
木下利也だ。
私はなんとなく、彼を見る。
出欠をとる時、彼はいつもしかめっ面で、気だるそうに
「はい」と答える。授業中も、彼は同じような態度をとるから、先生も呆れている。
教室に、だいたい一人はこういう人がいる。
私は、彼の態度に、違和感を感じている。
それは、彼は、教室で浮いているからだ。
なんとなく見てしまうのは、そのせい。
まあ、いじめられてるわけではないんだけど。
あまりにじろじろ見ていたのか、気づいたようで、こっちを見てきた。
睨まれるかと思ったら、ちょっと変な顔をして、視線を前に戻した。
後で、あれは微笑んでいたのかもしれないと思う。

翌日、彼の意外な一面を見つけた。
その日は日直だったから、私は早く学校に来ていた。
もう一人の日直は木下君だったけど、どうせ来ないだろうと思っていた。
教室に着くと、ドアから微かに物音がした。
何だろうと思ったその時、私が開けるより早くドアが開いた。
木下君だった。
彼は、びっくりした顔をして、そのまま無言で私の横を通って教室を出ていった。
ふと、教卓を見ると、そこには花瓶が置いてあった。
綺麗な花もさしてあった。
もしかして、日直の仕事をしてくれたのかな。
「ありがとう」
私は独り言のように、お礼を言った。

HRが終わり、真理が話しかけてくる。
「移動めんどいよねー」
「ああ、分かる」
確かに教室移動は疲れる。
だから、皆とてもだるそうだ。
ふと、彼のことが目に入る。
彼は、相変わらずのしかめっ面で、授業の準備をしている。
「どうしたの?」
「……ん、なんでもない」
ここの所、いつの間にか彼のことを見てしまっているようだ。
なんでだろう。
授業中、私は暇すぎてノートに落書きをしていた。
「明日香、授業中だぞ」
「……あ、はい、すいません……」
注意されてしまった。
普通の人より無口な私は、返事の声が少し小さくなる。
注目されて、ますます恥ずかしくなる。
自分を責めた。
無意識に彼を見る。
彼は珍しく、真面目に勉強している。
受験が近いので、頑張っているようだ。
……私も、頑張らなきゃな。
気が付けば、一日に三回以上は彼を見ている気がする。
なぜか、気になって仕方がないようだ。
一体、私はどうしてしまったんだろう。

「恋だね!」
真理が言った。
「そうかな……」
「絶対そうだよ!だって、木下君のこと見ちゃうんでしょ?」
「うん」
「それはもう、気になってる証拠だよ〜」
真理が言うには、今まで学んできた人生経験から言うと、
ついつい見てしまう=(イコール)恋をしている。
という考えになるそうだ。
「明日香は、木下君のことどう思ってる?」
「……わからない」
「じゃあ、とりあえず卒業式までに、告白しなさい!」
「え?」
あまりに唐突な一言に、私はびっくりした。
「な、なんで?」
「もしも恋なら、思いを伝えるべきだと思うの!」
……考えたこともなかった。
でもまだ、恋かは分からない。
私は彼のことを見ているだけなのだから。
だから、確かめるしかない。
私の思いを。

今日は、緊張した足取りで通学路を歩く。
満開の桜の木の下、私の胸は高鳴っていた。
今日、彼に、告白をする。
卒業式当日に、告白は無理といったが、あとぐされなく出来るのは、
この日だけといわれ、私はこの日を迎えた。
どんな反応をされるか分からないけど、きっと、彼は戸惑うだろう。
私は、暖かな桜のピンク色に微笑みを浮かべながら、そっと彼のことを思い出した。

後書き

初小説です。

この小説について

タイトル
初版 2017年3月1日
改訂 2017年3月1日
小説ID 4893
閲覧数 85
合計★ 3
餅村 みみの写真
駆け出し
作家名 ★餅村 みみ
作家ID 1073
投稿数 1
★の数 3
活動度 156

コメント (4)

弓射り 2017年3月4日 8時33分46秒
読みやすい文章だと思います。丁寧なこと、視覚や聴覚を意識して読む人に想像させようとする創意工夫が伝わってきました。
学生の日常の細かい描写もリアルな感じがあります。

少し突っ込んだ感想としては、卒業間近って雰囲気があまりしなくて、その頃の浮き足立ったクラスメイトの感じとか季節感はもっと演出できると思います。かなり力が入った描写に感じますが、自分の個性を生かして自分しか思いつかないような表現を使って、もっとやって大丈夫だと思います!

1点、活気めくという表現は、少し不自然な感じがします。〜のような、〜っぽい雰囲気になるという意味で使う場合、「活気」のような抽象的な単語には付かないイメージです。完全に間違いとはいえませんが、、、

でも良い文章です!続きが楽しみ。
片桐さんと木下くんの関係、どうなっていくか気になります(^^)
餅村 みみ コメントのみ 2017年3月5日 1時28分41秒
コメントありがとうございます!
なるほど、アドバイス助かります!
活用してみますね。
ちなみに、この話はこれで完結です。
弓射り コメントのみ 2017年3月5日 7時04分16秒
なるほど。完結だとしたら、片桐さんの気持ちがもっと揺れ動く様子が読みたかったです!次の作品も期待しています
餅村 みみ コメントのみ 2017年3月5日 11時53分00秒
ありがとうございます!
そう言って貰えると嬉しいですね。
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