踊る大捜査線[青室青] - 看病しては** [青室青]




(・・・絶対におかしい。)



きっと、本人は普段通りのつもりだろう。・・・しかし、この季節。真冬の寒い外から暖かい室内に入り急な温度変化だからとしても、そこまで汗は滲むものなのか。顔はそこまで赤くなるものなのか。・・・よく見ればはしってきたわけでもないのに、肩が上下するほど息が上がっている。疑問兼ねて凝視して見れば見るほど不自然な点が多すぎる。様子が違う。普段通りではない。“接待„という名の「余計な仕事」を終えた彼は、署長らに軽く会釈する。そしてすぐに頭を上げると方向転換する。

方向転換の際に少しだけよろけた彼の姿を、青島は見逃さない。

刑事課を後にしようと歩き出した彼に、すかさず声をかける。

「室井さん、待って」

聞こえているのかいないのか。呼んだ声の主は反応せずに先を行く。逃してなるかと言うように追いかけると、少し強い力で室井の二の腕を掴む。

「・・・なんだ。急いでいるんだが」

振り返るその顔は不服に歪む。眉間に深く皺を寄せている。この表情は室井の普段通りと言えば普段通りなのだが、どこか苦しそうにしている。青島は掴んでいた二の腕を引き、向かい合う体勢をとると、そっと室井と額を合わせた。

「なっ・・・、あおっ・・・」
「熱い。やっぱり無理してたんすね、室井さん」

合わせる額から伝わる熱は、明らかに平熱じゃない。青島の中にあった不確かなものが、“確信„に変わる。額を離し、至近距離で見つめると、いつものように笑って見せた。

「熱あるんすよね。いつから我慢してたの?」
「いいから離してくれ。・・・仕事がある」

そう言って、掴まれている自身の腕を青島から振り払おうとする。・・・が、どうにも力が入らないらしい。振り払う力なくそのまま青島の腕の中、しっかりと抱きすくめられる。

「・・・本当に仕事があるんだ。たまっている。私は大丈夫だから・・・」
「大丈夫じゃないでしょ。真城さんには連絡入れるから」
「だから仕事が・・・」
「俺ってそんなに信用出来ない?」

“仕事がある„一点張りの頑固者は、少々強い言葉で制さなければ聞かないと、青島は知っている。青島の自分を下げる発言に圧され、折れた室井が、逃げようとあらがっていた抵抗を諦めた。その様子を見て、青島は呟いた。

「・・・いいんだよ室井さん。少しくらい休んだって。皆文句言わないよ。」

「あんたは頑張りすぎだって」と小さく室井の耳元で呟けば変に力が入っているその病人の緊張を解くように、優しく背中をさすってやる。

(この人はいつも一人で頑張るから・・・。)

荒い呼吸を首もとで感じながら、青島は静かに溜め息をついた。









  *     *     *  











「・・・本当にすまない」

青島が台所で作業していると、ベッドに寝かせられた室井が、消え入りそうな声で謝罪した。喋るのも辛いくらいの高熱なのに、まだキッチリと謝罪するあたり、逆に感心する。

「うちは全然平気です。そんな謝んないで下さいよ」
「しかし仕事が・・・」
「真城さんと沖田さんには連絡入れました。俺はどうせ明日非番貰ってましたし、今日の仕事は和久くんに変わってもらいましたんで。皆「お大事に」って。心配してたんすよ?」
「・・・すまない」
「あ〜またそうやって謝る・・・」

室井を家(青島の官舎)に連れ帰ってきて、ずっとこれだ。謝罪ばかりして、まったく気を抜かない。ここが自分の家でなく、人様の家だというのもあるかもしれない。・・・が。病人なんだから、もっと気を楽にしてほしい。

「謝るのはもう充分なんで。ほら、お粥〜」

台所での作業を終え、出来立ての熱々お粥を室井の傍へ運ぶ。すると、室井が驚いたように目を見開いた。

「・・・どうしたの?」
「・・・い、いや、君にも作れるんだなと・・・。」
「男の一人暮らしをなめないで下さいよ?」

食べれるかな?と青島はゆっくり室井の体勢を起こすよう支え、座らせる。室井はチラ、と青島の方に目をやると、縦にコクリ、と少しだけ頷いて見せた。しかし力が入らないからか、両手で器を持つのが精一杯、といった感じだ。それから先、動けなかった。

「ありゃりゃ、キツいか・・・」

辛そうに荒い呼吸を繰り返しては、おかゆをジッと見つめている。しょうがないなぁと室井から器を取り、お粥をスプーンで掬う。青島の様子を力なく見る室井に、にこ、と笑って見せ、掬ったお粥を少し冷ますように息を吹き掛ける。そして口元に運んでいくと、お決まりの台詞のように「あーん」と言ってみせた。

「・・・あのな」
「いいからいいから。早く。食べないの?」

急かすよう言いながら、口を開くよう、スプーンを室井の唇に押しつける。すると、開かざるをえなくなった室井が、しぶしぶ口を開けてお粥を含んだ。

「どう?美味しい?」
「・・・んまい。」

呂律回らず、素直な感想を述べるに、一瞬青島の頭で“理性„の二文字が消えかける。さすがに病人・・・と消えかけた二文字を呼び戻しつつ、室井の食事を手伝った。










  *     *     *  










「よし、良かった。食べれましたね」
「・・・ん、」
「少し寝ます?」

綺麗に空になった器を見て、青島は満足気に笑う。室井の瞳が虚ろに揺れては、眠気を訴えている。

「ふぁ、」
「はい、横になろ、室井さー・・・」

ちゅ、と言いかけた言葉が、湿った感触に、唇ごと塞がれる。驚いて見れば、伏せた長い睫毛、赤く色づいた頬。美しい室井の姿に青島は圧倒される。

「・・・さっき、したそうだったから」
「ーーー・・・ へ?」

どうやら室井は青島の小さな変化に気づいていたらしい。理性が消えかけた、あの瞬間に。数秒してからやっと、青島は室井の言葉の意味を理解する。

「・・・へへ、ありがとうございます」

ふにゃ、と笑って礼を言うと、室井は耳まで真っ赤にしながら、青島から顔をそむける。その様子を見た青島は少し遠慮がちに室井の手を取って握った。

「・・・寂しいの、やでしょ?」

握った手を少し引き寄せれば唇に手の甲に触れさせる。横目で凝視しながら、室井は照れくさそうにはぁ、と息をはく。

「おずまげな・・・」(かっこつけんな)

言い放たれた言葉に「好きだよ」と返事にならない返事を囁いて返した。そんな青島に、室井は向き直ると、その目を閉じた。



ちなみに、室井が寝言で「好きだ」と呟いた時、青島も深い眠りについていたそうで。



その言葉は青島の夢の中に響いたそうだ。







          ・・・ーーー 了

後書き

室井さん風邪ネタ。
色っぽい感じになりそうですね。
青島くん編も今度書きたいですね〜

この小説について

タイトル 看病しては** [青室青]
初版 2017年12月8日
改訂 2017年12月8日
小説ID 5001
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みずぬまの写真
駆け出し
作家名 ★みずぬま
作家ID 1099
投稿数 4
★の数 0
活動度 108
まだまだ未熟者ではありますが、たくさんの作品を執筆し、上達していきたいと思います。よろしくお願い致します。

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