アイとヒメ。 - アイとヒメ。 第2話

一通り話し終わったところでノゾミがハーブティーを持ってきてくれた。
部屋いっぱいに広がるフレッシュな柑橘系の香りが鼻腔をくすぐる。
「ニルギリっていう紅茶なんだけど、最近気に入ってるんだ〜。」
透明のティーポットを見ると透明感のある綺麗な紅色が見えた。
紅茶…飲んだ事あるっけ…?
そういえば私…自分の名前と年齢以外…何も覚えていない…?
そんな事を考えている間にもノゾミは慣れた手つきで紅茶をティーカップに注いでいく。
やがて2人分の紅茶を淹れ終わると、再びソファに座った。
「紅茶飲んだら外に行こう。町を案内するよ。取り敢えず休憩〜。」
私は頷くとカップを手に取り、一口飲んだ。
さっぱりとした味わいが口の中に広がり、思わず頬が緩む。
「あの…、ノゾミさんは如何して1人で住んでいるのですか?」
尋ねて良いものなのか微妙だったが、思い切って尋ねる。
するとノゾミは案の定悲しそうな顔で話し始めた。
「私は…記憶が、無くて。3年前。ヒメカちゃんみたいに気付いたら森に…。
少しずつ働いて…、お金を貯めて…、今は家が建ったよ。」
最後は苦笑いの様な表情でノゾミは言った。
「3…年前。12歳なのに…すごい。なのに私…。」
そう考えると、人に甘えている自分が何だか恥ずかしい…。
……あれ?でも今は働いてないのかな…?
3年で働かなくても良い様なお金は手に入らない…。
何か、おかしい……?
ノゾミの話に疑問を持ったと気付いたのか気付かなかったのか、ノゾミは話を切り上げた。
「湿っぽい話は終わり!さ、外に行こう?」
言うと同時にノゾミが立ち上がった。
ふとノゾミのカップを見るともう空だった。
飲むの早いよう……。
自分の分を一気に飲み干すと、ヒメカも立ち上がる。
「じゃあ…、案内宜しくお願いします!」
ノゾミに向かってぺこりと頭を下げる。
町並みはどんなかな…?
どんな人が居るのかな…?
「勿論!任せて!」
言いながらノゾミがドアを開ける。
夏風が吹き、ヒメカの栗色の長い髪を揺らした。



重い瞼を開けると、隣の椅子に先程の和也という男性が座っていた。
「愛花。さっきはいきなりすまなかったな…。」
「あ、いえ…。私は…どうなっているのですか?」
何とか身体を起こすと男性に尋ねる。
そういえば…、包帯巻いてあるところがちょっとあるな。
でも…こんな軽い怪我で記憶喪失になったのかな?
記憶喪失ってなんか重体の人がなるイメージだったけど…。
ただの偏見だったのかな。
「分かると思うが…今お前は記憶喪失だ。逆行性健忘と言うらしいんだが…。
先生の話によると、生活するのに必要な記憶はあるから怪我が治れば退院出来るらしい。」
退…院。家に帰るのか。何か思い出せれば…良いけど。
何か…早く思い出さなければいけない事がある気がする。
「そう…ですか。お、お父さ…」
「無理にお父さん、と呼ばなくても良いよ。思い出した時に…呼んでくれ。」
「すみません…有難う。」
和也は優しい顔で微笑んだ。
この人の笑顔…安心する。やっぱり父親だからなのだろうか。
「あの…私の事、教えて下さい。家族とか。何でこうなったのか、とか。」
真剣な表情で、座った状態のまま頭を下げる。
和也は無言で頷くと、話し始めた。
「まず…君は日奈森愛花。俺は日奈森和也、君の父親。それはさっき言ったね。
君は、交通事故に遭ったんだ。昨日の夕方に。それで、救急車で搬送されたんだが…
目覚めてみれば記憶喪失、と。これがざっとした今に至るまでの経緯。」
「………。」
「次は家族についてだね。今は俺と君の2人家族。父子家庭、ってやつかな。
兄弟は居なくて、母親は…離婚した。だから…お前に何かあったら…って……‼」
「御免なさい。心配かけて。」
目を伏せながら和也に謝る。
「良いんだ…。無事だったからな。」
色々…複雑な家庭環境だったのかも知れない。
ちょっと…休もうかな。
こんなにすぐ疲れるなんて。事故の後ってみんなこうなのかな。
身体を倒すと、その意図に気付いたのか和也が立ち上がった。
「疲れたかな?俺は出て行くから…好きにしていいぞ。
…あ、これ。本とか持ってきたんだ。愛花、本が好きだったからな。」
差し出された本を受け取り、笑顔で頷いた。
「有難う御座いました…。」
「明日も来るからな。」
そう言い残して、和也は部屋を出て行った。
「…折角だし、読もうかな。」
3冊程ある本の1冊を取り、表紙を見る。
10代程の男女2人が書いてある、いわゆるライトノベル本だ。
…私はノベル本が好きだったのか。
口元に小さい笑みを浮かべながら、愛花はページをめくり始めた。



「日奈森さん…。どうして愛花ちゃんに嘘をついたんですか?」
「先生…、聞いていたんですか。」
「はい。失礼ながら…。偶々通った所、2人家族、と聞こえたので…」
「12歳の子供には辛いと思ったんです。だから…、先生も黙っていて貰えませんか?」
「分かりました…。ですが、愛花ちゃんの記憶が戻った時は…」
「その時はちゃんと話します。」
「……お願いします。」
「ではそろそろ…失礼しました。」

《続く》

後書き

初心者の小説なので、下手かもしれませんが、
読んで貰えると嬉しいです。。

この小説について

タイトル アイとヒメ。 第2話
初版 2017年3月15日
改訂 2017年3月15日
小説ID 4899
閲覧数 52
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紅葵の写真
駆け出し
作家名 ★紅葵
作家ID 1077
投稿数 3
★の数 3
活動度 304
最初は下手ですが、段々と上手に書ける様になれば良いな、と
思いながら書いています。読んで貰えると嬉しいです‼

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